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■春園(2)

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今回青葉たちは早朝朋子のヴィッツ(運転は青葉)で金沢駅まで行き、朝一番のサンダーバードで大阪に出た。阪急とモノレールを乗り継いで伊丹空港に行き、10:20の高知行きに乗る。
 
これが11:05に高知空港に到着するが、11:15に着いた羽田発の便に、桃香・千里、千葉の館山から出てきた洋彦・恵奈夫妻、千葉市内から出てきた彪志、そして札幌から飛んできた月音さんの6人が乗っていた。
 
千里と桃香、洋彦夫妻、彪志はお互いに連絡を取り合い羽田で落ち合っていたのだが、月音さんはここで洋彦が気づいて声を掛け、一緒になった。
 
「クイズです。この子の名前は何と読むでしょう?」
と言って、洋彦が
 
《花山月音》
 
と彼女の名前を書いてみせる。
 
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すると青葉と千里がそれを見た瞬間
「かやま・だいな」
 
と読んでしまうので、洋彦がびっくりする。本人もびっくりしている。
 
「ちゃんと読んでもらったの、私、初めて」
と本人は言っている。
 
「知ってたの?」
と洋彦。
「いいえ」
と青葉・千里。
 
「見れば分かるよね?」
と千里が青葉を見て言うので
「まあ、そういう人もあるかもね」
と言って青葉は微笑む。
 
「ほとんどの人が《はなやま・つきね》と読むんだよね」
と言って月音は笑っている。
 
「いや、私は《かやま》と読むことは知っていたけど、《つきね》ちゃんとばかり思っていた」
と桃香が言う。
 
「この苗字を《はなやま》でなく《かやま》と読む人はたまにいるけど、下の名前をこれで《だいな》と読むのは他では見たことない」
と朋子が言っていた。
 
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「《だいあな》の略なんでしょ?」
と千里が言う。
「うん。お父ちゃんは最初《だいあな》と読ませようとしたんだけど、4音は長いかなと考えて《だいな》にしちゃった。それで難易度が増した」
 
「たまに《月》と書いて《るな》と読む人はいますよね」
「そうそう。私の名前の読み方難しいよと言うと『るなさんですか?』とか『ゆえさんですか?』と聞く人はいる」
 
「月の女神の名前と分かれば、ルナ、セリナ、ダイアナ、ディアナ、といったところを思いつくけど、その系統ではルナちゃんが圧倒的に多いと思う」
 
「水泳選手に今井月(るな)ちゃんっているもんね」
「あそこはお兄さんの名前も凄い。読めない」
 
「この子の妹と弟も凄いのよね」
と恵奈が言っていた。
 
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「でも私《だいな》と名乗ると男の人と間違えられることもある」
と月音はいう。
 
「確かに《だい》という音はあまり女性の名前では使われませんね」
と青葉。
 
「何度か私自身を見て性転換したんですか?と言われたこともあるし」
と月音。
 
「性転換してないよね?」
と桃香が確認する。
 
「少なくとも物心ついた時から女だったなあ」
と月音。
 
「性転換する人って、だいたい物心ついた頃から自分は女だと思っているよね?」
と桃香。
 
「うむむ」
 

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洋彦と春彦(山彦の息子)との電話連絡で、この8人で空港のトヨレンでエスティマを借りて土佐清水市を目指すことになった。
 
運転は彪志と千里が交代でして14:00前に斎場に到着した。
 
青葉たちは早速葬儀の準備作業に参加した。大型免許を持っている千里はトラックを運転して物を運ぶ作業をし、青葉も秋子さんや葵さんのお手伝いでこちらも車の運転を多数することになった。彪志は「若くて元気そうな男の子が来た」と言われて力仕事に動員されていた。桃香は控え室で暇そうにしながらビールや日本酒を開けている男性親族たちのお世話をしていたが、その内自分が大量にお酒を飲んで
「桃香ちゃん、飲みっぷりがいいね」
などと言われていた。
 
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青葉は他の高校生・大学生世代たちの子(青葉も含めて大学生5人・高校生4人)と一緒に「実働部隊」として届けられたお花や供物などを運んだり、青葉も含めて免許を持っている子はあちこちお使いに行ったりなどしていた。
 

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「この人、誰だっけ?」
と珠子さんが飾られたお花の送り主名を見て言う。
 
