【女子中学生・ひと夏の体験】(4)

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千里Rは6月中旬に映子から吹奏楽部のヘルプを頼まれていたものの、実際には期末テストもあったし、剣道の練習に力が入っていたし、祖父の古希の祝いにも行ったしで、全然練習していなかった。
 
それでさすがにやばいと思った千里Gは7月上旬、自分が代わりに練習することにした。Y/V、R/Gはお互いに運動能力的な記憶が連動するので、Rが剣道やピアノ・笛などの練習をすればGもそれができるようになるし、Gが覚えたものもRが使える。
 
それでGは、Rが持っているのと同じフルート(YFL-714 Covered-key, Offset, E-mecha) を調達して、映子から渡された譜面を練習することにした。譜面のコピー、およびフルートの調達について、Gはあまり留萌から離れたくないので、A大神にお願いした。
 
するとA大神は
 
「ついでにこれも練習しなさい」
といって龍笛も渡してくれた。
 
「私も龍笛練習するんですか〜?」
「Rがたくさん練習してるから、あんたにもできる」
 
それで恐る恐る越天楽を吹いてみると、わりとまともな演奏になったのでGは自分でびっくりした。
 
この時、A大神から渡された龍笛が Tes No.229 で、Rが使用している No.228 と1番違いである。
 

「どうせならBが吹いてたQ神社の昇殿祈祷や祭礼の曲を覚えるといいね」
とA大神は言い、A大神はQ大神に曲の譜面と録音を作ってもらってGに渡した。
 
神様本人が監修した譜面だから、極めて正確である!
 
(実際に書いたのはいつも雑用を押しつけられているQ神社摂社の少彦名神社の神で最終的にQ大神のお姉さん:旭川Q神社の神にもチェックしてもらった)
 
それでGはフルート(吹奏楽部が演奏する曲)に加えて龍笛(Q神社の曲)も練習することになった。
 
ついでにVもQ神社の曲を練習させられたので、7/17-18のお祭りでVは無事、曲を吹くことができたのである。(元々千里は初見に強く曲の覚えが速いし、横笛との相性も良い)
 

7月5日(月).
 
夏季教室(7/1-2)明けの月曜日。
 
雅海が学校から戻ると母が
「&&エージェンシーさんからお手紙来てるよ」
と言った。
 
それで自分の部屋に行ってから開けてみるとこのようなことが書かれていた。
 
《先日はライブへの参加ありがとうね。来月8月11日(水)からParking Serviceの全国ツアーが始まるけど、またPatrol Girls として参加しませんか?もし参加してくれるなら同封の葉書の「参加する」の所にOを付けて7月11日までに返信してください》
 
《それとお友達で運動神経とリズム感の良い子(身長158-168cm程度)がいたら紹介してくれませんか?紹介してもらえる場合は良かったらその子の身長・体重・スリーサイズと全身の写真データ(640x480以上、またはサービスサイズ以上のプリント写真)を送って下さい。可能なら何か適当なダンスをしている所のビデオを後からでもいいのでメールまたはSDカードかUSBメモリなどで送ってもらうと助かります。人数の都合で確約はできないですけど、もしかしたら一緒にご招待することになるかも知れません》
 
《なお現住所から札幌までの交通費は支給しますし、宿泊もこちらで手配します。日程は8月10日(火)夕方までに現地に来て頂いて11日は夕方まで拘束。約24時間の拘束でギャラは33333円(源泉徴収後30000円)になります。実働時間はリハーサルと本番と合わせて7時間以内で、20時以降5時前の深夜労働はありません。質問がある場合は下記へメールを》
 
「わあまたライブがあるんだ!」
それで雅海はもちろん“参加する”にOを付ける。
 
そして「紹介できる子」について雅海は“運動神経がいい”という言葉から、ある人物を思いついたのである。
 

翌日(7/6 Tue)、雅海は昼休みに司を呼び出し、校舎の裏手で話してみた。
 
(雅海と司は先週木金の夏季教室で同室になり、お互いの実態?をよく知ることとなった)
 
「アイドルのバックダンサー〜〜!?」
「司ちゃん、運動神経いいからできると思うんだよ」
「うーん・・・。やってみたいような恥ずかしいような」
「衣裳はミニスカートだよ。穿いてみたくない?」
「みにすかぁとぉ!?」
 
司の頭の中で妄想が膨らむ。
 
「してみようかな・・・」
「OKOK」
 
それでその日、司は野球部の練習を休み、雅海の家に行くことにした。いったん自宅に戻り“お着替え”を持って雅海と待ち合わせて彼の自宅に行く。
 
「なんかこの部屋可愛い」
「あんた女の子になるなら部屋も女の子っぽくしようと言われて模様替えされちゃった」
「やっぱり女の子になるんだ?」
「今の段階では“女の子になっちゃってもいいかな”くらいの気持ちかな。司ちゃんは?」
「僕は女の子の格好するのは好きだけど、女の子になりたい訳ではないんだけどね」
「でも女の子の裸を見ても平気だよね」
 
「平気になっちゃったかも」
 
と言って司は貴子さんに連れられて女湯に入っちゃった時のことを思い起こしていた。
 

まず身体を測定する。身長162cm 体重55kg B80 W66 H84.
 
「バストはAカップのブラジャー着けたら90になるから90と書いとくね」
「うん。それでいい」
「でも体型がわりと中性的かも」
「そうだね。女子の友人から『安産型だね』と言われた」
 
もちろんいったん女の子になっちゃった後遺症である。
 
実は今穿いている学生ズボンも女子用のW66のものである。男子用のズボンではこの体型に適合する既製品は存在しない。野球部のユニフォームはW76cmのものに交換してもらい、ベルトは短く切って!ウェストを絞っている。
 
雅海が持っているPatrol Girlsの衣裳を着けてみない?と言って渡してみたものの「はずかしー」と言うので、結局司が持参したポロシャツと膝丈スカートに着替え、それで笑顔で写真撮影をする。そして
 
「これ踊ってみない?」
と言って、Parking Servieの最新作『ひと夏の冒険』のバックダンスを雅海が踊ってみせる(練習してた!)。
 
「そんなに難しくない気がする」
「司ちゃん運動神経いいからすぐ覚えると思うよ」
 
それで実際司は15分ほどで踊れるようになったので、更に15分練習した所で雅海の携帯でCDを流しながら踊る所をビデオ撮影した。
 
「じゃこれを送ってみるよ。採用にならなかったらごめんね」
「ううん。こういうの応募者多いんじゃないかなあ」
と司も言っていた。
 
雅海はビデオのデータを携帯のマイクロSDカードから取り出し、写真データとともにUSBメモリに入れ、参加表明の葉書、紹介する司のボディサイズデータを書いた紙と一緒に封筒に入れて白浜さん宛て郵送した。
 

