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■春園(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-07-16
 
5日の日はみんなダウンしていたこともあり、帰り方については、6日朝にみんなが起きてから話し合った。
 
「いやあ、春彦さんや夏彦さんなどとすっかり仲良くなっちゃった。何なら週末まで滞在してもいいよと言われたんだけど」
と桃香が言うが
 
「私は土曜日から合宿があるから、8日金曜日の夕方までには東京に戻らないといけない」
と千里。
 
「私は新入社員なので、取り敢えず祖父の葬儀ということで休みはもらいましたが、一刻も早く帰る必要があります」
と彪志。
 
「私は7日が入学式だから、明日の朝までには戻らないいけない」
と青葉。
 
「むむむ。みんな忙しいな」
 
「桃香、あんたは仕事大丈夫だったの?」
と朋子が訊く。
 
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「大丈夫だと思うけどなあ。ちゃんと休みますってメールしといたし」
「電話してないの?」
「電話が必要なもん?」
「普通休むのなら上司に電話して許可を取るもんだ」
「そうだっけ?」
 

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「今日は何時頃終わるんですか?」
と彪志が尋ねる。それで朋子が事実上葬儀を取り仕切っている佑子さん(山彦の長男・春彦の奥さん)に電話して尋ねた所、おそらく15時半頃ではないかということであった。
 
桃香は乗換案内を見ている。
 
「15時半に終わって葬儀社の送迎バスで中村まで送ってもらうと中村16:47の特急に乗って18:34に高知駅に着く。それで19:10の伊丹行きに乗れば19:55に着くから、それで大阪駅20:54の最終サンダーバードに乗ると23:29に金沢に着く」
 
「それ高知駅から高知空港への連絡は36分では無理。飛行機は出発の30分前には空港に到着してないと乗れないよ。伊丹空港から大阪駅までも59分というのは微妙。飛行機が遅れたらアウトだし荷物が出てくるまで時間が掛かる場合もある。手荷物無しならいいんだけどね」
と千里が言う。
 
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「荷物全部機内に持ち込む?」
「それは叱られると思う」
 
「だったら他の人たちに相談しないといけないが、来る時に空港で借りたエスティマを使わせてもらえないかな? それで走れば18時半までには空港にたどり着くだろう。どっちみち向こうで返却しないといけないし」
 
「JR使うよりそちらがいい気がする。それにしてもサンダーバードへの乗継ぎが厳しい」
と朋子。
 

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「これはどうかな。19:10の伊丹行きに乗って19:55に伊丹に着いた後、新大阪に移動して21:33の新幹線に乗り22:10に米原到着。すると22:48の最終しらさぎに間に合うから0:39金沢到着」
 
と来る途中に買ったJTB時刻表の4月号を見ていた青葉は湖東経由のルートを提案する(新幹線の新函館北斗延伸に伴い、JRのダイヤは3月26日、航空ダイヤは3月27日に大改訂された)。
 
昨年青葉はこの逆ルートで大阪に出てきている。
 
「ああ、それなら行けそうだね」
 
「そのルートはうまくすると21:06の新幹線に間に合う可能性がある。その場合はひとつ前のしらさぎに間に合って23:48金沢着」
と千里も青葉の時刻表を覗き込みながら言う。
 
「私たちはどうする?」
と桃香が千里を見て言う。
 
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「どっちみち19:10のに乗るにはJRで移動していては間に合わない。エスティマで移動するなら、この5人で乗って高知空港まで行こう。そして私たちは19:15の羽田行きに乗ればいいと思う。洋彦さんたちも乗るかも」
 

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「なるほど。待て。青葉、明日は入学式なんだっけ?」
「うん」
「だったら、千里、私たちも金沢まで行って、青葉の入学式を見るぞ」
「え〜〜!?」
 
「青葉たちも深夜に金沢に着いたら、無理して高岡まで戻らなくてもそのまま金沢市内に泊まればよい。それで翌日そのまま大学に出て行って入学式に出る」
 
「入学式は大学のキャンパスじゃないんだよ。金沢スポーツセンター」
「あそこか。だったらなおさら金沢市内に泊まればいい」
 
「僕は東京に帰っていいですか? 青葉の入学式は見たい気もするけど新人であまり休むとクビにされかねないので」
と彪志。
 
彪志は法事ということで上司に許可を取り、2日間休みをもらって来ている。
 
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「うん。彪志君はそのまま羽田に飛べばよい」
 

「でも私、入学式に着ていく服を持って来てないよ」
と青葉。
 
「それは誰か1人が自宅まで行って全員分の服を持ってくればよい。私が往復してこようか?」
と桃香。
 
「一応、来る時金沢まで走ってきたから、金沢駅そばの《時計駐車場》に私のヴィッツを駐めているんだよ」
と朋子が言う。
 
「だったら私がそれを使って往復してこよう。千里、私たちの服はどうする?確か私はグリーンのフォーマルが、伏木の家に置いてあったはずだけど」
 
「私はピンクのフォーマルなら一緒に持って来てるよ」
「じゃそれでいいな。青葉のと母ちゃんのだけ持ってくればいい」
「自分のを忘れないように」
「それが危ないな」
 
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朝食の場でエスティマを使ってよいかと朋子が相談すると、他の人たちもやはり仕事や学校の都合があるので、できるだけ早く帰りたいということで、高知空港でレンタルしたバスに、空港を使う人が全員乗って帰ればいいという話になる。
 
