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■春宮(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-07-29
 
それで青葉は千里2と一緒に5月1日の昼から筒石の新しい住まいをチェックに行くことにしたのである。
 
青葉は4月中に頼むと言われていた曲を何とか4月30日23:58くらいまでに送信して朝までひたすら眠った。
 
(青葉は真面目なので、千里のように「4月中」と言われていたものを「5月1日朝8:59」に送信したりはしない−これが毛利になると5月3日くらいに書き上げて雨宮に叱られる)
 
眠ったままの状態で母にヴィッツで新高岡駅まで送ってもらい、半分寝たまま、6:27の《はくたか552号》に乗る。ひたすら眠っていて、後ろの子に起こしてもらい8:54に大宮で降りる。そこに彪志が迎えに来てくれているので、彼の車の助手席に乗り込むと寝ちゃう!そしてアパートに着いたよと言って起こされると
 
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「ただいまあ」
と言って上がり込み、彪志が起きたまま放置していた布団に潜り込み、また寝る!
 
そういう訳で青葉が目を覚ましたのは11時くらいである。これも彪志に
「青葉、そろそろ出なきゃ」
と起こされてやっと起きたものであった。
 
うーん。。。少し頭痛がするなあ・・・と思いながらも彪志が買ってきてくれたコンビニのお弁当を半ばボーっとしながら食べたが
 
「青葉、その状態では絶対乗り換え間違う」
と彪志から言われ、結局彼に彼に車で待ち合わせ場所の表参道駅まで送ってもらった。
 

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青葉がそのカフェに入って行った時、奥のテーブルで千里が手を振ってきた。それでそのテーブルに行く。
 
「青葉眠そう」
と言われる。
「4月中に頼むと言われていたものを仕上げるのに4日くらいほとんど寝てなかったから」
「ああ、大変ね」
「ちー姉は何とかなった?」
「1番に頑張ってもらっているから」
「新婚さんなのに可哀相!」
と言ってから青葉は訊いた。
 
「もう名古屋に移動したんだっけ?」
「まだ。信次さんは5月11日(金)までは千葉支店で勤務して5月14日(月)から名古屋支店勤務になる。既に所属は名古屋支店所属になっていて、現在は千葉に出張中の扱いなんだげとね」
「じゃ今は千葉で新婚生活中か」
「全然」
「へ?」
 
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「ほとんど千葉の作曲作業用マンションに籠もりっきり。信次さんの実家にはほとんど顔を見せていない」
「いいの〜〜?」
「まあ本人、あまり積極的に結婚したい訳ではないみたいだし」
「ふーん。。。」
「まああと半月すれば名古屋に移動するから、そうすればいやでも新婚生活が始まるでしょ」
「なるほどね〜」
 
「3番はワールドカップに向けて合宿に次ぐ合宿になるし。25日まで第1次合宿してたんだけど、今日からまた第2次合宿なんだよ」
 
「わっ。だったら、私この件2番さんに連絡して正解だったね」
 
「私の方は4月25日と28日にプレイオフの準々決勝をホーム&アウェイでやって勝って、次は5月5日と8日の準決勝」
 
「忙しい時にごめーん」
「でも5月5日にはWBCBLも始まる」
「わっ、それどうすんの?」
 
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「フランスの準決勝は5月5日の20:00で日本時間では6日の午前3時。アメリカの開幕戦も5月5日の20:00でこちらは日本時間で6日の午前9時。フランスの試合が終わった後4時間程度は休めるから問題無い」
 

 
「大変そう」
と言いながら、青葉は『普通の人はフランスからアメリカに移動するのに半日掛かるんだけど?』と突っ込みたい気分だったが、やめといた。
 
「だけどWBCBLはほんとにチームの入れ替わりが激しい。去年うちの地区で準優勝したチームがシーズン後に解散しちゃったしね。昨年の6チームの内、今季も参戦するのは2チームにすぎない」
「え〜〜!?」
「解散した所、チームとしては存続していてもリーグに参加しない所などなど。代わりに新しいチームが4つ参加して結局今季も6チームで争う」
 
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「なんか凄いね」
「日本の芸能界の歌手のラインナップみたいだよ。活動している総数は変わらなくても顔ぶれはどんどん変わっていく」
 
「栄枯盛衰が激しいよね」
「そんな中、ローズ+リリーとKARIONが無事10周年を迎えられそうなのは凄いことだと思うよ。XANFUSは一度解体されたし、AYAは1年間活動休止してたし」
「08年組では浦和ミドリちゃんとか引退してしまったしね」
「まああの子は長く活動できるタイプではなかったけどね」
 

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「アクアはどのくらいもつと思う?」
と青葉は訊いてみた。
「たぶん、今年・来年くらいがピークだと思う」
と千里は言う。
 
