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■春乱(8)

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今日は青葉の誕生日なので、本来なら青葉の家に友人たちが集まる所なのであるが、桃香が今大宮から動けない状態で、千里もそこに付いているし、桃香がここにいるから彪志も動けない、ということで結局青葉と朋子が大宮に来て誕生日のお祝いをすることにしたのである。
 
ここに東京方面に来ている青葉の友人たちも夕方以降集まることになっている。なお明日香や世梨奈・美由紀など、富山石川方面にいる青葉の友人たちは昨日「プレ誕生会」と称して集まりお誕生日を祝ってくれた。
 
千里は誕生日用のお料理を作り掛けていたようである。それを朋子に任せて、自分はケーキなどを買いに出かけて行った。洋菓子屋さんのクーポンもらったからそれで買ってくるなどと言っていた。
 
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「20歳過ぎたからシャンパンでいいよね?」
「頑張ってみる。でも未成年の子や飲まない子もいるから、サイダーも一緒によろしく」
「OKOK」
 

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結局18時頃から人が集まり始めた。
 
日香理(東京外大)、空帆(東京工業大)、奈々美(W大)、椿妃(S音大)といった中高生時代の友人がぱらぱらとやってくる。
 
彪志も18時半頃帰って来た。今日は婚約者が田舎から出てくるのでと言って早く帰してもらったらしい。
 
これに桃香・早月・千里・朋子が加わって、主役の青葉も入れて10人の誕生会となった。もっとも早月は結構騒がしいのにすやすやと眠っていた。青葉の友人たちが「可愛い!」と騒いでいたが、さすがに生まれてまだ半月の赤ん坊はみんな抱っこする自信はないようで「抱っこはまたの機会に」と言っていた。
 

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バースデイケーキは千里がきれいに10等分してくれた。それで分けていくと早月はむろんケーキなど食べられないので1個余ることになる。
 
「あれ?早月ちゃん食べられないから9等分で良かったのでは?」
という声も出るが
 
「これは、姫様に」
と言って千里が青葉の右後ろ方向に皿を献げると、スッとケーキが消えるので
 
「手品〜〜!?」
という声があがっていた。
 
「まあこういう事象は、青葉の周囲ではよく起きるよね」
と奈々美が言うと
 
「うんうん。珍しくない」
といった同意する声がまたあがっていた。
 
青葉は、ちー姉、また勝手に姫様とコネクトしてる!と思った。
 

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「奈々美ちゃん、春のリーグ戦で大活躍中みたい」
と千里が言う。
 
「ありがとうございます。やっと今年からベンチ枠に入れてもらったから、出してもらえる時はガンガン行ってます」
「今の所リーグの得点女王だし」
 
「たまたまですけどね〜」
「今のままならユニバ代表に呼ばれるかもよ」
「さすがにそこまでは無理ですよ〜」
「いやスリーが撃てるスモールフォワードってのは割と貴重だよ。だから行けると思ったらスリーを撃つくらいのつもりでいるといいよ」
「はい。もしそういう機会があったら頑張ります」
 
と奈々美は言ってから
「あれ?でも千里さん、代表合宿の方はよかったんですか?」
と訊いた。
「うん。そちら終わってからこちらに来た」
「ああ!でも大変ですね」
 
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青葉が今日性別変更の申請をしたことも話題になった。
 
「それってどんな書類出すの?」
という質問があるので、裁判所に提出した書類のコピーを見せる。
 
「おお!こういうものを書くのか」
「何かあった時のために覚えておこう」
「あんた性転換するの?」
「男になるのも悪くない気がするなぁ」
 
「でもこれで青葉も男の娘を廃業して女の子になるわけね」
「でも青葉の場合はそもそも男として登録されていたのが間違いという気もするよ」
「うん。変更というよりむしろ誤り修正だよね」
「青葉を男の子として扱うのは単に混乱をもたらすだけだったね」
 

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この日、朋子は
「疲れたから寝る。若い子だけであとはよろしく」
と言ったら千里が
「じゃ私も仕事に行かないといけないからお母ちゃん送ってから仕事場に行くよ」
 
と言って、2人で20時半頃退出した。
 
それで千里は朋子を経堂のアパートまで送って行ったようである。
 
「千里さんのお仕事って何だっけ?」
と椿妃が訊く。
 
「ソフトハウス勤務なんだけど、今の時期はバスケットの活動があるとかで休職しているんだよ」
と桃香が説明した。
 
「いや千里さんはプロバスケット選手ですよ。ソフトハウスとか勤めるわけ無いです」
と奈々美が言う。
 
「いや千里さんは作曲家ですよ。たくさんヒット曲を出してますよ」
と空帆が言う。
 
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「まあちー姉の職業は実はよく分からない」
と青葉が笑いながら言った。
 
