【女子中学生・十三から娘】(7)

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きーちゃんは先日出羽のH大神から性別を変更する術を授けてもらって以来、誰かで試してみたくてみたくて、たまらないでいた。
 
「どこかに女の子に変えてあげたら喜びそうな可愛い男の娘(←“いけにえ”と読む)は落ちてないかなあ」
 

6月5日(土).
 
体育祭の翌週。司は朝から高速バスで旭川に出た。先週は体育祭だったし、来週からは夏の大会が始まるから、動けるのは今週しか無かった。
 
実は旭川まで行ってスカートを買おうという魂胆なのである。1ヶ月ほど前に留萌のジャスコでスカートを買おうとしたら、あまりに高くて買えなかった。
 
(司がたまたま見たショップが高かっただけで、ジャスコ内にはもっと安いスカートを売っているコーナーもあるが、あちこち覗いてみる勇気は無かったので気付かなかった)
 
それでバス代を使ってでも旭川まで行き、先日村山さんに連れていってもらったリサイクルショップに行ってみようと思ったのである。資金はお年玉の貯金を全部降ろした。旭川に行く理由は
「新しいミットが欲しいから」
と母には言った。実際今のミットは司が小学5年生の時にキャッチャーに転向して以来使っているものだ。3年近く使っていて、かなり傷んでいた。そもそも安物だったし。
 
しかしミットが欲しいと言ったら母から
「バス代あげるよ」
と言われて、往復のバス代をもらった上に
「ミット高いでしょう?」
と言われて、バス代に加えて5000円ももらってしまった。ちょっと心が痛むけど、『ミット買うついでにスカートも買えばいいよね』と自分に言い聞かせた。
 

家を出る時はズボンを穿いていたが、バスのトイレの中でスカートに穿き換えてしまった。ついでに先日留萌のジャスコで買った女の子用ショーツも穿いた。ちんちんが飛び出してしまうのは困るなあと思ったが、彼は“ちんちんを後ろ向きに収納する”というワザを知らない。
 
旭川駅前で高速バスを降りる。小雨が降っているが、持って来た傘を差して、平和通りを歩く。先日のお店を探す。
 
「ここだっかな?」
と思い、見覚えのあるピルに入ってみたら見付かった。
 
ほんとに100円とか200円で女の子の服が売ってあるので嬉しい!
 
司はサイズに気をつけながらスカートを5点、ブラウス(ネットでサイズの測り方を調べ自分のサイズを確認しておいた)も3点選んでレジに持って行く。これだけ買ったのに2500円だったので、ほんとにこのお店いいなあと思った。
 

お店を出た後、司は市内S球場に向かった。この日、そこで旭川B高校とA大学附属高校の試合がある情報を得ていた。それでその試合を見たあとでミットを買いに行こうと思ったのである。
 
バスでS球場まで移動する。球場の周囲は雨で水たまりなどもできているのを気をつけながら球場に入った。
 
結構観客がいる!
 
この2校の試合なら見に来る人多いだろうなと司は思った。A大付属は昨年甲子園に出ているし、B高校も充分な強豪だ。
 
司は夢中になって観戦した。試合は1対0でA大付属が勝った。ランナー12塁で4番バッターという逆転のピンチにA大付属のキャッチャーが矢のような送球で2塁走者を刺したのが大きな試合の分岐点になった。
 
「かっこ良かったなあ。ぼくもああいう送球ができたらいいなあ」
などと思いながら、司は球場を出た。
 
試合終了直後は、バスを待つ人が多い。これ待ってても乗るのに時間かかりそう。新旭川駅まで歩こうかなと思った。
 
これが彼の人生の分岐点となったのである。
 

小雨がちらついているので、傘を差し、のんびりとしたペースで駅まで歩く。スカートを穿いているのでそもそも歩幅が小さくなる。基本的に太股(ふともも)はあまり動かさず、膝下だけを使って歩く。この時、腰でバランスを取るようにするとスムーズに歩ける(実は女らしくなるがそこまで彼は考えていない)。司は女装外出を何度も続けている内にやっとスカートを穿いた時の歩き方をマスターしたのだが、こういう歩き方って、土の球場での走塁の時の要領に似ている気がした。女装は野球の練習になる??
 
それで10分くらい歩いていた時である。そばを通ったブルーメタリック系の車が水たまりをはねて、司はまともにその水しぶきを浴びてしまった。
 
「わっ」
と思わず声を出す。
 

車が停まる。
 
運転席から30歳くらいの女性が駆けて来た。
 
「ごめーん。大丈夫?」
「ずぶぬれ」
「ごめんねー。私、家が近くなのよ。うちに来ない?服を洗濯してすぐ乾燥機に掛けるから、あなたもシャワー浴びた方がいい」
 
「でも着替えが無いし」
「洗濯してる間は適当なのを貸すから」
「じゃよろしく」
 
それで司は女性の車に乗ってしまったのである。
 
良い子は知らない人の車に乗ってはいけません!
 
イカノオスシ
 
イカない
ノらない
オおきな声を出す
スぐ逃げる
シらせる
 

着いた所は結構大きな家だった。広い庭に車を停め、家の中に案内される。
 
「そこに温泉のマークが入っているところがバスルームだから、取り敢えずシャワー浴びて、服を脱いだら、それを洗濯機に入れるから、3時間くらいで乾燥まで終わると思う。その間に着る服は脱衣場に入れておくね」
 
「はい、すみません」
 
それで司は温泉マークのドアを開けて中に入る。脱衣場になっているので、着ている服(ポロシャツ・スカート・アンダーシャツ・ショーツ)を脱いで床に置き、浴室の中に入った。
 
暖かいシャワーが出る。気持ちいい!
 