「かもね〜」
「さすがに20歳越えたら人気は下降すると思うよ」
「まあそんなものだろうね」
 
「それに今彼はやはり去勢しているのではという疑惑がファンの間でも膨らんできている。さすがに今みたいに声変わり前の声ではずっとはやっていけない」
 
「まあ声変わりして人気急落するか、去勢していることを告白して壊滅的に人気が無くなるかの二者択一だろうね」
 
「いっそ性転換させちゃう?」
「まああの子は性転換してもやっていけるだろうけどね」
 
「思っていたんだけど、ひょっとすると性転換しちゃうのが最も人気に傷がつかないかも知れない。あの子、機転がきくから、バラエティタレントとしてもやっていけるよ」
「その路線はありそうで怖い」
 
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「コスモスも彼でずっと稼いでいこうとかは思っていない。今彼が売れているのはパチンコの大当たりが出たような状態と思っている」
 
「そう思える経営者は偉いと思うよ」
「これじゃ私結婚できない、とかも言ってたけどね」
「確かに結婚している暇無いよね! 彼氏居るんだっけ?」
「居ないみたいだね。アクアと結婚したいくらいだ、と言ったら、そんなこと言ったらファンに殺されますよ、とゆりこが注意していた」
 
「ああ、それは殺される」
 

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ふたりで話していたら、やがてジャネと筒石がやってきた。
 
一緒に出てきたのかと思ったのだが、今お店の前で遭遇したらしい。
 
ジャネは大会がいくつか続くし、金沢にいてもゴールデンウィークは市民プールなども一杯なので、埼玉県の知人が経営しているスイミングクラブで泳いでいるということだった。
 
筒石が近づいて来た時、青葉も千里も緊張した。一瞬ふたりで視線のやりとりがあるが、千里が譲るような仕草をするので青葉がため息を付いて「処理」した。
 
「あれ?身体が軽くなった気がする」
と筒石は言っている。
 
「あ、取れてる」
とジャネも言う。
 
「取り敢えず除霊しましたけど、これ多分今のお住まいに行くとまた憑依されると思います」
と青葉が言った。
 
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「何か付いてたの?」
と筒石。
「ええ、憑いてました」
と青葉は言った。
 

「でももうあのアパートには戻らないから大丈夫だよね?」
とジャネ。
 
「でも引っ越しする時にお荷物を取りに行きますよね?」
「解約して出てきたんだよ。荷物は全部持って来た」
と筒石は言っている。
 
「お荷物ってそれだけですか〜〜!?」
 
筒石が持っているのはごく普通のサイズの旅行バッグ2個である。
 
「うん。ひとつで済むかと思ったんだけど、ジャネが送りつけてきた荷物があったから、それも持って来た」
 
「ああ、その青いバッグですか?」
「そうそう。これ何が入っているんだろう?」
「見てないんですか?」
「女のバッグを勝手に開けたらまずいかなと思って見てない」
と筒石は言うが
 
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「じゃ私の青い水着にも触ってない?」
とジャネが訊くと
「え?青い水着とか入ってたっけ?」
と筒石が言うので、青葉も千里も吹き出した。
 

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どうもそのバッグはジャネが自分の着換えを“魔除け”に送りつけたもののようである。ジャネの気配があれば、確かに弱い霊は近寄れないだろう。
 
そういう訳で筒石は今まで住んでいた所をもう出てきたので、今日中に決めないと、今夜は野宿することになりそうだ(野宿くらい平気そうだが)。
 
まずは筒石が候補にしたところを地図上で確認した。
 
「Aのマークを付けた所は**駅から15分、築70年。2DKで月8000円、Bは##駅から12分、築80年。2Kで月7500円。Cは$$駅から8分、築60年。1KSで月6800円、Dは&&駅から3分、築40年。2DKで4500円」
 
青葉は頭を抱えた。
 
千里は笑っている。
 
「Dは他の所に比べると異様に良い条件なのに異様に安いね」
とジャネ。
 
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「ほらこないだ話題になった**の通り魔。その犯人が住んでいたのがこの部屋らしいんだよ」
と筒石は言っている。
 
「それはさすがにやめようよ」
とさすがのジャネも言っている。
 

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「これは、青酸カリとヒ素と、トリカブトとフグ毒と、どれを飲みたい?と訊いているようなものだ」
と千里が言った。
 
「千里さんの意見に賛成」
とジャネ。
 
「これ筒石さんは無視してジャネさんが決めちゃいましょうよ」
と千里が言う。
 
「あまりこいつに関わりたくないんだけどなあ。仕方ない。私が探すか」
とジャネも諦めた感じである。
 
「筒石さん、今お給料はいくらもらっているんですか?」
「さあ、いくらだろう?」
「知らないんですかぁ!?」
 
「君康のバッグ貸して」
とジャネが言う。
「あ、うん」
 
ジャネは勝手にバッグの中身を調べていたが、◇◇◇銀行の通帳が出てくる。
 
「これ開設して以来、全く記帳されてない」
と言って呆れている。
「ちょっと待ってて」
と言ってジャネは席を立ったが10分ほどで戻ってきた。多分マラをATMのある所に飛ばして記帳させたなと青葉は思った。マラは事実上マソの眷属に近い状態にあるのだろう。
 
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「毎月28-35万給料が振り込まれて、ボーナスは80-90万出てるね」
とジャネは通帳を見せながら言う。残高を見てギョッとする。家賃5000円の激安アパートに住んで居る人の残高ではない!
 