灰麗が(中村と一緒に?)旭川に住むことが決まったので、灰麗は東京まで行って、駐車場に駐めている車を回送してきたいと言ったのだが、きーちゃんは
 
「あんたには頼みたい仕事があるし、入院中の彼氏の御見舞いもしたいでしょ?」
 
と言って(完璧にふたりはカップルだと誤解されている)、友人に依頼して取って来てもらうことにした。合わせて荷物を入れているレンタル倉庫の中身を旭川に移動し、駐車場・倉庫・私書箱を解約する。
 
きーちゃんは函館戦争以来!交友を続けている一族の当主・杉村八助(74)に連絡した。
 
「お孫さん、もし空いてたら50万円くらいのバイトしない?」
「ちょうど夏休みに入った所だよ!」
 
それで、八助の孫の初広(大学3年)と真広(大学1年)が対応してくれることになったのである。
 
2人は、きーちゃんが前金で50万+概略の食費・ガソリン代・高速代等として10万を渡すと「おぉ!!」と喜んでいた。
 
「女の人が借りてる倉庫の解約なら女装したほうがいいですかね?」
「そのあたりは好みで。何なら性転換手術受けさせてあげようか?2人まとめて性転換すると兄弟から姉妹に華麗なる変身してお母さんが大喜びするかもよ(お父さんはショック死するかも)」
 
2人はまだ男を楽しみたいから性転換は遠慮するということだった。更に女子トイレを使う勇気は無いから女装はやめとこうという話になったようである。
 

16日の朝、杉村家が経営するH新鮮産業のトラックを持ち出し(*9)、大型免許を持つ兄が運転して苫小牧(とまこまい)まで行く。そして大洗(おおあらい)行きのフェリーに乗った。
 
苫小牧 7/16 18:45 - 7/17 13:30 大洗
 
(*9) きーちゃんはトラックの借り賃として別途八助に3万円払っている。
 

17日は高速のPAで車中泊し、18日に実質活動する。
 
まずは灰麗が借りていたレンタル倉庫に行き、2人で荷物を全部トラックに積み込んで、倉庫は解約する(結局弟は女装させられた!)。兄が休んでいる間に弟は(女装のまま!)電車で都心に出て、私書箱サービスに到着している郵便物を回収。解約する。電車で町田市に移動し、市役所で委任状を示して転出届けを提出する。そして契約駐車場に移動し、車を運転して出る。
 
車はエンジンが掛からなかったら、兄を呼ぶつもりだったが、エンジンは掛かったので念のため30分くらいアイドリングしてから出た。
 
不動産屋さんに行き、やはり委任状を示して駐車場を解約した。
 
灰麗の車を運転して兄と高速のPAで落ち合う。
 
「やっとトイレ行けた」
「まさか我慢してたの?」
「だって女子トイレに入ったら痴漢で捕まりそうで」
「スカート穿いてても中身が男なら普通に男子トイレ使えば良かったのに」
「そう?」
「東京じゃスカート男子は多いらしいよ」
「ほんとに??」
 
「だけど電車乗ってたらさぁ、お尻触る男がいたんだよ」
「どうした?」
「『何すんのよ?』と言って、思いっきり蹴り上げてやったら、玉押さえてうごめいていた。潰れたかもね」
 
「お前のキック力(りょく)なら本当に潰れたかもね」
「なんか周囲で拍手起きてた」
「多分良いことをした」
「黒いサングラス掛けた40歳くらいの男だったよ」
「40年も男やってたらそろそろ男を引退してもいいな」
 

軽食を取ってから連なって運転して大洗に向かう。そして一緒にフェリーに乗った。
 
「ご夫婦ですか」
と少し仲良くなったトラックドライバーさんに尋ねられたので
「いや兄妹なんです」
と答えておいた!
 
向こうは妹が実は弟とは全く気付かなかったようであった。
 
「一度デートしない?」
と誘われたが
「ごめんなさい。ボーイフレンドが居るので」
と言ったら
「こんなに可愛かったら彼氏居るよね〜」
と残念がっていた。
 
でも真広は「可愛い」と言われてドキドキしていた。
 

大洗 7/18 18:30 - 7/19 13:15 苫小牧
 
そして7/19の夕方、旭川に帰着した。
 
若くないとできないハードな行程であるが、2人はなかなか楽しかったらしい。
 
「あら、初広のガールフレンドさん?」
と母に訊かれた。
 
「真広だけど」
「・・・・・女の子かと思った!」
 
母にも女に見えたというのは、わりとレベルが高い気はする。
 
でも父に見られる前に着替えなさいと言われて男装に戻された。結局丸2日女装していたことになる。
 
トラックはいったん会社の駐車場に駐めて、7/20に灰麗の新しいアパートに荷物を運び入れた。その後、ガソリン代・高速代・船賃・電車賃を精算して、バイト終了である。きーちゃんは“サービス料”と称して2人に追加で5万ずつ渡したので、2人は更に喜んでいた。
 
「だけど楽しい旅だった」
「女の子するのも楽しくなかった?」
「ひと夏の経験かな。でも買っちゃった女物の服どうしよう?」
 
今回着た服は母が洗って真広の部屋に返してくれている。ユニクロで買ったものだが、真広は兄の初広が、平気で女物の服や下着をチョイスしてレジに持って行ったので兄のセクシャリティに疑惑を感じた。足の毛も兄がきれいに剃ってくれたし。眉毛も細くカットしてくれたし。
 
「普段に着ればいいと思うけど」
と兄は言う。
 
「え〜〜!?」
 
「この機会にもう少し女装もお化粧も練習して後期からは女の子の格好で通学するとかは?」
「ハマったら恐いからやめとく」
 
(既にハマってないか?)
 
