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■春輪(6)

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7月20日(月)。
 
千里は経堂の桃香のアパートで目を覚ました。実を言うと用賀の自分のアパートにはあまり生活に必要な道具が揃っていない。あそこは単に寝るためだけに借りているようなものである。
 
それでここ数日千里は桃香のアパートで暮らしていたのだが、当の桃香は泊まりがけの研修に出ていて明日まで帰って来ない。しかし千里は明日から合宿なので完璧にすれ違いになってしまう。千里が桃香と次に会えそうなのは8月11日である。
 
それで洗濯機を回し、トイレに行ってナプキンを交換する。やっとふつうの夜用ナプキンで済むようになったなあと思う。しばらくは結構辛かった。《びゃくちゃん》が神経ブロックをしてくれてなかったら、私とても試合どころか練習にも耐えられなかったよと思う。座るのもずっとドーナツ座布団を使っているので「痔?」などとチームメイトから言われていた。とにかく血が足りない感じで、ここ3週間ほどは無茶苦茶食べたし。
 
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昨夜結局テーブルの上に放置してしまった「2人分」の茶碗をシンクに取り敢えず放り込む。その後朝御飯を作って食べてから昨夜の分の茶碗と一緒に洗って拭いて片付ける。洗濯機が終わったので出して干す。
 
「秘密の作業」をした後で、午前中のバスケ練習に出かけようかと思っていたら、訪問者があった。
 
50代くらいの女性とその娘かと思われるやや青白い顔をした20代女性である。千里はその若いの方の女性の顔を知っていた。桃香の最近の恋人、燐子である。もっとも向こうはこちらの顔は知らないだろう。
 
「高園桃香さんでいらっしゃいますか?」
と母親の方が言う。
 
「あ、いえ。私はその・・・妹です。姉は出張中なんですよ」
と千里は言う。レスビアンの夫婦と言うのは、説明しにくい話である。
 
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「でしたら、妹さんにこれをお預けします」
と言って分厚い封筒を渡す。中を見ると1万円札が詰まっている。
 
「これは?」
「先日、うちの娘が桃香さんにお金を借りたので」
 
「あの、もし良かったら少し事情を聞かせていただけませんか?」
 

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それで2人をとにかく中にあげてお茶を入れる。お菓子も出す。
 
「あれ?お乳の匂い。赤ちゃんがおられるんですか?」
などと母親が訊いた。
「いえ。さっきシスコーンに牛乳掛けて食べたから、その匂いでは。済みません。それで牛乳使い切ったからミルク無しの紅茶で」
「いえ、何か美味しい紅茶を出して頂いてありがたいです」
「これ実際にインドで買って来たアッサムなんですよ。友人からもらって」
「それで!ほんとに美味しいと思った」
 
それで話を聞くと、娘さんがレイプされて妊娠し、中絶手術の費用を桃香に借りたのだという。実際には桃香は「恵比寿の立派なマンションに住んでいるお友だち」から借りて彼女にお金を渡してくれたらしい。
 
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まあそれは冬子のことであろう。桃香ってほとんど貯金無いし。しかしそんなことしてたのでお金が無いと言っていたのかと思い至る。
 
燐子をレイプしたのは会社の同僚ということで、追いかけられたくないので上司に事情を話し、事前告知も送別会なども無しで会社を辞め、実家に戻ってしばらく静養することにしたらしい。
 
「週数が進んでいたので、中絶といっても死産扱いで。ちゃんとお葬式もしたんですよ。実家に帰ったら水子供養もするつもりです」
とお母さんは言う。
 
「それは無茶苦茶お金が掛かっているでしょう」
「でも幸いにもボーナスの支給日まで在籍したことにしてもらって、早めのボーナスと退職金まで頂いたんです。更に部長さんから御見舞い金に5万円も頂いて」
 
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千里はその「5万円の御見舞い金」というのに不快感を感じた。普通の見舞金としては高すぎる。お金を出すから騒ぎ立てるなという意味なのでは?
 
