【女子中学生・ひと夏の体験】(1)

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司は夜中に何かの気配を感じて目を覚ました。
 
耳を澄ませると、居間(*1)のほうで、母のうめき声が聞こえる。まさか強盗か何か?この日、兄で高3生の隼(はやと)は修学旅行で不在であった。父はどうしたのだろう?司は自分が対応しなければという決意をした。
 
それで野球のバットを持ち、部屋を出て居間に行く。すると、父が母の上に覆い被さるようにして、身体を動かしていた。そして母がうめき声をあげている。どうも強盗とかではなさそうだ。
 
「何してるの?」
と司は声を掛けてしまった。
 
びっくりしたように身体を起こした父はまっ裸である。そしてペニスが物凄く大きくなっていて、驚いたようにしてこちらを見ている。母は裸で布団に寝ていた。母の大きな乳房も見えた。
 
司は、まずい所に来てしまったというのをようやく認識する。
 
それでバットを持ったまま、無言で自分の部屋に帰って襖を閉めた。
 
ドキドキしている。
 
もしかして・・・お父ちゃんとお母ちゃん、“セックス”してた!?
 
それで保健の時間のスライドだけではいまいちよく分からなかった“セックス”というものの、やりかたというのが理解できた。
 

(*1)司の兄弟は下記である。
 
1982 航わたる 大4(札幌)
1984 拓ひらく 大2(旭川)
1986 隼はやと 高3
1990 司つかさ 中2
 
福川家は2LDKSであるが、上の2人が既に独立しているので、現在は2つの洋室を三男の隼(はやと)と四男の司(つかさ)が1つずつ使用していて、両親は居間に寝ている。それでこのようなことが起きたのである。
 
年齢を見て想像が付くように、実は隼と司の間にもうひとり妊娠していた。女の子ですよと言われて、両親は初めての女の子なので大喜びで、生まれる前から“司(つかさ)”という名前を付けていた。しかし流産してしまったのである。週数が進んでからの流産だったので、お葬式もしている。
 
そして2年後生まれた四男(男の子だと言われてがっかりした。医師に「ちんちん切って女の子にしてもらえません?」と言って「だめです」と言われた)に、長女に付けるはずだった“司”の名前を流用してしまった!!
 
それで上の3人が男らしい名前であるのに対して、司だけ中性的な名前なのである。
 
両親は小さい頃、司に女の子の服を着せていたらしいが(写真は残っている)、小さい頃のことなので、司自身は全く記憶が無い。
 

7月1-2日(木金).
 
S中2年生は近隣の、青年自然の家に1泊2日で夏季教室に行く。
 
木曜の朝、学校に集合し、クラス単位3台のバスで現地に向かった。
 
付き添いの先生は、1組担任の吉永先生(♂)、2組担任の緒方先生(♀)、3組担任の友永先生(♂)、体育の広沢先生(♀)・香田先生(♂)、学年主任の山原先生(♂)の6名である。
 
こういう行事には、しばしば保健室の清原先生が付き添うのだが、清原先生と山口教頭は、来週の3年生修学旅行に付き添う予定なので、2年生の夏季教室には広沢先生と山原先生の付き添いになった。さすがに2週連続では体力がもたない。
 

到着した日の午前中は、まだ山の上にある自然の家には行かず、麓にあるレジャープール UHO (ユーホー。遊泳池→UH, O=Ooho-nay:近くを流れる大鳳川の古名。アイヌ語で“深い川”という意味で“深川市”の語源ではという説もある:深川市の語源には定説が無い)に行った。
 
ここで午前中はプール遊びをする。プールは25m×6レーン(深さ1.2m)と、長円形の遊泳プール(深さ0.6m)があり、自由に遊んでということだった。実はまだ夏休み前だし平日なので空(す)いているのである。遊泳プールに隣接して高さ8mのミニスライダーもあるので、ひたすらそれを滑っている子もいた。
 
千里や沙苗は今更だが、セナや雅海もここ1ヶ月ほどの水泳授業で女子水着にかなり慣れたので、恥ずかしがらずに水着姿で遊んでいた。あまり泳げないセナや雅海は、遊泳プールの方で、水浴びでもするかのような感じで遊んでいた。千里も遊泳プールのほうで恵香や美那たちとおしゃべりしていたのだが、玖美子・沙苗が「千里、泳ぐぞ」と言って。25mプールに連行。ひたすら泳ぐハメになった。
 
「千里、授業の時より速い」
と沙苗や工藤君に指摘される。
「千里は授業の時は不真面目だから」
と玖美子が暴露する。
「なんでそういう所で手抜きするのか理解できん」
と工藤君は言っていた。
 

「でも“きみよ”ちゃんは女子水着を着けなくてよかったの?胸曝すの恥ずかしくない?」
 
「ぼくは胸無いから大丈夫」
と工藤君は言っていた。
 
3組の男子に1名、ブラ跡があることを指摘されて恥ずかしがっている子がいた。
 
「なんか男の娘予備軍が多いなあ」
と工藤君。
 
「13歳って、男か女のどちらかに進化しなければならない年齢かなあと思うのよね。でもまだ塀(へい)の上を歩いている子たちがいる」
と千里は言う。
 
「祐川はとうとう落ちちゃった」
と工藤君は溜息をつきながら言う。
 
「男子の2割くらいは女子化願望があるのかもね」
と玖美子。
 
「その数字はわりと当たっている気がする」
と工藤君は言っていた。
 
「そしてきっと女子の半数には男子化願望がある」
と沙苗が言うと
「だから女の子が『男の子になりたい』と発言しても誰も奇異に思わない」
と玖美子は言う。
「男の子も普通に『女の子になりたい』と言っていい時代が来るといいね」
と千里。
 
「女子が男装してても誰も単なるコスプレの類いだと思うのに、男子が女装してると、変態だと思われる」
と沙苗は嘆く。
 
「それも別に普通のことだとみんなが思う時代が来るといいね」
と玖美子は言った。
 
「それエマ・ユング(1882-1955)が『内なる異性』の中で似たようなこと書いてるから、きっと昔からそういう感覚があったのだと思う」
 
「でも“きみよ”ちゃんも恥ずかしがらずにセーラー服で学校に出てくればいいのに。一度セーラー服でジャスコに居るの見たことあるし。セーラー服自体は持ってるんでしょ?」
と玖美子が“かまをかける”。
 