「それに30万もあったらお前性転換手術受けられるんじゃない?いっそ本当の女子大生に変身したら?お前きっと女でもやっていけるよ」
 
「性転換するつもりはないけど、あれは120万くらいするらしいよ」
「そんなに高いの!?」
 

P神社の例祭が終わった翌日、7月19日(月・祝)、千里Yは三重県の河洛邑に行き、光辞の朗読をすることになる。千里Yは下記の便で旅立った。
 
留萌駅前9:28(バス)11:22旭川駅前→旭川空港14:15(ANA326)16:40名古屋空港
 
旭川駅前から空港までは瑞江に運んでもらった。名古屋空港には真理さんが車で迎えに来てくれて、それで河洛邑に入った(車で約1時間)。千里Yはここで1ヶ月ほど過ごし、その間、書写が困難な「絵」で書かれた部分の光辞の朗読と千里の手による描き写しをすることになる。
 
なお、小春(のエイリアス)も千里Yをサポートするために一緒に三重県に行ったので、留萌の留守を任されたカノ子は「私ひとりで調整できるかなあ」と不安であった。状況次第では、芳子やヒツジ子も助けてくれるはずだが、
 
カノ子:P大神の眷属
ヒツジ子:Q大神の眷属
ミミ子(瑞江)ミヨ子・芳子:A大神の眷属
 
千里は、直接契約を結んでいる、小春・小町・コリンも含めて既に8人(帰蝶も入れたら9人)もの“手駒”を駆使していることになる。
 
(ミミ子・ミヨ子・ヨシ子はG・Vのことは知らない。GとVに関することはA大神が眷属を使わずに直接行なっている)
 

夏休み中、千里Bを装った千里Vが毎日Q神社に出ることになっている。Vは「めんどくさいなあ」と思いながらも、青い髪ゴム・青い腕時計をしてBを装い、朝7:45くらいにQ神社前に出現(実際は自宅から転送)し、午前中ご奉仕して、12時になったらお務めを終え、神社を出たところで(W町の家に)転送帰宅するサイクルを続ける。
 
これはVにとっても負担だが、Gにとってもきつい。VにBの身代わりをさせていると、他で身代わりが必要になった場合、自分が行くしかないので、全体の管理をする人が居なくなってしまうのである。
 
7月18日(日)、例祭が終了した夜、千里Gは“海”の中から櫃美を取り出した。
 
「ご機嫌はいかが?」
「私、随分眠ってたみたい・・・あ!右の翼が完全に戻ってる」
「良かったね」
「ありがとうございます。今何月ですか?」
「今日は2004年7月18日」
「じゃ2ヶ月くらい眠っていたのか」
「あれだけの怪我を治すにはどうしても2ヶ月掛かった」
「いえ。再生には1年くらいかかるかもと思ってたから凄いです」
 
「ところで櫃美さんって、車の運転できる?」
「普通免許、普通二輪免許、大型免許は取っています。大型二輪は自信ないです」
「ああ、ちゃんと免許証も持ってるんだ?」
「小登愛さんのお陰で取りました」
と言って見せてくれた運転免許証には、“花山星子”の名前で、普通免許・二輪免許・大型免許の所にフラグが立っている。誕生日は昭和46年9月17日と記載されている(昭和46=1971)。
 
「32歳に見えないんだけど」
「ごめんなさい」
「本当は、470歳?」
「なんで分かるんですか!?」
 
と櫃美は驚き、この人は本当に恐ろしい人だとあらためて思った。
 

「それでさ、櫃美さん、もし良かったら、私の眷属になってくれないかなあと思って。もちろん衣食は保証する」
 
「それこちらが頼みたいくらいです」
「じゃ契約する?」
「はい」
「では、玉兎弓弦(ぎょくと・ゆづる)よ、我に従え」
「はい、従います」
 
「これで契約成立ね」
と言って、千里は櫃美と握手した。
 
「あのすみません」
「うん?」
「この機会に呼び名を変えてもいいですか?」
「いいよ」
「実は木村櫃美は小登愛さんに付けてもらった名前だけど、私、小登愛さんを守り切れなかったから、それ以前の名前に戻そうかと思って」
「状況は聞いたけど、あまり気に病みすぎないほうがいいよ。でも何て名前?」
「その免許証に書かれている花山星子で」
「OKOK、じゃ“ほしちゃん”でいいかな」
「はい、それでいいです。あるいはフルネームの略で花星でも」
「了解、了解」
と言ってから、千里Gは奥の部屋に向かって呼びかけた。
 

「Vちゃん出て来ていいよ」
 
するとそこからも千里が出てくるので、星子は仰天する。
 
「双子だったんですか?」
「むしろ同一人物だよね〜」
「千里はたぶん10人くらい居るから」
「うっそー!?」
 
「多数の千里は“色”で区別される。星子ちゃんと契約した私は“千里Green”、略して“千里G”、こちらは“千里Violet”略して“千里V”」
 
それで千里Gは、千里が昨年4月に少なくとも、千里R(Red)・千里B(Blue)・千里Y(Yellow)・千里W(White)の4人に分裂したこと、自分たちGとVはなぜ存在しているのか実はよく分からないが、A大神と契約し“千里たちの調整”作業をしていること、などを話した。
 
「だから千里は最低、RBYWGVの6人がいるんだけど、元々千里は複数存在していた疑いがある。だから千里は全部で10人くらい居る可能性もある」
 
「小春ちゃん、カノ子ちゃんたちはRBYWの4人の調整をやっているのよね。でも彼女たちではとても調整が付かないものも多い。それで私たちが最終的な調整をしている」
 
「私たちは3人の千里の誰かを装うこともできるからね〜」
 

千里GとVの説明は1時間以上に及んだ。
 
「ま、それで千里Bがこのところ全然出てこないからさ。Vが代わりにBの振りしてQ神社に出仕しようなどと言っていたんだけどね」
 
「もうそれはBは消えたということにしてはいけないんですか?」
「Bが消えた場合、貴司君のことを好きなRが残る。でもRは巫女なんてしない。剣道に夢中。だから貴司君のことを好きな千里がいるのに、そのRは神社には行かないというのは綻び(ほころび)ができてしまう」
 
「難しー」
 
「ほんと面倒くさいよね。千里は中学出たらたぶん旭川の高校に進学するからその段階で人間関係の整理はできると思うんだけどね」
 
この時点では千里Gも、千里が旭川に行ってしまえば、多分留萌に残る貴司との仲は解消されるだろうと思っていた。浮気者の貴司君が遠距離恋愛なんてできるわけないし!!
 