それで司は置いてあるシャンプーを借りてまずは頭を洗った。女性用のシャンプーって香りがいいし、何か柔らかい感じだなあと思った。女性用のシャンプーが2セット置かれているので、ここの家族は女性2人、母娘か姉妹だろうかと思った。司は安そうなほうのシャンプーを借りた(貧乏気質)。
 
その後、コンディショナーとか使うんだっけ?と思ったがよく分からないのでパスする。石鹸(これも2種類ある内の安そうな方)を借りて顔を洗う。この石鹸がまた凄くクリーミーで、女の子っていいなあ。いつもこういうので身体を洗ってるんだ?と思った。
 
その石鹸で更に胸・腕、お腹を洗い、ちんちんは皮を剥いて内側まで洗う。たま袋を洗う。お尻の穴付近はシャワーを当てて洗う。その後、足を洗う。みんな足に結構毛が生えてるみたいだけど、ぼくはまだだなあ、などと司は思っていた。
 
足の指まで洗ってから、全身にまたシャワーを掛けた。凄く気持ちいい感じになり、司は浴室を出た。バスタオルが置かれているので、それで身体を拭いた。着替えが置かれている。
 

ドキッ。
 
女の子の服だぁ!
 
そうだよね。ぼくスカート穿いて歩いてた所に水しぶき浴びちゃったから、ぼく女の子だと思われてるよね。だから、女の子の服を用意してくれたんだ。
 
着ちゃおう!
 
それで女の子用のパンティを穿き、生まれて初めてキャミソールを身につけた。
 
この感触が凄くいい!!!
 
(ナイロンの感触でキャミソールやスリップにハマる人は多い)
 
そしてドキドキしながらスカートを穿く。そして可愛いブラウスを身につけ、ボタンを留めた。ブラウスを着たのも初めてだったので、男性用のワイシャツなどとは左右逆に付いているボタンを留めるのに苦労したがなんとか着れた。
 

バスルームを出る。
 
「ああ、あがった?今洗濯してるから3時間くらい待ってね」
「はい。すみません」
「お昼、簡単なものだけど作ったから取り敢えず食べて」
「ありがとうございます」
 
と言って、司は用意されていた八宝菜と御飯を頂いた。美味しいと思った。
 
「旭川の子?終わったら家まで送って行くよ」
「留萌なんです」
「それは遠い所から来たのにごめんねー」
「いえ、夕方16時半くらいまでに旭川駅前に行けたら大丈夫ですから」
「じゃ時間は充分あるね。少し休んでいくといいよ。雨も降ってるし」
「じゃそうさせてもらおうかな」
 
「16時半が最終?」
「最終は18:20なんです。でもその前に買物したいから」
「ああ。買物があったのね」
「ええ。野球のミットを買おうと思って」
「へー。あなたキャッチャーかファースト?」
「キャッチャーなんです」
「すごいね。でも女子で野球やってる子って格好いいなあ。女はソフトボールでもやってなさいって言われるもん」
「あ、そうですよね」
 
といいながら「しまった。ぼく女の子の格好してるんだった」と司は焦った。
 
「片岡安祐美ちゃんとか応援してるけどね」
「あの子凄いですよね!」
 
「ぼく小学5年生まではピッチャーやってたんですけど、肩を壊してしまって」
「あら」
「それでキャッチャーに回ったんですよね」
「ああ、結構そういう人いるのよ。小さい内はあまり無理しちゃいけないんだけどね」
「そういうことも全然分かってなかったんですよねー」
 

「そうだ。名前聞いてなかった」
「えっと・・・司(つかさ)です」
「へー。可愛い名前ね。私は貴子」
「たかこさんですか」
 
苗字は名乗らないんだなあと思ったけど、女の子たちってわりと下の名前で呼び合ってるもんなあと思った。自分も苗字を名乗らなかったけど!!
 
食事のあと、紅茶を入れてくれて、クッキーも出されるので、司は紅茶に砂糖を入れ、ミルクも入れて飲み、クッキーも摘まんだ。紅茶もクッキーも美味しいなあと思った。ただ少し香りが強いと思った。
 
「野球やるなら」
と言って貴子さんはテレビを点けた。
 
「あ、ファイターズの試合だ」
「今始まった所みたいね」
 
北海道日本ハム・ファイターズとオリックス・ブルーウェーブ(*19)の試合だが、見ていたら打撃戦になっているようである。司は他の人の家にいることも忘れて夢中になってテレビを見ていた。
 
(*19) 近鉄バッファローズがオリックス・ブルーウェーブに統合される予定であるという情報が出たのは2004年6月13日で、これはその直前。また2004.6.5に北海道日本ハム・オリックス戦が行われたのは確か(8-6でオリックスの勝ち)だが、以下のような事故があったかどうかは分からない。これは架空の物語である。
 

ピッチャーのボールが少し下に逸れた。
 
「あぁ・・・・」
 
どうも“ボールがボールに当たった”ようである。
 
キャッチャーは倒れて起き上がれない。司は「わぁっ」と思って見ていた。あれは自分も過去に数回直撃したことがあるが、とっても辛いのである。この痛みを経験することになるのは、キャッチャーの宿命?である。
 
「今のボール153km/hだったみたいだもんね」
「こわぁ」
「高速で153km/hで走ってた車が壁に激突したら即死だからね」
「あはは」
「ボールさん死んでなければいいね」
「あはははは」
 
ほんとにあれは死にそうな気分なんだよなあと司は思った。
 
「でも男の人って大変ネ」
「そ、そうですね」
「私たち女には分からない痛みよね」
「ほんと分かりませんね」
と司は言ったものの、分かりすぎる〜。と思っていた。
 
「私たち女で良かったね」
「そうですね。女の方がいいです」
 
「私たち玉なんて無いしね」
「全く玉なんて無い方がいいですよね」
 
マジで玉が無かったら、あんなに苦しまなくて済むよなと司は思って言った。
 

どうやらボールさんはお亡くなりにはならなかったようで、キャッチャーは復活して試合も続行される。
 
しばらくテレビを見ている内に司はあくびが出た。
 
「あなた少し疲れてるみたい」
「そうかな」
「少し寝てたら?そちらの客間のベッド使っていいから。16時くらいになったら起こしてあげるよ。その頃には洗濯物も乾いているだろうし」
「それもいいかな」
 
それで司は客間に案内され、そこのベッドに潜り込んだが、凄く眠たい気がして5分もしないうちに眠ってしまった。
 

司は爽快に目が覚めた。かなり熟睡したみたいと思って携帯を見ると3:33 PMである。あ、数字の並びがきれいだと思った。
 
1時間くらい寝ちゃったかな。何か物凄く爽快な気分である。身体が軽くなったかのようである。司は起き上がると、ベッドを直して(←行儀が良い)部屋を出た。
 
「ありがとうございます。ぐっすり寝ました」
「良かった、良かった」
「すみません。トイレどこでしたっけ?」
「玄関横の♀マークのある所」
「あ、はい」
 
そうか。ぼくスカート穿いてるし、女子トイレ使わないといけないよなと思い、玄関そばの♀マークのついたドアを開ける。バスルームの隣に洗面台が2つ並んでいて、その隣に♀マークが2つ並んでいる。でもあれ?♂マークは無いの?男子トイレは別の場所にあるんだろうか?
 