「誰か似た女の子の見間違いじゃない?」
と工藤君は冷静にスルーした。
 

プール遊びが終わった後は、そこのレストランで、プールで冷えた身体を暖めるのも兼ねて、ラーメンを食べる(自主的におかわりしてる子や、チャーハンとかカレーとか追加している子も居た)。
 
そして再度バスに乗って山を登り、青年自然の家に入った。
 

さて、到着してすぐ、小さな事件が起きた。
 
工藤君が男子トイレに入ろうとしたら
「君、女の子が男子トイレを使ってはいけない」
 
と施設の人に注意されたのである。
 
工藤君は「ぼく男です」と反論しようとしたが、近くに居た優美絵が
 
「きみよちゃん何やってんのよ?すみませーん。この子近眼で」
と言って女子トイレに強制連行してしまった!
 
「まずいよぉ」
と言いながら、工藤君は女子トイレ名物の待ち行列に並ぶ。しかし並んでいる他の女子たちが彼を見ても何も言わない。
 
それで順番が回ってきた所で個室に入って用を達した。
 
「やはり、きみよちゃん、いつも女子トイレ使ってるのね」
と恵香。
「女子トイレなんて使ったの初めてだよぉ」
と本人は言うが
「だって、待ち行列に慣れてる感じだったしね」
と優美絵は言った。
 
そういう訳で、彼はこの夏季教室中、ずっと女子トイレを使わなければならない!?
 
(さすがに1人では入れないので、恵香や優美絵が一緒に行ってあげた)
 

午後からはまず野鳥を映像と鳴き声で紹介する映画を上映したが、かなりの生徒が眠ってしまっていた(午前中2時間ほど泳いでるから仕方ない)。
 
ティータイムの後、陶芸教室をした。茶碗やマグカップなどを制作する。これは後日窯(かま)で焼いて、“割れなかったものを”渡してくれる(PTAの人が車で取りに行く)。
 
夕食に石狩鍋を食べた後はお風呂タイムとなる。
 

この夏季教室に参加している千里は完全女性体の千里Rである。
 
千里Rは自分は女であるという自覚があるので、何も考えずに普通に女湯に行く。沙苗は葛藤はあるものの、自分は本当の女の子になるんだからという気持ちなので、気合を入れて女湯に行く。
 
セナはおどおどしていたが、恵香に
「セナちゃーん。一緒にお風呂行こうね」
と言われて、女湯に連行された。
 
雅海は「ぼくどっちに行けばいいのかなあ」と悩んでいた。
 
男湯に入るのは無理な気がする(“現在”ちんちん無いし)。でも女湯に行っていいのかなあ。プールの女子更衣室まではいいとして、とても女湯に入る自信は無いよう。ぼくおっぱいないし・・・・などと迷っていたら、体育の広沢先生(女性)が声を掛けてくれた。
 
「祐川さん、女性用の個室シャワールームに来ない?」
「行きます」
 
それで雅海は、広沢先生のおかげで女性専用の個室シャワールームに行った。そして1人だけで汗を流すことができたのでホッとした。実はここは生理にぶつかってしまった女性用で、雅海以外にも数人の女子生徒が使用した。
 
でも次の順番待ちをしていた女子生徒から
「ああ、まさみちゃんも生理だったんだ?」
などと声を掛けられた!
 
雅海は絶対噂を広められるぞと思った(正解!)
 

なお、司は普通に?男湯に行ったが、脱衣場でブラ跡があることを指摘されなかったので、よかったぁと思った(プールで散々指摘されたので今更である)。
 
3日前からブラジャー着けないようにしてたから、消えたと思ったのになあ。
 
それで浴場に入った。集団浴場に入ったのは、過去に4度しかない(現代の子供たちは集団浴場の経験が少ない)。小学校の時のキャンプ体験・宿泊体験・修学旅行で1度ずつ男湯に入ったのと、先日貴子さんに連れられて女湯に入ったのとである。
 
先日の女湯の体験が強烈だったので、ちんちんのある人たちに囲まれて入浴するのが変な気分だった。もっとも今は自分にもちんちんがあるんだけど。
 
洗い場で身体を洗い、その時、お股も洗うけど、ここが女の形だった時に洗った時のことを思い出す。あれせめてあと24時間女の子体験を続ければよかったかなという気もした。ここが割れ目ちゃんになっていた時に洗ったの、気持ち良かったぁなどと思う。あの後は毎日自宅のお風呂でちんちん洗ってるけど、もう一度あの感覚を味わいたい気分だ。でも次に女の子にしてもらったら、もう男には戻してもらえない気がするし(正解!)。
 
セーラー服で通学する自分とか想像するけど、やはり自分にはとてもできない気がする。
 
性別を変えるのって、たぶん物凄く強い意志が必要だという気がする。
 
だけど、小学校の時には何も意識してなかったけど、ちんちんの無い人たちとの入浴を経験した後で、あらためてまたちんちんのある人たちと入ると、入浴者たちのちんちんが、みんな大きいなあというのを感じた。司のちんちんはかなり小さい部類に入る。皮がかぶっている子とかぶってない子がいる。自分のがいつもかぶっているので、ちんちんが発達すると、かぶらなくなるのだろうかとも思ったが、よくは分からない。人に訊くようなことでもないし!
 
