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■春乱(2)

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「実は女の子の千里と男の娘の千里と2人いるんだったりして」
と思ったりしたが、それがただのジョークでは無い気さえしてくる。
 
「千里って女の子だっけ?男の子だっけ?」
と運転している千里に訊いてみたら
「何を今更!知っている癖に」
と言われた。
 
1時間ちょっとで大間産婦人科に到着した。先生の診察を受けて、少し検査などもされて入院となる。手続きは千里がやってくれた。
 

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1時間ほど話してから千里は帰っていった。なんでも合宿の日程が変わったとかで、4月24日までは来られるということだった。お腹の中の子も、その間に出てきてくれると助かるのだが、F産婦人科の先生もこちらの病院の先生も、すぐには出てくる兆候は無いということなので、やはり予定日くらいになるのかも知れない。予定日通りだと、やはり千里はアメリカにいるらしい。その場合は、朱音を頼るしかないなと桃香は思った。
 
入院したことは母・朋子にも連絡しておいた。母は驚いていたが、千里が最近忙しいので、誰も対処できない時に急に赤ちゃんが出てきたらやばいので入院しただけというと「その方が安心かもね」と言っていた。
 
母は一度出てくるということだった。
 
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電話を切ってから、桃香は通話中にメールが入っていたことに気付いた。見ると千里からで「今退院した。今日は転院手伝えなくてごめんねー」と書かれていた。桃香は大いに困惑して
 
「今日の千里は支離滅裂!」
と声に出した。
 

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病院の夕食を食べながら、たまごクラブを読んでいたら電話が鳴る。知らない番号である。
 
「はい」
「お世話になります。黒猫運輸ですが」
「あ、どうもどうも」
 
「高園様宛に本日配達日指定のお荷物が来ているのですが、本日お昼頃と先程と2度訪問したものの、お留守だったもので」
 
桃香は何だろうと思った。通販とかは頼んだ覚えが無い。
 
「どこからの荷物ですか?」
「村山千里様からです」
「ありゃ。中身とか分かります?」
「生菓子と書かれています。実はクール便指定になっておりまして」
「わっ。それは何度も配達に来ていただいて済みません。実は入院していまして」
「病院はどちらですか?」
「あきる野市なんですが」
「でしたら、良ければすぐそちらにお持ちしますので、ご住所と病院名を教えて頂けますか?」
 
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「はい」
 
通常の荷物ならメーターボックスの中にでも入れておいてもらい、後から朱音に取りに行ってもらう手もあるが、クール便なら、そういう訳にもいかない。それで時間が遅いのに申し訳無かったのだが、持って来てもらうことにした。
 
宅配便屋さんは20時頃に来た。
 
見ると大きなケーキの箱である!長野の洋菓子屋さんのようでAmazon経由で送られて来ている。開けてみたら直径16cmほどもある大きなラウンドケーキでHappy Birthday! というチョコレートのプレートが立っている。
 
それはいいのだが、桃香は大いに疑問を感じた。
 
「こういうのをAmazonで頼んでいたのに、なぜ千里は別途不二家のケーキを買ってきたんだ!??」
 
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翌18日(火)。
 
千里は昨日は夕方くらいに来るみたいなことを言っていたのだが、実際には午前10時くらいに来てくれた。しかし千里の第一声はまたまた桃香を戸惑わせる。
 
「昨日は転院を手伝えなくてごめんねー」
 
桃香は不可解な顔をして言う。
 
「何言ってるの?昨日、千里、車でF産婦人科に来て、私をここまで連れてきてくれたじゃん」
 
「え?嘘?」
 
やはり千里は複数人いるとしか思えんと桃香は思った。千里が複数人いるのなら、ソフト会社に勤めながら趣味のバスケにもかなり入れ込んでいて、かつ自動車レースに出たりという異様な量の活動も少し理解できる気がする。
 
そして千里は
「1日遅れちゃったけど、ハッピーバースデー」
と言って、白いケーキの箱を出す。
 
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見るとシャトレーゼのケーキである。
 
「チョコレートケーキとミルフィーユなんだけど、桃香好きな方取って」
「えっと・・・」
 
「昨日買ったんだけど来られなくて渡せなかったんだよ。堅くなったりはしてないと思うんだけど」
 
「千里、昨日私に不二家のショートケーキをくれたではないか?」
「えーー!?そうだっけ?」
「更にAmazonでラウンドケーキも頼んでいたし」
「うっそー!?」
と千里が困惑するような顔で言う。
 