「じゃ空港行きのバスは15時半ジャストに出発することにしよう。葬儀の日程は15:15くらいまでには終わらせる。食事の途中でも強制終了」
と夏彦さんが言う。
 
「バスには何人乗るんだ?」
 
その場で全員の希望を出させ、この場に顔を見せてない人たちには電話して確認すると、結局高知空港を使う人が18人と、中村駅からJRで帰る人が27人いることが分かる。
 
岐阜の芳彦(と婚約者の舞耶)、高知の礼彦、岡山の安子一家は自分たちの車で来ていたので、それで帰る。
 
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「中村駅は葬儀場の送迎バスで送らせて、高知空港に行く人がバスを使えばいいな」
と夏彦さん。
 
「バスは誰が運転するの?」
「俺が運転するよ」
と来る時も運転した来彦さんが言う。
 
「送迎バスは27人乗る?」
「子供が8人いるから定員の計算上は25人。乗るよ」
 
「エスティマはどうする?」
「そうだなあ・・・・」
 
と言っていた時、
「エスティマはいちゃいちゃ組に乗ってもらおう」
と芽依さんが言い出す。
 
「何それ!?」
 
「芳彦君と舞耶さん、満彦君と紗希ちゃん、青葉ちゃんと彪志君。この6人で高知まで乗っていく」
 
「へ!?」
 
「その3組さあ、せっかく遠出してきて、いちゃいちゃしたかったろうに、全然する機会が無かったでしょ?だからせめて高知までの区間、車内でいちゃいちゃ」
 
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と芽依さんは言う。姉の萌枝さんが呆れたような顔をしている。
 
「確かに昨夜は未婚カップル組に敢えて酒を勧めて酔い潰した気もするな」
と大輔さん。
 
「でも他のカップルもいるのに?」
と清さんが言うが
 
「それはお互いに見ざる・聞かざる・言わざるで。エスティマの3列の座席を各々のカップルで占有すればいい。まあプレイは運転している人がびっくりしない程度で」
と芽依さん。
 
「まあ、いいけど」
と満彦が笑って言う。
 
「いちゃいちゃしすぎて乗り遅れないように、その3組は14:30出発にしよう」
「まあ精進落ちまでは出なくてもいいよね。お弁当は持って行ってもらえばいい」
 
それで満彦が芳彦に電話してみた所、芳彦は自分の車で岐阜県まで戻るのでということだったので、結局エスティマは、青葉&彪志、満彦&紗希の2カップルで使用することにした。位置的な問題を考えて、満彦たちを高知駅に置いて青葉たちは高知空港まで行き、そこで車を返すことにした。
 
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「じゃ前半は僕が運転するから、後半は彪志君運転してよ」
と満彦。
「了解。じゃ中村付近で交代する?」
と彪志が尋ねる。
「そちらこの付近の道に慣れてないだろうから、高速に乗る直前まで僕が運転するよ。そのあと頼む」
「OK」
 

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そういうことで、結局レンタカーのバス組は16人、中村駅への送迎バス組は25人ということになった。その他にエスティマが4人、自分の車で帰る人が6人、土佐清水市在住者が6人である。
 

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この日は朝10時から葬式を行った。この日の受付には青葉と、笑美さんの娘で女子大生の月音(だいな)さんの2人で立った。笑美さん夫妻は稚内で風彦夫妻の近くの家で暮らしているが、月音さんは札幌の大学に通っており、学生寮に入っているということであった。
 
「一人暮らし、楽しいでしょ?」
と青葉は言った。
 
「うん。親元から離れる開放感はなかなかいいよ。学生寮じゃなくてアパートならもっと楽しい気もするけど、まあお金がかかるからね」
と月音。
 
「稚内から札幌に出てくるだけでも色々掛かるよね」
「そうそう。アパート借りた友人とかは、最初敷金とか払うのも大変だったみたい。それでなくても入試でお金掛かって、更に入学金・授業料と払って」
 
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「大変だなあ。私は自宅通学だけど、それでも3月は資金繰りが綱渡りだった」
 
「あれ何とかして欲しい気分だよね」
「全く」
 

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「青葉ちゃんとこの桃香さんと千里さんって、夫婦なんだっけ?」
「ええ。そうですよ。籍は入れてないですけど、結婚式はあげたみたいです。結婚指輪を右手薬指にはめてるのは、桃香姉がいつも浮気ばかりしているのに千里姉が怒っているからなんですよ」
 