などと考えながらトイレに入る。スカート穿いてるから座ってトイレをする。この座ってトイレするのに最近司は完全にハマってしまっていた。
 
スカートをめくり、パンティを下げて便座に腰掛ける。排尿機構を開放するとおしっこが出る。
 
え!?
 
おしっこの“出方”が全然違うのである。
 
なんで!?
 
と思ったが、取り敢えず出るだけ出してしまう。そしてトイレットペーパーを少し取り、いつものようにおしっこの出た所を拭こうとしたが空振りする。通常ちんちちんのある場所にちんちんが無かったのである。
 
へ?
 
と思って、そのあたりを反対側の手で探ると、ちんちんもたまたまの袋も見当たらない。でも濡れている部分はあったので、そこをトイレットペーパーで拭いた。
 

司は、スカートを脱いでみた。パンティも脱いで、その付近をよくよく見る。
 
嘘!?
 
お股には、ちんちんもたまたまの入った袋も無く、代わりに縦の割れ目がある。おしっこはその割れ目の中から出て来たようである。
 
司はしばらく思考停止していたが、やがて自分は女になってしまったのではないかという結論に到達する。
 
うっそー!?
 
ふと気がついて胸に触ってみる。
 
わぁ。
 
そこには豊かな2つの膨らみができている。
 
全身女になっちゃった!?
 

司は取り敢えず水を流し、手を洗い、パンティを穿いてスカートを再度穿いてからトイレを出た。
 
「あのぉ、貴子さん」
「うん?」
「ぼく女の子になっちゃったみたい」
「そうそう。なんかあなたが男の子の身体になってたから、修正してちゃんと普通の女の子に直してあげたよ」
 
ぼく性転換手術とかされたのかな?
 
「玉は無い方がいいとか、女の方がいいとかも言ってたし」
 
言った覚えがある!
 
「でも困りますー」
「あら、気に入らなかった?」
「だって、これじゃ男子制服着られないし」
「女子制服着ればいいじゃん」
「急に女になったらお父ちゃんに叱られそうだし」
「娘がひとりできたら喜んでくれるよ」
「それに女になってしまったら野球部やめないといけないし」
「女子はダメ?」
「うちの野球部は男子しか入れてくれないです」
「困ったね〜。ソフトボール部にしばらく在籍しておいて、女子野球部のある高校に進学したら?札幌新陽高校とか女子野球部あるよ」
「男に戻せないんですか〜?」
「男に戻りたい?」
 
司は迷った。女になるのも悪くない気がする。でも突然の性転換で予想される様々な激風に自分は耐える自信が無い。だって、原田さんとか凄い苦労してるみたいだもん。
 
「戻りたいです」
「そう?じゃ戻してあげるよ」
「お願いします」
 
お願いはしたものの、凄く惜しい気がした。せっかく女の子になれたのに!
 

「でも性別を1度変えると24時間は再度変更できないのよ(←大嘘)。明日の14時くらいまで待ってもらえない?そしたら男の子に戻してあげるから」
 
「分かりました」
「それまでうちに居て欲しいから、お母さんにお泊まりの許可取れる?」
「じゃ小学校時代の同級生に会って、泊まっていかないかと誘われたと言おうかな」
「じゃ私がそのお友達のお母さんのふりをしてあげるよ」
 
それで司は母に電話をした。予定通り途中から貴子さんに代わり、挨拶までしてもらったら「ではよろしくお願いします」ということになった。
 
「じゃ明日の14時まで24時間限定の女の子ライフを楽しもうよ」
「あ、はい」
 
それいいかも!と司は思った。
 

せっかくだからお出かけしようよと言われるが、その前に少し修正しようと言われた。
 
「おなた眉毛が太すぎるのよ。それでリードされちゃう」
「リード?」
「男装・女装する人が、ちゃんと装っている性に見てもらえることをパスという。例えば女装している人を他の人が見て女性と判断されている状態がパス。でも「こいつ男じゃん」と思われてしまうのがリード」
 
「へー。でもぼくこれまで女子トイレとかで変な目で見られたことないですよ」
「それはあなたが中学生だし、痴漢とは明らかに雰囲気が違うから、男の娘さんかなと思われて、許容してもらっていたのだと思うよ。でもいつも許容されるとは限らない。悲鳴あげる人や『君男の子じゃないの?』とか声掛けてくる人があるかもしれない」
 
「そうだったかも」
「だから女の子として行動する時は、完璧に女の子を装ったほうがいい。そして女子トイレとか入る前にセルフチェックする」
 
「それどうやるんですか?」
「鏡チェックとかコンビニチェックとかあるよ」
「コンビニ?」
 
コンビニに性別チェッカーとか売ってたかなあ。
 
「コンビニでお会計すると、売上傾向分析のため、客層ボタンを押される。10代、20代、30代、40代とかいう年代の区分と、男女の区分があるから、コンビニで赤いボタンを押されたら、女の子だと思われたということ」
 
「そんなのがあったんだ!」
 
「あと一般に大型店舗ではトイレ入口の手前に壁が全面鏡になっている部分があることが多い。これはトイレを出た人が自分の服装に乱れが無いがチェックするためのものなんだけど、このエリアで自分の姿を見てみて、女の子に見えるか、変な所はないか確認してから女子トイレに入る」
 
「それ気をつけよう」
と司が言うので、この子、やはり男の子(男の娘?)に戻っても女子トイレ使う気満々だと、貴子は思った。
 

それで貴子は司の眉毛を細くカットしたが、鏡を見た司は
 
「凄い。これだけで凄く女の子っぽくなった」
と言った。
「眉は重要なんだよ。でも君、凄く可愛くなれる。男の子にもてるよ。やはり女の子のままでいいと思い直したら遠慮無く言ってね」
「あはは」
 
