【夏の日の想い出・アルバムの続き】(3)
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『因幡の白兎』が放送された翌日の10月16日、羽田小牧はその日の朝渡された台本を読んで叫んだ。
「欺されたぁ!!!!」
シアター春吉社長は言った。
「君の意思は尊重する。君がどうしてもこのチップの役をやりたくないというのであれば、無理にさせることはない。万一の場合は浦野俊徳君にチップの役をやってもらうことで内諾を取っている」
小牧は言った。
「でもここでチップ役が交替したら大幅な撮り直しですよね」
「それは仕方無い」
「それに浦野俊徳君とぼくでは取れる視聴率が違いますよね」
「うん。君が出るというだけで凄い視聴率が取れる。それにこの役はまだ性別未分化な中学生にしかできない(小牧は中学3年生)。弘田ルキア君とかじゃ年齢が高すぎるんだよ。それにルキア君は普通に女役してるし。君は女役は基本的に拒否してるからね」
その割りには結構やらされてるぞ、と小牧は思う。
「この役は女役もやる人にはできない、男役しかしないはずの人が女役することでサプライズとなる。しかも女役した時に、いかにも女装してますという感じになる人でも困る。自然に女性にしか見えない人でないとできないんだよ。今日本国内でこの役ができるのは小牧ちゃんを置いて他には居ないと思う」
と春吉社長は説得する。
「分かりました。やりますけどギャラを約束の額の倍ください」
と小牧は(腹いせで)言った。
「払うよ」
と鳥山プロデューサーは言った。
「チップ役の分と正体を現してからの分2キャラだからね。アクアちゃんもその方式だし」
「へー!」
それで小牧は『オズの不思議な国』の最終日の撮影に参加することに同意したのである。
(小牧は来年のことを考えていない!)
9月下旬、§§ホールディングの緊急株主総会を開いた。出席者はコスモス、ケイ、千里、2人のアクアである。
コスモスが状況を説明する。
「申し訳無いけど、どうもそういうことになりそうなのよ」
「救済することに異論は無い」
と千里は言った。
ケイも頷く。アクアはよく分かっていない!
「負債額はいくらくらい?」
「向こうの会計士さんは8月末の時点で1億4346万5210円と言ってる。資本金は500万しか無いのに」
「この業界そのくらいの小さな資本金の会社が多いね。でも借金は実際その倍あるだろうね」
「まあそのくらいはいいでしょ。彼には奴隷になってもらおう」
「既に誰かさんの奴隷ではないかという説もあるが」
「あはは」
「もうひとつの案件は、今あそこの資本金が小さいという話も出たのだけど、SN監査法人から言われたのだけど、§§ホールディングの資本金が小さすぎるのではないかという件」
「それは昨年春に10億円から100億円に増資した時も言ってたね」
「会計士さんの意見では適正資本金は?」
「今の売上なら最低でも250億、できたら500億」
「なんか大企業だね」
「8月末時点での従業員が2000人を越えている。これは充分大企業」
「ああ。バイトさん入れたら2000人いくだろね」
「正社員だけでも700-800人いると思う」
「7年前にコスモスちゃんが社長になった時はわずか7人の会社だったのに嘘みたいだ」
「会計士さんの意見では資本金が小さい場合、大きなプロジェクトに万一失敗した時に一気に倒産する危険がある。すると共同作業する相手企業が怖がるというんですよ」
「確かにね。今年のアクア映画2本とかほとんどバクチと思えるような予算だった」
「まあ万一の場合は若葉にリカバーしてもらえば共同作業者に迷惑かけることはないけどね」
「実際今年映画のプロジェクトに加わった企業はムーランがバックにいるから(*33)取りっぱぐれは無いだろうと思ってたと思うよ」
(*33) §§ミュージック・グループとムーランが親密な関係にあるのは誰の目にも明らかだが、若葉は§§ミュージックに資本参加していない。これは両者の思惑が一致しているからである。
・§§ミュージックとしてはあまりにも巨大すぎるムーランにたとえ1%でも出資してもらうと「軒先を貸して母屋を取られる」ことになりかねないという警戒感がある。
・若葉としては§§ミュージックに資本参加するとたくさんもうかりそうで、お金がますます増えて困る!!
「取り敢えず200億に増資しようか」
とケイが言う。
「千里、出資比率を上げてもらっていい?」
「どのくらい?」
「4分の1より少し少ないくらい」
「なるほど」
と千里は言う。
「基本的にコスモスちゃんとケイで物事を決められるように2人の出資額を合わせると過半数になるようにする。アクアも同じ比率にする。そうすると万が一コスモスちゃんが過労で倒れて意識が無いとか、ケイが麻薬で逮捕されて株主総会に出席できないような状況でも、残った1人とアクアとで物事を決められる」
と千里は言った。
「そういうことなんだけど、そのたとえは何なのさ」
とケイ。
コスモスは笑っている。
まあこんなジョークを言えるのは千里くらいだろう。
「それなら200億円にするとして、出資比率を26:26:26:22 にすればいいよね?」
と千里。
「うん。私もその数字を考えた」
とケイ。
「51:51:51:47にする手もあるけど偶数にしておいたほうが計算が簡単な気がする」
と千里。
「私も思った。奇数は計算が面倒」
とコスモス。
「だったら千里、現在の株式を私・コスモス・アクアから14000株・7億円ずつ買い取ってくれない?」
「いいよー」
なんか「7000円ずつ買って。いいよー」みたいなノリだなとアクアは思った。
「その上で剰余金繰り込み方式で100億円から200億円に増資する」(*34)
「OK」
つまり各々の出資額はこうなる。
ケイ 33->26->52
コスモス 33->26->52
アクア 33->26->52
千里 1->22->44
「じゃぼくは千里さんから7億円もらって会社に26億円振り込めばいいんですか」
とアクアは質問した。
「違う違う。単に7億円もらうだけ。あとの増資は書類上だけの処理」
「お金払わないのに出資金が26億円から52億円に増えるんですか〜?」
「うん」
「なんか詐欺にでもあってる気分」
「まあ剰余金繰り込みで増資できるのはアクアが何百億も稼いでくれているおかげだけどね」
(*34) 増資について詳しく説明しようかとも思ったが、話の筋には関係無いし元々株式会社についての基礎知識も必要なので省略する!
