広告:國崎出雲の事情 3 (少年サンデーコミックス)
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■春園(3)

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通夜は18:30から始めたが、読経がやたらと長かったし参列者も弔電も多かったこともあり(明日の告別式をできるだけ早く終わらせたいので弔電は来ている分は全部通夜で読み上げた)、通夜自体が終わったのが21時頃、その後の通夜振る舞いの食事が終わったのはもう23時近くであった。それで途中で帰る人も多かったので朋子・美咲・由佳らや町内会の人などで、帰る人たちにお土産を渡した。
 
また19:45になった所で高校生以下は先にホテルに帰すことにし、その子たちを旅館に連れていくのは、千里と赤ちゃん連れの安子さん、子どもが全員小学生以下の芽依さん(聖火さんの次女で福岡から)と愛さん・幸恵さんの5人で引率していった。
 
安子さんがベビーシートを装着した自分の車で伸子ちゃんを運んだ他は、千里が29人乗りコースターを運転して14人(+大人4人)を一気に運んだ。
 
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「こんな大きな車をなんか楽々と運転しているみたい。すごーい」
と運転席そばの席に座ってくれた芽依さんから感動された。
 
「私、大型二種免許持ってますし、国際C級ライセンスも持ってますから」
 
「レースとか出るの?」
「去年は2度出ました。今年は取り敢えず夏までは本業が忙しいので出るとしたらその後ですね」
「へー」
 
「C級ライセンスの上にB級ライセンス、A級ライセンスってあるんだっけ?」
 
「そうです。国内B級・A級の上が国際C級。その上が国際B級・A級ですが、国際B級以上は実際問題としてレーサー専業でないと取れないし維持できないと思います。国際C級までは持っているだけでもいいんですよ。私の場合は、仕事上の上司が気まぐれで『ちょっと取って来て』と言って費用も出してくれたので」
 
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「やはり車を用意するだけでも大変だよね?」
 
「車は所属しているカークラブの備品を借りたのですが、それでもレース用の車に乗るために身につける服が特殊で、それだけで100万円ほど個人的に掛かるんです」
「ひゃー」
 
「まあレースはお金の掛かる趣味ですね」
 

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子どもたちを各々の割り当てられている部屋に入れて寝るように言う。愛さんと幸恵さんは各々の子供の所に付いているが、千里は芽依さんに誘われて安子さんの部屋に行った。生後7ヶ月の伸子は、おっぱいを飲んで、すやすやと眠っている。
 
「向こうももう少ししたら通夜が終わって宴会になるだろうし」
 
と言って、アクエリアスで乾杯(芽依さんだけビール)して、持って来たおやつを摘みながらおしゃべりする。千里はこの後、バスで葬儀場にいる残りの人たちを迎えに行くのでお酒が飲めず、安子は授乳中なのでやはりお酒が飲めない。
 
なお、千里は23時頃迎えに来てと言われていたので30分くらい前に出ることにする。
 
「でも前回来た時に高校生だった安子さんが今はママだから5年で人は変わるものだなあと思いましたよ」
と千里が言う。
 
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「まだ20歳にもならないのに結婚するの?なんて言われたけど、おかげで和彦じいちゃんに、玄孫(やしゃご)の顔を見せてあげられたし」
と安子。
 
「凄い孝行だよね」
「安子ちゃんはちゃんと結婚した後で妊娠したから偉いと思う」
「最近、そのあたりの順序が怪しい人も多いですよね」
 
「それにしても学生結婚して子どもも作っちゃうなんて大胆」
「結果的に出産前後は1年休学したけどね。勉強も頑張らないといけないし、子育ても大変だし。まあ若干後悔した」
 
「後悔もするだろうけど、まあ気楽にやっていきなよ」
「そうそう。難しく考えると辛いよ」
 

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「ところで、千里さんって、誰の所の人だったっけ? 何か人数が多くてもう誰が誰やら分からなくて」
と芽依さんが言う。
 