ブラジャーも渡されるが着け方が分からないので後ろのホックを留めてもらった。胸を締められるとなんか凄く気持ちいい。これハマりそう、と司は思う(←間違いなく既にハマった)。
 
キャミソールを着けて、ショーツも少し可愛いのを穿く。ショーツを穿いた時に余計なものが無いから、ショーツがピタリとフィットする。この感覚いいなあと想った。ちんちんが飛び出す心配も無いし。
 
ライトブルーのカットソーに、ライトピンクのフレアースカートを穿くと、凄く可愛い女の子の出来上がりである。鏡に映して「ほんとに可愛い〜」と思った。
 
(↑ちゃんとこういう服を用意しているのが計画的犯行)
 

それでお出かけする。
 
「どこ行くんですか?」
「今夜は夕食を取ってからお買い物しようよ。あ、心配しないで、お金は全部私が出すから。私、わりとお金持ちだから、気にしないでね」
「はい。そうだ。ここお部屋がたくさんあるし、トイレと洗面台も2つずつだし、どなたか妹さんか誰かと住んでるんですか?」
「親戚の女子中生とそのお友達とかをよく泊めるからね」
「へー」
 
じゃ基本的にはひとり暮らしなのかな。
 
「そうだ。トイレが2つとも♀マーク貼ってありますけど、男性が来ることはないんですか?」
「男の人が来ることはあるけど、女子トイレを使ってもらう。便座を上げて使うのは禁止。座ってしてもらう」
「座ってするのって楽でいいですよね」
「慣れちゃうと、そう言う男の人は多い」
「なるほどー」
 
出掛ける前に念のためトイレに行くが、さっきはぼんやりとしたものの今回は意識しておしっこしたら、この出方、凄くストレスが無いという気がした。おしっこは身体から直接真下に落ちていくので、ちんちんの向きとか皮のかぶりかたとかを考える必要が無い。なんか男って凄く面倒なおしっこの仕方をしているのでは?という気がしてきた。
 
ただし、どうしても男より広い範囲が濡れるから、きちんと拭かないとまずい。そこは女の面倒さかなという気はする。
 

貴子さんの車に乗って旭川駅前まで行き、駐車場に駐めて、西武デパートに入った。レストランに入り、好きなもの頼んでと言われたので、ハンバーグセットを頼む。「貧乏性ね」と貴子さんは笑い、自分はチキンステーキセットを頼んでいた。
 
食事をしていたら、フルーツゼリーのグラスが1つずつテーブルに置かれる。
「女性のお客様にサービスです」
と言われた。
 
「こういうのってよくあるんですか?」
「時々あるよ。女はお得だよね」
「思いました!」
 
食事の後、トイレに行ってから、お店の中で買物をする。ついでにミットも買おうかなと思ったのだが「男の子に戻ると手のサイズも変わるかもしれないから男の子に戻ってから買ったほうがいい」と言われた。そんなものまで変わるのか!そういえば、性別が変わったのにびっくりしすぎてあまり意識してなかったけど、手が心持ち小さくなったかも知れない気がした。そういえば身長も少し縮んでる!?
 
貴子さんは、婦人服売場で、ワンピースを2着、スカート3着、中性的なデザインのポロシャツなどを買ってくれた。
 
「このくらいのデザインなら男装してても着れるよ」
「そうかも」
 
「ウェストは今66だけど、男に戻ると69くらいになってるかもね。だからそのくらいのサイズで買っておこうね」
と言って、ウェストの一部がゴムになっていたり、アジャスターの付いているのを選んでくれた。元々の身体では69cmのスカートを穿いてたから、多分それで行けるだろうと司も思った。
 
また下着売場に行き、女子中高生らしいショーツを10枚、ブラジャーも5枚買ってくれる。
「男の子に戻ったらアンダーが今より大きくなるかもしれないけど、その分カップが小さくなるからわりと入ると思う。アンダーが足りなかったらこれを使って」
と言って、スーパーフックも5個買ってくれた。こんなアイテムがあったとは全然知らなかった。ついでにウレタン製のバストパッドも買ってくれた。
「これを入れておくと、何かで胸を触られてもちゃんと胸があるように感じるよ」
「色々便利なアイテムがあるんですね」
「女の子もこういうの入れると1カップ大きいブラを着けられるから」
 
「そういうの、女の子って結構自分の外見を演出してますよね」
「女の子は99%が演出だから」
「そうかも」
「だから男の娘さんも同じ手法で演出できる」
「なるほどー」
 

そのあとバッグコーナーでやはり中性的なカジュアルバッグとスポーツバッグを買ってくれた。
「女装で出歩く時も男の子の格好でも、このくらいのデザインのは使えるでしょ?」
「使える気がします」
 
でも貴子さんって、なにげにぼくが男の子の身体のまま女の子の服を着て出歩くことができるようなアイテムを買ってくれている気がする!?
 
男の娘レッスン!?
 
ぼくついこないだまでは女装する趣味も無かったのに、あのトイレ間違いをきっかけに男の娘まっしぐらになってる気がする(←既に男の娘になっていることを認識していない)。
 

この日はその後、水着コーナーに行く。
 
「明日の午前中、プール行こうよ」
「プール」
 
ちょっとくらくらするけど、それって女の子の身体でないと体験できないし、思い切って体験しておくのもいいかもと思った。
 
「ビキニ着る?」
「自信無いです!」
 
結局普通のワンピース水着を上下に切ったようなデザインの水着を買ってくれた。タンキニというのだそうだが、すっごく可愛い。ぼくにこんな可愛い水着、着れるかなあと思ったが、せっかく女の子になってるから、思いっきり女の子であることを楽しまなくちゃね!
 