10月初旬、ネットに
「ついに“蜂矢仁美”の正体が分かった」
という書き込みがあった。
蜂矢仁美というのは今年になって突然出て来た作詞者で、そのほとんどが、薬王みなみと立山煌の曲に使用されている。今年3月に未来居住の正体が実は常滑舞音本人であったことが判明したこともあり、蜂矢仁美というのは薬王みなみと立山煌のどちらかのペンネームあるいは共同ペンネームなのではという噂があった。直撃インタビューを試みた記者もあったが
「まだ明かしてはいけないと言われてるので」
と薬王みなみも立山煌も答えていた。
ただ歌詞がわりと女性的なので、どちらかというと薬王みなみの方ではという意見は強かった。
今回のネットの書き込みはこうである(結構複雑)。
本名:四宮七菜
下の名前は仮名書きに→四宮なな
四×なな=28
宮はかな書きにして:みや
並べ直して、みや28→8や2み
漢字に直して、蜂矢仁美
だから「蜂矢仁美」の本来の読み方は「はちや・にみ」。
このツイートはたくさんリツイートされ、あっという間に拡散した。
「多分正解」
「しかし何つう複雑な」
「よく解読したなあ」
と称賛する声があがっていた。
薬王みなみは最初のツイートがあってから24時間ほどたったところで
「凄いね。よく見付けたね」
と事実上認めるツイートをした。
「実は姉が考えてくれたペンネームなんです。この名前で過去に“得島”ってローカル雑誌に何度か詩を投稿したことあるんですよ」
と本人は後であけぼのテレビで言っていたが、この該当雑誌は誰も見付け出すことができなかった。本人も当該号は持ってないと言っていた。
花咲ロンドが##放送のインタビュー(聞き手:平林アナウンサー)で述べた
「正直、§§ミュージックはデビュー候補生がたくさん居て、どんどんデビューさせたいんだけど、デビューさせるにもマネージャーが足りないし、プロデューサーが足りないし、作詞家・作曲家が足りない状況なんですよね。薬王みなみとかは本来2022年はデビュー予定では無かったんですが「私も早くデビューしたいです」と熱心に言うので『あんたは実力は充分だから自分で曲作ってきたらデビューさせてあげるよ』と言ったんです。すると一週間後には本当に曲を作って持って来たんですよ」
「偉いですね」
「才能の高い子ですね。親友の夕波もえこちゃんにピアノ伴奏してもらって歌ったみたいです。これがデビュー曲の『音楽室の想い出』なんですが、歌詞はよくできてるけど(実際は多少添削した)、曲が良くないんです。それでこれは松本花子さんに作曲依頼に出しました。それで取り敢えずこの曲だけでも吹き込もうかと言っていた時に清原空帆が来て「ロンドちゃーん、何か仕事無い〜?」とか言うから、『ちょうどよかった。あんたこの子の伴奏して』と頼んで。それで清原空帆率いるホロウズが伴奏した『音楽室の思い出』が完成したんですよ」
「そういう経緯だったんですか。いや私も2022年は美崎ジョナちゃんと立山煌君がデビュー予定です、と聞いていたのが、もうひとり薬王みなみちゃんもデビューしますと聞いて、あれ〜3人なんだと思ったんですよね」
「それで音源制作したんだけど、空帆ちゃんがみなみを凄く気に入って『あんたうちのバンドが歌ったこの曲あげる』と言って『ブーゲンビリアの伝説』を頂いたんです。この曲はホロウズ自身で出した音源は100件もダウンロードされなかったらしいんですよ。でもあんたみたいな可愛い子が歌えばきっと売れると言って」
「確かに歌い手が変わると売れる歌はある」
「それで見てみたんですが、これ楽曲はいいけど歌詞があまりにも酷いんです。主語と述語が対応してないし、文法が変だし。そもそも日本語が間違ってるんですよね。『東から吹く“はえ”に』とか。“はえ”は南風で東から吹いたら“こち”だよって」
「いや元の歌詞が公開されていましたが、確かに清原さんは国語がお苦手のようですね」
「内容も大人向けだったから、それでみなみ本人に『このタイトルで、自分の年代にふさわしい歌詞を新たに書いて』と言って、詩を完全に書き直させることにしました。ちょうど舞音が沖縄に行く用事があったので、彼女のHonda-Jet
orangeに薬王みなみを同乗させて沖縄に連れて行き,ブーゲンビリアが咲いてるのを見せて詩を書かせたんです。ちなみに作曲者の本田慈媛(ファンタージェン)というのはホロウズの後援者の1人で、大宮万葉先生のことです。清原空帆とは高校で同じバンドを組んでいたんですよ」
「へー」
「この大宮万葉人脈はうちの会社では大きいですね」
「ほほお」
「それでデビュー曲のカップリング曲“『ブーゲンビリアの伝説』蜂矢仁美作詞・本田慈媛作曲”も完成してデビューへ進むことになったんです」
「だったら薬王みなみちゃんって実はシンガーソングライターなんですね」
「作曲はしてませんけどね」(*35)
「ところでオリジナルの薬王みなみちゃん作曲の『音楽室の思い出』は?」