同じ野球部の前川君のちんちんが凄く大きくて、皮もかぶっておらず先端が露出しているので、なんかすごーいと思った。ぼくのちんちんも、その内あんなに大きくなるのかなあ。それとも僕のはずっと小さいままかな。個人的には小さいほうがいい気がするけど。小さいほうが女の子の服を着る時に隠しやすいし。
 
貴子さんから、ショーツの中に後ろ向きに収納する技を教えてもらったけど、前川君のみたいに大きいと、後ろ向きでも、とてもショーツには収まらない気がする。
 

お風呂からあがった後は、任意参加で、星空教室が行われた。
 
この日の日没は19:12, 日暮は19:57、天文薄明終了は21:33、また月出は18:06(20時の月齢13.6)である。星空教室は20時からで、室内だが天井や壁がガラス張りのソラシドーム(空視dome)を使用する。
 
日暮れにはなっていて地上は暗いものの、まだ天文薄明しているので、空は明るく、暗い星は識別できない。しかし明るい星はかなり見える。灯りを落としたドーム内で、施設の指導員さんが、実際の星空の、明るい星や星座などを解説してくれた。
 
(室内なので蚊の心配が要らないのが良い所)
 
まずは目立つ北斗七星、そして夏の大三角形(デネブ・アルタイル・ヴェガ)と説明されると、みんなそのくらいまでは識別できるので、興味深そうに解説を聞いていた。天の川を挟んだ彦星(アルタイル)と織姫星(ヴェガ)も解説する。
 
またこの日は西の空に物凄く明るい星があり
「あの星が木星です」
と説明されると
 
「すごーい。あんなに明るい星があるなんて」
とみんな感心していた。
 
「まあ金星の次に明るい星だね」
「金星は見えないんですか」
「今の時期は“明けの明星(あけのみょうじょう)”になるから、朝3時なら東の空に見えるよ」
と言われる。
 
でも誰もその時刻に起きる自信のある子は居なかったようである。
 
(明日2004.7.2の日出は4:00 夜明3:14 しかしここは東の空が山で隠れるので、明けの明星を観測するには不利な地形である。金星が地平線に出てくるのは
 
1:54だが、ある程度の高度になるまでは、ここからは見えない)
 

星座教室は21時で終了し、各自部屋に帰った。
 
実はこの部屋割を決める際に少し揉めた。
 
ここの宿泊室は4人部屋が25室ある。各クラスは男子15人・女子12人なので、男子に4室・女子に3室ずつ割り当てられていた。つまり3クラスで21室使用する。その他に引率の先生が男女なので1室ずつ割り当てられている。
 
男:吉永・友永・香田・山原
女:緒方・広沢
 
さて。
 
2年1組は4月の段階での在籍数は確かに男15女12だったはずなのだが。
 
「何か人数おかしくない?」
と上原君は言った。
 
部屋割はクラス委員の恵香と上原君に任されている。
 
「雅海を女子でカウントすると男14女14になってしまう」
「各々4部屋必要じゃん。7室しか割り当てられてないのに」
「男女2人ずつの部屋を作る?」
「それは保護者から抗議される」
「それ以前にお互い安眠できないよね」
「他のクラスに頼んで男子2人を1人ずつ引き受けてもらうしかないのでは?」
「千里を呼ぼう」
 
それで話し合いの席に千里が呼ばれる。
 
「小春の分はどうにでもするから、雅海ちゃんだけ考えればいいよ」
「そう?」
 
「雅海はまだ半分は男の子だからさ」
「そうなの?でもちんちんは無いよね?」
 
「まだ女の子の器官は無いはず。だから今は男の子とも女の子とも同室になれる微妙なポジションなんだよ」
「ああ。男性器は除去したけど、女性器の形成まではしてないのか」
「そのあたりは個人情報だから私も話せないけど、彼女は今ほぼ中性状態」
 
「だけど、祐川さんと同室では男子たちが安眠できないよ」
と上原君。
「女子は歓迎すると思うけど、女子の部屋には余裕が無いのよねー」
と恵香。
 
そうだね。“手厚く歓迎”されそうだ。まずは解剖して!!
 
「だからさ、彼女と上原君と工藤君と3人の部屋ということにしたらダメ?」
と千里は訊いた。
 
「あぁ・・・」
 
「僕は祐川さんと一緒でも平気。工藤君もたぶん平気」
「でしょ?」
 
「上原君も工藤君も男の娘予備軍だもんね」
と恵香が言うと
 
「僕は女の子の服とか着ないよ!」
と上原君は焦ったように言った。
 

でもこの件を工藤君に話すと
 
「ぼくは祐川さんがよければ平気だよ」
と言う。雅海本人も
 
「上原君・工藤君なら、ぼくも安眠できると思う」
と言うので、その3人で部屋を構成することにした。
 
ベッドは窓際に2つ、入口側に2つ置かれているが、窓際のベッドのひとつに雅海を寝せ、入口側のベッドに上原君と工藤君が寝る。更に上原君はホワイトボードを借りてきて部屋の真ん中に置こうと言った。
 
「僕らは決して窓側を見ないけど、そういうのがあると、少しは安心でしょ?」
「ありがとう。ごめんね。手間掛けて」
さ雅海は感謝していた。
 

が!
 
更に変動があったのでる。
 
上原君は3組クラス委員・瀬戸君から相談を受け、上原君と3組の福川君をトレードすることにしたのである。福川君本人は
 
「ぼくは男の子だから普通に男子部屋でいい」
と言ったのだが
 
「いや、福川は男の娘疑惑がある」
と言われ、雅海と並んだベッドに寝せることにした。
 
「ぼく別に女装とかもしないのに」
と福川君は言っていたが
「ブラ跡があるのが女装している何よりの証拠」
と言われる。
 
一応、福川君も雅海も同室は構わないと言った。
 
「福川、祐川、工藤、と男の娘3人で問題無い部屋構成になったな」
と上原君と瀬戸君は言っていた。
 

が!!
 