「なるほどー。それで右手な訳か」
「桃香姉が千里姉に贈ったダイヤのエンゲージリングもあったし」
「桃香さんが千里さんに贈ったということは、桃香さんが旦那さんで千里さんが奥さん?」
「そうみたい。家事とかも桃香姉は苦手で、料理はいつも千里姉がしてるし。代りに桃香姉は大工仕事とか電気の配線とかが得意なんですよ。自分は間違って性転換手術されて男になってもやっていけるとか、よく言ってますよ」
 
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「男になりたいんだっけ?」
「それとは違うみたい。だからトランスジェンダーじゃなくてレスビアンなんですよ」
 
「そのあたりの微妙な所が私はよく分からないなあ」
と月音さん。
 
「本人もよく分からないケース結構あるみたいですよ」
「ああ、そうなのかもね」
 

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「そちらの従姉の美咲さんと由佳さんもビアンですよね?」
 
「そうそう。美咲は1人っ子だったから、最初は孫ができるのが絶望的になる同性婚というのに親はかなり難色を示したみたいだけど、最終的には娘が2人になるようなものということで、関係を認めてあげたらしい。籍は入れられないけど、ごく内輪で結婚式も挙げたんだよ。私は式には出てないけど、ご祝儀だけあげた」
「すごーい」
 
「まあ50人も子供・孫・曾孫・玄孫がいればLGBTもそれなりに出るよ」
 
「だよねー。じゃ沖縄組の2番目の人って」
 
「うん。生まれた時は男だったけど今は女だね。一昨年、外国に行って手術してきて、女の身体になったらしい。昨夜は旅館のお風呂で女体披露になってたね。奥さんの愛さんが苦笑いしてたけど」
 
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「夫婦で一緒に温泉に入れるのは便利ですね」
「思った。あそこはだから結婚した時には男女だったけど、今はビアンになってしまっている」
「以前はふつうに男の格好してたんですか?」
「10年くらい前の親戚の集まりで見た時は、背広着てたけど、女の人にしか見えなくて、私、この人なんで男の服を着てるんだろうとか思ってたよ」
 
「なるほどー。私も女の人と思い込んでいたら声が男でびっくりした」
 
「元の名前は清(きよし)なんだけど、役場に届けて『さやか』と読み方を変更したらしい」
 
「ああ。名前の読み方って裁判所とかの審判不要で、単に役場に届けるだけで変えられるんだよね」
「うん。私も最近知った。私も月音と書いてタケオとか読むように変更しちゃおうかな?どうせ私の名前読めないし」
 
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「確かに月音と書いて『だいな』と読むのは難易度が高いね」
「青葉ちゃんも千里さんも一発で私の名前を読んだからびっくりした。似たような名前の人でも知ってた?」
「いや、あれは字だけ見てもダメだけど、本人を見たらふっと思い浮かぶんだよ。千里姉も同様だと思う」
「すごーい」
 
「でも月音ちゃん、タケオと読ませるなんて男になるの?」
「それもいいかなあ。ちんちん自分にあったら楽しそうだなという気はするけど」
 
「ちんちんはどうなんだろうね。面倒そうな気もするけど。でも清さんの所は子供は最初からそういうパパの姿を見てれば意外に抵抗感無いかもね」
と青葉。
 
「かもねー。うちのパパはちょっと変わっているなというくらいで。そもそも清さんはセクシャリティの問題で結婚が遅れたんで、子供もまだ小さいみたい」
と月音。
 
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「でも理解してくれる女性を得られて良かったんだろうね」
「うん。それまでこっそり女装していたのを奥さんがうまく唆していつもあの状態になったみたいだよ。仕事は元々背広着て仕事したくないから、服装規定の無い、委託契約の仕事してたんだって。だから性別がどっちでも問われないのでスムーズに切り替えられたらしい」
 
「ほほお。でも背広着ても男装しているようにしか見えない人なら女装するのが自然だったかも」
 
「そんな気がする。やはり物心ついた頃から自分は女という意識あったらしい。そのあたりの話も安子ちゃんから聞いた」
 
この手の情報は(女子の間では)だいたい高速に伝搬するものである。青葉は自分のことも色々噂されてそうだなと思った。
 
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「へー。でも堂々と女の礼服で出てくるには、けっこう兄弟とかの抵抗があったでしょうね」
「うん。特にお姉さんの萌枝さんが強硬に反発してたみたい。でも咲子ばあちゃんが気に掛けてくれて、自分の本来の姿で来てくれるのがいちばん供養になるからって、聖火さんに言ったらしいよ。咲子ばあちゃんから言われたら萌枝さんも引っ込まざるを得ない」
 
「なるほどなるほど」
 

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