「あれはとても恥ずかしくて公開できません。闇から闇へ」
「あはは」
「しかしアクアちゃんたちも水野歌絵とか翔太&リル子の名前で多数の楽曲の歌詞を書いてあられるし、§§ミュージック自体が創作集団になりつつあるのかも知れませんね」
「その傾向はあるかも知れませんね。歌手としては成功しないまま引退した海浜ひまわりとか秋風メロディーが今は作詞作曲家として活躍しているし、彼女たちから提供された曲もうちの歌手たちは随分歌ってますしね」
「ああ、そうですよね」
(*35) 薬王みなみ専用の松本花子システム“鹿賀カノン”は薬王みなみ本人が「こういう部分が歌いにくいです」とか「このくらいの度数音がジャンプしても音程は取れますよ」とか「ここはこう歌いたい」などといった細かい注文に合わせて日々微調整している。だから、鹿賀カノンは完璧に薬王みなみ好みにチューニングされてきており、鹿賀カノンの曲を聴いただけど「あっみなみちゃんサウンドだ」とファンが思うようになりつつある。
それで薬王みなみは作曲印税の1割を頂いている。常滑舞音も同様にして福沢聖子の作曲印税の2割を頂いている。調整してあげているのは小樽ラボのスタッフ。ここは現在女性プログラマーが5人。こんなにプログラマーを雇えるようになったのは舞音のお陰である。家ももう少し広い所に引っ越している。相変わらず2階は男子禁制。
§§ミュージックの“地方ガールズ”のシステムは、各地方単位で1つだったのを、各地方を統括する“支部”と主要都市に置いた“音楽教室”との2段階組織に再編してきていたのだが、ここまで次の地方を再編した。
4.19 関東・関西
6.18 東海・北海道
8.11 北陸・九州・沖縄
そして10月1日(土)、残りの中国・四国・東北でもこの体制に変更した。また初期の段階では“音楽教室”は各県に2〜3ヶ所しかなかったが、これも主として大手の音楽教室に場所を借りる形で数を増やしており、全国の音楽教室の数は現在200を越えている。
また講師も募集しているがこれは特に、結婚や出産で現場を離れていた元音楽教師がこれに応募してくるケースが多く、§§ミュージック音楽教室はそういう元講師たちの受け皿に成りつつある。
音楽教室の設置と同時にリモートレッスンも増やしており、日本中のどこにいても指導が受けられる体制が整いつつある。
10月19日(水).“北里ナナ”の11枚目のシングル『若草の少女』が発売された。
『若草の少女』国立カナン作詞・鴨乃清見作曲
『進まない時計』加藤珈琲作詞・琴沢幸穂作曲
『雅な朝に』夢倉香緒梨作詞・醍醐春海作曲
北里ナナのCDは『少年探偵団』の劇中歌として歌われたものが発売されるケースが多く、発売時期は12-5月が多かった。それ以外の時期に発売されたものは過去に2例しか無かった。
今回『少年探偵団』と全く無関係に発売されたのは実は“紅白用”の歌を出しておきたいというのがあった。昨年に引き続き今年アクアは“北里ナナ”として紅組から紅白に出場するが、その時に歌う歌の選定に昨年は結構悩んだのである。
北里ナナの曲は概して劇中歌として作られていて、アクア向けの曲ほどは力(りき)が入ってないものが多い。しかしせっかく出してもらうのにそれでは申し訳無いので、今回新たに歌を用意したのである。
CDは発売と同時に100万枚を突破し北里ナナ11枚目のミリオンとなった。(アクアは「誰もボクの歌を聴いてくれてない(*36)」と文句を言うが贅沢な悩みだと思う)
しかしこの曲はむしろ紅白の後でじわじわと売れていくことになる。
(*36) つまりみんな“アクアのCD”だから買ってくれているだけで、いい歌だからと思って買ってくれてるわけではないということ。ただ集団アイドルなどと違って買った後はちゃんと再生してくれている人が多いと思われる。
『若草の少女』国立カナン作詞・鴨乃清見作曲
国立カナンというのは、国立市に住む佐々木川南(旧姓)のことである。小学1年生の時、大手術を受ける前日の龍虎(アクア)と
「お姉ちゃんたちと明日頑張る約束」
と言って指切りをした本人であり、
その後も龍虎がすくすくと可愛く!育って行くように、いつもそばに居て見守ってきた。龍虎にとっては実姉にも近い存在である。
その川南が中学生頃の龍虎をイメージして書いた詩に千里1が曲を付け、最終的には千里6が調整した。“鴨乃清見”の名前を使っているようにかなり本気で作った曲である。
龍虎Fはこの歌詞を最初見た時泣いていた。Mも“少女”というのには少し文句があるものの涙を浮かべていた。
「いや彩佳ちゃんたちに選んであげたマンションが数ヶ月で崩壊しちゃったからさ、どこかで埋め合わせをと思っていた」
と本人は言っていた。
PV制作でアクア役を務めたのは、春野わかなで、撮影場所は隅田川の近くである。関東信濃町ガールズの面々が友情出演している。セーラー服での演技である。
え?アクアって中学はセーラー服着て通ったんでしょ?