千里はどう答えていいか「えーっと」と言って悩んだのだが、安子さんが
 
「千里さんは、光彦さんの娘の桃香ちゃんの奥さん」
と答える。
 
「え?もしかして女同士で結婚してるの?」
「うーん。。。桃香的見解ではそうですが、わたし的見解ではただの友達のつもりなんですけどね。まあ一緒に暮らしているし、夜も一緒に寝ますが」
 
「おお!」
 

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「でも、女同士で結婚してるって、女同士で色々あんことしたり、こんなことしたりするわけ?」
 
と芽依さんはどうもレスビアンに興味津々である。芽依さんはひとりビールを飲んでいるので軽く酔いも手伝って大胆になっているっぽい。
 
「ふつうの男女のカップルとそう違わないと思いますよ。まあ、女にはちんちんが無いから、そこがちょっと違うだけで」
「いや、大いに違う気がする」
 
「ちんちんみたいなの付けてやったりするんですか?」
と安子さん。20歳ではあっても結婚しているとこの手の情報は色々見聞きしているようだ。
 
「それも使うことありますけど、私たちの場合はそれはあくまでお遊びの範疇ですね。お互いに刺激しあうのが気持ちいいんですよ。男の人とのセックスでいえば前戯をひたすらやっているようなものですね」
 
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「それ凄く気持ちいい気がする」
と芽依さん。
 
「芽依さん、女の恋人作ってみる?」
と安子さん。
 
「ハマりそうで怖い。でもそれも浮気になるのかなあ」
「考え方次第かも。別に男とする訳じゃないし」
と安子。
 

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「でも結局今回、レスビアンカップルが3組いるんですね」
と安子が言う。
 
「美咲さん・由佳さん、桃香ちゃん・千里さん、それにうちのお姉ちゃんの清(さやか)・愛(めぐみ)さんだよね」
と芽依。
 
「お姉ちゃんと呼んであげているんですか?」
「私は小さい頃からお姉ちゃんと言ってたよ。実際お兄ちゃんには見えなかったし」
「ほほぉ!」
「でも萌枝姉ちゃんが嫌がっていたね、昔から。もう10年以上、萌枝姉ちゃんは清姉ちゃんと話をしてないはず。今回も女の喪服を着てきたの見て嫌そうな顔してた」
 
「大変ですね〜」
 
「男同士のカップルはいないのかな?」
「うちの弟の満彦は少し怪しいと思っていたんだけどね〜。女性と婚約したから、へーと思った」
と安子。
 
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「ほほお」
「偽装結婚ということは?」
と芽依。
 
「そうでないことを祈っているんですけどね」
と安子。
 
「満彦さんの彼女の紗希さんが実は男の娘ということは?」
と芽依さん。
 
千里は芽依さん、かなり酔ってるなと思った。
 
「彼女と一緒に温泉に行ったことありますよ」
と安子。
 
「既に手術済みだったら?」
「うーん。手術済みなら、もう女の子と同じだから全然問題無い気がします」
「そっかー!」
 

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「でもさあ、男の人が好きで男の恋人を作ったつもりが相手が性転換して女の身体になってしまった場合、その恋愛関係って維持できるの?」
と芽依さんは訊く。
 
「そういうケースはたいてい別れちゃうんですよ」
と千里は指摘する。
 
「やはり」
 
「紗希ちゃんたち大丈夫かなあ」
 
と芽依さんは勝手に紗希さんを男の娘だとみなしている感じだ。
 
「桃香も万一私が男になったら別れるとか言いますよ」
「ふむふむ」
 
「千里ちゃん、男になりたい?」
「男って面倒そうだから、いいです」
 
「千里ちゃんは、男装しても女にしか見えない気がする。私は結構男装好きだけどね」
などと安子。
 
「安子ちゃんは男装似合いそうね」
 
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安子は身長も172cmある。
 
「実は別に男装してなくても男と間違えられることあるのよね。いっそ性転換しちゃおうかな」
 
「ママが性転換したら伸子ちゃん困らない?」
「そうですね。取り敢えず授乳が終わってからかな」
「それか代わりに成明さんに女になってもらうとか」
「あいつの女装はちょっと想像が付かないな」
 

