広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
[携帯Top] [文字サイズ]

■春楽(2)

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁 次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

青葉たちが現地に着き、会場となるホールで慶子・真穂や会場の人と打ち合わせしている内に、彪志たちが到着した。彪志が青葉の手を握る。
「しっかりしてね」「うん、大丈夫」
そのあとしばし、母と桃香、彪志の両親の間でご挨拶。
「どうも、いろいろお世話になっておりまして」
「いえいえ、こちらもご挨拶が遅れまして」
双方の親でしばし話をしている。和やかな雰囲気だ。
 
礼子の遺体の損傷が激しいので先に火葬することになっていた。青葉と朋子・桃香、慶子・真穂、彪志親子の8人で付き添ってホール付属の火葬炉に行き、礼子の遺体を火葬する。ふたが閉じられた時、青葉が炉に向かって舎利礼文を唱えた。これを唱えるのも今年5回目だ。火が入り、待つ間、ずっと彪志が青葉の手を握っていてくれた。やがて終わり骨上げをする。祖父、祖母、姉、父に続いてこれももう5回目になる。青葉は今まで溜めていた涙が一気に出てくる感じだった。ひとりひとりとの思い出が蘇ってくる。骨壺への収納が終わった所で彪志が涙を拭いてくれた。
「今日はいっぱい泣いていいんだからね」
「ありがとう」
 
↓ ↑ Bottom Top

お骨を持ってホールの方に戻ると、早紀と椿妃が、それぞれのお母さんを伴って来てくれていた。早紀が青葉をハグしてくれた。
 
「何か人手がいるんじゃないかっていって、お母さん付いてきてくれた」
と言っている。
「わあ、ありがとうございます」
 
大人が増えてきたので、打ち合わせ関係は任せて、早紀・椿妃・彪志と青葉の4人でジュースなど飲みながら休憩した。早紀たちを見て青葉も元気になっている。
「ふたりは彪志と初対面だよね」
「うんうん。これが例の彼氏かと思って、ついまざまざと見てしまった」
「彼氏さんは高校生ですか?」
「うん。今高三」
「青葉のどこに惚れたんですか?」
「あ、えーっと、話が合うからかなあ」
 
↓ ↑ Bottom Top

などとしばしふたりの質問攻めにあっている。
「青葉にキスしてみてください」と早紀。
「えー!?」と青葉。
しかし4人がいるスペースは大人達がいる場所からは見えない。それを確認すると、彪志は青葉を抱きしめ、唇に5秒間キスをした。
「わー」といって、椿妃と早紀が拍手をする。
「実はさっきから抱きしめてあげたかったけど、親の手前遠慮してた」「うん」
 
14時半頃、咲良がやはり母と一緒に来てくれて、しばし青葉と抱き合う。その後未雨の同級生のひとり、鵜浦さんが来てくれた。
「お通夜からぞろぞろ来てもということになって、今日は私が代表で来た」
と鵜浦さん。彪志が鵜浦さんに手を振る。
 
「あ、鈴江君!また来たのね」
「そちらもお疲れ様」
2人は姉の仮葬儀の時にも顔を合わせている。
「でも、鈴江君、そんなに未雨と関わりがあったんだっけ?」
「実は俺、ここ2年来の青葉のボーイフレンド」
「えー!?そうだったんだ!」
「一応双方の親も公認・・・・」
「・・・・に、さっきなったみたいね」と笑って青葉も補足する。
「へー!今どこにいるんだったっけ?まだ八戸?」
「この春から一ノ関に来たんだ」
「わあ」
 
↓ ↑ Bottom Top

そこに仕出しが来たので、みんなで頂く。
青葉と朋子と桃香、慶子と真穂、早紀・椿妃・咲良と各々の母、彪志と両親、それに「あら。私までいいのかしら?」などと言った鵜浦さんと、15人である。
 
「今日は皆様、お忙しい所、お越し下さいまして、ありがとうございます」
と青葉が挨拶した。つい先程、黒いドレスの喪服を着たところである。
 
「じいちゃんとばあちゃんの知り合いは、今回のお通夜・葬儀の導師をしてくれることになった££寺のご住職がある程度知っているみたいで、声を掛けてくれたみたい。明日少し来てくれるかも」
「お父さんの知り合いと、こないだ1人遭遇して。今気仙沼に住んでいるんだけど、連絡したら来てくれるって。知り合いにも声掛けてくれると言ってた」
「じゃ、最終的に葬儀の参加人数はけっこうな数になりそうね」
「最初は10人か20人くらいかなって思ってたのに、この場に既に15人いるし、本当にありがたいです」と青葉。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ただ、お母さんの知り合いがさっぱり分からなかったのよね。家がきれいさっぱり流されてしまってるから、アドレス帳とか学校の名簿とかの類も全然無いし」
「私が礼子さんを知ってた人いないか、元同級生とかに声掛けてみるよ」
と早紀のお母さんが言ってくれた。
 