『進まない時計』加藤珈琲作詞・琴沢幸穂作曲
田代蓮菜(普通のペンネームは葵照子)と千里の普通のコンビで書いた作品。実際には松本花子に書かせた上で3日くらい掛けて調整している。これは千里3の作品。
母親から出掛けるまで30分待ちなさいと言われた子供。それで待っているのだけど、時計は全然進まない。
人気スターのライブの開場を待つ観客。「6時から開けます」と言われてから何度も時計を見るのだけど、時計は全然進まない。
恋人との待ち合わせ時間を前にして何度も時計を見てしまう。でも時計の針は全然進まない。
1番の出演者は千里とその子供の京平である。
2番の出演者は広瀬みづほで“人気スター”はもちろん北里ナナ。周囲の他の観客は、都城の友人達で、広瀬を宮崎空港まで日帰り往復させて撮影している。
3番の出演者は北里ナナ本人である。そして待っていてやがて愛用のポルシェ Porsche 996 40th anniversary edition (ナンバーはモザイク)に乗ってやってきたのは(男装の)アクアである!2人は駆け寄って熱く抱きしめ、キスしている。
(このキス、リアルでしてるよね?とファンの声)
実はFが舌を入れようとしたのをMが阻止した。ちなみにいつものように、Mが北里ナナを演じ.Fが男アクアを演じている。つまりポルシェを運転したのはFである。なおこのシーンを撮影したのは山村マネージャーである。
『雅な朝に』夢倉香緒梨作詞・醍醐春海作曲
呉服屋さんの振袖のCM曲である、先方はこの時期に出してもらえると聞いて感激していた。CMのために撮影した映像を元にこの曲のPVも構成している。それで成人式を迎える信濃町ガールズたちの映像も一緒に流れる。
10月26日(水).
高崎ひろかのシングル『橋を作る人々』が発売された。
『橋を作る人々』室蘭氷渡海作詞・すずくりこ作曲
『紺碧の空』森之和泉作詞・水沢歌月作曲
『昇天』柴田邦江作詞・琴沢幸穂作曲
タイトル曲は11月に4回に渡って放送されるNHKのドラマ『橋を作る人々』の主題歌である。最近ではめったに自分で作詞なさることはない室蘭氷渡海大先生を担ぎ出してきたのはさすがNHKである。すずくりこ先生は室蘭氷渡海と聞いて震えたと言っていた。(NHKが東郷誠一さんに持って行ったら『自分は量産作家だから』と言って、すずくりこを推薦したらしい)
すずくりこでクレジットしているが、実際には相棒の“耳の聞こえる”ゆきみすず先生と2人で1ヶ月かけて作曲し、親しい何人かのミュージシャン(雨宮三森・後藤正俊・香住零子・ケイ!)にも意見を聞いたりして完成させている。音感の良い大崎忍に試唱係をしてもらったが、忍はゆきみすず・すずくりこ大先生(彼女にとっては大先生である)の前でかなり緊張したと言っていた。
高崎ひろかの音源制作もこの曲だけで2週間掛けている。ほぼできたところで室蘭氷渡海大先生に聴いてもらったら
「うん。私のイメージ、ぴったり。ひろかちゃんは情緒性のある歌手だと思ってたよ」
と褒められたので、ひろかも、ゆきみすず・すずくりこペアもホッとした。
「1年分の仕事をした気分」
とゆき先生・すず先生は言っていた。
この曲の伴奏はピアノ・ヴァイオリン2本・ヴィオラ・チェロ・フルート2本・クラリネットとなっているが制作時には正確なリズムキープのためクリック音を聴きながら(ピアノの人が)演奏している。
後でライブ演奏したりするのにギター・ベース・キーボード・ドラムスで演奏したバージョンも室蘭先生にお聴かせしたところ
「ああ、こういうのもいいね」
と快諾してもらえた。(持って行って聴いてもらっただけで疲れた!)
曲は3コーラスから成るが、メロディーは1番・2番・3番で微妙に異なる。これは歌詞のイントネーションを大切にしたためである。瀧廉太郎の『花』などと同じ方式。
この曲のPVにはドラマのシーンは使用されていない。あらすじだけを聴いて雨宮三森が構成した作品になっている。
細く曲がりくねった道をコンパクトカーで走る緊張した顔の老夫婦が映る。やがて橋を渡るが車一台通るのがやっとの橋である。真下は深い谷になっている。向こうに待つ車と交互に通行する。
やがて橋の工事が始まる。若い人が多数働いている。両岸に鉄塔が建てられ、その間にケーブルがわたされる。そのケーブルから吊して橋の部品を設置していく。そして橋が完成すると上位のケーブルと鉄塔は撤去される。
この工法はケーブルエレクション工法と言って深い谷などで“下から組み上げる”方法が使えない時に使う工法らしい。映像はNHKの本番組制作に協力した建設会社から提供して頂いたが「番組の工法とは違いますよ」とは言われた。
そして橋ができたあと、幅の広い快適なバイパス道路を走り、新しい橋を渡って橋上で対向車とすれ違う笑顔の老夫婦の車が映る。
出演しているのは秋風コスモス社長の両親・伊藤太郎(68)・花子(65)夫妻であるが、乗っている車は本人の車(ノート)ではなく§§ミュージック所有の車(ヤリス)である。
曲がりくねった道も快適なバイパス道も埼玉県某所で撮影しているが橋はCGである!(イメージに合うところが無かった)
『紺碧の空』森之和泉作詞・水沢歌月作曲
この曲は上記の曲とカップリングするために室蘭先生の弟子である和泉が指名されて歌詞を書いたものである。室蘭先生のご指名で和泉が張り切って書いたのに私が頑張って曲を付けた。音源制作に入る前に室蘭先生に見てもらったが
「ああ、OKOK」
とあっかる〜く言っておられた。