その「うっそー!?」は私のセリフだぞ、と桃香は思った。
 
「千里以前にも2度バレンタインくれたことあったけど」
「ごめーん。あれ完璧に自分が既に渡していたこと忘れてて」
「今日のもまた忘れてたのか?」
「そうかもー」
 
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「まあケーキはいくらあってもいいよ。じゃシャトレーゼのを先に食べて不二家のはおやつにしよう。ラウンドケーキは日持ちするだろうから明日くらいに」
「うん」
 
それで千里がティーバッグで紅茶を入れて、ふたりで今朝千里が持って来てくれた方のケーキを一緒に食べた。桃香がチョコレートケーキを取り、千里がミルフィーユを取る。昨日持って来てくれた不二家のケーキと宅配便で送られて来たラウンドケーキは冷蔵庫に入ったままである。
 

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それで話している内に千里が
「いや、16日夜に雷に撃たれてさあ。それで私、少し記憶がおかしくなっているのかも知れない」
などと言い出す。
 
「雷に撃たれたって!?」
と桃香は驚いて言った。
 
「おかげで携帯が黒焦げになっちゃったんだよ。私自身は無事なんだけどね。それで昨日1日入院していた」
「入院していたの!?」
「でも、平気だよ」
 
あまり・・・平気ではない気がする。しかし雷に撃たれたのなら、多少脳内が混乱していても不思議ではないかもと桃香は思った。それで昨日の異様な千里の行動が結構納得いく。
 
「それで結局、スマホ買ったんだっけ?」
「あ?これ?」
と言って、千里は金色のボディのiPhone 7 plusを見せる。
 
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「おお、アイフォンか。いいなあ」
「これ着けさせられた」
 
と言って千里が左腕を見せる。変なブレスレットしているなとは思ったのだが、静電気防止ブレスレットだったようだ。しかも5つも着けている!
 
「千里むしろアース着けた方がいいのでは?」
「それも言われた!」
 
「これ電話番号は?」
と桃香は訊いた。
 
「えっとね」
と言って千里は触っていたものの、どうも電話番号の表示の仕方が自分では分からないようである。1分くらい悪戦苦闘している。
 
「ちょっと貸して」
と言って桃香が取って、ほんの3-4秒で表示させてやると、
「すごーい!」
と言って、千里は感動していた。
 
結局その番号は昨日の午前中に千里が電話して来た番号だった。桃香はメールアドレスも表示させて、それを自分のスマホに登録しておいたが、千里はそのメールアドレスの表示の仕方も分かっていないようであった。
 
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結局千里はお昼前に帰って行った。
 

そしてこの日、夕方19時すぎに電話が掛かってきた。
 
「今日は会いに行くつもりだったんだけど、予定変わっちゃって、そちらに行けないみたい。ごめん」
 
「いや、千里、午前中に来てくれたじゃん」
「え?私行ってないよ」
 
桃香はまた混乱する。しかし、もしかしたら落雷にあった後遺症で記憶が消えやすくなっているのかも知れないと思い、気にしないことにした。千里とは結局30分ほど話していた。
 

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4月17日の夜、桃香から入院したという連絡を受けた朋子は驚いたものの、まだしばらく出てきそうにないということ、また何かあった時に千里がすぐ対応できない状況だったらやばいということで、安全のため入院しただけだと聞くと、取り敢えずホッとした。
 
緊急性も無いようではあるが、取り敢えず1度行ってみるねと答えておいた。
 
それで青葉とも話し合い、19日(水)に行く方向で調整することにした。
 

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18日会社に出て行き、19-20(水木)の有給休暇願いを出して承認してもらう。青葉も19-20日の金沢往復は明日香に頼むことにした。明日香も免許を取って1年近く経ち、運転はかなり上手くなっている。最近は美由紀も騒がなくなった。
 
それで朋子と青葉は新高岡を4/19 9:35の《はくたか558》に乗り、12:40に東京に着く。ここでお昼を食べてから、青梅特快に乗り、拝島で五日市線に乗り継いで秋川まで行った。秋川駅に着いたのが14:41であった。
 
駅から桃香のスマホに電話したら、千里が迎えに来てくれた。
 
「ちー姉、プラド持って来てたんだ?」
と乗り込んでから青葉が訊く。
 
「うん。ちょっと用があって借りてきた。今晩返すけどね」
「へー」
 
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じゃ貴司さんとデートしていたのかな?などとも思うが、朋子もいるので青葉としても千里を追及できない。しかし結果的に青葉も朋子も京平が東京に来ていることを知らないままになった。
 

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時間を巻き戻して、この日19日の朝から桃香の視点で見る。
 
桃香が朝御飯を食べ終わった所で千里が来てくれて、不二家のケーキを一緒に食べ、午前中は一緒に過ごした。千里は24日までは来られると言っていた。それで千里はお昼に帰って行ったのだが、また14:30頃来る。
 
「あれ?また来たの?」
と言うと、千里は午前中来たことを覚えていないようで、むしろ昨日は来られなくてごめんなどと言っている。やはりこれも落雷の後遺症なのか?
 