いくつかお花が届いたので祭壇に飾る。嵐太郎のお花を見て早紀が騒いでいた。彪志もお花を贈ってくれていた。あきら・小夜子・和実・淳・胡桃で1つ、冬子と政子で1つ、届いていた。全部祭壇に飾らせてもらう。
 
15時半すぎてから千里と小坂先生・美由紀・日香理、それに直美・民雄夫妻が到着した。
「みなさん何か食べました?」
「うん。車内で食べたよ」と美由紀。
「仕出し、まだ残ってるけど食べる?」
「食べる!」と言って、美由紀と日香理はお弁当を食べている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「あなたが美由紀さん?」と早紀。
「あ、早紀さんですね?」
「噂はかねがね青葉から」と口を揃えて言う。
「ちょっと、ちょっと、何か火花が散ってるの感じるんですけど」と咲良。「取り敢えず仲良くしましょ」と美由紀。
「そうね。じゃ握手」と早紀が言って、ふたりは握手をしている。
「なんか怖いよー」と日香理。
 
美由紀たちが着いた少し後、菊枝が車で到着した。
が、菊枝の車から降り立った人物を見て、青葉は驚いた。
「師匠!いらしてくださったんですか?」
それは青葉と菊枝がいつも師匠と呼んでいる高野山の瞬嶽老師であった。「ご無沙汰しておりまして、申し訳ありません」と青葉が言う。
「うん。たまには山を下りるのもいいかなと思ってな」
 
↓ ↑ Bottom Top

瞬嶽は年に1度山を下りるかどうかで、ふだんはずっと高野山の山奥の庵で寝起きし、日々山野を駆け巡って修行をしている。年齢は青葉も菊枝も知らないのだが「たぶん90歳は超えているはず」と菊枝は言っていた。
 
青葉の「先生」と聞いて、朋子が
「娘がお世話になっておりまして」
と挨拶する。すると瞬嶽は
「いや、こちらこそ、うちの弟子がお世話になっているようで」
などと挨拶する。
 
やがてお通夜の儀式が始まる時刻になる。££寺のご住職・川上法嶺が到着し、導師の席に就こうとした時。
 
ピクッと何かに気付いたような顔をすると、会場を見渡し、瞬嶽の姿に目を留めた。慌てて寄ってくる。
 
「御老師はもしや、高野山の★★院の瞬嶽様では?」
「うん。そうだけど」
「やはり!修行時代にお世話になりました。☆☆寺で修行をしたので」
「ああ、40-50年くらい前にそこにいたなあ」
「故人とお関わり合いがございましたか?」
「うん。今日の喪主は私の弟子でね」
「そうでしたか!」
青葉も寄ってきている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ご住職、うちのお師匠さんをご存じでしたか?」
「私が修行をした寺の最古参老師であられたのです」
この住職は祖母と同級だったから66歳のはず。その住職が修行していた時代に最古参だったというのは、ほんとに瞬嶽師匠は何歳なんだろう?と青葉は思った。
 
こんなお偉い方がいる場所で、とても自分が導師などできないと法嶺が言うので「仕方ないな。愛弟子の家族の葬儀でもあるし、私が導師をしてあげるよ」と瞬嶽は言い、導師席についた。そらで遺教経を唱え始める。慌てて法嶺が経本を開けて一緒に唱和しはじめた。
 
通夜が始まってまもなく、新たな来客があった。冬子である。
「来て下さったんですか!?でも新曲キャンペーンで全国飛び回ると言ってたのに?」
「今日はキャンペーン1日目で札幌と青森に行ってきた。終わったあと新幹線で盛岡まで来て、駅前でレンタカー借りてここまで走ってきた」
「わあ」
「明日は朝いちばんに仙台のFM局に出るから、7時半までに仙台に移動すればいい。他のメンバーは仙台泊まりなの」
「お疲れ様です。運転、気をつけてくださいね」
 
↓ ↑ Bottom Top

やがて焼香が始まる。青葉は朋子とともに、焼香してくれた人にお辞儀をしていた。
 
青葉が喪主席からあまり動けないので、桃香と千里が裏方でいろいろ動いてくれていた。宿の手配、仕出しの数の決定、など次々と状況変化するものの対応や会計などは桃香がどんどん仕切っていた。参列者からいろいろ尋ねられたりすることに関してはその千里がひとつひとつ対応してくれていた。やがて通夜は終わり、食事の後、みんなで宿に引き上げる。宿への移動は宿がマイクロバスを出してくれた。冬子は疲れたと言ってすぐに部屋に入っていた。
 
「青葉、いつも4時に起きてるんでしょ?私がまだ起きてなかったらたたき起こしてくれる?」と冬子。
「了解」と青葉。
 
↓ ↑ Bottom Top

瞬嶽師匠の部屋に、菊枝、直美、青葉の3人が集まった。
「私もすっかりご無沙汰しておりました」と直美が言う。
「ひょっとしたらもう下界に降りてくるのは最後になるかも知れんという気がしてね」
「師匠?どこかお体がお悪いのですか?」と心配して直美、「あ、大丈夫。もう20年前から師匠は毎回こういうこと言ってるらしいから」と菊枝。
「まあ、20年前から言ってるけど、そろそろやばいかもという気はしている」
「師匠、もしかして菊枝と私に印可をくださったのは、その絡みですか?」と青葉。
 