「まそれで、星子ちゃんって確か龍笛吹けたよね?」
「よくご存じですね!」
「だからQ神社に出仕する千里の代理を務めてくれないかと思って。夏休み中は毎日。2学期が始まったら土日祝日のみ」
 
「何とかなる気はしますが、私、Q神社で使う祈祷や神楽の曲を知りません」
「それは私もVも吹けるからどちらか手の空くほうが教える。だから今月中、練習してもらって、8月2日(月)から実戦投入ということで」
 
「笛はこれ使って」
と言って千里Vが Tes No.221 の刻印がある龍笛を渡すと
「なんかこれ物凄くいい龍笛だと思うんですけど!」
と星子は言っている。
 
千里Vが説明する。
「それ本来は私の龍笛なんだけど、今私はBちゃんの龍笛使ってるから、星子ちゃんにはそれを貸すね」
 
「分かりました!」
 
※手塩工房の龍笛
 
200(織姫) B所有(V使用中)
214 帰蝶の所有
218 保志絵が使用
219 天子にReserve
221 V所有だが星子使用中
222 Yが使用中
224 B所有だがV使用中
228 R所有
229 G所有
 
なお、織姫は重要な儀式の時にしか使用しない。吹くと本当に龍が寄ってきて、龍たちは千里の演奏が気に入るとお礼に雷を落とす。しかし後に千里の演奏はグレードアップし、織姫以外のTesNoの龍笛でも、更には手塩工房製以外の龍笛でも(良い龍笛であれば)龍は寄ってくるようになる。
 

そういう訳で、GとVは星子にBの代役を頼むことにし、星子が笛の曲を覚えるまでの間はVが毎日出ていくことにした。
 
「ところで星子ちゃんって女の子?」
と千里Gは訊いた。
 
「女ですが・・・」
「残念!男の娘だったら、性転換して女の子にしてあげたかったのに」
「意味が分かりません!」
 
私もGちゃんの趣味は分からなーいとVは思った。
 
なお、星子は貴子にメールして、治療が終わって“海”から出たこと、千里の眷属になったこと、そして秘密のミッションに従事することにして当面留萌に居ることを伝えた。
 
「千里も剣道の合宿やりながら、色々画策してるな」
と、きーちゃんは思った。
 
また星子は千里Rの携帯にもメールして、治療が終わったこと、感謝していること“別の千里さん”に雇われたことを伝えた。千里Rは自分以外にも千里が居ることは認識しているので、それで納得した(Rは実は櫃美のことをきれいに忘れていた!!千里はとにかく忘れっぽい)。
 

そして7月19日(月)、千里VがBのふりをしてQ神社に出て行く。夏休み中は基本的には午前中のみ(学校が始まったら土日祝のみ8:00-15:00の7時間)。
 
留守番する千里Gは、星子にQ神社で使う龍笛の曲を教えるとともに、普段自分たちが使用している“千里モニター”の見方を教えてあげた。
 
「現在、Yは旭川に向かっている。旭川空港から名古屋に飛ぶ予定。Rは旭川のきーちゃんの家で剣道合宿中。Bは休眠中。Vが今Q神社に入った」
 
「凄いハイテクなんですね!」
「最近は神様も進んでるよね」
 

貴司はいつもの休日は朝からQ神社に行き、漫画を読みながらオナニーをしている(或いはオナニーしながら漫画を読む)のだが、この日は神社には出掛けなかった。
 
11時半頃、自転車で家を出ると国道まで降りた後、国道沿いに市街地方面に向かう。しかし留萌橋もルルモッペ大橋も渡らず、堀川町まで行って、市街地の東端に近い栄萌橋を渡る。市街地の南側から回り込むようにしてQ神社方面に行くが、Q神社までは行かずに、その近くにある公園の東側(これより東側はもう山道になってしまう)を通って海水浴場のあたりに出る。そして海岸沿いに少し引き返して、瀬越駅まで来た。駅の近くに自転車を適当に駐め、貴司はそわそわとした表情であたりを見回した。携帯の時刻表示を確認する。
 
「良かった。遅刻しなかったようだ」
などと呟く。
 
貴司がこんな面倒なルートでここに来たのは、万が一にも千里に遭遇したりすることがないように、千里の行動範囲をできるだけ避けた結果である。要するに浮気である!
 

12:32 瀬越駅に列車が到着する。約束した女の子がその列車を降りて駅舎を出、こちらに向かってくるのを見たので貴司は手を振る。ところがその女の子がしかめ面をして、貴司の肩越しに何か見ているようなので振り返る。すると反対側から夏服セーラー服を着た千里が歩いて来ている!!
 
「あんた何よ?」
と彼女は言った。
 
「これから貴司とデートするんだけど」
と千里は言う。
 
貴司は、やべーという顔をしている。
 
「貴司君とデートの約束をしたのは私だよ」
と彼女。
 
「貴司は私のフィアンセだから他の女とはデートしないよ」
 
と千里は言ったが。なんかこういうやり取りを以前にもしなかったっけ?と千里はデジャヴ(既視感)を感じた。
 
実は半月ほど前に夢で見た内容である。あの夢はある種の予知夢になっていた。ただ、この後の展開は夢とは少し違っていた。
 
「フィアンセなの!?」
「24歳になったら結婚しようと約束してるよ」
 
そんな約束してない!と貴司は思う。
 
「だったらセックスしたの?」
「これまで3回してるよ」
 
そんな覚えは無い。無実だ〜!と貴司は思う。
 
「分かった。もうそこまでの関係になってる女性(ひと)が居るなら、私の出る幕は無いね。でも貴司君ひどいよ。フィアンセが居るのに私とデートの約束するなんて」
 
「ごめーん」
と貴司は謝る。
 
「じゃお幸せに」
と言って、彼女は歩いて市街地のほうへ帰って行く。
 

「貴司、タクシー代くらいあげなよ」
「うん」
 
それで貴司は走って行って彼女に声を掛け
「帰るの大変だろうから、これタクシー代」
と言って夏目漱石さん(*10)を1枚渡した。
 
「ありがとう。優しいのね」
と言って、彼女は取り敢えず近くのサツドラ(ドラッグストア)に入った。
 
(*10) 2004年11月1日から野口英世の新千円札が発行開始された。この時代の千円札は夏目漱石さん。
 

彼女の背中を見送っていたら、背中に千里の足音を聞くので振り返る。
 
「ここに来たのは何か用事あったの?」
「浮気者に天罰をくだすためね」
「天罰というと」
「浮気者はちんちん切っちゃおうかなぁ」
「チンコは勘弁して」
「だったら私とセックスする?」
 
ドキッとする。さっき千里はもう3回セックスしたなどと言った。でも今の千里は本当にセックスしてもいいと思っているのではという気がする。千里と交際し始めてからもう1年以上経った。キスは多分10回以上してる。そろそろセックス・・・してもいいよね?
 
ただ男の子(男の娘?)とのセックスってどうすればいいんだろう?という疑問はある。でも何とかなるような気がした。きっと抱き合うだけでも気持ちいい。そしてきっと、僕が射精できるようにしてくれるんじゃないかなあ。そんな貴司の心を見透かすように千里は言った。
 
「もちろん貴司は、ちんちんを私のヴァギナに入れて中で逝っていいんだよ」
 
ヴァギナ・・・があるの!?
 
「ただできたら避妊具付けてね。私まだ赤ちゃん産んで育てていく自信無いから」
 
赤ちゃん!?産めるの!?
 
貴司は身体のある部分が反応しているのを意識する。
 
セックスしたい!!
 