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「成明さん、ガッチリした体つきだよね。高校時代は野球部だったって言ってた?腕が凄く太い」
 
成明さんは身長185cm体重90kgである。筋肉質の身体付きだ。
 
「私、自分の身長が高いのがわりとコンプレックスだったけど、成明といると背の高さが目立たなくていいのよね。会社の野球部に入ってたんだけど、子供産むのにお金がいるから野球まではできないというので、辞めたんですよ」
 
「色々大変ね」
「落ち着いたらまたやりなよと言ってるんですけどね」
「そうだよね。経済的に余裕が出来たら」
 
「でも千里ちゃんも腕は太いね」
と言って芽依は千里の腕を触る。
 
「私もスポーツ選手だから。あ、名刺あげときますね」
と言って千里はレッドインパルスの選手の名刺をふたりに渡す。
 
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「すごーい。バスケット選手なんだ」
「このチームのエンブレム格好いいね」
「でも大企業だ」
 
「でもバスケットの特に女子はマイナーだから、なかなか観客が入らないんですよ。うちは大企業がバックに付いているから安定経営だけど、一般には女子バスケットチームで採算取れているチームは少ないです」
 
「ああ、そうかもね」
「男子チームだと上位の方は年間売り上げが億の単位のチームも結構ありますけど、女子チームは多くが数千万円。親会社からの補助がないとやっていけない所がほとんどですね」
 
「でも売り上げってやはり試合の入場料収入?」
「ええ。それとファンクラブの会費、グッズの売り上げなどですね」
「なるほど」
 
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「でも何人かに言われてたけど、千里ちゃんのその数珠も凄いね」
「ええ。一応本式の108玉の数珠ですね。義理の妹の青葉のもですけど、湯殿山で頂いた数珠なんですよ。真言宗の数珠は八宗兼用といって、どの宗派の法要にも使えるんで便利なんです」
 
「ああ。数珠にも宗派の違いがあるんだ?」
「この房の部分の形が違うんですよ」
 
「今日来てたお坊さんも真言宗だよね?」
「そうそう。高知県は真言宗王国」
「神葬祭の所も多いでしょ?」
「うん。坊さんと神主さんと両方来て葬式する所もある」
「うちの家は無宗教で、どこの檀家にもなってなかったからなあ」
「仏壇も神棚も無かったね」
「和彦さんが無神論者だったしね」
「そうそう。死体なんてただの物体だから、生ゴミにでも出してくれとか言ってたらしい」
「ああ。うちの桃香も同じこと言ってますよ」
「おお」
「でも本当に生ゴミに出す訳にもいかないし」
「珠子さんの実家のツテで坊さん頼んだみたいね」
「なるほどー」
 
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「でも湯殿山というと『語るなかれ、聞くなかれ』の?」
「ええ。怖い話が広まってますけど、あそこの神社の方のご神体はユニークです」
 
「私、学生時代の貧乏旅行で行ったけど、楽しいよね」
と芽依が言う。
 
「私は同じ出羽三山の羽黒山の、女修験者の鑑札持ってるんで、あそこ何度も山駆けしてますが、山駆けの後に入る湯殿山の温泉は格別ですよ」
 
「ひゃー。山駆けとか凄いね」
「青葉は高野山で修行したみたいで。でもそちらでは特にお数珠とか使っていなかったので、私が湯殿山の方で一緒に頂いて渡したんですよね」
 
「同じ系統なんだっけ?」
「湯殿山も高野山も同じ真言宗ではありますけど、湯殿山は真言宗中興の祖と言われる興教大師・覚鑁(かくばん)が興した新義真言宗の系統なので、まあ兄弟の宗派のようなものですね」
 
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「へー」
「お互いに転籍したりする例もあるみたいですよ」
「なるほど」
 

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