それでその日はおやつなども買って引き上げた。
 
少し疲れた気がしたので、その日は帰ったらすぐ寝た。
 
翌朝とっても爽快に目が覚める。部屋を出て、居間に居る貴子さんに
「おはようございまーす」
と声を掛けてからトイレに入る。
 
おしっこをしながら、こういうおしっこをずっとしていられたらいいなと思い、男に戻るのが本当に惜しい気がした。でもぼく、女の子としてやっていく自信無いしと思う。いっそ、生まれた時から女の子だったら良かったのに。
 

朝御飯を食べてから、水着を身につけてみた。
 
鏡に映したら、可愛い女の子の水着姿がそこにはある。ぼくが男の子ならつい声を掛けたくなるくらい。あれ?ぼく女の子だっけ?男の子だっけ?分からなくなっちゃった。
 
それでその服の上に昨日買ってもらったワンピースを着て市郊外のレジャープール、アクアルネサンス旭川まで出掛けた。受付で貴子さんが
「大人1枚、中学生1枚」
と言うと、こちらを見て赤いタグの付いた鍵を2つくれた。
 
それで一緒に入場し、女性を表す絵が描かれている、赤い色の入口から更衣室に入る。
 
ドキドキ。
 
女子更衣室の中には水着の女性だけでなく、裸になっている女性もいるので、司はキャーっと思ったが、今は司自身が女の子なので、男子更衣室に行くことはできない。
 

ふたりとも服を脱ぐと下に水着を着ている。貴子さんはワンピース水着だが、上品なデザインだよなと思った。実は水着売場で「貴子さんはビキニ着ないの?」と訊いてみたのだが「ビキニは300年前に卒業した」などと言っていた。300年前にビキニってあったんだっけ!?
 
(ビキニが発表されたのは1946年である)
 
水泳帽をかぶり、、ゴーグルを持って、シャワーエリアを通り、プールエリアに入る。ここは小学生時代(まだ男の子だった時!)にも来たことがあるが、結構広い。大きな遊泳プール(深さ1.2m)の他に、25mプール(深さ1.5m)、子供用プール、波のあるプールなど、変わったプールも並び、建物の外までぐるっと回る一周100mのウォーキングプールもある。
 
そしてスライダーがある!
 
「スライダー行こうよ」
「ぼくも大好きです」
 
それでこの日はスライダーを滑りまくった。スライダーはABCの3コースがあったが、一度Aコースを滑ってスタンプをもらわいとBコースは滑られない。そしてBコースを滑ってスタンプをもらわないとCコースは滑られない。でも貴子さんと司はAABBCCと2回ずつ6回滑ってから少し休憩し、遊泳プールで少し泳いだ。
 

「君結構泳ぐね」
「泳ぐのも結構好きです」
「じゃ25mプール行こう」
「行きましょうか」
 
ここは監視員さんがいて「途中の立ち止まり禁止」である。つまり最低でも25mは泳げないと利用できない。浮き輪などの遊具も禁止である。最初司は向こうまで泳いでは立ち、また向き直って泳いでいたが、
「ターンできないの?」
と言われて、少し指導してもらった。それで20分くらいやっている内にできるようになる。ターンができると連続して泳げるので、凄く楽しくなった。これで10往復くらいした。
 
その後、またスライダーに行き、ここで今回はCコースをひたすら滑った。それでお昼になったのであがることにする。プール内でホットドッグとドリンクのセットを食べてから、シャワーエリアを通り更衣室に戻る。
 
「このままスパに行こうよ」
と言われる。
「スパ?」
「ここの地下はお風呂になってるのよ」
「そうだったんですか?」
 
以前来た時はプールだけで帰ったので、それは知らなかった。
 

貴子さんが水着を脱いでしまうので驚く。
「もしかして裸になるんですか?」
「お風呂だもん」
「きゃー」
 
「スパは男女別れてるから大丈夫だよ」
 
そうだった。ぼく女の子だったんだ。
 
それで司も水着を脱ぎ裸になる。水着はロッカー内に入れていた水着入れに入れる。そして裸のまま貴子さんと一緒にエレベーターの所に行き、地下に降りた。
 
「このエレベータは地下にしか行かないんだよ。間違って2階の食堂街に行ったら大変だから」
「裸の女性が出て来たらびっくりします」
「ボーイさんがお皿を落とすかもね」
 

それで地下のお風呂に行った。
 
中は裸の女の人だらけである。
 
クラクラと来る。
 
でも今はぼくも女の子だから、ここに居てもいいんだよね、と考える。できるだけ他の女の人の裸を直視しないようにしたが、27-28歳くらいの女性が凄くきれいなお椀のように丸いおっぱいを曝しているのを見て
「きれーい」
と思った。ぼくにもあんなおっぱいがあったらいいなあ、などと考えてしまう。
 
ここは5m四方くらいの中型の浴槽が多数並んでおり、それぞれに何とかの湯と書かれているようだ。司と貴子はまずは洗い場に行き、用意されているシャンプーで髪を洗い、ボディシャンプーで身体も洗った。
 
胸を洗う時にドキドキした。
 
いいよなあ、これ。
 
お股を洗う!
 
物凄くドキドキする。
 
よく分からないけどデリケートなエリアというのは想像が付く。ボディソープを両手に取り泡を立ててから、割れ目ちゃんをそっと開いて中を優しく洗った。心臓が激しく打っている、ぼく心臓麻痺で死んだりしないだろうか?などと不安になる中、(多分)きれいに割れ目ちゃんの中を洗った。もっとじっくり観察したい気分だが、こんな所でそんなことしてたら変なので、平常心、平常心と言いきかせて洗い終える。シャワーを弱く当てて洗い流す。
 
その後も足も洗って、身体全体に再度シャワーを掛けてから、浴槽に入った。浴槽は、薬草の湯とか、ワインの湯とか、桧湯とか、バブルバスとか、電気バスとか、色々ある。楊貴妃の湯というのもあったけど誰だっけ?
 
その楊貴妃の湯に15分くらい浸かって貴子さんとおしゃべりした。貴子さんが(多分)30歳くらいなのに、10代の男女の話題にも詳しいので凄いなあと思う。8人もいるNEWSのメンバーの名前を全部フルネームで言えるのも凄いと想った(*20). ぼくだって苗字でしか言えないのに(←男の子でそれが言えるのは充分凄い)。女子中生の親戚がよく来てると言ってたから、その子と話していて、その方面の知識もあるのかなと思った。
 
(*20)この当時は結成当初の9人から森内貴寛(後のONE OK ROCKのTaka)が抜けて8人の時代。この後、2005年に内博貴、2006年に草野博紀が抜けて6人の時代(小山慶一郎・錦戸亮・山下智久・増田貴久・加藤成亮・手越祐也)が長くなる。
 

お風呂から上がるとエレベータで1階の更衣室に戻り、バスタオルで身体を拭いてから、パンティとブラジャーを着ける。ブラのホックはまた貴子さんに留めてもらった。
 
「これ練習するといいよ」
「練習しようかな」
「両手にホックの所を持って、後ろで合わせるようにすればいいんだよ」
と言って貴子さんは自分でやってみせる。
 
それで要領は分かったけど、これって結構練習が必要だと思った。女の子をするのも大変だ!
 