「だけどどこで?」
と訊く声がかすれている!
 
千里は貴司が「その気になってる」のを意識しつつ冷静に言う。(“この千里”はとってもクールである)
 
「ホテルにでも行く?ホテル代程度は私持ってるよ」
 
ごくりと貴司は唾を飲み込む。
 
でも・・・
 
「こんな狭い町で、中学生がホテル行ったら、バレるよ!」
「こんな狭い町で、浮気しようとしたら、バレるよ」
「ごめーん」
「じゃ代わりにケンタッキーおごってよ」
「うん。そのくらいなら」
 
千里は「あれ〜?こんな感じで貴司にケンタッキーおごってもらったことなかったっけ?」と思った(←夢の中での展開)。
 

それで千里が貴司の自転車の荷台に乗り、貴司に抱きつくようにして2人乗りし、市街地に向かった。
 
千里のバストが貴司の背中に当たるので
「千里ってこんなにおっぱいあったんだ!?」
と驚いた。
 
まるで女の子みたいじゃん!
 
もしかして千里って性転換して女の子の身体になっていたりして!?だって、さっき「ヴァギナに入れていい」と言ってたじゃん。そしたらもしかして普通にセックスできたりして・・・と妄想が膨らむ。
 
思わず自転車がふらつく。千里が小さく「きゃっ」と言って貴司に強く抱きつく。千里の甘い体臭を感じて、更にふらつく!が、ここは必死で我慢して立て直す。
 
千里が本当に女の子の身体なのか、確かめてみたいけど、ふたりきりになれる場所なんて無いし。神社でそんなことしてて見付かったら、母ちゃんクビになるかも知れないし。自宅に連れ込むと妹たちの目があるし・・・。
 
(貴司は自宅の自分の部屋でオナニーしているとなぜか高確率で妹が入ってきて「嫌!」とか言われて物を投げ付けられる:凄く理不尽な気がする←でも貴司は神社でもしばしばオナニーしている所を母や千里に見られておりどうも間が悪い)
 
ということでこの日の貴司は千里の色香!に完全に溺れている状態であった。
 

ケンタッキーで楽しくお話しした後は、自転車を駅前の駐輪場に置き、お散歩をした。このまま自転車でサイクリングでもいいと思ったのだが、千里のバストを背中に感じている状態で自転車を漕いでいたら事故起こしそうな気がした。
 
最後は黄金岬で太陽が高度を下げてきているのを見た(日没は19:05なので、中学生はさすがにその時刻までは居られない)。
 
木陰でキスをしたが、千里は舌を入れてきたので、嘘!?と思いながら貴司も自分の舌を入れる。貴司もこんなのは初体験だ。もうこの場で千里を押し倒したい気分。理性が吹き飛びそうと思ったら、千里は(ズボンの上から)貴司のかなり硬く大きくなっているちんちんを揉んだ。
 
「うぉー!」
「痛かった?」
「いやその・・・トイレ行ってきていい?」
と貴司は0.1%くらい残っている理性で言った。今のは少し“漏れた”ぞと思う。
 
「ホテルでもいいけど」
「行きたいけどフロントで叱られるよぉ」
「あはは。いってらっしゃーい」
 
それで貴司はトイレに入って“処理”した。わずか3秒で到達した。それで少し理性が戻って来る。でも今のは押し倒しても良かったのではと悔やんだ(←さすがに日没前の公園でやってたら叱られると思う)。
 

貴司が少し放心状態でトイレから出て来たら、千里は再度頬にキスしてあげた。
 
そのあと自転車2人乗りで留萌駅まで行った。ちょうどそこに幌延行きのバスが来ていた、
 
「私これに乗る」
「じゃ、また」
 
と言って、握手をして別れた。
 
その千里が乗ったバスを見送ってから、貴司は自転車で帰宅した。
 
これが実は千里Bと貴司の初デートだったのである(グリーンランドで出会った時を除く)。
 

千里がバスに乗り込むと
 
「千里」
と呼ぶ声がある。見たら蓮菜である。蓮菜は千里が青い腕時計をしているのを見ながら言った。
 
「千里、今日はQ神社でご奉仕?」
「ううん。そういえば最近ちょっとサボリ気味だったかなあ」
「Q神社行ってないのならさ、来週私たち勉強合宿するんだけど、千里も来る?」
「何日?」
「26日(月曜)午後から28日(水曜)お昼前まで。例の民宿で。月曜の朝までは“呑涛まつり”の観光客が残ってるけど、昼までにはだいたいチェックアウトしてしまうから、その後は水曜くらいまでわりと空いてるんだよ」
「なるほどー。行ってもいいかな」
「じゃ26日午後1時。現地にセーラー服で集合」
「セーラー服なんだ!」
「ON/OFFをきちんとしたほうがいいからさ。勉強中は制服。休憩する時は楽な服装」
「なるほどー!了解」
 
それで千里(B)は蓮菜と来週の勉強合宿に参加する約束をしたのである。
 

なお、千里Bを装ってQ神社でご奉仕していた千里Vは、12時でご奉仕を終え、巫女服からセーラー夏服に着替えて12:20に神社を出ると消滅(本当は転送帰宅)している。
 
だからカノ子には、千里BがQ神社から瀬越駅に実質ワープしたように見えた。千里がこのように短時間で数km程度移動するのは、過去にも何度か見ているので、その類いだろうと思った。
 
たぶん千里R/B/Yはエイリアスで実体が無いから、こういうことができるのだろう。小春のエイリアスも行きたい場所を強くイメージすることでそこに移動することができると言っていた。千里も恐らく同じような方法で移動しているのか。小春の場合、それで移動できるのは10km程度以内かつ、よく行っている場所に限られる(だから三重と留萌の間を飛ぶのは無理)。千里が瀬越駅に何度も行っているとは思えないが、千里の能力は小春より大きいかも知れない。
 

ところで、千里たちの様子をモニターしていた千里Gは腕を組んで考えこんでいた。
 
実は千里Bは冬眠したままだったのである。
 
それなのに“別の千里B”が唐突に瀬越駅に出現したのでギョッとした。
 
だからこの日千里Bが瀬越駅に出現した12:34から蓮菜と別れた17:45まで、5時間ちょっと、千里Bの位置をモニターしている液晶ディスプレイには、千里Bのマークが2個表示されていた。
 
ひょっとして仮説だけの存在だった千里Bの“シャドウ”千里o(orange)?とも思ったが、モニターは千里Bの身体に密かに埋め込んだGPSの位置を表示しているので、oならモニターに表示されないはずなのである。
 
「Bは本当に冬眠してますか?」
と千里GはA大神に尋ねた。
「冬眠してるよ」
 
「瀬越駅にもいますよね」
「居るよ。“視点”をあげるね」
 
と言われて、瀬越駅の千里Bを見ることのできる視点をもらうと、確かに千里が居て、貴司が浮気しようとした相手の女の子を言い負かして帰らせ、その後、自分自身が貴司とデートする様子を確認できた。
 
「千里って複数存在できるんでしょうか?」
と千里GはBの様子を見ながら、A大神様に尋ねてみた。
 
「私は千里が100人現れても驚かないよ」
「100人ですか〜〜〜!?」
 
そんなにたくさん居たら、御飯食べさせるのも大変だ、と思う千里Gであった。
 
(消滅しないように)30mおきに100人待ち行列を作らせたら3000m(3km)? 1人食事をするのに15分掛かったとして100人が食べ終わるには25時間掛かる!!
 