「ちょっと待て。ぼくは男の娘じゃない」
と工藤君が抗議した。
 
「でも男の娘と同室でもいいでしょ?」
「このままだとぼくまで男の娘だと思われる」
「いや既に工藤は男の娘だと思っている奴は多い」
「だって剣道の大会には女子として出たんでしょ?」
「ちゃんと男子に出たよぉ。なぜそういう話になってる!?」
 
上原君や瀬戸君は、工藤君がこの夏季教室中、女子トイレを使用しているのは知らない。恵香は工藤君を女子トイレに連れ込んでいる張本人のひとりだが、ここではそのことは言わない。
 
しかし
「勘弁して〜」
と工藤君が嫌がるので、
 
「俺が代わろうか?」
と、ちょうど通り掛かった2組の鞠古君が申し出た。
 

鞠古君は男の娘ではないが、病気治療のため女性ホルモンを投与されているのでバストがあり、ブラジャーも着けている。
 
「ああ、じゃブラジャー組3人ということでいいかもね」
ということになり、結局この部屋には
 
祐川雅海、鞠古知佐、福川司、の3人が寝ることになったのである。
 
工藤君は、鞠古君が寝る予定だった2組男子の部屋に行く。
 
結局クラスを超えた移動をしている。でも工藤君は
「この部屋、男ばかりだけど大丈夫?」
と訊かれた!
 

この雅海・司および鞠古君の3人は全員ブラジャーを着けている。
 
雅海と司は女の子ショーツ、鞠古君はトランクスである。司は最初、男の下着を着けていたのだが、鞠古君から「女物も持って来てるんでしょ?」と言われて、女の下着に替えてしまった。
 
ここで司がまだブラジャーの着け方が下手なのを、雅海と鞠古君が指導してあげていた!?
 
なお、司は男湯に入ったが、雅海と鞠古君は女子用の個室シャワー室を使わせてもらった。鞠古君は、ちんちんもあるし、おっぱいもあるので、男湯にも女湯にも入れない。姉からはちんちん全部除去して女湯に入れるようになれば?と言われるが「拒否」している。鞠古君はタックも知っているが、女の子になりたい訳ではないので、自分の男性器をタックすることはない。
 
トイレは、雅海は女子トイレを使用し、鞠古君と司は男子トイレを使用する。今日午前中のプールで雅海は女子水着、司は男子水着、鞠古君は女子水着の上に男子水着を重ね着した。
 
「キャッチャーは女房役というけど、ほんとに誰かの女房になっちゃったりして」
「ぼく別に男の子には興味無いんだけど」
「でも多分女の子にも興味無いよね?」
「うーん・・・・・」
 
「でも司ちゃん、女子用スクール水着を着たいんじゃない?授業で着てもいいように、ぼく広沢先生に言ってあげようか?女子用水着は持ってるんでしょ?」
と雅海は言った。
 
「持ってるけど、まだ道を踏み外したくないからパス」
と司は言う(←このメンツなので気を許して持っていることは認めた)が
 
「いや、とっくの昔に道を踏み外していると思う」
と鞠古君は言い、
 
「うん。既に後戻りできない所まで来てる気がする」
と雅海も言った。
 
鞠古君はふたりに
「まさみちゃんも、つかさちゃんも、2学期からは女子制服で登校しない?」
と言ったが、雅海は
「恥ずかしいよぉ」
と言い、司は
「そんな恥ずかしいこと出来ない」
と言った。
 
「つまり2人とも嫌ではないんだな」
と鞠古君は呆れるように言った、
 
「ちなみに2人も女子制服は持ってるんでしょ?」
と鞠古君が訊くと
 
雅海は「練ってはいるけど」、司は「えっと・・・」と言い、鞠古君は頷いていた。
 
でもこの夜3人は安眠できたようである。別に女の子になりたい気持ちは無い鞠古君も、この部屋では安心してブラジャーの装着ができるので助かっていた。
 
(鞠古君はやむを得ずブラを着けているだけなので、寝る時は外して寝る。雅海と司は女子下着を着けていることが快感なので、着けたまま寝る)
 

夏季教室2日目の午前中は、ウォークラリーをやった。1組は28人を5〜6人の班5つに分割した。
 
1.秋田・菊地・飛内・恵香・絵梨・小春
2.上原・工藤・中山・蓮菜・優美絵・千里
3.大越・雅海・東野・玖美子・沙苗・穂花
4.小沢・曽川・増田・世那・佐奈恵
5.加藤・高橋・三木・萌花・美都
 
要するに単純名簿順である。
 
「やはり男女比がおかしい」
「3班は男2女4だ」
「2班は全員女子だ」
「僕も女子なの?」
と中山君が焦って言うが
 
「ひろきちゃんは、振袖を着て藤娘を踊ったのが目撃されているのだが」
 
「あれは姉貴が公演日の前日に風邪引いてさぁ、他に適当な代役がいないからあんたやってと言われて振袖着て舞っただけだよ。マジ恥ずかしかった」
 
「そうか。中山君のお母さんって日本舞踊の先生だったね」
「それで習ってるんだ?」
「習っているというか、やらされているというか」
「女舞を踊れるのね」
「男舞・女舞、どちらもやらされてる」
「振袖着てる時ってトイレどちら使うの?」
 
「男トイレ使うよぉ。ぼく男だもん」
「振袖で男子トイレに入るんだ!?」
「立ってできるの?」
「無理。個室を使う」
「だったら女子トイレでもいいじゃん」
「ぼく男なのに女子トイレとか使えない」
「振袖着てる時は女子トイレでもいいと思うけどなあ」
 

そういう訳で、上原君と工藤君が女子としてカウントされた件はスルーされた!
 
上原君についても、昨夜の女子たちの“情報交換会”の結果、上原君の女装目撃情報が10件以上あることが確認された!
 