伴奏は普通のバンド構成だが、ヴァイオリンとフルートをフィーチャーしている。ヴァイオリンは風のイメージ、フルートは空でさえずる小鳥のイメージである。
『昇天』柴田邦江作詞・琴沢幸穂作曲
これは『竹取物語』で使用された曲である。柴田邦江は高崎ひろかの本名。
「こんな凄い曲2つと私が書いた曲とをセットにしていいものなんでしょうか」
と高崎ひろかは不安そうに言っていたが
「この曲も名曲だと放送の時言われていたよ」
と言って彼女を励ましておいた。
なおこれで『竹取物語』で使用された曲はビンゴアキの『邂逅』以外全て各々のアーティストのシングル(一部アルバム)としても、発表された。 ビンゴアキは12月21日に発売するシングルにその曲を収録することを表明している。
10月29日(土)にはΛΛテレビの昔話しシリーズ第14弾『長屋の花見』がスパイスミッションの主演で放送された。季節外れではあるが、「紅葉狩りのシーズンかもね」と本人たちは言っていた。
落語の演目だが、『長屋の花見』は江戸での呼ばれ方で元々上方(かみがた)では『貧乏花見』と呼ばれていた演目である。ただ江戸では元の話の前半をベースに話を調整してより軽いお笑いになっている。元の話は結構暗い。
この江戸版の筋は、貧乏長屋で花見に行こうとするが予算が無いので食べ物が色々な代用品になっているところが笑いのポイントである。
玉子焼き→沢庵漬け
かまぼこ→大根
お酒→お茶
「おお酒柱が立ってる」
というのがオチになっている。(茶柱のこと)
今回のドラマでは、下記のような代用品になっている。
玉子焼き→沢庵漬け
かまぼこ→四角く成形した御飯
つみれ→球状にまとめた油揚げ
餃子→半月状に切った木綿豆腐
お酒→お茶
「玉子焼きを食べるのにポリポリ音を立てない」
「おーい、このかまぼこに掛けるふりかけ無いかい?」
「このつみれをキツネがじっと見ている」
「この餃子は箸で掴むのが難しいなあ」
そして最後は
「おお、めでたい。酒柱が立ってる」
で落としている。
主題歌はスパイス・ミッションが歌って10月26日に発売された。高崎ひろかと同じ日の発売になったが、スパイス・ミッションはデイリーでは1位だったもののウィークリーでは逆転され、1位ひろかで、2位スパイス・ミッションだった。
「うっそー!?」
とスパイス・ミッションのファンが悲鳴をあげていた。まさか高崎ひろかに負けるとは思いもよらなかったのであろう。
「いや高崎のは凄すぎるもん」
「FMナビゲーターとかの評価が物凄く高くて事前に大量に流れていた」
「ただ購買年齢層が高いから発売日に買うという考えがなく土日にたくさん買った」
「うーん。確かに高崎さんのは凄い曲です」
と(スパイス・ミッションの)タイムも敗戦の弁を語っていた。
10月19日が北里ナナ(絶対勝てない)、11月2日が白鳥リズム(厳しい戦い)で、この日がいちばん楽勝な気がしたのに負けた。(副社長の)浦中さんの機嫌が悪く2〜3日誰もそばに寄れなかったらしい!
11月2日(水).
この日は白鳥リズムのCDが発売されランキング1位を取った。
11月2日(水).
ATG(あけぼのテレビグループ)の半年ぶりのシングル『毎日毎日毎日ご苦労さん』が発売された。楽曲制作と伴奏は、現在古屋あらたの奴隷!と化しているスリルボカンである。ほとんどのテレビ局からお出入り禁止を食らっていた彼らも現在はまじめに活動しているようだということで2月くらいまでには全ての放送局から出禁解除してもらえそうである。(NHKなどは慎重)
実は8月19日のネットライブを真面目に務めたご褒美に、元々彼らと関わりの深い古屋あらたが
「今回はまじめに演奏したね。ご褒美」
と言って、メンバーの手の甲にキスしてあげたら全員感激して泣いた!そして彼らは古屋あらたの奴隷と化した!
古屋あらたが課した「禁酒禁煙早起き・整理整頓」を励行しており、公の場に出る時はスーツあるいはあらたが(彼らの事務所の許可を取り)作ってあげた制服!を着ている(デザインは夕波もえこ)。彼らはあらたを「御主人様」と呼んでいる!
4人は現在コスモスが個人的に買ってあげて安価に貸与している一戸建ての家に一緒に住んでいる。播磨工務店にユニット工法で1日で建てさせた後一週間掛けて防音工事をした。1階がLDKとスタジオ、2階にお風呂・サブ?台所・居室がある。トイレは1階にも2階にもある。彼らはこの自宅スタジオで好きなだけ演奏しているようである。
彼らの日課は朝6時に起きて古屋あらたの写真に拝礼することである!(もはや、あらたは教祖様。これじゃ結婚できないぞ)
彼らは大学を9月で退学し音楽に専念するようになった(*37)。それで彼らの音楽の品質が明らかに良くなったのである。
(*37) 4年生まで来たのにもったいないと言われたが実は単位不足で留年濃厚だったし卒論も全く書いてなかった、あと半年音楽活動を休み必死に頑張れば温情で卒業させてもらえる可能性は残っていた。この点はファンクラブのサイトでリーダーの竹輪がファンにきちんと説明していた。そうしないと、彼らのファンが古屋あらたを襲う危険がある。
コスモスは念のためあらたに女性のボディガードを付けたが、メンバーが
「古屋あらた様は我々の女神様だ!女神様のパワーで我々はパワフルに進化した!」
などと叫んでいたこともあり、ファンは納得したようである。
「女神様と呼んでいいですか」
とも訊いたが
「せめて御主人様にして」
と言われたらしい。
ついでに古屋あらたへのファンメール・クリスマスプレゼントまで増えた!
