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■春楽(4)

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「だけど先月はいろいろな意味で自分にとって区切りの月になったなあと思って」
「いろんなことがあったよね」
「お母ちゃんの後見人申請が認可されたし、震災でやられた家族みんなの遺体が見つかって本葬儀をすることができたし、彪志とはこうやって双方の親公認の恋人になったし、そして私自身去勢完了したし、佐竹さんちの結界を戻せたし、コーラス部は全国大会まで進出できたし」
「青葉にとって、新しい出発の月になったね」
「うん。私頑張るよ」
「私も桃香も千里ちゃんも、そして彪志さんも、みんな青葉の家族だよ」
「うん、私嬉しい、あ、彪志、お代わり持ってくるよ」
彪志の皿が空になったのを見て、お代わりを盛ってくる。
 
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「だけど青葉、この2ヶ月くらいでもかなり霊的なパワーが上がってない?」
「えへへ、菊枝にも師匠にも言われた。たぶん彪志のおかげだよ。ホロスコープでも見たじゃん」
「俺は青葉の井戸だもんな。恋をして霊的な力を失う人もいるみたいだけど青葉の場合は逆にパワーアップしたんだね」
「それが普通だと思うんだけどなあ、私は。霊的な力のタイプによってはそうなっちゃう人もいるのかな」
 
会話は和やかに進んでいく。
「でもなんか、俺この家ですっかりリラックスしてしまった」
「リラックスして〜。自分の家だと思っていいからね」
「もう既に半ばその感覚」
 
彪志はカレーを4杯お代わりした。御飯が終わってから青葉が食器を片付けていると母が
「あ、そうだ。私、晩ご飯の買物とかで2〜3時間出てくる。5時くらいに戻るね」
などと言う。
「あ。うん」
「今日予定のメニューだと5時戻りでも大丈夫だよね?」
「うん。いってらっしゃい」
「あ、いってらっしゃーい」
 
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朋子はさっと支度をして出かけてしまった。
 
「・・・・・晩ご飯の買物に2時間も掛かる訳ないけど」
「もしかして気を遣ってくれた?」
「たぶん」と青葉は笑っている。
「気を遣ってくれすぎー、というか物分かり良すぎー」
「もしかしてイチャイチャしてもいいという意味?」
「少しくらいはいいんじゃない?」と笑って青葉。
「でも洗い物終わるまでは待ってて」
「あ、手伝う」
「ありがとう」
 
一緒に台所の片付けをしてから、上の青葉の部屋に行った。
「お勉強する?問題集上げないといけないんでしょ?」
「いや、それは後からやる。それより」
「これだよね」と言って、青葉は彪志に深く長いキスをした。
彪志が青葉を抱きしめる。青葉も彪志を抱きしめる。
 
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キスは青葉の感覚では5分くらい続いた感じだった。取り敢えずその後座ってお話をした。
「あの後、全然俺の夢に青葉出て来てくれない」
「ごめーん。誰の夢に入っていくかって、自分では全然コントロール効かないから」
「他の友達の夢に入ってたの?」
「うん。だいたい女の子の友達の夢にね」
「お葬式で花束贈ってくれていた嵐太郎君?彼の夢には?」
 
「ランの夢には1度入ったよ。こないだ彪志の夢に入った翌週くらい」
「そ、そう?」
「申し訳無いけど、ランの恋人にはなれない。御免ね、って言った」
「そうか・・・」
「だいぶ彼からもまた口説かれたけど」
「え?」
「でもしっかり断ったよ」
「うん」
 
「お葬式の時は連絡するかどうか迷ったんだけどね」
「うん」
「彼は旅役者の座長さんなのよね。役者さんとして応援していくからとは言ってたし。そもそも私の愛は全部彪志のところにあるから、ランと関わりを持っても私の心は影響されることは無いから、変にこだわる必要もないと思って連絡した」
「分かった」
「誤解招くかもしれないようなことして御免ね」
「ううん。青葉の気持ちについては俺は不安は持ってないから」
「ありがとう」
「青葉の心は完全に俺に向けた自信あるし」
「うん。私の心は全部彪志に向いてるよ」
「ありがとう」
 