それでワンピースを着て退場した。
 

取り敢えず貴子さんの家に戻る。戻って来たのが14時半頃だった。
 
「少し遅くなったね。1時間ほど寝てて。その間に男の子に戻してあげるから」
 
司が悩んでいるようなので貴子は言った。
 
「それともこのまま女の子にしておこうか」
 
どうしよう?と司は思った。
 
「何なら1ヶ月後くらいにまた会おうか?1ヶ月くらい女の子ライフを満喫してから男の子に戻るとかは?」
 
司は悩んだ。女の子の身体を1ヶ月も味わえたら凄くいい気がする。でもその身体で学校に行ったら・・・大騒ぎになる。やはり無理だよぉ。
 
「惜しいけど男に戻して下さい」
「了解了解。でも女の子になりたくなったら、私の所に来るといいよ」
「もしかしたら来るかも」
 
それで司は昨夜泊まった個室に入り、ベッドに横になる。目を瞑るとプールで3時間くらい遊んだ疲れもあり、すぐ眠ってしまった。
 

司はやや不快な気分で目を覚ました。
 
そっとお股に手をやる。
 
ちんちんがあるので、溜息をつく。
 
胸も触ってみるがバストは消失している。
 
「やはり女の子のままにしてもらえば良かったかなあ」
と後悔する気持ちが出たが、自分で男に戻して欲しいと言ったのだから仕方ない。
 
テーブルの上に、司がここに来る時に着ていたスカートとポロシャツ、ショーツとアンダーシャツがある。
 
結局女物だ!
 
司はその服には“着替えずに”居間に出た。
 
「おはようございます」
「おはよう。着替えないの?」
「結局スカートだし」
「まあそうだね。じゃミット買いに行こうか」
「はい」
「身体の調子はどう?」
「不愉快だけど仕方ないです」
「あはは」
 
「特にちんちんがショーツから飛び出してしまうのは困っちゃって」
「後ろ向きに収納すればいいじゃん」
「後ろ向き?」
 
それで貴子さんが、やってくれたら、ちゃんとショーツ内に収納できるので「こんな方法があったのか!」と感激した。
 
(女性に触られてもちんちんが大きくならなかったことに彼は何も疑問を感じていない)
 

結局、着てきた服は持参のリュックに入れ、ワンピースのまま貴子さんの車に乗り、旭川市内の大きなスポーツ用品店に行った。貴子さんは
「勝手に性転換したお詫びにミットの代金も私が払ってあげるよ」
と言った。
「でもお母ちゃんからもミット代もらったんだけど」
「それは女の子の服を買う資金にしたら?」
 
司は少し考えた。
 
「そうしちゃおう!」
「うん」
 
お店でキャッチャーミットが欲しいと言うと、ソフトボール用のミットと思われたが「硬式野球なんです」と言う。
 
「ああ、女子野球ですか」
とお店の人は納得したように言う。やはり片岡安祐美の活躍もあるのだろう。女子で野球をする人も増えている気はしていた。
 
(“ナックル姫”こと吉田えりが話題になるのはこの数年後である)
 
それで手のサイズや形なども見た上で、お店の人が
「これなどどうです」
と勧めてくれた。
 
凄く着け心地がいい。それに凄くしなやか。凄くいい革を使ってるみたい。
 
でも凄く高い!
 
「でもこれ高いよ」
と貴子さんに言うが、貴子さんは
「値段は気にしない」
と言う。それでこれを買うことにした。
 

ミットを買った後で、貴子さんは司をポスフールに連れていき、レディスのジーンズのパンツを買ってくれた。試着してみたが、結構ピッタリである。
「あなた、一回女の子にした後遺症で体型がやや女性的になっちゃったみたい。たぶんレディスの服が適合するんじゃないかと思ったらやはりそうだった」
と言う。
 
司は不安になった。
「ぼく学生ズボン入るかなあ」
「念のためそれも買おうか」
「うん」
それで制服コーナーで“女子生徒用”として売られている学生ズボンを2着、試着して買った。
 
「ごめーん。だいぶ余計なお金使わせて」
「お金持ちの道楽だから気にしないで」
「はい」
 
「野球部のユニフォームは行けると思う?」
「あれは元々色々な人が着ることを前提に作られているから、ベルトをしっかり締めればいけると思います」
「かもね、不都合があったら呼んでね。何か手を打つから」
「すみません。お願いします」
 

ミットやズボンなどを買っていたら、17時半くらいになる。それでそのまま旭川駅前まで送ってもらい別れた。買ってもらった女物の服の類いは昨日買ってもらっていたスポーツバッグに全部詰めた。
 
そしてワンピース姿のまま、よくよくお礼を言って、貴子さんとは別れた。その格好で留萌行きに乗った。
 
あ!おやつでも買っておけば良かったかな?と思っていた時、発車時刻ギリギリに飛び込んで来た女子中生がいた。
 
うっ。
 
「あれ〜、司ちゃんじゃん。今日はすっごく可愛いワンピース着てるね」
などと言っている。
 
村山さんだった。
 
「旅のお供におやつ買い込んでるからさ。留萌まで、これ摘まみながら、おしゃべりして行こうよ」
と言って、彼女は司の隣に座った。
 
あはははは。
 
村山さんの性格なら、ぼくが女の子の格好してたこと、他人に言いふらしたりはしないだろうけど、ぼくどこで男の子の格好に戻ろう?
 