なおプレゼントの送り先を調べようとすると§§ミュージックの、“ブレゼント・ルール”の文章を見ることになるので、多くのプレゼントはちゃんとルールが守られていた。
今回のシングルはそういう彼らが提供してくれたものである。
AT6(今回の参加者は鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた・松島ふうか・鹿野カリナ・山本コリン)
『毎日毎日毎日ご苦労さん』
『テールライト』
『毎日毎日毎日ご苦労さん』は朝通勤する人、会社で事務作業をする人、電話やメールで連絡を取り合う人、会って打合せしている人、荷物を配達している人、揚げ物をする板前さん、患者のお世話をする看護師さん、様々なお仕事をしている人への応援歌である。
タイトルはドリフターズの『ほんとにほんとにご苦労さん』に少し似ている。ドリフの元歌は『ほんとにほんとに御苦労ね』(1939)で、作詞:野村俊夫(1904-1966), 作曲:倉若晴生(1912-1982)。有名な『軍隊小唄』はこの歌の替え歌である。今回のスリルボカンの作品には『ほんとにほんとに御苦労ね』のモチーフは使われていないし、そもそも彼らはこの曲を知らなかった。
言われてから「え?似たタイトルの曲があった?」と驚いていた。一応レコード会社から元歌の権利者に連絡を入れたが「タイトルが偶然似たということだったら全く構いませんよ。今の人はドリフでさえ知りませんよね」と言っていた。こちらの曲のビデオを見せたら「元気な曲ですね。それに歌ってる女の子たち可愛いですね」と言っていた。
『テールライト』
恋人が帰って行く車のテールライトが闇の中に消えてしまうまで見送っているという恋歌。でも幸せな恋を歌った歌である。中高生のATGには少し早い、大人向けの恋歌だが、古屋あらたが気に入ったので歌うことになった。
コーラスは今年入った信濃町ガールズたちが動員されて入れている。
この歌は20代の男女にとても受けた。また後でスリルボカンのアルバムにも逆カバー版が収録されることになる。
なお週間ランキングでは白鳥リズムに続いて2位だった。
大型時代劇の撮影・セリフ録音は11月3日(祝)までに完全に終了して、2人のアクアも常滑舞音も4日5日はお休みとなった。それで花ちゃんたちは予定通り11月7日からアクアのミニアルバム『6星座2』の制作をすることにした。
楽曲は10月までに完成している。
『気配りリブラ』大宮万葉作詞作曲
『我慢のスコーピオ』加藤珈琲作詞、醍醐春海作曲
『こだわらないサジテリアス』大宮万葉作詞作曲
『慎重すぎるよキャプリコーン』未来居住作詞、福沢聖子作曲
『マイウェイなアクエリアス』大宮万葉作詞作曲
『優しさパイシス』蜂矢仁美作詞、鹿賀カノン作曲
6曲のうち3曲を大宮万葉が書いている。
「妊娠で暇だから書いてくれた」
と花咲ロンドは言っていたが、実際に書いたのは主としてグラナダに居る青葉R(桜蘭有好)である。Lも書けないことはないが“アクア品質”の曲に仕上げられない。実際今回は3曲の内2曲の歌詞をLが書いたが楽曲ともにRが完成させた。
さて、それで月曜日からいよいよ北陸組も呼び寄せて制作を始めようという段階になって、吉田邦生に連絡が行って無いことが判明する。
「ごめんなさい!」
と日高久美子が謝っていたが、
「いいよ、いいよ、こちらから連絡する」
と言って、花ちゃんは伏木の青葉に連絡した。
「ああ、大丈夫でしょう」
と言って青葉はH銀行に電話する。
「分かりました。行かせます」
とH銀行金沢支店の渉外課長さんは言い、邦生は11月7日朝銀行に出社すると
「ちょっと1ヶ月くらい東京に出張して」
と言われたのであった。
久美子はお詫びに、邦生の金沢から能登空港への移動を手伝った。
物事は一般に「忙しい人を使え」と言われる。暇そうな久美子を使ったのが敗因。
2022年11月、小浜のミューズ施設群にケーブルカー(*38)が導入された。
小浜市に若葉が極めて無計画に!2018年以降作ってきたMuse Place (仮称)は、2022年夏時点で次のような構造になっている。
Muse Airfield (飛行場)
未開発の山林
Muse Hill (鏡迷宮)
Muse Town (公園・体育館・旅館)
Muse Park (Muse Arena+Muse Theatre/Muse Center)
多少の山林
駐車場
名前も行き当たりばったりに付けているので収拾が付いていない。
元々は丸山アイが中心になって運用する自動作曲システム“夢紗蒼依”の中心となるスーパーコンピューターMuse の置き場所として、原子力発電所が多数あるこの地を買ってセンターを作ったものである。ところがスーパーコンピューターというのは物凄い熱を生み出す。基本的には水で冷やす。すると熱い水ができる。若葉が「その熱い水でスパ旅館を作りたい」と言って旅館を建てちゃったのが始まりである。そして
「これだけ広い土地があれば10万人コンサートができる」
「誰が10万人なんて集められるの?」
「ローズ+リリーなら行ける」
というので2018/2019のローズ+リリー・カウントダウンライブがここで行われた。
このライブをやるための(一時的な)施設を作るのに1000人以上の作業員さんが参加してくれた。地元の建設会社で用意した人数では足りず、よそからも大量に募集した。彼らを泊めるアパート群をMuse Parkより少し上の土地を切り開いて多数建てた。その跡地がMuse Town であり、彼らの内「この後も若葉さんの会社で働きたい」と言った人たちをまとめて「ムーラン建設」は設立された。この中には実は性別曖昧な人がとても多い。彼ら・彼女らは普通の会社ではあからさまな差別を受けていた。
2020年コロナが発生するとタレントを遠距離に移動させるのに困難が生じることになる。この問題を解決するため、§§ミュージックはビジネスジェット機を長期レンタルするとともに何台か買うことにした。
ただ羽田が非常に混み合っており、他に首都圏に民間ジェット機の離着陸できる飛行場が無いという問題から、ムーランが中心になって、熊谷の郷愁村と小浜のミューズセンターの山の上に2000m級の滑走路を持つ飛行場が作られた。ムーランも同社の二大拠点である熊谷と小浜の人員往復に非常に苦労していたのである。
この飛行場の法的な位置づけは同じ埼玉県のホンダ・エアポートと同様、あくまで企業のプライベートな飛行場ということになっている。ムーランも旅客業務をするつもりは無い。しかしこの2つの飛行場がもたらした感染防止効果は建設に掛かった費用(約500億円/ケイとコスモスの出資額は合計100億円)を遙かに上回ると思う。万一アクアや常滑舞音がコロナに感染したらその被害は数千億円に及ぶ。