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「でも、お葬式の時、ずっと私の手を握ってくれてたの、嬉しかったよ。あれで随分、私、支えられた気がした」
「少しでも役に立てたらと思ったし」
「とっても役に立ったよ」
「青葉・・・・」
彪志が青葉にキスする。青葉が彪志を抱きしめる。彪志も青葉を抱き返す。「好き」と青葉。
「俺も好き」と彪志。またキス。
 
「なんか・・・・・」
「ん?」
「したくなっちゃった」
「ふふ・・・いいよ。お母ちゃん、まだ1時間以上帰らないし」
「いいの?」
青葉はこくりと頷く。そして
「お布団敷いちゃおう」
と言って押し入れから布団を出し敷く。
「脱いじゃおう」
と言って、服を脱ぎ始める。どこからどう見ても女の子にしか見えないボディラインが露出する。胸は膨らんでいるし、お股の所はすっきりしている。ウェストがキュッとくびれているのも彪志の脳を刺激した。
 
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「お先に」と言って青葉は布団に潜り込む。彪志は持ってきていた旅行鞄のポケットから避妊具を取り出し、服を脱ぎ、装着して布団に潜り込んだ。しばし裸のまま抱き合う。
「なんか、こうしてるだけでも気持ちいいね」
「うん、なんか凄く安心する気分」
「少しこのままでいる?」
「あ、えっと・・・・」
「ふふふ。ど・う・ぞ」
彼がやや恐る恐る始める。彼の波動が伝わってくる。何だかエネルギーをチャージしてもらっているような気分だ。気持ちいい。。。。彼の身体の振動に自分の振動をシンクロさせていく。この物理的な刺激だけでも心地良い。そして何よりも直接肌をくっつけていることで、彼から強い愛の念が青葉の中に流れ込んできた。妊娠って、ひょっとして精子と卵子で妊娠するんじゃなくて愛の念の流入と融合で妊娠するんじゃなかろうか?確かクロウリーもそんなこと書いてたぞ。青葉は何だかそんな気がしてきた。彪志が逝ってしまった後もずっと彼の背中を撫でる。青葉はとても幸せな気分だった。
 
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彪志はそのまま眠ってしまった。旅の疲れかな?そう思って少し微笑む。時計を見る。たぶん30分くらいで起きたほうが良さそうだ。でも30分、私も寝てもいいかな、と思い、青葉は睡眠の中に入った。
 
青葉も疲れていたのだろう。そのまま、すとん深く眠りの中に入ったあと、ふと青葉は気付いた。
 
『あれ?ここは・・・・・』
少し先の方で、彪志が布団の中で寝ている。青葉はそこまで歩いて行き、彪志の唇に軽くキスをした。彪志がパチリと目を開ける。
『あれ?青葉』
『寝てるとこ起こしちゃった?』
『あ・・・いや・・・・あれ?ここって?』
『夢の中みたいね。キスで起こすなんて白雪姫みたい』
『えっと・・・俺の方が白雪姫な訳?』
『そそ。彪志の夢の中に2度目の侵入、成功♪』
『・・・・おっぱい触らせて』
『いきなりそうくるのか。どうぞ』
 
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『凄くでかい』
『なんでか夢の中では私Fカップなのよね〜。ここまで大きくなくてもいいのに』
『あそこは・・・・』
『多分、完全な女の子』
彪志の所まで歩いて行った時は、何か服を着ていたような気がするのに、今青葉は裸になっていた。
『Hしたい?』
『したい』
『さっきリアルでしたばっかりなのに』
『夢の中でもしたい』
『じゃ、しちゃお』と言って青葉は彪志の布団の中に潜り込んだ。布団だと思っていたのに、いつの間にかベッドになっていた。ふわふわした感触だ。
 