「それ私の妹」
と咲子さんが言った。
 
「お母さんの妹さんがいたんだ?」
 
「年賀状とかも億劫だから交換してないけど電話では時々話してるよ」
「へー」
「たくさん姉妹がいたけど、私とこの子の2人だけになってしまったよ」
「みんな周囲が死んでいくと寂しいですよね」
「今回行きたいけど、体力に自信無いからお花だけで失礼すると言ってた」
「いや、それは無理しない方がいいです」
 

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さて、今回親戚全員が集まるのに「日本一遠い距離に住んでいる兄弟」だけに、みんな土佐清水市までたどり着くのが大変だったようである。
 
まず土佐清水市内に6人住んでおり、他に高知市内に住んでいる1人、高松の2人、岡山の5人、大阪の3人、岐阜の2人は和彦の100歳の誕生日を祝うのに土佐清水市内に来ていたので、このメンツは朝から稼働できた。
 
遠くから来た組では最初に到着したのが青葉たち8人であった。
 
博多5人・平戸5人の合計10人の九州組は新幹線で岡山まで来て、岡山8:51発の南風3号に乗り、13:24中村駅到着。彼らは葬儀場の送迎バスで14時すぎに斎場に入った。青葉たちが着いて間もない頃である。
 
那覇組の4人(大人2人幼児2人)は7:10の福岡行きに乗り、そこから新幹線と南風7号・あしずり3号と乗り継いで、15:31に中村駅に到着した。彼女らのために、九州組を迎えに行く時、礼彦さんがチャイルドシート2個を装着した車を運転して中村駅まで行き、車を駐車場に駐めたまま自分は送迎バスで九州組と一緒に戻って来ていたので、清(さやか)さんがその車を運転して、4人で土佐清水市まで来ることができた。彼女らは16時半頃葬儀場に到着した。
 
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最後に到着したのが北海道組と与那国組である。
 
根室組2人は早朝から釧路空港に3時間掛けて移動し、釧路9:50-11:40羽田に乗る。稚内組4人は早朝から4時間掛けて旭川まで移動して旭川組2人と合流。旭川10:15-12:00羽田で移動して羽田で根室組と合流する。そして10人で一緒に羽田13:40-15:00高知という便に乗った。
 
一方与那国組6人は与那国9:20-9:55石垣10:30-13:30羽田14:05-15:30高知という飛行機を3本乗り継ぐ連絡で来ており、この6人と北海道組10人で、こちらは29人乗りコースターを空港のトヨレンで借りて、大型免許を持っている根室の来彦さんが運転して18時頃に土佐清水市に到着した。
 
彼らが到着するのを待って18:30頃からお通夜を始めた。
 
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如才無い千里が町内会の女性・横山さんと2人で受付けの所に立った。
 

今回集まった親族は和彦・咲子の子供世代9,孫世代22,曾孫世代24,玄孫1(配偶者あるいは婚約者を含む)で、咲子まで入れると57人である。
 
玄孫1人というのは前回来たときは女子高生だった安子さんが昨年産んだ赤ちゃん・伸子ちゃんである。
 
この他に地元の町内会・老人会の人などご近所さんが100人以上来ていて、盛大な葬式となった。
 

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「しかし、これだけ離れて住んでいるとなかなか全員集まる機会は無いな」
と千葉の洋彦が言う。
 
「前回勢揃いしたのは光彦の葬儀の時(*2)、その前が光彦の結婚式の時じゃないかな」
と風彦。
 
(*2)24年前の1992年で和彦はまだ76歳。高岡市内で葬儀をしたので彼にとっては最後の大旅行になった。
 
「孫世代の結婚式の時は子供世代までしか集まってないね」
と聖火。
 
「んじゃ次みんな集まるのは私の葬式の時かな」
などと咲子が言う。
 
「んじゃ、母ちゃん、葬式に使う可愛い写真撮っておいてよ」
「OKOK。セーラー服着ようかな」
「振袖でもいいよ」
「民謡大会とかに出る時は振袖を着てるよ」
「凄い」
 
「山彦兄、母ちゃんより先に葬式するはめにならないよう頑張れよ」
 
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山彦は今年73歳である。
 
「兄貴も葬式用の写真撮っておけよ」
「兄貴もセーラー服着る?」
「振袖にしとこうかな」
 
などと言うと珠子さんがしかめ面をしている。
 
「でも俺は伸子の赤ちゃんが嫁さんに行くまで頑張る」
「伸子の赤ちゃんが男だったら?」
「取り敢えず性転換して」
 
と何だか凄い会話をしていた。
 

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「しかし父ちゃんも100歳の誕生日に逝くとは凄いな」
「まあ大往生だね」
 