司が人生が変わるような“大冒険”をした1週間前。
 
2004年5月28日(金)は、松原珠妃の17歳の誕生日であった。
 
★★レコードの加藤銀河主任補佐(係長代理から高岡事件の責任で降格)は巧みにζζプロの普正堂行社長を口説き落とし、松原珠妃の17歳バースデイ企画として、かつて南沙織が歌い、森高千里もカバーした『17才』を珠妃が歌ったシングルを発売した。
 
カップリング曲は、普正社長の強い希望で、演歌の大御所・ロイヤル高島さんが詩を書き、東郷誠一さんが曲を付けた『江ノ島恋の渚』という曲を入れている。もっとも東郷さんはこの曲はヨナ抜き音階を使いつつ、ポップスに近い作りをしている。こういう作りにしたのはむろん加藤および珠妃のマネージャー青嶋の要請によるものである。
 
普正社長はこの曲の作りに不満があったようだが、東郷先生の作品ということであれば文句も言えないし、社長も『哀しい峠』よりはできが良いことを認めざるを得なかった。
 
このCDはゴールドディスクにこそ到達しなかったものの、8万枚ほど売れ、結構FMなどでも流してくれた。
 
『17才』は本当に17歳の女の子にしか歌えない曲なので、このCDはDVD付きの物が多数売れた。奄美の海岸で撮影してきたビデオがひじょうに好評だった。このビデオには『黒潮』の写真集で共演した“ピコ”(後のローズ+リリーのケイ)も一緒に映っていた。写真集も発売されたが、好評でこの年の写真集売り上げBEST3に入ることになる。
 

2004年6月1日(火).
 
体育祭代休明けのこの日からS中は衣替えになり、夏服になる。但し6月中については寒い日は冬服を着てもよいことになっている。今年は雪こそ降らなかったものの、6月7-11日の週が寒くみんな冬服に逆戻りした。
 
男子は学生服を脱いでワイシャツ姿になる。女子はセーラー服型のブラウスである。千里や沙苗、セナは当然、女子のセーラー・ブラウスに変えたが、スカートは冬服のスカートを穿いて出て来た。まだ結構寒いので裏地の無い夏用スカートでは寒い。
 
しかし雅海はワイシャツ姿の登校で
 
「まさみちゃんはどうして女子制服じゃないの?」
と男子たちから言われて、
「いやちょっと」
などと照れ笑いしていた。
 
しかしその反応がこれまでとは違い、“単に恥ずかしがっているだけ”っぽかったので、からかった男子たちが顔を見合わせた。(雅海が体育祭のソーラン節で女子と一緒に着替えたことはこの時点ではまだ男子たちには認識されていない)
 
「まさみちゃんはセーラー服は持っているはず」
「セーラー服着てるまさみちゃんをジャスコで見た」
「私は留萌駅前で見た」
と女子たちの声。
 
「夏服も持ってるよね?たぶん」
「ごめん。ノーコメントで」
「否定しないということはやはり持ってるんだ!」
 

6月1日(火).
 
この日から、今年の水泳の授業も開始された。
 
水泳の授業は“水着”を着用しておこなう。
 
男子は“華美でないもの”なら自由ということで、多くの子がトランクス型またはハーフパンツ型を着ていた。小学校の男子用スクール水着に多かったブリーフ型を着ている子はいない。あれは、ちんちんの形がきれいに見えるので、女子も目のやり場に困っていたし、男子たち自身も嫌だったようである。
 
「まあチンコの形が分からないということはチンコが万一無くても分からない」
「チンコの無い男なんているの?」
「まあ各々事情はあるかもしれない」
「ところでお前、チンコあるの?」
「あるけど」
「どれどれ」
「こら、よせ!」
 
何人かちんちんの存在確認をされている子がいたが、女子は見ぬ振りをしていた。
 

クラスが違うので直接見てないが、2組の鞠古君は女子用スクール水着を着た上にトランクス型の水着を着けていたらしい。彼は病気治療のために女性ホルモンを投与されているのでバストがある(留実子によるとBカップのブラジャーを着けているらしい:女性ホルモンのレセプターが物凄く優秀なようだ)。それで上半身の裸を曝すことができないので、体育の香田先生(男性)の許可を取って、上半身を女子用水着で覆っている。しかし普通のMサイズの女子用スクール水着を着られるのが鞠古君の凄さだ!
 
「まりこちゃん、女子用スクール水着だけでいいと思うけど、なんでその上に男子用水着まで着けてるの?」
「女子用水着だけだと、チンコが目立ってみっともない」
「まりこちゃんはチンコは切ったと聞いたけど」
「ちょっと切っただけだよ。大半はある」
 
「それ女子用水着にパレオとか付けたらだめなの?」
と2組の女子からは言われたらしい。
「本来、学校の授業ではパレオ禁止だけど、鞠古君の事情なら認めてもらえると思うよ」
 
「俺、女じゃないから、パレオは付けない」
「鞠古君なら、別にスカート穿いてもいいと思うけどなあ」
「スカート似合いそうだけど」
「そうか?俺、スカート穿いて学校に来たら変態にしか見えんとか言われるんだけど」
 
(つまり“スカートは持ってるのか”と2組女子たちは思った)
 

さて、1組で、千里や沙苗は当然普通の女子用スクール水着を着用する。セナも、ちゃんと女子用水着を着けていたが、お股に変な形が出ていないので、他の女子たちも頷いていた。なおセナは着替え用のバスタオルを使用して制服から水着にチェンジした。
 
「まあセナちゃんはゴールデンウィークにはトマムでプールに入ったらしいし」
「その水着で入ったの?」
「なんか可愛い水着買ってもらったけど、恥ずかしいし、違反っぽいから普通のスクール水着を昨日、ジャスコで買ったもらった」
 
中に入った水を排出するお腹の所の合わせがあるタイプである。
 
なお学校のルールではセパレートや腰・首を紐で結ぶタイプは禁止なのだが、セナがトマムで着たのは、後ろ身は上下に分かれているが、前身頃はつながっているタイプであり、ルール的には微妙である。でも普通のスクール水着がいいとセナが言うので、昨日の代休に母と一緒に買いに行ってきたのである。
 
「でもセナちゃん、身体のラインが凄く女っぽい」
「そうかなあ」
「やはりかなり長く女性ホルモン摂ってたのね」
 
最近女子たちの間で出来上がっているストーリーでは、セナは小学5年生の時から女性ホルモンを飲んでいて、昨年の夏休みに静岡の大学病院で性転換手術を受けたらしいということになっている(どこから静岡なんて地名が??)。
 
この日、女子たちはセナの腰回りが凄く女らしく発達していて、バストもBカップサイズあるのを見て、その噂が概ね正しいようだと判断したようである。むろんスクール水着のお股には膨らみが無いので、ちんちんが除去済みというのは既に確定情報である。セナに生理が来たというのも恵香!が言いふらしている。
 