「でもそれって中絶手術代自体が高いですよね」
「ええ」
 
「だったら、こういうの女同士助け合いましょうよ」
と千里は笑顔で言うと、自分の旅行用バッグの中からポーチを取り出すと、そこからお金を20万円取り出し、お母さんに差し出した。
 
「私と桃香とで10万円ずつ寄付します」
「そんなに頂く訳には」
 
「こういうの、いつ私や桃香が被害者にならないとも限りません。その男に天罰でも与えてやりたいですけど、取り敢えず女同士の相互扶助ですよ。一応私も桃香も何とか多少のゆとりはある暮らしをしてますから」
 
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お母さんと娘さんは千里に深く頭を下げて帰って行った。誰にも実家の住所は教えてないけど、桃香さんだけにはと言って住所を書いた紙を千里に渡した。
 

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『おい、千里』
と《こうちゃん》が言う。
 
『何かしたいの?』
『その男に天罰与えたいんだろ?』
『女の敵だもんね』
『天罰与えてこようか?』
『まあ好きにしていいよ。ただし殺したり大怪我させたらダメ。でも二度とこういうことできないようにしてやりなよ。あの子にもつきまとったりしないようにね』
 
『よし、任せとけ』
 
と《こうちゃん》は言ったのだが
 
『こういうのは女にもやらせてよ』
 
と《いんちゃん》が言うので、千里はくれぐれも殺したりしないようにと念を押した上で、ふたりに《天に代わっておしおき》してくることを許可した。《こうちゃん》は楽しそうな顔、《いんちゃん》はマジで怒った顔をして、2人で飛んで行った。
 
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『あの2人何するつもりかね』
と千里が独り言を言うと
 
『男を辞めることにはなるんじゃない?』
と《せいちゃん》が言う。
『女にしちゃうの?』
 
『そんな親切はしないだろ。そいつの顔、俺もさっき確認してきたが、たとえ性転換したって女子トイレで通報されるレベルだな』
『ふむふむ』
 

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優子は降りしきる雨を見ながら、参ったなあと思っていた。車を売ってしまったので仕方なくバスで買い物に出たのだが、うっかり傘の用意をしていなかった。車を使っていれば雨など関係無いので、少々空模様が怪しくてもいちいち傘など持たない習慣になっていたのである。
 
しかし今雨はかなり降っている。バス停から自宅アパートまでは結構な距離があるので傘を差していてもかなり濡れそうだ。それともうひとつの問題は荷物が重いことである。これも車で買物に来たらそんなの関係無いので、重さとか考えずに買物をする習慣になっていたのである。
 
「仕方ない。取り敢えず傘を買ってくるか」
と独り言を言い、優子はお店に引き返そうとした。その時のこと。
 
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「ね、ね、君可愛いね」
と声を掛けてきた男が居る。
 
「私、男の人に可愛いなんて言われたことない」
と優子は答える。
 
「いや、君は行けるよ。それにこの君の腕」
「腕?」
「凄く太くて魅力的」
とその男は言う。
 
「太くて魅力的なんて(男性には)初めて言われた。私、中学の時、柔道してたから」
「へー、それは格好良いね」
 
「あなた何か女性の好みが変じゃない?」
「ああ。僕の好みは特殊だと言われたことある。体格のがっちりした女性が僕の好みなんだよ」
 
「ふーん。でも悪かったね。私、レズだから」
「あ、レズっ娘も好きだよ」
 
優子は顔をしかめる。こいつレズの意味分かってんのか?
 
「何なら僕がネコになってもいいし」
「はぁ〜〜〜!?」
 
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こないだ一晩寝た男(?)も変な奴だったが(まあ気持ち良かったけど)、こいつもまた変な奴なのか?私、変な男に好かれる運命なの??
 