そして2021年コロナ下でアクアの写真集を撮影する魅力的な場所として鏡迷宮を作ろうということになり、Muse Town の更に上の土地を切り開きここをMuse Hillと称した。
さて、このミューズ・プレイスは初期の段階では関係者のみが使用するものだったので移動は全て自動車であった。地面の傾斜は下の方は3%程度だが飛行場近くは30%を越えていて非力な自動車では荷物を積むと登れない可能性がある。ただし上の方は傾斜を和らげるため、折れ曲がりの多い道、いわゆるつづら折りになっている。
ところが鏡迷宮が公開されて以来一般の観光客が来るようになる。そこで若葉は2021年7月、麓に大駐車場を作ると共にここに小型ゴンドラ(6人乗り)方式のロープーウェイを設置した。スキー場にあるようなもので、客は駐車場から、Muse Park, Muse Town, MUse Hill, Muse Airfield の好きなところにいくゴンドラに乗れば、そこまで連れて行ってくれる。
が1年運用してみて若葉は諦めた。
トラブルが多すぎるのである。
スキー場などなら使うのが若い人ばかりなのであまり問題無いのだが、ここは子供やお年寄りなども使う。すると乗り降りがうまくできない人たちがいる。更に行き先の乗り間違いが多発する。そして怪我人も出る。この1年半の間にスタッフの怪我が4件、乗客の怪我が2件発生して警察から注意を受けた。怪我は幸いにも軽傷ばかりで治療費・慰謝料は充分支払ったし、多忙な若葉が直接各々の怪我した人に御見舞いに行った。全員傷跡は残らなかったらしい。
それで他のにしようと決めた。
まず列車はこの勾配を登り切れない。バスが常識的だがどうしても密が発生する。そこで若葉が導入を決めたのは(交走式)ケーブルカー(*38) である。普通の列車なら5%が登れる限度といわれる(それ以上の傾斜には多段スイッチバックが必要)。しかしケーブルカーなら。例えば高尾山のケーブルカーは60%(角度に直すと30度)ほどの物凄い勾配を登っている。
フニクリ・フニクラである。
BGMにも立山煌が歌う『フニクリ・フニクラ』が流れている!
常滑舞音withスイスイが歌う『鬼のパンツ』も流れている!!
(*38) ケーブルカーの分類上の位置づけ。
基本的にケーブルを使用する交通機関を索道(さくどう)と言うが、これは主としてケーブルのみを使用する普通索道とキャリアが地面に敷かれたレールに乗っていて、鋼索(ケーブル)の巻き上げにより動かす、鋼索鉄道に分けられる。
前者にロープーウェイやリフトがある。一方日本語で言うケーブルカーとは後者の鋼索鉄道のことである。アメリカ英語では索道一般を cable carといい、ケーブルカーは funicularという。イギリス英語だとcable car はロープーウェイの意味。funicular はイタリアのFunicolareからきており(funisはラテン語でケーブル)、結局フニクリ・フニクラが出発点である。あれは物凄い思いつきだったのである。(交走方式を思いついたのが大きかったと思う)
ヴェスヴィオ火山のフニコローレはレールがモノレールであったが、日本では普通の鉄道と同様の二条式のものが多い。
ケーブルカーの利点は動力を積む必要が無いので車体が軽くなり、その分多くの乗客を乗せるのが可能なことである。一般に2両をセットにしてお互いをカウンターウェイトにして上り下りする(交走式)が、小規模な運用では車両一台で反対側には重りをつないでいるものもある(鞍馬山鋼索鉄道など)。
ケーブルカーの先頭にスタッフが乗っていることがあるがこれは運転士ではなく、車掌である!前方に障害物があった場合にターミナルに報せるのが役割である。
なお貨物専用のケーブルカーをインクライン(incline)という。イン・クラインであって、インク・ラインではない!傾斜(clinare)に向かうという意味である。
京都南禅寺の近くにあった蹴上インクラインは有名だったし、立山砂防工事専用軌道の樺平−水谷間は現在18連続!スイッチバックのトロッコ列車で結ばれているが戦前はインクラインだった。(関西電力黒部専用鉄道・上部軌道と並ぶ秘境鉄道だと思う)
なお急傾斜を上る鉄道としては車輪が歯車状になっている“アプト式”(スイスで発達した)や箱根登山鉄道で使用されている粘着式などもある。
ミューズプレイスのケーブルカー建設は今年初めから播磨工務店とムーラン建設の共同作業で進められた。4月に郷愁ライナーの荒川トンネルを作った精鋭部隊が参加すると工事の進捗速度はあがり、8月に完成したのである。むろん工事中は無事故である。
そこから3ヶ月間はテスト運行していたが、国土交通省と県からの認可も取れ、運行免許も交付された。これまで郷愁ライナーを無事故で運行している実績、そして怪我人が出ていた(でも大きな事故は無い←これ重要)ロープーウェイの“事故を減らすための改良”という名目で認可してもらえた。ロープーウェイの免許は返上する。
それで11月3日(祝)から正式運用開始した。ロープーウェイは2日で運用終了となった。(欲しいと言っているスキー場があるので安価に売却する)
交走式なので2両がペアである(お互いに登る時相手がカウンターウェイトの役目を果たす)。余裕を持って席を配置したので1両が75人乗りである(3×25). これをトラブル時や保守時の予備を兼ねて2セット作ったので一度に昇り150人・下り150人乗せることができる(ただし家族や友人以外は隣り合う席には乗せない)。
しかし今までの最大6人ずつ運んでいたロープーウェイに比べたら画期的に輸送能力が上昇した。(平日は1セットのみの運行)
このように2セットのケーブルカーが並設されている例としては近鉄生駒鋼索線の宝山寺線などがある。
ケーブルカーの終着駅はミューズ飛行場 Muse Airfield である。折角新しい交通機関も作ったしということで終着駅そば、滑走路やエプロンが見える位置に展望台カフェを作った(駅と空港ビルの間に渡り廊下を作った)。
最初は空港らしくビュフェ方式にしようと思ったのだが“いったん取ってから戻す”マナーの悪い人を排除するのが難しいので注文方式にした。基本的にはムーランの移動車レストランと同じ方式である。この場での調理は温めるのとコーヒー(ドリップ式)(*39) やお茶を入れる程度。
コロナのおり、あまりオープンを宣伝したくないのでCMなども打たなかったので式典に市や商工会・観光協会の人たちが来てくれたほかは、当初は空港スタッフが利用する程度だったが、
「結構飛行機が離着陸するから楽しめる」
という話であった。
でも11月中は関西のメディアが多数取材に訪れた!