女子たちの間では次に「落ちる」男子は誰かというのが話題になっている。
 
「面倒臭いから、クラスの男子全員性転換しちゃおう」
「きみよちゃんは嬉し泣きしそう」
「でも飛内君は女になるのは無理な気がする」
「ああ。何人か無理っぽい子はいるね」
「飛内君はちんちん切られたらショックで泣くかもね」
「とりあえず全員ちんちん切っちゃって、どうしてもセーラー服が似合わなかった子には、ちんちん返してあげるというのでは?」
「返されてもどうやってくっつけるのよ?」
「接着剤か何かで」
 
「セーラー服を着せてみて似合ってる子のちんちんを切ってあげるほうが実用的な気がする」
という、まっとう?な意見も出る。
 
「破壊検査と非破壊検査の違いだな」
 
「ああ、男子には全員セーラー服テスト受けさせるといいかもね」
「たぶん男子の3割は性転換コース」
「それ女子も学生服テストしようよ」
「だぶん女子の半数が性転換コース」
 

ともかくもウォークラリーは5〜6人の班でスタートしたのであった。
 
“性転換は無理”と女子たちから噂された飛内君や、“日本一頼りないクラス委員”の恵香が入っている1班(秋田・菊地・飛内・恵香・絵梨・小春)は、絶対的に信頼できる小春がGPSを持ち、無事帰還して、問題も全員満点だった。
 
無難な人が集まっている5班(加藤・高橋・三木・萌花・美都)も道に迷うことなくちゃんと歩いて普通に帰還した。
 
極度の方向音痴・機械音痴でGPS係だったのに班を迷子にした前歴のあるセナが入っている4班(小沢・曽川・増田・世那・佐奈恵)は機械に強い増田君がGPSを持ち、統率力のある佐奈恵がしっかり班をまとめて、ペースは遅かったものの無事帰還した。
 
“男2女4”と言われた3班(大越・雅海・東野・玖美子・沙苗・穂花)は、その男2の大越・東野がどちらもあまり機械に強くなかったものの、玖美子・沙苗というしっかり者の女子がうまく班を統率し、GPSも玖美子が持って、迷わず帰還した。
 

さて、“全員女”と言われた2班(上原・工藤・中山・蓮菜・優美絵・千里)だが、6人の中でいちばん機械に強そうに見えた上原君がGPSを持っていたのだが、上原君はGPSを逆さまに持っていた!?ということが途中で発覚する。
 
目の前には深い谷があり、手摺りの無い細い橋が架かっているが、とてもそこを渡る勇気は無い。
 
「なんでこんなにルートを外れていくんだろうと思ってた」
と上原君。
「おかしいと思ったら早めに言いなよ〜」
と中山君。
「ごめーん」
 
優美絵が全員の顔を見回してから言った。
「ここはGPSを千里に持ってもらおう」
 
「え〜〜〜!?」
 
「私が機械に触ったら静電気で壊れると思う」
と千里。
 
千里がこれまで数々の機械を壊しているのは、みんな知っている。電流のテスターでさえ破壊している(つまり千里の電圧は電力会社の電気100Vより遙かに高い!)。
 
「工藤君、そのベルトをくれない?」
と優美絵が言う。
「ベルト?」
「それアルミだよね?」
「うん」
「それを千里に握らせて、地面に電流を放出する」
「アースか!」
 

それで千里は右手首にアルミ製のベルトを巻き付けられ、地面に這わせるようにする。そのアースしている右手でGPSを持った。
 
「とにかく自然の家に帰ればいいよね?チェックポイント無視して」
「それでいい」
と工藤君。
 
「じゃ私に付いてきて」
「よし行こう」
 
それで千里に全員付いていくと、千里は片側が絶壁とか(鉄の鎖があるのでそれを握って歩く)、深そうな池のそば(手摺りがあるから落ちる心配は無い)とか、物凄い道を通ったものの、わずか10分で自然の家に帰り着いた。
 
「やったぁ!無事生還!」
「無事生還ってあんたたちどこかショートカットした?」
とゴール係の緒方先生が訊く。
 
実は“戻って来た”のは、この班が1番だったのである。
 
「完璧に道に迷って」
「なんか凄い所通りましたけど、1組2班全員、無事生還しました」
「結構な冒険感があったね」
 
「道に迷ったの!?迷うような道は無いはずなのに!分れ道には全部案内板があったはずだし」
「すみませーん」
 
ということで2班はリタイア扱いになったものの、死者ゼロ!?で生還することができたのであった。
 
なお上原君はクラス委員の辞任を申し出たものの、先生が慰留し、恵香が「私よりはマシ」と言うので、留任することになった(4年前のセナと同じパターン)。
 

ウォークラリーが終わった後は、お昼にカレーを食べてから、体育館で1時間ほどドッヂビーをやって楽しんだ。
 
ドッヂビーとは、ドッヂボールとフリスビーのカバン語で、フライング・ディスクを使用したドッヂボールである。但し複数のディスクが同時に飛び回るので思わぬ所からディスクが飛んできて、やられてしまうことがある。怪我する心配も少なく、結構汗を掻けるので、レクリエーションでよく行われる。
 
その後、清掃をして、クラス単位でバスに乗り、学校に帰還した。
 

7月3日、“千里”はぶつぶつ言いながら札幌行きのバスに乗っていた。
 
留萌6:30-9:09札幌駅前BT
 
この日は千里の母の父・奥沼大治の69歳の誕生日で、数えでは70歳なので古希の祝いをしようという話があったのである(2004年1月で数え年70歳になっているので本当は2004年1月にやってもよかったはず)。
 
61:還暦 70:古希 77:喜寿 80:傘寿 88:米寿 90:卒寿 99:白寿 108:茶寿
 
本来は娘の津気子が出るべき所だが、大人が行くとあれこれ付き合いでお金がかかるので、千里が代理出席することになった。また津気子は実は実兄で大治と同居している清彦と相性が悪いので、あまり顔を合わせたくなかったのもあった。
 
2004年時点の系図↓

 
津気子は千里に言った。
「伯父さん・伯母さんはあんたのこと男の子と思ってるからさ、悪いけど男の子のふりしてくれない?」
 
「せっかくだからこの機会にカムアウトを」
「勘弁して〜」
 
それで男装で出席するという話になって、千里はそれも極めて不愉快なのである。
 

舞台裏では“どの千里”に行かせるか、調整が大変だった。
 
千里Rは、7月1-2日に夏季教室に行って来たばかりなので「きつーい」と言って勝手に消えてしまった!千里Yは、土日は基本的に光辞の朗読をすることにしているので、P神社から動きたくないようであった。
 