『ちゃんと付けるね』
彪志はなぜかベッドの枕元に置かれていた避妊具を装着すると、青葉の身体を愛撫した。何だかリアルで抱かれている時以上に気持ちいいような気がした。
『クリトリスもあるかな?』
『たぶん』
『触ってみよう・・・・あ、たぶんこれかな?』
『あ・・・・』
それは今まで感じたことのない感触だった。こないだ夢の中でした時はこういうことまではしなかった。何て気持ちいいんだろう!?青葉は凄く淫らな気分になっていた。私ってちょっといけない子!彪志の唇を激しく吸う。やがて彪志は自分の指で確認しながら、青葉の女の子の器官にそれを入れてきた。わあ・・・・この感触もいいんだよなあ・・・と青葉は思う。早くリアルの身体も手術して、これをリアルでも味わえるようになりたい。そんな気がした。
 
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さっきリアルでしたばかりなのに、夢の中ではまたちゃんと行ける状態だったのか、かなり短い時間で彪志は到達してしまった。あーん。もう逝っちゃった。もう少し楽しみたかったかな。でも彪志、凄い興奮してたから仕方ないよね。。。
 
少し置いてけぼりをくらった気分だったが、青葉はずっと彼の背中を撫でていた。5分くらい、そんな感じで続けていたら彼も少し落ち着いてきた感じである。
 
『リアルと夢のコンボすごい』と彪志。
『どちらも気持ちいいねー』と青葉。
『だけどさすがに夢の中で逢う度にこんなことしてちゃいけないかな・・・・』
『私に遠慮する必要はないけど、受験生だもんね。セックスに夢中になって彪志が志望校に落ちたりしたら私も困るし』
『月に1回までにしようかな・・・・』
『リアルと夢とあわせて?』
『いや、それぞれ1回まででどう?』
『いいよ。じゃ次は9月ね。それまでは我慢してその分、受験勉強頑張って』
『そうする』
 
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『でさ』
『うん』
『青葉がそういうことができる年齢に達してからでいいんだけど』
『うん』
『夢の中で避妊せずにやってみない?』
『妊娠するかどうか試してみるの?』
『そう。してみたい』
『赤ちゃんできちゃった場合、私、ひとりで産まないといけないのかしら?夢の中まで産科のお医者さんとか助産婦さんとか来てくれないだろうし』
『俺が手を握っててあげる』
 
『うーん。じゃ、頑張ってみるかなあ・・・・・その赤ちゃんって、次に夢を見た時もちゃんと存在してると思う?』
『俺達の夢の中で育っていく。そんな気がする』
『凄いね。そういうこと起きたら』
『俺と青葉だから、そんなこと起きそうな気がする』
 
『彪志が大学出て就職してから、お金貯まったらエンゲージリング買ってよ。別に給料の3ヶ月分も使わなくていいから。というか、そんな高いの買うのはもったいないし。小っちゃい石でいいからさ。私、それもらったら、そんなことしてもいいよ』
 
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『分かった。確かに青葉の性格からしたら100万とかする指輪贈ったりしたら、その分他のことに使いたかったとか言われそう』
『その分、御飯食べたり旅行したりした方がいいよ』
『だね。じゃ、一応ダイヤのリング買える所までは頑張る』
『うん』
 
『ところで、そろそろ起きた方がいい時間だと思うの』
『よし、起きようか』
 
ふたりは一緒に目を覚ました。そしてキスをする。
「さ、洋服着て、布団片付けて」
「うん」
 
「ところで今夜、俺どこで寝ればいいのかな・・・」
「この部屋で良いと思うけど。お母ちゃんは理解してくれるから。ただしお布団はふたつ。そしてH禁止」
「そうか。今月は1回しちゃったから・・・・」
「うん。また来月ね。お勉強頑張ってね」
「ああ、生殺しだなあ。青葉の傍で寝て、できないなんて」
「そのうち結婚したら1日中でもしてられるようになるよ」
「仕方ない。頑張ろう」
「うん。頑張ってね」
 
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微笑んで青葉は彪志にキスをした。階下で母が帰ってきたような音がした。
 
 
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