(*39) きちんと訓練を受けてから実戦投入されるエヴォンやクレールのメイドと違ってムーランのスタッフは今日採用して明日から勤務などというのが多いので「素人にエスプレッソ入れるのは無理」と言ってムーランのコーヒーは基本的にドリップ式である。しかしエスプレッソを出すカフェが多いので、「こういう昔ながらのコーヒーもいいよね」という声もある。
若葉は“エスプレッソ・マスター”みたいな制度を作ることも考えている。
空港スタッフの特にパイロットさんたちは「空港のどこかに居てすぐ連絡が付けば良い」という、ゆる〜い職務規程なので、このカフェに居る確率が増えた。(空き部屋で寝ている人が結構居た:操縦中でなければ!寝るのは大いに推奨ということになっている!!自分の布団を持ち込んでいる人もいる)
「この会社は快適すぎてここに5年居たらもう他の航空会社に移れないかも」
などという声もある。
郷愁飛行場はドローンなども含めると1日に30-40件の離着陸があるが、こちらはその半分の17-18件程度である。それでも昼間は30分に1度くらい何かの飛行機やヘリ・ドローンが飛んで行ってどこかから飛行機・ヘリが来るかなあという感じ。どうかした田舎の空港よりはかなり多い。
ムーランの輸送機がいつも飛んでいるし、若狭湾の遊覧ヘリは平日でも1〜2回(フルムーン夫婦っぽい人が多い)、休日には7〜8回飛んでいる。公共機関のプロペラ機やヘリがまた結構多い。
ケーブルカーの停車駅は下記である。
駐車場−アリーナ−藍小浜−鏡−飛行場
駐車場から鏡までより、鏡から飛行場までがずっと長い距離がある。そしてケーブルカーというのは原理的にペアになっている車両の片方だけを停めることはできない。停める時は両方停まる。だから片方の車両がアリーナ・藍小浜・鏡に停車している時、片方の車両は飛行場から鏡までの何も無い森の中で停まる。ここにも一応ダミーの駅が作られているが、ドアは開かない。外からこれらの駅にも進入できない。駅を作ったのは乗客に安心感を与えるためと何かの場合の保守目的である。
なお降車する場合は降車ボタンを押してもらうことになっている。誰も降車ボタンを押さず、乗客も居ない場合、ケーブルカーは通過する。
交走式は“つるべ”式とも呼ばれるが、現代ではこのことばの方を説明する必要がある!
昔の井戸には水を汲み上げるために、ロープの両端にバケツ(古くは桶)をつないで滑車(かっしゃ)に掛けておき、片方のバケツを上げると代わりにもう片方のバケツが降りていく方式のものが取り付けられていた。
水の入ったバケツを持ち上げるのに、下から上へ引く力ではなく、定滑車の働きにより、上から下へ引く力で行けるのがミソであり、おかげで女子供でも体重を掛けて引けば何とか水を汲み上げることができた。これを“つるべ(釣瓶)”といったのである。多くはバケツを2個にすることで2つのバケツで交互に水を汲めるようにしていた。なかなかうまい発明である。
なお“つるべ”では降りて行くのが空のバケツなのでケーブルカーのように降りて行くバケツの重力で片方のバケツを持ち上げることはできない。
つるべ井戸は一部は平成時代にも残っていた(多くが動力ポンプ式に交換された。昭和期には手押しポンプもあったが量の加減が難しく概して水をあふれさせていた)。
オープン後取材に来たいくつかのメディアから言われた。
「ケーブルカー乗ってると立山煌君と常滑舞音ちゃんの歌が流れてますね」
「あれは多忙なお二人に頼み込んで各々1日で作ってもらったんですよ」
1日は許諾を取る時間、譜面を整備する時間や最終ミクシングする時間を入れている。それ以外に(千里に)訳詞を作ってもらった時間もある。現場での制作時間は立山煌が30分、常滑舞音は一発録りである。若葉に頼まれたからコスモスも受けた。他の所なら断っていた仕事である。伴奏はどちらも金平糖。招き猫バンドは休ませておいた。(金平糖はこの手の仕事に“便利に”使われる)
「音源化する予定は無いんですか」
「舞音ちゃんの音源化してない録音はどんどん増えてってるからなあ」
しかしメディアからも言われたことで、ゆりこが動いた。(コスモスはあまりいい顔をしなかった)。
立山煌が歌う『フニクリ・フニクラ』、常滑舞音withスイスイが歌う『鬼のパンツ』をセットにしたCDが制作されることになった。これは12月に発売されることになる。
そしてケーブルカーにも彼らの似顔絵が入れられることになった!
(原画制作:夕波もえこ)
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【夏の日の想い出・アルバムの続き】(3)