「男装してと言われているし千里BをW/B(White on Blue = Aqua)モードで起動してもらえませんか」
と千里GはA大神に頼んだ。
 
「Bはハイバネート(冬眠)してるよ。たぶん10年くらい先まで目覚めない」
「そこを何とか起こしてください」
「じゃ起こすけど、あまりエルネギーゲージが無いから、途中で消えたらあんたたちで何とかしてよ」
「分かりました。その時はVが代理しますから」
とGが言うと、唐突に指名されたVは
「え〜〜〜!?私、男装する自信無いよぉ」
と情けない声で言った。
 
「だってあんたちんちんあるし」
「自分でも摘まめないくらい小さいんですけど」
「あんたもそろそろ性転換手術を検討した方がいいな」
「痛そう・・・」
「ヴァギナはあるし。単にちんちん切るだけじゃん」
「自然消滅を狙いたい」
 
「きーちゃんにやってもらえば痛くないけど、あんたの身体をきーちゃんに見せる訳にはいかないしなあ」
「きーちゃんに私たちが複数居ることをばらしたくたくない」
 
「まあね。そうだ。この機会だから、Y・Vの胸が入る学生服を作ろう」
「うーん・・・」
 
千里Wが着ている学生服は男子用なので、R・Gや(女の子モードの)Bのバストは全く入らないし、小さな胸が育ちつつあるY・Vのバストでさえ入らないのである。
 
この時期の各千里のバストサイズ、適合ブラ、実際の使用ブラ
R/G/B 66/79 B65/B65
Y/V 66/73 AA65/A65
W 66/69 AAAA65/A65
 
胸が殆ど無いWがブラジャーを着けるのは「女の子になりたい」という気持ちの問題である。AAAA65とかAA65というブラは売られていないのでYもWもA65を着けている。RGBは実際にはC65 or C70でも行けるはず。
 

そういう訳で千里B(正確には千里W/B)は、気持ち良く冬眠していたのを無理矢理起こされたのもあり不機嫌なのである。
 
(RBYWは体液を共有しているので、RとYが食事をしていればBは冬眠状態でも生命維持ができる。なおBもWも卵巣・子宮が無いので生理は起きない)
 
「私かなり長時間寝てたような気がするなあ」
などと本人も思っていた。1ヶ月半ぶりの起動なのだが、実際にはBの精神はYに相乗りしていたので学校での様々な体験を夢のように記憶している。
 
突然の千里W/Bの登場に驚いたのが小春とカノ子である。
 
「もう出てこなくなったと思ったのに・・・」
 
W/Bの出現は4月5日以来約3ヶ月ぶりである。
 
2人はYが留萌から動く気無いしRは消えてしまうで、札幌行きどうしよう?と悩んでいたので、驚いたものの「助かったぁ」と思った。
 

札幌駅前に着く少し前に美輪子にメールして迎えに来てもらう。この日千里は母の携帯を借りてきている。美輪子は千里を見て言った。
 
「なんでスカートじゃないのよ」
「だってお母ちゃんが、伯父さん・叔母さんと会うから男の子の格好でと言うから」
「女の子になりましたと言えばいいのに」
「言ってもいい?」
 
ともかくも美輪子は男装の千里を大治の家に連れて行った。千里は
「おじいさん、お誕生日おめでとうございます」
と笑顔で言って、母からのお土産と祝儀袋を渡した。
 
「千里ちゃん、髪長いんだね」
と優芽子(津気子の姉)が言う。
 
「中学生だよね? そんなに長くしてていいの?」
と清彦(津気子の兄)。
 
「学校から許可もらってますよ」
と千里は答える。
 
「へー。許可されるもんなんだね」
「声変わりもまだなんだね」
「ええ。私、生理もまだ来てないし、発達が遅いみたい」
などと言うと、みんな笑っていた。
 
(千里Bには卵巣と子宮が無いので生理は無い)
 
「男の子にも生理来るんだっけ?」
などと吉子(優芽子の長女)は言うが、
 
「でも千里ちゃんって、結構女の子に見えるよね」
と愛子(吉子の妹)は言う。
 
「今日はセーラー服着て来ようかと思ったんだけどね」
と千里が言うと、みんなまた笑っていた。
 

午前中祖父母を中心に談笑していて、やがて豪華な仕出しが運び込まれてくる。千里は内心『御祝儀、私が足しといて良かったぁ』と思った。母が入れていた金額ではこの仕出しの代金にも足りなかった。
 
13時頃、母から借りている携帯に着信があるので廊下に出て取ったら、留実子の兄(姉?)の敏数(敏美)であった。彼(彼女?)は留実子より5つ上で、現在札幌市内の美容学校に通っている。千里に用事があり自宅に掛けたらこの番号を千里の母から教えてもらったらしい。
 
「札幌に来てるのなら3時間ほど出て来ない?」
 
美輪子に相談したら
「夕飯の支度を始める5時までに帰って来ればいいよ」
と言うので、中座させてもらい、敏数に会いに行った。
 
敏数は目が覚めるような深紅のワンピースを着ていたので、千里は「この人の隣を歩きたくない」と思った。
 
敏数の用事というのは、女装用品店の半額クーポンをもらってしまったので、あんた使わない?というものだった。どうも留実子の部活の費用とかスポーツブラの代金とかを千里が出しているのを聞いて、そのお礼をしたかったようである。
 
「あんた靴のサイズは?」
「22cmですけど」
「それなら普通のお店で買えるか!」
 
女装者には靴のサイズで苦労する人が多い。
 
「あんた胸無いね。いくらのブラ着けてる?」
「今日着けてるのはA65ですけど、本当はAAAAサイズなんです」
「さすがにAAAA65なんてブラジャーは製造されてないだろうなあ」
と言ってから、敏数は
「だったら、付け乳買わない?5000円までは私が出してあげるから」
「バストパッドですか?」
「胸に接着剤で貼り付ける」
「なるほどー。でもそれいくらくらいするんです?」
「安いのは1万円くらい。高いのはあの店で扱ってるのは20万円くらい」
「高い!」
「もっと本格的なのなら100万円くらいする精巧なものもあるよ」
「恐ろしい」
と言いながら、千里は沙苗が使ってたのがそのくらいするんじゃないかなと思った。
 