「高給取りじゃないですか!」
と青葉。
 
しかし筒石は
「へー!そうだったんだ。全然知らなかった」
などと言っていた。確かにほとんど引き出した跡がない。この人、どうやって暮らしているんだ!?
 

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「これだけ給料もらっているんなら、月7-8万の家賃払っても大丈夫ですよ」
「あ?そういうもん?」
 
「まあ君康は大学生時代も月3000円のアパートに住んで居たし」
「あそこ3000円だったんですか!?」
 
青葉・千里・ジャネの“3人”は話し合った。国体登録の問題で都内に住所があった方が良いということなので、都内で家賃相場の安いエリアを探すことにする。それで筒石さんの会社への通勤しやすさを考え、次の3エリアに絞った。
 
成増(なります)駅:東武東上線→池袋
上石神井(かみしゃくじい)駅:西武新宿線→新宿
尾久(おく)駅:東北本線で上野駅の隣駅!
 
成増駅は隣はもう埼玉県の和光市で、ギリギリ都内。板橋区に所属し、モス・バーガー発祥の地である!
 
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上石神井駅は練馬区で急行も停車する便利な駅だが、駅周辺は古い町並みが残り、道路も狭い。高速道路が通る計画もあることから開発が抑制気味などの理由もあり、家賃相場が低い。
 
尾久駅はバリバリの都心だが、山手線・京浜東北線のルートから外れているなどの事情で家賃相場が低い。ここは大正時代には尾久(おぐ)温泉という歓楽街があった場所で、例の阿部定事件(*1)が起きた場所でもある。戦後は温泉が枯渇して賑わいは消えてしまった。駅名が「おく」と濁らないのは、「おぐ」と聞いた昔の国鉄の人が「訛ってる」と思い勝手に清音にしてしまったせいらしい。実際に地元では「おぐ駅」でも通じる。
 

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(*1)阿部定(あべさだ)という女性が1936年に愛人男性と駆け落ち中、尾久温泉のラブホテル(当時は「待合」と言う)で性行為をしていた時、“窒息プレイ”をしている最中にその相手が死亡してしまったもの。相手が死んだ後、彼女は彼を忘れがたく思い「この人とずっと一緒に居たい」という思いから、彼の陰茎を切り取り、そのまま持ち去った。
 
そこで「男性器を切り取ること」を「アベサダする」と言うようになった。
 
しかしこの事件は基本的に事故死であり、性器を切り取ったのも死後のことであって、しばしば誤解されているように、男性器を切り取られて死亡したのではない。
 
(現代であれば過失致死+死体損壊の罪に問われると思う。当時の起訴事由は不明)
 
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彼女は3日後に逮捕され、裁判で懲役6年の判決を受けたが、服役中に皇紀2600年の恩赦で釈放された。その後の消息は不明だが、死亡した彼氏のお墓に1987年まで定期的に花が届けられていたことから、おそらくその年までは生きていたのであろうと推測されている。
 
この事件の報道の際に、マスコミ各社は切り取った部分を何と記述するか頭を悩ませ、この時に「局所」とか「下腹部」という言葉が生まれたとされる。
 
この事件に取材して作られた映画が大島渚監督の「愛のコリーダ」(藤竜也・松田暎子主演)であり、この映画の衝撃から作られた楽曲がチャス・ジャンケルの『愛のコリーダ』(クインシー・ジョーンズのカバーがヒット)である。歌詞の中に“Ai no corrida, that's where I am”と日本語でタイトルが歌い込まれている。コリーダは「闘牛」の意味。
 
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筆者はこの事件のことはカルーセル麻紀さんの出演していたテレビ番組で知りました。1982-3年頃ではないかと思います。性転換手術のことを訊かれて、彼女は
 
「ちゃんと麻酔掛けて切ったんですよ。アベサダみたいに『えいや!』って切った訳じゃないですから」
 
と言っていました。それでアベサダって何だ?と思い、調べていて、この事件のことを知るに至りました。当時はインターネットなど無いので調査はかなりの困難を伴いました。多分おちんちんを切った有名な人がいたのではないかと思い、そういう関連の本を図書館でたくさん見ている内に、この事件のことを書いた本に行き当たりました。
 
多分この時一緒に、13人もの男児のペニスを切り取った“昭和の陰茎切断魔”三浦久夫(1948-?)のことも知ったのではないかと思います。
 
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