さて、問題は雅海であった。
 
雅海は結構おどおどしたような顔でみんなと一緒にプールに向かった。目の前に2つの更衣室の入口がある。左側には男子更衣室、右側には女子更衣室という表示がある。その前で雅海は一瞬立ち止まってしまった。
 
雅海に気付いた男子体育委員の加藤君が声を掛けた。
 
「祐川さんは女子更衣室に入らなきゃ」
「女子の方に入って良いのかなあ」
 
などと本人は不安を口にするので、加藤君は
 
「誰かいないかな」
と小声で言ってから、女子更衣室のドアをノックした。
「新田(しんでん)さんか誰かいない?」
と大きな声で呼ぶ。
 
「まだ来てないけど何?」
と言ってクラス委員の恵香が顔を出す。
 
「大沢さん。祐川さんを女子更衣室に入れてあげてよ」
「OKOK、雅海ちゃん、こっちおいで」
「うん」
 

それでわりと親しい恵香に手を握ってもらって、雅海はプールの女子更衣室に入ったのであった。
 
「体育祭の時も女子と一緒に着替えたんだから今更じゃん」
「それはそうだけど。ぼく男子制服着てるのに」
「平気平気。るみちゃんだって学生服を着て、女子トイレ・女子更衣室使ってる」
「あの子は凄いね!」
 
それで雅海はプール付属の女子更衣室の中で、まずはワイシャツとズボンを脱ぎ、ワイシャツの下に着ているアンダーシャツを脱ぐと、その下には最初から女子用スクール水着を着ている。
 
そして大事なことは!水着のお股の所がすっきりしたフォルムで、男の子ならあるはずの突起が見られない!この瞬間、女子更衣室のほぼ全員の視線がそこに集中したのに雅海は気付かなかった
 
空気が一瞬緊張して、すぐに弛んだ。
 
「そのアンダーシャツ意味ない」
「暑いだけじゃん。直接ワイシャツ着ればいいのに」
「そしたら水着の線が見えて恥ずかしい」
「今更じゃん」
「それが恥ずかしいなら、そもそも女子制服を着ればいい」
「そうそう。この制服のブラウスは透けない素材だから、私みたいに水着の上に直接着ても外に響かない」
「女子制服とか恥ずかしいよぉ」
「性転換手術まで受けておいて今更だよね〜」
「全く全く」
 
「でもぼく、おっぱいが全然無いから」
「平気平気。**ちゃんだって絶壁だし」
「なぜ私を引き合いに出す〜〜!?」
 
そんなやりとりを見ていて、雅海はやはり女の子たちって楽しい!と思った。男の子たちはもう少し殺伐としてるもんなあ。(雅海はまだ女の子の怖さを知らない)
 
遅れてきた優美絵が手をつないであげて一緒にシャワーエリアを通ってプールに出る。プールには男子たちもいるが、やはりみんな雅海のお股のフォルムに注目した。
 
それで
 
「祐川君は(まさみちゃんは)、やはり性転換手術は終わってた。お股に何もないのを確かに見た」
 
という情報が授業終了後1時間以内に2年生の女子にも男子にも知れ渡っていた!
 

プールでは最初に準備体操をする。
 
通常の体操をした上でストレッチをし、そのあと柔軟体操をする。この時、この日はこのような組み合わせで柔軟体操を行った。
 
雅海−沙苗、セナ−千里
 
(なお2組で女体化している鞠古君は、親友の田代君と組んだらしい。鞠古君に触った感じはほぼ女の子の感触なので、田代君は柔軟体操なのにある部分が硬くなるのを感じたが!我慢した)
 

授業は、(A)ターンができる人 (B)25m泳げる人 (C)25m泳げない人、の3グループに分けて行われる。
 
玖美子や蓮菜は(A), 千里や沙苗は(B), 恵香やセナ、雅海などは(C)である。沙苗は昨年6月の段階では15mくらいしか泳げなかったのが、授業の度に少しずつ進化して25mに到達することができるようになり、水泳大会ではリレーにも出ている。千里などとも一緒に今シーズンはターンの練習に取り組むことになった。
 
恵香・セナ・雅海などは今年もバタ足練習やビート板練習などからである。セナも雅海も昨年は男子水着を着て胸を曝していたが、今年は2人とも女子水着になっている。セナはバストがあるのが見えるが、雅海は胸は平らで、
「セナちゃんは1年掛けておっぱい育てたのね」
「雅海ちゃんはこれから育てるんだろうけど、来年の夏には結構大きくなってるかもね」
などと言われていた。
 

授業が終わった後は、シャワーを通って更衣室に戻る。女子の大半は着替え用のバスタオルを使用して水着を脱いでふつうのパンティとブラを身につけた。千里・沙苗・セナもこの方式である。しかし雅海は恥ずかしそうに水着を脱ぎ、普通のバスタオルで身体を拭いてから、パンティとブラジャーを着けた。
 
水着を脱いでからパンティを穿くまで、5〜6秒ほど全裸になる。もっとも雅海はバスタオルで身体を拭いているので、“そこ”は見え隠れするのだが、息を呑んでそれを見る女子たちは、雅海の“生お股”に少なくともぶら下がるようなものは何も無いことを確認した。
 
パンティを着けたところで空気が弛む。
 
「ブラジャー何サイズ着けてるの?」
と訊かれる。
 
「A75。実はアンダーが入るブラジャーではこれがいちばん小さい」
「なるほどねー」
「75もあったら、AAとかは無いだろうね」
「でもきっとおっぱいは成長するよ」
「だったらいいなあ」
と雅海も女子更衣室に少しは慣れてきた感じで答えていた。
 
なおこの日、雅海に
「着替え用のバスタオルを使わずに裸を曝しなよ」
と唆したのは沙苗である。
 
一度裸体を女子たちに見せておいたほうが、よけいな疑惑?を招かなくて済むから、女子たちも受け入れてくれやすい。
 
なお、雅海も次回の授業からは着替え用バスタオルを使用するようになった。これは実は、親切な(そして空気を読まない!)美都が
「今度からは着替え用のバスタオル使いなよ」
と助言して、わざわざ買うのに付き合ってくれたからである。
 
でも、すっごく可愛い柄のを選ばれたので、雅海はそれを使うこと自体が恥ずかしかった!
 
 
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【女子中学生・十三から娘】(7)