「まあ1万円とかのはほぼバストパッドと変わらないから、最低3〜4万のを買った方がいいよ」
「4万円のを半額クーポンで2万円にして、お姉さんが5000円出してくれたら15,000円か」
「そんなもの、そんなもの」
「買っちゃおうかな」
「よしよし」
 

それで千里は敏数に、女装用品店まで連れて行ってもらった。
 
敏数は
「いっそのことHカップになるくらいのを」
と言ったが千里は
「Bカップでいいですぅー」
と言った。(Hカップにするのはさすがに10万円を超えると思うし、かなり強いブラを付けてないと維持できない)
 
肌の色を確認するため、スタッフさんと一緒に検査室に入る。それで千里が上半身の服を脱ぎ、ブラジャーも外すと、微かな膨らみがあるので、
「ああ、ホルモンなさってます?」
と訊かれた。
「まだ去年くらいから始めたばかりなんですけどね」
と千里が言うと、スタッフのお兄さん(お姉さん?)は頷いていた。
 
「でもお客さん肌が白いですね」
「日焼けしない体質みたいです」
 
スタッフさんの計測では千里の胸はAAAサイズということだった。Bカップにボリュームアップするには、3サイズアップ(+7.5cm)することになる。
 
「お値段は48000円になりますね」
ということである。
「半額クーポンで24000円ね」
「はい、そうです」
 
それでそのブレストフォームを買うことにする。敏数は5000円出すと言っていたが実際には1万円出してくれたので、千里は残り14000円を出した。装着の仕方が分からないというと、スタッフさんがサービスで接着してくれた。
 
「重い」
「バストは重量物だからね〜」
 

そして着けてきたAカップのブラジャーが入らない。
 
「どうしよう?」
「提案。新しいブラジャーを買う」
「しかたないですね」
 
それで敏数と一緒にスーパーに行くが、この重さのブレストフォームを着けてブラ無しで歩くと、剥がれそうで不安だし、皮膚が引っ張られて痛かった。
 
Bカップにしたつもりが、ランジェリー売場のお姉さんに計ってもらうと
「C65かC70で適合しますよ」
というので、C70を買うことにした(皮膚が引っ張られて一時的に伸びていたせいだったりして)。それを取り敢えず3枚買って、試着室を借りて着けた。ところがここで新たな問題が生じる。
 
「胸が目立ち過ぎますぅー」
「Cカップの胸は目立って当然」
「男の子にCカップの胸があったら不審がられます」
「性転換して女の子になったと言えばいいのよ」
 
結局この胸が目立たないように、だぼだぼのTシャツを買うことにした。ブラジャーも1枚2500円したし、Tシャツ2000円を買って合計9500円の予定外の出費である。
 
「結構時間も食ったね。送ってあげるよ」
「ありがとうございます」
 
それで敏数のバイクで、清彦の家近くまで送ってもらった(近くのコンビニで降ろしてもらった)。
 

千里が大治の家に戻ったのは16:50くらいである。17時までに戻ると言っていたので結構ギリギリになった。
 
「よし、千里が戻ってきたから料理始めよう」
 
それで千里を含めて女性陣6名(滝子・優芽子・吉子・愛子・千里・美輪子)で夕食の準備を始めた。
 
千里は物凄い戦力になった。お魚を鮮やかに3枚におろすので感嘆される。
 
「漁師の娘は魚くらいおろせなきゃと言われて小学生の頃から鍛えられてるから」
「漁師の“娘”なんだ!?」
 
そのお魚を更にお刺身にし、フライドチキンの下味を付け、大根をかつら剥きにし、玉葱を手際よくみじん切りにし、と大活躍であった。
 
「千里ちゃんは立派な主婦だ」
「いつでもお嫁さんに行ける」
とみんなから褒められて、千里も得意そうにしていた。
 
「やはりお嫁さんに行くつもりなのね」
「はい、行きたいです」
と千里が言うと、みんな頷いていた。
 
しかし狭い台所で女6人が動いていると、お互い身体が結構接触する。千里と接触した愛子が「ん?」と首を傾げ、千里の胸を触る。
 
あははは。
 
「なるほどねー」
と愛子は納得していた。
 

お料理は女6人の奮闘で18:30頃には完成し、食卓に並べられる。お刺身、天麩羅、ローストビーフ、フライドチキン、コロッケ、酢の物、スープ、オードブルっぽいもの。そして日本酒やビールも開けて賑やかな夕食が始まった(男たちはそれ以前から飲んでいたが)。
 
1時間ほど過ぎた所で、男たちはお酒中心になってしまったので、夕食の準備をした6人と、祖母の紀子が台所に退避し、余った料理は冷蔵庫に入れたり、一部は女たちで摘まみ、お茶を飲みながらおしゃべりした。千里が昼間出掛けた時に買ってきていた(本当は小春に買っておいてもらった)白い恋人の詰め合わせを開けるので、みんなで摘まむ。それ以外にも滝子も色々おやつを出してくる。
 
「お祖母ちゃんは7月14日が誕生日でしたよね」
「そうそうパリ祭」
「だったら、お祖母ちゃんも、もうすぐお誕生日おめでとうございます」
「ありがとありがと」
 
「でも誕生日が分かりやすいのは千里ちゃんだよね〜」
「そう。3月3日ひな祭り」
「そして愛子ちゃんが1日違いの3月2日」
 
「だけど愛子ちゃんと千里ちゃんって顔立ちが似てるよね」
「それ昔から言われてた。千里ちゃんが今日みたいに男の子の格好してたら区別つくけど、千里ちゃんが女の子の服を着てたら見分け付かないかも」
「だったら千里ちゃんに身代わりとか頼もうかなあ」
「何の身代わりしてもらうの?」
「身体測定の身代わりとか」
「それはさすがに無茶」
 

「でも千里ちゃん、女の子の服、着るんでしょ?」
と吉子が言う。
 
「それでは皆さんに可愛い千里の大公開を」
と言って、美輪子がパソコンを開けると、そこには、千里が巫女衣装を着ている姿、白いドレスでフルートを吹いている姿、セーラー服姿!、水着姿まで並んでいるので、みんな「うっそー!?」と言っている。
 