(↑千里Gは植木算が分かっていない。正解は30m×99=2970m。食事時間は正解。100÷4=25がちゃんと計算できたね!花丸をあげよう)
 
「貴司君の浮気に怒って、怒りのパワーでエイリアスをもうひとつ出したのかもね」
などと(神社から戻ってきた)千里Vは適当に言っていた。
 

なお、デートを終えた千里がずっとバスに乗っているので、そのまま帰宅するだろうかと思っていたら、C町バス停を降りた後、数十メートル蓮菜と一緒におしゃべりしながら歩き、分かれ道で別れた所で消滅した!
 
それで仕方ないので、千里VがBのふりをして、夏制服姿で、あらためて留萌市街地に転送移動。Aコープで買物をしてから、後続のバスでC町の村山家に帰宅。夕ご飯を作り、父母と玲羅に御飯を食べさせた。
 
(カノ子には自宅近くで消えたBが再度市街地に出現して買物したように思えた:“千里B”が市街地に現れたというのは、市街地担当!のヒツジ子から通知を受けた)
 
母は千里が金曜日の午後には「旭川で合宿してから24-25日に稚内の大会に出る」と言って出掛け、今朝には「三重県の遠駒藤子さんとこ(*11)に1ヶ月行ってくる」と言って出かけたのに、夕方戻って来て御飯を作っているのを見ても、いつものことなので気にしなかった!
 
(*11) 藤子は、津気子の元同級生・美帆里の母(蓮子)の姉に当たる。真理は藤子の娘なので、美帆里と真理は従姉妹の関係。なお蓮子や美帆里は河洛邑や理数協会とは無縁である。
 

19日の夜、結局Vはそのまま村山家で寝た。翌朝(7/20)は母が4時に父を港まで送ってきた後寝ているので、その寝ている母に「Q神社に行ってくるね」と言って、朝7時半頃家を出る。そして転送でQ神社に行って午前中の奉仕をした。
 
千里Yが三重に行っているので、千里Rが稚内から戻るまで、このパターンが続くことになる。星子への笛の曲の伝授はVとGの手が空いてるほうがする予定だったが、実際にはほとんどGが教えることになった。
 
「村山家の布団、ペチャンコで寝にく〜い」
とVが言うので、千里Gは“抽選で当たった”ことにして、布団を4セット、村山家に届けさせた。それで翌日からはVも熟睡できるようになった。
 
新しい布団になって、玲羅がいちばん喜んでいた。でも金曜日(7/23)に帰港してきた父は「布団が柔らかすぎて寝れん」と文句を言う。それで母が捨てるつもりで縛っていた布団(布紐類の日に出すつもりだった)を取り出してきて敷いてあげたら「うん、この感じがいい」と言って父は熟睡していた(布団が無くても良かったりして?)。余った布団は来客用(泊まりの来客なんてあるのか?)として押入に入れておいた。
 

7月21日(水)、雅海の家に&&エージェンシーからお手紙が来た。白浜さんの直筆!のお手紙が入っており
 
「素敵なお友達を紹介してくれてありがとう。ぜひおふたりとも参加して欲しいので、8月10日18時(時間厳守)に、札幌駅近くの札幌赤坂ホテル2階203会議室まで来て下さい。雅海ちゃんはパトロールガールズの衣裳を持って来てね。靴は履き慣れた踊りやすい靴を。急用などでキャンセルする場合は、できるだけ3日前までに連絡をお願いします。取り敢えず片道の交通費を概算でお送りします。後で精算します」
 
ということで、助川雅海・福川司の名前・写真入りのバックステージパス、そして郵便局の為替(額面11200円)が同封されていた。
 
この為替ってどうするんだろう?と思って母に訊いてみたら郵便局で換金すればいいということである。
「じゃ明日にも換金してきてあげるよ」
「ありがとう」
 
「でもこれJR使った料金かな」
「そうだと思うよ」
「バスで行ったりしたらだめかな」
「それみんな普通にやるけど、他人に言わないようにね」
「うん」
「友だちに言えば絶対人に広まるから、誰にも言わないか、ちゃんとJRで行くか」
「誰にも言わない!」
 
それで雅海は司に連絡し、2人で行ってくることにしたのである。なお夏休み中S中は原則として部活も休みである。
 

7月24-25日(土日)、留萌では、留萌最大のお祭り“るもい呑涛(どんとう)まつり”が行われ、町は観光客であふれかえった。
 
Q神社はこのお祭りとは直接は関係ないのだが、参拝客が物凄く、この2日間は千里B(実はV)も朝から15時まで7時間稼働した。町外れにあるP神社も、結構なお客さんがあり、先週の例祭に続き販売した1日限定100個の縁起物“藁造りの三尾の狐”もあっという間に売り切れたし、おみくじを引く客も多く、おみくじ係のセナと真由奈(手が足りないのでセナが勧誘した)は大忙しだった。また、中学生の巫女による舞(広海・蓮菜・美那・穂花・結花)を11:00 13:00 15:00 に奉納したが、これも見物客が大勢居た。龍笛は恵香と小町で交替で吹いた。N小学校の児童会が出している出店もたくさん売れて児童会の予算がたくさん確保できた!
 