すると桃香が言った。
 
「ねえ、千里って実は10人くらい居るということは?」
 
「その疑惑はちー姉の親友さんたちによると、20年くらい前からあるようだよ」
と青葉は笑いながら言った。
 
「うーん・・・・」
 

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そんな話をした翌23日。
 
青葉の友人たちの中にはそのまま泊まり込んだ子も多かったのだが、午前10時くらいまでには全員帰っていった。青葉まで彼女たちと一緒にどこか行くと言って出て行った。
 
それで早月と2人だけになった11時頃、千里がやってきたのである。
 
「今日は早いね」
と桃香は言った。
 
普段千里が来るのは12時半くらいである。
 
ところが千里は言う。
「ごめんね〜。なかなか来られなくて。ほんとに忙しくて」
「ああ、うん」
 
「いよいよ明日からヨーロッパだけど、桃香も早月ちゃんも安定しているみたいだから大丈夫だよね?」
「まあ大丈夫だと思うけど」
 
「じゃ何かあったら連絡してね。日本とヨーロッパじゃ昼夜逆転しているからかえって夜中に何かあった時に私動けるかも」
 
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「確かに」
と言ってから桃香は訊いた。
 
「でも千里、ヨーロッパってどこ行くの?」
「スペインとマケドニアとセルビア」
「昔のユーゴスラビアの付近か」
「そうそう。移動したらその度に連絡を入れるから」
「了解了解」
 
「お土産何か欲しいのある?」
「そうだなあ。スペインならアリオリソースでも」
「OK。じゃ行ってくるね」
「うん、気をつけて」
 

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朋子は13時頃出てきた。
 
「あら、今日は千里ちゃんは?」
「何か出張があるらしいよ」
「へー。あの子も色々なことしてて忙しいみたいね」
「うん。昨夜も千里の職業はよく分からんという話になった」
「霊能者でしょ?」
と朋子は言う。
「そうなの!?」
 
「よく青葉と一緒に除霊とかしているみたいだし」
「そういえばそんなこともしていたな。また新たな説が出た」
 
青葉は14時頃戻って来た。
 
「途中で冬子さんに呼ばれてちょっと恵比寿に寄ってきた。そうそう。これ、忙しいみたいで来られないけど、早月ちゃんの誕生祝いだって。政子さんとふたり分」
と青葉は言う。
 
「さんきゅ、さんきゅ」
と言って桃香は受け取る。
 
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「アルバムが作り直しになったらしくてスケジュールが厳しいらしいんだよ」
「そういうのも大変だなあ」
 
と言いながら桃香は《中田政子・唐本冬子》の連名になっている祝儀袋を開ける。
 
「げっ」
と声を挙げた。
 
「いくら入ってた?」
「なんか1万円札に封がしてあるんだけど〜!?」
「100万円あるみたいね」
「うっそー!?」
 
「これで入院費が払えるのでは?」
「入院費は千里が既に払ったはず」
「でも100万くらいでしょ?」
「そんなにしたんだっけ!?」
 

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青葉と朋子は午後の新幹線で高岡に戻った。そして千里はその日再度は来なかったものの、翌日のお昼にはふつうにやってきて、お昼ごはんを作ってくれた。ヨーロッパ遠征の件を訊いてみようかと思ったがやめておくことにした。
 
“病気”を悪化させてはまずい。
 
「冬子から早月の誕生祝いに100万円もらったんだけど、お返しどうしよう?」
 
と桃香は千里に相談した。
 
「あとで早月ちゃんの写真撮って、それをプリントして、お礼状と、商品券を1万円分くらいでも入れて送ればいいよ」
 
「100万円のお返しが1万円でいいの?」
「冬子はお返し無しでも気にしないだろうけどね」
「なんか芸能界の習慣が恐ろしい」
「異常だよね〜」
 
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青葉の誕生会に出た翌日、奈々美は大学のバスケ部監督から呼ばれて何だろう?と思い出て行った。実は青葉のアパートに泊まり込んでしまったので、そこから直接大学に出て行った。
 