「あ、そうだ。それより君荷物重そうだね。持ってあげるよ」
と言って彼は優子が抱えているエコバッグの1つを手に取った。焼酎の紙パックとかジャガイモの大袋とかが入っていて凄く重たかったので助かった。
 
「私もう帰ろうと思ってたんだけど」
「雨だし大変でしょ。おうちまで送って行くよ。そうだこの荷物は取り敢えず僕の車に積んじゃおう。それから一緒に御飯でも食べない?」
 
「ふーん。まあいいけどね」
 
それで彼は優子の荷物を駐車場に駐めていたムラーノの荷室に積み込んでくれた。
 
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「さて、何食べる?洋食?和食?」
「そうだなあ。じゃ鯛焼きで」
 
「ああ、そういう甘い物もいいよね。僕って両刀遣いだから」
「それって別の意味でもじゃないの?」
「どうかなあ。ニューハーフの子とは寝たことあるし、それでネコも経験してるんだけどね。でも普通の男とは寝たことないし、少なくとも見た目が女でないと食指が動かない。だから自分ではホモではないと思ってる」
 
「ふーん。あ、私優子」
「僕は信次」
 
「じゃ取り敢えずうちまで送ってくれるまで、短い間だけどよろしく」
「うん。よろしくー。このまま何ヶ月がずっとでもいいよ。君は運転とかするの?」
 
「車好きなんだけどね。事情があって車売っちゃったんだよ」
「あ、だったらしばらく僕が君の足代わりになってあげようか。僕の車を君が運転してもいいよ」
 
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「それもいいかな。今夜私を楽しませてくれたらね」
「大丈夫。ちゃんと満足させるから」
 
それで信次と優子は一緒に甘味コーナーの方に歩いて行った。
 

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絢人は部活の途中で「トイレ行ってきます」と言って体育館を出ると、わざわざ校舎の方まで歩いて行き、1階の向こうの端のトイレの前まで来た。今の時期は夏休みに入ったので、午前中は補習があるものの午後は部活をする子だけになるので人が少ない。部活の終わりくらいの時間になると混むのだが、この時間帯は校舎側に残っている子も少ないし、めったにトイレに人が来ないのは経験済みなのである。
 
絢人は中の様子をうかがってからドアを開けた。こうやって女子トイレに入るのはまだ4回目だ。入る度にドキドキする。絢人はいつものように一番手前の個室のドアを開けて中に入った。
 
この日は練習疲れでちょっとボーっとしてしまった。ハッと気づいてトイレットペーパーを取りあそこを拭く。この拭くという動作で少しだけ女の子の気分になれる。そしてパンティをあげ、ジャージのズボンをあげて水を流そうとした時のことだった。
 
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女の子の声が聞こえる!
 
2人・・・3人居る!
 
きゃー。2人であれば今空いている個室に入ってくれるだろう。そして彼女たちが個室内に居る間に自分は出て立ち去ればいい。しかし3人ということは2人が中に入り1人は待つことになる。たぶん自分が入っている個室の前で。絢人は顔面蒼白になった。
 

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トイレのドアが開いて3人の女の子が入ってくる。そして実際2人は隣とその隣の個室に入ったようである。そしてあまり気配は感じないが、もう一人が待っている感じ。絢人はどうしよう?と思ったものの、このままじっと待っているしかないと思った。
 
自分がずっと個室に入っていれば、先に入った2人の内どちらかが出た後、今待っている子はそちらの個室に入るだろう。それでその子が終わって3人とも立ち去るまでじっと待っていればいいんだ。
 
でもその後更に他の子が来たらどうする?
 
そんなことを悩んでいた時、絢人は個室のドアの下からメモ用紙が差し入れられたのを見た。
 
「今なら大丈夫だよ。出ておいでよ」
 
へ?
 
しかし絢人は「よし」と決断すると水を流して個室の外に出た。前で待っている女の子はこちらに背中を見せていた。絢人は急いで手洗い場に行くと手を洗って女子トイレを出た。
 
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その様子を青葉は優しい笑顔で見送ってから空いた個室に入った。
 

千里は7月20日の夕方、冬子のマンションを訪問して燐子が借りたお金を返し、ついでに冬子のマンション内をチェックして、いかにも怪しいプレゼントの類いやDMなどを7つも回収した上で、北区のNTCに入り、今度はフル代表の合宿に入った。
 
なお、怪しいグッズの処分は《とうちゃん》たちに任せたが、千里が回収した怪しいお酒は結局《とうちゃん》《せいちゃん》《げんちゃん》の3人で飲んでしまったようである。後で「おしおき」から戻った《こうちゃん》が『俺の分が残ってない』と文句を言っていた。この子たちはこういうネガティブな気をまとったものが、かえって栄養になるらしい。
 
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