「しかし千里も沙苗も居ないとなかなか辛い」
「玖美子まで居ないしなあ」
「やはり特に千里の存在は大きい」
 
今回の土日は、本当に手が足りなくて、小町から「頑張ったらキスしてあげる」と言われて、源次も雑用・力仕事で頑張ってくれた。
 
「巫女衣装着て、巫女さんやってくれてもいいけど」
「さすがに無理〜!」
 

例祭(7/17-18)、呑涛まつり(7/24-25) とイベントが続いて忙しかったので、Q神社では交替で巫女さんたちに休みを取ってもらうことにした。笛担当巫女も、7/26-28日に京子と映子、29-31日に千里と循子が休むことにした。主力笛係の京子と千里が分散して休むのがミソである。
 
7月23日(金)に千里(BのふりをしたV)がC町の村山家でカレーを作っていたら玲羅が来て言った。
 
「ねぇ、お姉ちゃん、ハリー・ポッターの映画が来てるのよ」
「へー」
「『ハリー・ポッターとアズバガンの囚人』(*12)というの」
「なんか難しい名前だね」
 
(*12) 『ハリー・ポッターと“アズカバン”の囚人』(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban) は日本では6月26日に公開されているが、玲羅は昨日気付いた。
 
「私見たい。連れてってくんない?」
「私忙しいからお母ちゃんに頼んでよ」
 
マジで今千里Vは忙しいのである。
 
「だって、お母ちゃん、お金持ってないもん」
「じゃお金は私が出すから、土日にでもお母ちゃんと2人で見に行ってきて」
「そうしようかな」
 
ところが帰港した父を迎えて帰宅した母は不安そうな顔である。
 
「千里、あんたも来てよ。お休みの日とか無いの?」
「うーん。一応来週、29日から31日はお休みが取れるけど」
「じゃ31日・土曜日に行こうよ」
「まあいいか」
 
正直これだけ忙しくしている中で旭川往復とかしたくないのだが、仕方ない。
 
ちなみに行かないとは思ったが、武矢にも念のため行くかどうか訊いたが、「俺は寝てる」と言った。実際父が来ると、千里は服装のこと、トイレのことなどを含めて、あれこれ面倒である。万一武矢が行くと言ったら、千里はドタキャンしてでも行かないつもりだった。
 
しかし千里が行ったことで、玲羅は命を救われることになる。
 

千里Vは(Bの振りをして)7月26日の午前中もQ神社でご奉仕した。そして12時を過ぎると、あとのことは循子さんにお願いして巫女服から夏服セーラー服に着替え、神社を出る。そして12:20頃、転送移動でW町の自宅に戻った(消滅したように見える)
 
12:30. 夏服セーラー服を着た千里Bが唐突にF町に出現した。そして民宿の前まで来る。出現するかもと思いスタンバイしていたカノ子が、千里Bに着替えなどの入った、青いスポーツバックを渡した。
 
「さんきゅ、さんきゅ」
と言って、千里Bはそれを受け取った。
 
「まだ少し早かったかな」
などと呟いていたら、民宿の女将さんが
「中で待っているといいよ」
と声を掛けてくれたので、一足先に泊まり込む予定の部屋に入った。
 
みんなが来てからセーラー服は着ればいいやと思い、千里は普段着に着替えた。それで待っているが、みんななかなか来ない。やはり早すぎたかな〜などと思う。
 
そしてトイレに行こうと思って部屋を出たら、途中で黒いサングラスを掛けた40歳くらいの男性と遭遇する。トイレの場所を訊かれたが、彼が目が不自由っぽかったので
 
「トイレの前まで連れて行ってあげますよ」
と言って、男性の手を引いて、トイレの前まで行く。そして
 
「男性トイレはそちらです」
 
と言って手を離した。
 
男性が
「ありがとうございました」
と礼を言い、千里は振り向いて女子トイレに入ろうとした。
 

その時、千里は後ろから抱きしめられた。
 
「何するんですか!?」
「ね、ね、君、女子高生くらい? ちょっと楽しまない? この時間帯は人が少ないから、邪魔されないよ」
 
そのまま近くの多目的トイレの中に連れ込まれ、押し倒される。スカートをめくられ、パンティーを引きちぎられた。
 
『くっそー。人間じゃ無かったら即殺すんだけど』
などと千里が考えているとは夢にも思わず男は千里をレイプしようとした。
 
その時、誰かが千里に『玉を思いっきり掴め』と言った気がした。
 
(実際には千里Gが呼びかけた。Gは場合によっては自分がそこに行ってBを消滅させて助けるつもりだった)
 
千里Bは考えた。そうか、その手があったか!玉を潰したくらいじゃ死なないよね?
 
それで千里は男の睾丸を左手で掴むと思いっきり握りしめた。
 
(千里は右手より左手のほうが握力が強い)
 

「ぎゃー」
 
という凄い声を男があげた。男がひるんだので千里は男の顔面を思いっきり蹴る。そしてトイレから逃げ出し、廊下に出る。ちょうど女将さんが来て
 
「どうかした?」
と訊く。
 
「襲われました」
 
女将さんが千里をハグして保護した所に、男が向こうからふらふらと、下半身丸出しで出てくる。
 
「あんた何やってんの?」
と女将は厳しい声を掛けた。
 
すぐに旅館の主人も来た。
 

旅館の主人はすぐ警察を呼ぼうとしたが、男が土下座して謝る。
 
女将さんは千里を別室に招き入れた。
 
「あのさ。強姦未遂って親告罪なんだよ(*14)。だからあいつを捕まえるためには、あんたの告訴が必要なんだけど、どうする?」
 
千里はやばいなと思った。それをしようとすると、自分の性別が確認される。自分は戸籍上は男だから、強姦罪は成立しない(*13)(*14)。強制猥褻罪にはなるけど、それも親告罪だ。
 
(*13)千里Bは自分が戸籍上は男であると思い込んでいる。
 
(*14)強姦罪の男女不平等が問題になり、2017年6月16日に、被害者を女性には限定しない「強制性交等罪」(膣・肛門・口への陰茎の強制挿入)に置換され、あわせて非親告罪に変更された(7月13日施行)。また、昔は強姦罪の告訴は事件が起きてから6ヶ月以内であったが、これは2000年の刑訴法改定で期限が廃止されている。
 
物語の時点ではまだ強姦罪の時代だが、告訴期限は廃止されているので、千里はこの犯人を公訴時効が切れる15年後までは、いつでも告訴することが可能である。女将が証言するのは確実なので、間違い無く有罪にできる。
 

結局千里が「本当に反省しているなら許してやってもいい」と言うので、女将は「この子が告訴は“留保する”と言っている」と男に告げ、男の運転免許証のコピーを取り、念書も書かせた上で、同行者を呼び戻し、すぐに留萌から出て行き、2度と北海道に来るなと通告した。
 
戻って来た同行者も驚いて一緒に土下座して謝った。民宿の主人は男のスタッフ2人に、加害者と同行者を車で留萌駅まで送らせ、確実に汽車に乗るのを見届けてから帰ってこさせた。
 