「寺島君、君がユニバーシアード代表候補に緊急召集されたから」
「え〜〜!?」
「K大の山原君が昨日交通事故に遭って」
「うっそー!?」
「足の骨にひびが入って全治1ヶ月の重傷。本人は本番までに何とか回復させますと言っているらしいけど、とりあえず7月のジョーンズカップには大事を取って出場させないことになった。それで彼女の代替ができるような、スリーの撃てるスモールフォワードが欲しいんだよ。それで君に白羽の矢が立った」
 
「私でいいんですか?」
「取り敢えず代表候補だから」
「はい」
「それで他の選手との比較で、本番に選ばれるかも知れないし、選ばれないかも知れない」
 
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奈々美はじっと監督の話を聞いている。
 
「でもこれは君にとって物凄く大きなチャンスだよ。次また候補に召集されるとは限らない。だから、ユニバーシアード本番のことは考えずにここ1週間くらいの代表候補練習で思いっきり全力でプレイして、自分をアピールしておいで」
 
「はい!」
と奈々美は元気に答えた。
 

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それで奈々美はすぐに荷物をまとめて北区のナショナル・トレーニング・センターに急行した。ユニバ代表監督の篠原さんに挨拶し、すぐにチーム練習に参加させてもらった。
 
「おお、寺島さん楽しみにしてたよ」
とオールジャパンで対決した大阪HS大の鐘川さんが言った。
 
「君、コートネームは?」
とキャプテンの駅田さんが訊く。
 
「もし他の方とダブらなければナナで」
「OK、ナナ。じゃシュート練習の所に入って」
「はい」
 

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この23日はユニバーシアード代表候補の合宿と、フル代表候補の合宿が重なっていた(フル代表は明日スペインに発つ)。それで夕方、両者で練習試合をしようということになる。
 
向こうのチームの千里と目が合ったので会釈したら、彼女はニコッと笑顔で会釈を返した。
 
ゲームでは実際に奈々美は千里と対決するシーンが出た。千里がドリブルで進攻してくるのを奈々美は手を広げて待ち構える。
 
しかし一瞬のフェイントにひっかかって抜かれてしまった。
 
逆にこちらが攻めて行く時、目の前に千里がいたが、左右どちらからも抜ける気がしない!
 
奈々美はそれでも千里の前まで突っ込んで行くと、直前で真横にパスを出した。パスをもらった鐘川さんが中に侵入してシュートを撃った。これが入ったので、結果的に奈々美にはアシストポイントが付いた。
 
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この試合で奈々美は千里と5回対決したものの、1度も勝てなかった。
 
千里さん、凄い!さすが世界のスリーポイント女王だと思った。
 
ただ奈々美は昨日千里から言われたことを思い出してスリーを3回撃ち、その2本をゴールさせた。
 
結果的に6得点・1アシストである。
 

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試合はさすがフル代表のダブルスコア勝ちであったが、奈々美は物凄く強力な相手との対戦で、お正月のオールジャパンの時以来の満足感があった。
 
試合が終わった後で、千里がこちらに来た。
 
「青葉のお友達の奈々美ちゃんだったよね。春のリーグで活躍しているなと思ったら、召集されたのね」
 
「怪我した人が出て、緊急召集されたんですよ。それで昨日千里さんから言われたこと思い出して頑張ってスリー撃ちました」
 
「昨日?私昨日奈々美ちゃんと会ったっけ?」
「えっと青葉ちゃんの誕生会で話しました・・・よね?」
 
「ごめーん。青葉の誕生会の話は聞いてたけど、合宿中だから行けなかったんだよ。ケーキ屋さんのクーポン送っておいたんだけど」
 
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などと千里が言っているので、奈々美は訳が分からず首をひねった。
 

5月31日。
 
日本バスケ協会は、東アジア選手権に出る男子代表12名、そしてユニバーシアードに出る女子代表12名を発表した。
 
直前の合宿(枠16名)までは召集されていた貴司はこの12名の枠に残ることができなかった。
 
一方、ほんの1週間前に緊急召集された奈々美は、この12名の枠に入れられた。
 

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なお“千里1”が参加する日本女子フル代表候補の一行はスペイン合宿(5.24-29)を終えてマケドニア合宿(5.30-6.05)に突入していた。
 
フル代表の一行はマドリードからマケドニアのスコピエに直行したのだが、その途中のフランス・マルセイユには実は“千里3”が居て、現地の女子プロチームのメンバーと一緒に日々練習に明け暮れていた。
 
そして“千里2”は某所でリーグ戦に参加し、今季無敗の快進撃を続けていた。
 
 
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