「うーん、ふたりの場合は最初に見た時から、もう印可のレベルをとうに超えてたんだけどね、山園は学校を出てからかなと思っていたから。ま、川上は今回山園のついでだな。川上が学校を出るまではさすがに私も生きてないだろうから」
 
↓ ↑ Bottom Top

しばらく師匠や菊枝・直美などと話してから美由紀と日香理の部屋に行くと、小坂先生も来ていた。そして青葉が廊下を歩いて移動したのに気付いて、桃香と千里、母、そして彪志親子まで入ってきて、六畳の部屋がいっぱいになってしまった。
「突然いっぱいになったね」と日香理。
「とりあえず自己紹介〜。まず青葉からどうぞ」と美由紀。
「あ、えーっと。しがない中学生霊能者の川上青葉でーす」
「青葉の母です。しがない保険の外交です」
「青葉の姉の桃香です。しがない理学部大学生です」
「同じく姉の千里です。同じく理学部大学生です」
「青葉の親友の美由紀です。美術部所属」
「同じく親友の日香理です。コーラス部所属」
「川上さんの担任の小坂です。英語教師です」
「青葉の恋人の鈴江彪志です。高3で目下受験生です」
「彪志の父です。自動車関係のサラリーマンです」
「彪志の母です。スーパーのレジ係です」
 
↓ ↑ Bottom Top

「なるほど!では彪志さんに、青葉のどこに惚れたのかを」と日香理。「また、その話になるのか!」と青葉。
 
その夜は23時頃まで、その部屋からは明るい笑い声が響いていた。
 
翌日。冬子は無事4時に起きて仙台へと出発していった。青葉が起こしに行ったら、ちょうど目覚めたところだった。20分ほどヒーリングしてから送り出した。
 
朝から気仙沼の白石さんが来てくれた。青葉の父を知っている人2人と連絡が取れたということで、後から来てくれるという話だった。また早紀の母が昔の同級生などに連絡をとりまくった結果、お姉さんが青葉の母(礼子)の同学年だったという人に辿り着き、そこから連絡が広まって、結局礼子と親しかった人で、比較的近くに住んでいる人が県内で3人見つかり、交通費は全部出すということも伝えると、午後から来てくれるということであった。一ノ関駅に集結することになり、早紀のお母さんが自分の車で迎えに行ってくれることになった。
 
↓ ↑ Bottom Top

青葉と交流のあった霊能者さんが数人来てくれた。博多から渡辺さん、神戸の竹田さん、静岡の山川さん、東京の中村さん、栃木の村元さん。おそらく菊枝から連絡が回ったのであろう。霊能者以外でも北海道の舞花、東京の和実と淳、あきらと小夜子、更に政子まで来てくれた。菊枝と、彪志のお母さんが一ノ関・花巻と大船渡の間をエスティマで往復してくれて参列者を運ぶことになる。
 
葬儀は今日遠くから来てくれる人もあるので午後から始めることになっていた。
 
葬儀が始まる時刻になると未雨の同級生が30人ほど、青葉の元同級生やコーラス部の人達が合計50人ほどやってきた。柚女の姿もあった。また祖父母の知り合いのお年寄りたちが大量に押し寄せて来た。参列者の数は軽く150人を越え、青葉が「参列者は20人もいかない」と言っていた予想は完璧に外れてしまった。会葬御礼については、これはかなり必要かもと昨日の段階で判断した桃香が160人分用意してもらうよう指示を出していたので、何とかギリギリ足りた。(最後は菊枝や直美・彪志など「身内」数人にいったん返してもらってそれで何とか間に合わせた)
 
↓ ↑ Bottom Top

葬儀開始直前に青葉が泣いていたので、心配して和実が「大丈夫?」と訊いたが、そばに付いていた彪志が「あ、心配しなくていいですよ。うれし涙だから」
と言う。青葉も頷いている。「だって、こんなにたくさん来てくれるなんて」
 
祭壇には5つの骨箱が並べられている。また瞬嶽が導師を務め、££寺の法嶺と、近隣の§§寺の住職が脇導師・諷経(ふぎん)を務めて、葬儀は厳かに始まった。昨日はドレスの喪服を着ていた青葉は今日は母(朋子)とともに和服の喪服を着ている。朝から着付けしてもらったのであった。焼香してくれる人達にひとりずつお辞儀をする。時々言葉を掛けてくれる人がいるので、各々受け応えしていく。
 
参列者全員の焼香が終わったところでいったん葬儀閉会とする。
 
↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁 次頁目次

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8 
春楽(2)

広告:國崎出雲の事情-8-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや