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■春宮(3)

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6月16日、川崎ゆりこ(§§ミュージック副社長)は事務所に出てきた西湖に声を掛けた。
 
「葉月(はづき)ちゃん、パスポートは取った?」
「はい。一昨日受け取ってきました。こちらです」
と言って、西湖はパスポートを見せた。
 
川崎ゆりこは記載事項を確認する。
 
Surname AMAGI
Given name SEIKO
Nationality JAPAN Date of birth 20 AUG 2002
Sex F Registered Domicile SAITAMA
 
署名も「天月西湖」と入っている。
 
「OK。じゃこのパスポート預からせて。アクアのと一緒にビザ取って航空券も取ってもらうから」
「はい、よろしくお願いします」
 
アクアは2014年11月のデビュー前にハワイに写真集を撮影に行った際、パスポートを作成したので、2019年11月まで有効である。
 
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「でも世界一周するといったら、航空券もたくさん必要になりますよね?」
「それが『世界一周航空券』、RTW (Round The World)というチケットがあるから、出演者もスタッフも全員これを使うんだよ」
 
「すごーい!そんなのがあるんですか!」
「エコノミーなら36万円、ビジネスでも70万円で世界一周できる。しかも繁忙期も閑散期も関係無い」
 
「なんか凄く安い気がします」
 
「でしょ? 一応、アクアと大林亮平さんに中村監督の3人はビジネス、スキ也さんと脚本さんはプレミアムエコノミー、西湖ちゃん含めて他の人はエコノミーで。申し訳無いけど」
 
「いや、その待遇差は当然ですよ。エコノミー症候群にならないように、適宜身体を動かしています」
「うん、頑張ってね」
 
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ところが、山村マネージャーはプロデューサーと交渉して「質の良い絵を撮るためには必要」と言い、差額をアクア個人で持つからと言って、自身と西湖、更にスキ也さんまで、チケットをビジネスで取ってもらうようにした(事務所からほぼ放置されているスキ也が感謝していた)。おかげで西湖はとっても心地よい座席で世界一周の旅をすることができることになった。それを聞いて大林亮平も自身のマネージャー・雪原のチケットを、差額を亮平が負担して、ビジネスにしてもらった。
 

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そういう訳で今回使用するRTWチケット(Star Aliance Group)は次のような行程になっているのである。
 
NRT→HNL ホノルル 3810 ANA
HNL→SFO サンフランシスコ 2390 United
SFO→PHX フェニックス 650 United (OJ)
PHX→EWR ニューヨーク 2130 United
EWR→LHR ロンドン 3460 United
LHR→FRA フランクフルト 410 Lufthansa (OJ)
FRA→FCO ローマ 590 Lufthansa (OJ)
FCO→CAI カイロ 1340 エジプト航空
CAI→BOM ムンバイ 2700 エジプト航空
BOM→CCU コルカタ 1030 Air_India
CCU→BKK バンコク 1020 タイ国際航空
BKK→HKG 香港 1050 タイ国際航空
HKG→NRT 成田 1840 ANA (OJ)
合計マイル 22420
 
物語はロンドンから出発してロンドンでゴールだが、撮影はこちらの都合で東京スタートの東京ゴールである。これを編集で組み直してロンドン発着に並べ替える。
 
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(OJ)と書いた所はオープンジョー(Open Jaw)と言い、実際にはその区間の便には搭乗せず陸路などで移動するものの、ルート計算のマイルは積算されるのである。だから実はフランクフルトは実際には経由しない。スターアライアンスの航空会社のみでルートを構成しなければならないが、ロンドン・ヒースロー空港(LHA)からローマ・フィウミチーノ空港(FCO)へはスターアライアンスの航空会社の便が無いのでフランクフルト経由で計算しているだけである。
 
スターアライアンスのRTWの場合、この合計が29000マイル以内であれば Star 1 という一番安いクラスの料金になる。34000マイル以内でStar 2, 39000マイル以内でStar 3 になる。今回の世界一周は南半球に行っていないが、南米やアフリカにオーストラリアなどまで行くと39000マイルでもギリギリになってくる。
 
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なお、EWRはユナイテッド航空のハブ空港であるニューアーク・リバティ空港である。同じニューヨークの有名なJFK-ジョン・F・ケネディ空港ではルートを組むことが出来ない。
 

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ある日西湖が帰宅すると、知らない病院の名前で○○日17時にご来院下さいと書かれていた。その日はお仕事がオフ(アクアがオフなので)だったので、学校が終わってから行ってみた。病院は新宿のビル街の中にあった。
 
「天月西湖と申しますが」
と受付の所で言うと、
「はいはい。予約なさっていた件ですね。ではこれにおしっこを取ってきてください」
と言われたので、トイレ(当然女子トイレ)でおしっこを出し、提出した。
 
その後、採血もされる。何か健康診断だっけ??と思う。
 
それで30分くらいした後、診察室に入ってくださいと言われたので入る。
 
「ではお股を見せて下さい」
と言われるので、え〜〜!?と思ったものの、病院なので、ベッドに横たわり、スカートをめくり、パンティを下げた。
 
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「ああ。タックしているんですね。外せますか?」
「はい」
 
それであまり使いたくないのだが、除光液とハサミを使って5分ほどで解除した。看護婦さんがウェットティッシュで拭いてきれいにしてくれる。さすがに恥ずかしいが、西湖のおちんちんは大きくなったりはしない。
 
その後、先生は西湖のタマタマの大きさを測ったり、おちんちんを触ったりしている。しかし先生に触られてもおちんちんは大きくならない。そういえばこれずっと大きくなってないよなあ。ボクのおちんちんって、もう大きくならなくなっていたりして、などと西湖は思った。まあいいけどねとも思う。ボクお婿さんにはなれない気もするし。とはいっても西湖はお嫁さんになりたい気持ちは無い。しかし実際、昨年精液の保存をした時も、おちんちんは大きくならず、大きくならないまま射精したのである。
 
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「射精はできます?」
「去年、精子の冷凍保存をした時はできましたけど」
「ああ、精子は冷凍保存しているんですね?」
「はい。念のため4個保存しています」
「それだけ保存してあれば安心ですね。では剃毛してもらって30分後に手術しますから」
 
西湖はびっくりした。
 
「手術って何の手術するんですか?」
「え?あなた去勢手術をしにいらしたんですよね?」
「去勢!? そんなのしません」
「え?でも去勢手術するというので、予約なさったんでしょ?」
 
西湖はピーンと来た。
 
「その予約、誰の名前で入っています」
「えっと・・・」
と言って医師はパソコンでカルテを確認している。
 
「お母さんの天月湖斐さんから入っていますよ」
「すみません。キャンセルします。私は去勢するつもりはありません」
「でも女子高に入学したので、すみやかに去勢手術だけはしてくれと言われたからとお聞きしましたが」
 
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「それ母のジョークです。女子高に入りはしましたけど、女の子の格好でいて下さいと言われているだけで、去勢なんて求められていません」
 
「ジョークなんですか!? 人騒がせですね。だったら、あなたは去勢するつもりは無いんですね?」
 
「もしかしたら後で去勢手術をお願いするかも知れませんが、今はその手術をする意志はありません」
 
西湖は正直、高校3年間男の子の身体を維持し続ける自信が無い気がした。去勢したい気持ちになってしまうか、あるいは去勢せざるをえなくなってしまうか。でも少なくとも今は去勢したくない。
 

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「分かりました。ではあなたの去勢手術の予約は入れたまま日付をいったん開放しますので、手術を受けたくなったらご連絡ください。特に混んでいなければ、だいたい1週間程度以内に日程を入れられると思いますので」
 
「分かりました。お騒がせして申し訳ありません」
 
全く。きちんと確認しなかったら、危うく今日男の子を廃業することになっていたよと西湖は思う。
 
「手術の代金は頂いていますが、いったん返金しますか?それともそのままにしておきますか?」
と医師は訊いた。
 
代金まで払ってあったのか!
 
「じゃ取り敢えずそのままで」
「分かりました」
 

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西湖はこの日はタックをやり直すことになるが、そのためには全部毛を剃る必要がある。毛を剃りながら、こういうのが付いているって、ボクやはり男の子なんだなあ、と思う。実は西湖はこれを見るのはかなり久しぶりだった。
 
しかし、それをきちんと接着剤でタックし終えるとほぼ女の子のお股が出現する。
 
あ、なんかこれで普通に戻れたと思うと西湖はホッとする思いだった。こちらの状態の方が落ち着く気がする。
 
といって、本当の女の子になりたい訳ではないけどね・・・・と思ってから自分でもその気持ちが少し、ぐらつく気はした。
 
やはりボク、卒業まで男の子で居続ける自信が無いよぉ。
 

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西湖が住んでいるアパートは、用賀駅の近く、結果的には学校の近くにあり、3月までは醍醐春海(千里)が住んでいた所である。実は現在でもここの借り主は千里であり、家賃も千里が払っている。
 
それは玄関の所に貼られた梵字の紙と、押し入れの奥に置いた白銅製の鏡を置いていて欲しいからだということだった。何でもこの部屋は伏見稲荷と繋がっているらしい。
 
西湖がここに来て3日目くらいの晩のことである。西湖が夜遅く帰ってきて、近くのコンビニで買ってきたお弁当を食べながら、ついうとうととしていたら
 
「あのぉ」
と声を掛ける人(?)がある。
 
振り返ってみると、5〜6歳の女の子のようである。
 
「京平さんは、今日はまだ来てませんか?」
「え、えっと。誰もいないみたいですけど」
「分かりました。また来ますね」
 
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と言って、その女の子は押し入れの方に歩いて行くと、スッと消えた。その女の子のお尻の所には、しっぽがあるような気がした。
 
えっと・・・・
 
西湖は首を傾げたが、あまり深く考えないことにして、トイレに行って服を脱ぎ、シャワーを浴びる。身体を拭いてボディコロンを掛ける。寝る前に肝油ドロップを1粒飲む。毎日仕事が大変だから滋養強壮にと母が置いていってくれたものである。それから可愛いジュニアブラを付け、イチゴ模様のコットンパンティを穿き、麻製の夏向きの可愛い女の子パジャマを着て寝た。
 
日常的にこういう可愛い服を着ていることで《女の子らしい心》が形成されていくのだと父は話していたが、それって、完全に女の子になってしまって、もう男の子には戻れなくなるのではないかという気もした。
 
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ちなみにここに引っ越してくる時に、男物の服は父が全部捨ててしまった。もっともここ数年、学生服とドラマや映画の衣裳以外では、男物の服を着た覚えがないが。
 

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この手の深夜の子供(狐?)の訪問はしばしばあったが、西湖は気にしないことにした。しかしその訪問者たちのことばから、ここが“京平”さんという、お狐様?の居場所らしいということを西湖は認識した。
 
時には狐ではなく、神社の狛犬のような感じの子がペアで訪ねてくることもあった。「コマさんとコマじろうみたい」などと思った。
 
でもまあ家賃タダだからいいよね?
 
訪問してくる子たちも害は及ぼさないみたいだし。
 

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