「私はあの人があまり苦しまずに逝ったみたいだから良かったよ」
と咲子は言う。
 
和彦はずっと元気でいたのだが、亡くなる3日前に風邪を引き、最初の日は熱も出たものの、その後下がって快方に向かうかなと思っていたらしい。
 
4日の日は100歳のお誕生日のお祝いをし、和彦もいったん起きてきて孫や高知や岡山などからやってきた大勢の孫・曾孫たちに囲まれて笑顔でケーキを食べたりもしていた。ところがその日、もう寝ていて夜遅く「咲子」と奥さんの名前を呼ぶ声に咲子が「はい」と返事をして自分の布団から出て近寄ると、もう息をしていなかったという。
 
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咲子が同居している山彦・珠子夫妻を呼んできて、かかりつけの病院の先生に来てもらい死亡が確認された。医師は死因を急性気管支炎のためと書いた。珠子さんが見ていたテレビの番組進行から死亡時刻は22:44とされた。
 
それで死亡日時は2016.4.4 22:44 とやたらと4が並んでいる。和彦の誕生日は1916.4.4である。
 
そのあと近くに住む春彦一家や、高知や大阪などから誕生日を祝うために家族ごと来て旅館に泊まっていた秋子や安子たちも呼んで
 
「じいちゃん、夕方まで元気だったのに」
などと言っていたらしい。
 
「まあピンコロだね」
と咲子は感慨深げに言う。
 
「じいちゃんも、ばあちゃんもピンコロが理想と言ってたね」
と秋子。
 
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「私もそれで逝きたいね」
と咲子。
 

「父ちゃんは何時生まれだったんだろう」
と洋彦が訊く。
 
「夜生まれだったとは言ってた」
と咲子。
 
「ひょっとしたら自分が生まれた時刻に逝ったのかもね」
と山彦。
 
「あり得るあり得る」
と春彦。
 
「しかしオカマの日に生まれてオカマの日に逝くとは」
「父ちゃんはオカマの趣味は?」
「若い頃女装したら女の子たちに可愛いと言われたなんて言ってたから、まんざらでもなかったかもよ」
「ほほお」
「振袖着て写真撮ってもらったことあるなんて言ってたけど、その写真は私も見たことが無い」
「それ出てきたら凄いな」
「葬式の写真に使ってあげたいくらいだ」
「それはさすがにやめようよ」
 
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実際には和彦がカラオケ大会で特別賞をもらった時の記念写真を葬儀には使うことにしたらしい。
 

多くの参列者が小さな略式の数珠を持っているのに対して、青葉と千里が本式の108玉の数珠を持っているので
 
「あんたたち凄いね」
 
と言う人もあった。
 
青葉の数珠は淡いピンク色のローズクォーツ、千里の数珠は同じ水晶でもミルキーなラベンダー色のいわゆる藤雲石である。
 
「ちー姉のその数珠は初めて見た。なんか凄いパワーだね」
と青葉が言うと
「これは青葉のその数珠を買った時に一緒に買ったんだよ」
と千里は答える。
 
「そうだったんだ!」
 
「実は桃香用にもうひとつ買ったから3つ色違いのお揃いなんだけど、桃香は数珠とか分からんし、そんな大きな物は壊しそうだと言うから、別に取ってある」
 
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「知らなかった。桃姉は安い数珠使ってたね」
「うん。ダイソーで買った100円の数珠。桃香は安いの大好きだもん」
 
「確かに確かに」
 
その時唐突に青葉は思いついた。
「桃姉の使ってない数珠って、もしかしてグリーン・アメジスト?」
「よく分かるね。さすが青葉。水晶の数珠で3種類そろえたんだよ」
「なんか今のは自然と浮かび上がった」
と青葉。
 
「でもこういう本格的な数珠って、桃香じゃないけど、私みたいな素人が持ってても宝の持ち腐れだよね。青葉のその数珠貸して」
と千里が言う。
 
「あ、うん」
 
それで青葉が自分の数珠を渡すと、千里は青葉の数珠を右手で受けるように持ち、自分の数珠を左手で掲げるようにし、自分の数珠から青葉の数珠に注ぐようにする。
 
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「はい、充電完了」
と言って青葉に数珠を返す。
 
「凄いパワーアップしてる!!!」
 
「まあ、死なない程度に頑張ってね」
 
「うーん・・・・」
 
ちー姉がこんなこと言うってことは、私、これから死ぬ目に遭うんだったりして!?
 

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