千里はスタッフ用のお風呂でシャワーを浴びさせてもらった。服も女将さんが洗濯してくれることになった。そして女将は
 
「恐い思いさせたお詫び」
と言って5000円もくれた。更に今回の合宿中、いろいろサービスしてくれた。
 
千里が後から来た、蓮菜や恵香たちに
「これおやつ代」
と言って5000円札を出すので
「なんで?」
と訊かれる。
 
それで千里がさっきの事件を話すと、みんな
「それ許してはいけなかった。警察に突き出すべきだった」
「そいつ、こんなことしたの初めてなんて絶対嘘だよ。常習犯だよ」
「そんな奴、野放しにしたら、また被害者が出る」
と言われた。
 
「でもよくそれ無事に逃げきったと思うよ。私ならきっとやられちゃってる」
と恵香が言い、蓮菜も頷いて
「千里とかるみちゃんでないと逃げ切れなかったろうね」
と言った。
 
「つまり千里が早く来たことで深刻な被害の発生を防いだんだな」
「うーん・・・」
 
留実子は
「でも、ぼくが襲われたら、その男の金玉握りつぶしてやったのに」
と言うと、
「るみちゃんはスティール缶を握りつぶすからなあ。金玉くらい潰せるかもね」
という意見。
 
「いや、千里の握力も相当なものだと思う。その男、金玉潰れてたりしてね」
「潰れてたら、有害な男か1人地上から消えたことになるから良いことだ」
などと意見が出た。
 
千里もあの時は潰すつもりで握ったけど、本当に潰れたかどうかは分からないなあ、と思っていた。
 

15時まで集中して勉強し、お着替えして!普段着でおやつを食べながら息抜きする。そしてまた制服に着替えて!17時半くらいまで勉強する。
 
「お着替えめんどくさい」
「でもオンとオフがはっきりするでしょ?」
「それはするねー」
 
「今日の千里は数学も理科も冴えてる」
「うん。私、理屈で考えればいいの得意。社会みたいに記憶しないといけないの苦手」
などと“青い腕時計を着けた”千里は言っていた。
 
夕方、勉強を中断し、普段着に着替えてからお風呂に行くが、狭いお風呂場を占領してしまわないように、2人ずつ行った。千里が女であることは、今回の参会者全員の認識なので、千里も普通に他の子一緒に入浴する。実際には、恵香と一緒に入ってきた。留実子は蓮菜と一緒に入った:留実子が女であることを保証してちゃんと弁明できる人物が一緒に入ったほうがいいからである。千里や恵香は火に油をそそぐようなことを言いかねない!
 
夕食の後、また19時頃から制服に着替えて勉強を再開する。充分休んでいたので、わりと集中して勉強は進む。そして22時頃
「今日はここまで」
と言ってパジャマや体操服に着替えて寝た。
 
そして千里Bは寝ている最中に消えてしまった!!
 
「なんで消えちゃうの〜〜!?」
とカノ子が困惑していた。
 

翌日、朝6時に起きてから、制服に着替え、早朝にやった方が頭に入る英語をやる。今回の参加者はP神社で外人の子たちとよく話しているので、みんな英語だけは得意である。みんな読み書き、会話はできるので、文法問題を中心にやった。
 
普段着に着替えてから朝御飯を食べる。それからまた制服に着替えて、午前中は数学をやる。
 
が、千里が苦しんでいる。
 
「どうしたの?千里。こんな簡単な問題が分からないなんて」
「私、数学とか理科とか、考えないといけない科目苦手〜。社会みたいに覚えれば何とかなるのは、どうにでもするんだけど」
と千里は言っている。
 
「昨日言っていたのと全く逆のこと言ってる」
とみんなから指摘されるも、“赤い腕時計を着けた”千里が、数式の展開が全然出来ずに悩んでいるのを、蓮菜はおかしそうに見ていた。
 

2004年7月25日(日・友引・ひらく).
 
その日は日曜日なのに珍しく志水英世の仕事がお休みであった。実は新人女子高生歌手の音源制作をしていて今日までの予定だったたのだが、この新人さんが思ったより歌が上手く、昨日までに音源が完成してしまった。それで今日はギャラがもらえるのにお休み(“お笑い”と称する)なのである。
 
それで照絵・龍虎の3人で町に出て、ショッピングモールを歩いていた。
「龍ちゃんも来月には3歳か」
と英世が言う。
 
「なんか早いもんだよね〜」
「きっとあっという間に小学生になって、あっという間に中学生になって、高校生になって、あっという間にお嫁に行ってしまうかもしれん」
「・・・この子、やはりお嫁さんに行くと思う?」
「この子はもう娘ということでいい気がする」
「そんな気がするよね〜」
などと言っていたら、龍虎は少し不快そうだった。
 
こういう話をした時に、龍虎は喜ぶ時と嫌な顔をする時があるのが面白ーいと照絵は思っていた。まるで男の子の龍虎と女の子の龍虎が居て、交替で私たちの前に出て来てるみたい、と思う。
 

適当に歩いていたら、楽器店があった。表に88鍵の電子キーボードがある。龍虎は興味深そうにそこに寄っていき、小さな指で勝手に弾き始める。
 
聴いていると保坂早穂 with ワンティスの『空っぽのバレンタイン』である。龍虎が自宅で勝手にキーボードを弾いているのはいつものことなので、英世も照絵も特に何も考えずに「ああ、楽しそうに弾いてる」と思っていた。
 
お店の人が出てくる。
「お嬢さん、ピアノを習っておられます?」
 
龍虎が“お嬢さん”と言われるのは今更なので気にしない。
 
「いいえ。うちは夫婦とも音楽家で、家に楽器が転がってるんで、よく勝手に弾いているんですよ」
「ああ、音楽家さんですか!この曲は、お母さんが教えられたんですか?」
「いえ。勝手に耳コピーして色々な曲を弾いているみたいですね」
 
するとお店の人はびっくりする。
 

「そんなことができるって、お嬢さんモーツァルト並みの凄い天才ですよ。それにさっきは16分音符も弾きこなしてたし。何歳ですか?」
 
さすがにモーツァルトは褒めすぎだろう。
 
「・・・・来月3歳なんですが」
 
「だったら幼児教室に通われません?これほどの天才なら、しっかりした教育をなさったほうがいいですよ」
 
照絵と英世は顔を見合わせた。
 
「そうだ。うちの松戸駅前教室でキャンペーンやってるんですよ。無料で3回までレッスンが受けられますから、ぜひ参加されませんか?」
 
照絵と英世は頷き合った。
 
「まあ取り敢えず無料レッスンに出るのはいいかな」
 
それでここから龍虎の音楽キャリアが始まるのである。
 
なお龍虎の会員証は、ちゃんと漢字を説明したのに「志水龍子」になっていた!
 
 
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【女子中学生・ひと夏の体験】(4)