ともかくも千里と話していた時、母と青葉が秋川駅まで来たという連絡がある。
 
「ああ、私が迎えに行くよ」
と千里が言うので、お迎えを頼む。
 
10分ほどで3人で戻って来たが、桃香が元気そうなので、朋子も安心したようである。
 
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「そうそう。桃姉、これ誕生日プレゼントに」
と言って青葉が高岡のポンヌフという洋菓子店のケーキの箱を出す。
 
「あははは。もうケーキ豊作だ」
と桃香は言っている。
 
「あ、ごめん。きっとちー姉もケーキ持って来てたよね?」
「取り敢えず人数がいる所でその冷蔵庫に入っているラウンドケーキを片付けよう」
「こういうのがあったのか」
「いや、美味しいおやつはいくらあってもいい」
 
それで結局、青葉が紅茶を入れて、みんなでラウンドケーキを切り分けて食べた。青葉が持って来たケーキは明日に回すことにする。
 

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食べ終わった後で、朋子は再度高岡に戻ってこないかと言ったものの、桃香は拒否と言う。
 
「だって1ヶ月も入院していたら、これ健康保険も利かないだろうし、費用も凄いんじゃないの?」
と朋子は言う。
 
「ああ、その費用については大丈夫ですから」
と千里が言ったので、朋子は生命保険とかから出るのかなと思ったようである。
 
桃香は費用のことは何にも考えていない!
 
青葉は(差額ベッド代が加わり多分30-40万円くらいと思われる)1ヶ月程度の入院費は、千里姉にとっては大したことのない金額だろうからなと解釈した。
 

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桃香があくまで東京で産むというので朋子もそれは妥協したようである。
 
昨年4月に亡くなった高知の和彦じいさんの一周忌のことが話題になった。桃香は今の状態ではもちろん行けないのだが、千里が5月3日なら、とんぼ返りになるけど行くよと言った。たまたまその日だけ、日程が空いているらしい。その話に青葉は首をひねっていた。
 
その後、千里が16日夜に雷に撃たれたという話を聞き、朋子も青葉も驚く。青葉は千里に「手を握らせて」と言って、千里の身体をスキャンさせてもらった。
 
一瞬顔をしかめる。千里の体内に明確に子宮と卵巣が存在するのを認識したからだが、青葉はこの問題についてはもう考えないことにしようと思った。実際再度その付近をサーチすると今度は卵巣も子宮も見えず、逆にさっきは存在していなかったはずの前立腺があるのを認識する。
 
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たぶん千里姉は自分の見せたいように体内の臓器の状態を見せているにすぎない。しかし何なんだ?この凄まじいエネルギーの量は?
 
「身体には異常は無いと思う。それに前よりパワーが上がっている気がする!」
と青葉。
 
「パワーって分からないけど、ひょっとしたら雷で電気エネルギーがチャージされちゃったんだってりしてね」
と言って千里は笑っていた。
 
千里は落雷で携帯が焼けてしまったので、新しい携帯を買ったからといって、桃香に青葉にアドレスデータを転送してあげてと言った。
 
「なぜ私から転送する?千里のスマホから転送すればいいのに」
「私がそんな操作できる訳無い」
「確かに!」
 
それで桃香から転送してもらったが、電話番号とメールアドレスが3つもある!
 
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「なんで3つも番号とアドレスがあるの?」
「ああ、壊れた携帯の番号と、新しい携帯の番号」
「壊れたら、新しい携帯にその番号を移行すればいいじゃん」
「え?そうなの?」
と千里が言うので、もういいや!と青葉は思った。
 
千里は16時半頃「仕事があるから先に帰るけど、お母ちゃんたち、帰りはタクシーで帰って」と言って、タクシーチケットを青葉に渡して帰って行った。
 
青葉たちはこの日面会時間の終わりまで居てから帰ることにした。千里からもらったタクシーチケットで秋川駅まで移動しようかとも思ったのだが、その先の乗り継ぎを確認すると、かなり大変そうである。そこで彪志に電話してみたら「迎えに行くよ」ということだったので、彼の車で大宮のアパートに行くことにした。
 
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彪志と連絡を取ったのが18時半頃で、20時くらいに迎えに来てくれたので、青葉が運転して、彪志のアパートへ行き、泊まった。
 

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