「千里ちゃんセーラー服持ってるの?」
「持ってますよ。それで中学校に行ってるし」
「すごーい」
「水着姿が女の子にしか見えないんだけど」
「私女の子ですから」
 
「胸はこれ本物?」
「想像にお任せします」
と千里は言ったが
「今触ってみるといい」
と愛子が言い、それで千里は全員に触られる。
 

「千里ちゃん、おっぱいあるんだ!」
「だいぶ胸も大きくなってきたから、そろそろ生理も来るんじゃないかなあと思うんですけどね」
「それ来るかもしれないよ」
 
「水着姿のおまたの所何も無いように見えるけど、まさかちんちんは取っちゃったとか?」
「ご想像にお任せします」
と千里は言ったが、美輪子は
「千里にちんちんなんてある訳が無い」
と言うので、みんな納得していた。
 
「一応今日の話はここにいる者だけの共有の秘密ということで」
「個人情報の保護だよね」
 
(個人情報保護法は2003年5月30日に成立した)
 
「明日、この女7人で一緒に遊びに行かない?」
「どこに?」
「ガトーキングダム。全員水着を持って」
「私もなの〜〜!?」
と紀子(63)が言う。
 
「お祖母ちゃんビキニ着る?」
「そんなの着たら警備員に射殺される!」
「大丈夫。日本の警備員は銃は持ってないから」
 

さて、大治・紀子は清彦一家と同居しており、優芽子夫婦と2人の娘は函館から来てホテルを取っている(ツイン2つ:吉子はわざわざ東京から戻ってきた)。そして留萌の千里と旭川の美輪子が2人でツインを取っている。
 
「美輪子さんと千里ちゃんで同室なんだ?」
と吉子が驚く。
「だって女同士だから問題無い」
と美輪子。
 
「なるほどー」
 
それで21時頃、女性陣はホテルに引き上げる。
 
優芽子の夫・政人は清彦と飲み明かす態勢である(親戚付き合い上、断れない。男性の辛さ)。それで優芽子は夫を放置して(いけにえに出して!)娘2人とホテルに引き上げた。
 
ちなみに優芽子たちは札幌エクセルホテル東急、美輪子たちは札幌東急イン(*2)である。同じ東急という名前が付いていても値段が違う!
 
(*2) 札幌東急インは1980.6.1に開業し、2015.4.1に「札幌東急REIホテル」に名称変更された。札幌エクセルホテル東急は1996年1月9日に開業した。札幌には以前「札幌東急ホテル」というのもあった(1973年6月1日開業)が、2002年12月15日に廃業した。
 
筆者は1985年頃「札幌東急ホテル」に泊まっている。朝食の席で阪神タイガースの一行と一緒になりびっくりした。友人女性が「掛布選手にサインもらっちゃった」と喜んでいた。
 

ホテルに入ってから千里は美輪子に訊いた。
 
「私が女の子になったことバラしちゃったの、まずかったかなあ」
 
すると美輪子は言った。
「全然問題無い。どうせその内はれることだし。取り敢えず女性陣には知っておいてもらったほうが良かったからね」
「そうだよね!」
 
それで千里は安心してこの日熟睡することができた。
 

ちなみに、この日、敏数に付き合い、ブレストフォームを買ってもらったのは千里B(W/B)で、ブレストフォームを買った後、「どんなタックをしてるの?」と訊かれ、ホテルに行って見てもらったりしていたので、清彦の家そばのコンビニに辿り着いたのはもう17時半だった。
 
千里GはBが約束の時間に間に合わないので、16:45に千里Rを清彦の家の前に転送出現させた。小春はなかなかBが戻って来ず気を揉んでいたが、Rが来てくれたので「助かったぁ」と言って、Rに状況を説明し、その後をフォローしてもらった。それで料理の手伝いをし、愛子たちに胸を触られ、美輪子と一緒に宿泊したのは千里Rである。だから愛子たちは千里の実胸を触っている。
 
ちなみに戻って来た千里W/Bは、家の近くまで来た所で30mルールにより消滅。冬眠に戻った。持ち物は小春が回収した。
 

千里Wが着けていたブレストフォームは、A大神の指示で、千里Vが剥離液を使って取り外し、回収した。
 
A大神が“男の娘改造倶楽部”(セナたちを連れていった病院跡)に“冬眠している”W/Bを出現させてくれたので、そのW/Bから取り外したのである。Wは中身の入ってない“お人形”状態で出現させるのはA大神にも無理らしい。W/Bは(男性用の)カテーテルを付けて導尿されていた。
 
「この子、ちょっと棒や玉を取ってあげたりしないんですか?」
と千里VがA大神に尋ねると
「困ったことに、ちょん切ってもすぐ生えてくるんだよ」
とA大神は本当に困ったように言う
「なんてしぶとい。まるで雑草みたいなちんちんですね」
とVは呆れて言った。
 
取り外し終わった所でGが接近して30mルールによりW/Bを消滅させ、A大神が管理している“冬眠場所”に戻した。
 
(GはRBYの全員を消せる。それでVはGが(あるいはひょっとしてRが)実は千里の本体なのではと疑っている。Vは誰も消さないし、自分自身も消えない。なぜVが消えないのかは本人も知らない)
 
男の娘製造倶楽部は、GやVが住んでいる家から500mほど離れている。Gはしばしば両者の間をホンダ・ライフを運転して移動しているので「お巡りさんに捕まっても知らないよー」とVに言われている。今日も最初GがVをここにポストして、いったんGは家に帰った所でW/Bを出現させてもらった。
 
回収したブレストフォームについてA大神は何も指示しなかった。単に冬眠中の身体に着けたままにしておくのは肌に良くないから外させただけである。千里Vは千里Gに「これどうしよう?」と訊く。
 
「多分使い道がある」
と千里Gは言った。
 
この時、Gが考えていたのは、雅海にプレゼントする案であった。
 
司は、きーちゃんがおっぱいを大きくしてあげたくてあげたくて、たまらないみたいだし!
 
 
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【女子中学生・ひと夏の体験】(1)