【夏の日の想い出・アルバムの続き】(2)
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8月には来年の§§ミュージック・カレンダーの構成が決められた。個々のアーティストのカレンダーも作るのだが、§§ミュージック・オールスターのカレンダーの構成を決めなければならないのである。今年もこれを任せられたのは、花ちゃんである。花咲ロンドに押しつけようとしたのだが「そんなの私が決めたらお叱りを受けます」と言って逃げた。つまり責任を取りたくないんだな、と花ちゃんは思う。
それでブツブツ言いながら花ちゃんは作業を始めた。
今年花ちゃんは最初に思った。
「もはや全員載せるのは無理!」
出る権利のあるのは下記23組である。(セット扱いでよいものはまとめている)
秋風コスモス/川崎ゆりこ/品川ありさ/高崎姉妹/アクア+今井葉月/西宮ネオン/花咲ロンド/姫路スピカ/白鳥リズム/ロマン&ポルカ/桜野レイア/川内峰花/原町カペラ/ラピスラズリ+甲斐姉妹/ヴァンドオ+大崎忍/ルビー&パール/常滑舞音withスイスイ+坂田由里/中村昭恵/美崎ジョナ/立山煌/薬王みなみ/AT6(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた・松島ふうか・鹿野カリナ・山本コリン)/Newface(広瀬みづほ・川泉パフェ・月城たみよ)/
ここから大胆にベテランとほとんど活動してない人をカットして18組とする。
品川ありさ/高崎姉妹/アクア+今井葉月/西宮ネオン/花咲ロンド/姫路スピカ/白鳥リズム/ロマン&ポルカ/原町カペラ/ラピスラズリ+甲斐姉妹/ルビー&パール/常滑舞音withスイスイ+坂田由里/中村昭恵/美崎ジョナ/立山煌/薬王みなみ/AT6(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた・松島ふうか・鹿野カリナ・山本コリン)/Newface(広瀬みづほ・川泉パフェ・月城たみよ)/
このあと強引にまとめて12組とする!
オールスター2023
1.アクア+今井葉月
2.白鳥リズム
3.ラピスラズリ+甲斐姉妹
4.姫路スピカ
5.男子組(西宮ネオン+立山煌)
6.品川ありさ+花咲ロンド|ロマン&ポルカ
7.薬王みなみ
8.ルビー&パール
9.高崎姉妹|原町カペラ+中村昭恵+美崎ジョナ
10.AT6(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた・松島ふうか・鹿野カリナ・山本コリン)
11.Newface(広瀬みづほ・川泉パフェ・月城たみよ)
12.常滑舞音withスイスイ+坂田由里
「できたぁ!」
“|”を引いた箇所は画面分割である。1:1に分割するとは限らない!
「アクアと舞音は当然振袖として、ルビー&パールは水着だな。みなみちゃんもビキニでなければ水着でいいだろう。そうだ金平糖の4人にビキニ着せてみなみの周囲にはべらせよう。あの子たちビキニ行けるよね?」
などと花ちゃんは妄想していた。
昨年創設した“フレッシュスター”はこうする。原則として2021年以降にデビューした子たち、今後デビュー予定の子たちである。
フレッシュスター2023
1,水森ビーナ
2.甲斐姉妹
3.川泉姉妹
4.広瀬姉妹
5.月城姉妹
6.北陸組(入瀬姉妹+麻生ルミナ)
7.ルビー&パール
8.立山煌
9.古屋あらた・松島ふうか・鹿野カリナ・山本コリン
10.鈴鹿あまめ+夕波もえこ
11.常滑舞音withスイスイ
12.薬王みなみ
8月に立山煌を配しているが、彼にはビキニの水着を着せるのではなく!(彼なら着れる気がする)登山ルックで映ってもらう。
「ビーナは性転換手術は終わってたはずだから振袖でいいよね。みなみは普通に振袖だな。川泉姉妹と広瀬姉妹は卒業入学シーズンの3・4月たがら制服っぽい衣裳を着せるか。広瀬のぞみも川泉パフェも当然女子制服だよね。月城3姉妹はゴールデンウィークでフライト・アテンダントさんっぽい服を着せるかな。もちろん3人ともミニスカートで。あ、たみよちゃんはパイロットでもいいや」
などと花ちゃんはまた妄想していた。
『青の洞門』の制作の後、9月3-11日には七浜宇菜主演『因幡の白兎』を制作した。白兎を演じるのは常滑舞音で、歌も常滑舞音が歌う。
この制作の大半は千葉のララランド・スタジオで行ったが、一部越谷の白鳩シティも使用した。また一部の出演者とスタッフをGulfstream G450 に乗せて鳥取空港まで飛び、白兎海岸でロケを行っている。
鳥取に行ったのは下記12名である。
七浜宇菜(大国主命)、常滑舞音(白兎)、樟南(大国主命の兄)、
これに宇菜のマネージャー・八戸さん、舞音のスタッフ3名(マネージャー・悠木恵美、写真家の春山サクラ、ボディガードの仙北龍美)
このほか撮影スタッフ5名。
もちろん日帰りである!
鳥取空港〜白兎海岸は約5kmですぐ近くである。
9月。NHKの部長さんからコスモスに連絡がある。
「紅白歌合戦に“紅組から”出場する歌手を“必ず”アクアちゃんと常滑舞音ちゃんを含む4組推薦してください」
コスモスは
「北里ナナ、常滑舞音、ラピスラズリ、薬王みなみで」
と即答した。
「アクアではなく北里ナナということでお願いします」
「分かりました。それで行きます」
電話を切ってからコスモスは、なぜかデスクのところに座らされている米本愛心(別の事務所所属なのに・・・)に指示した。
「アクアのためにかっあいいドレスをオーダーして」
「了解了解。任せてください」
と愛心は楽しそうに答えた。
9月の上旬、アクア本人はCM撮影で飛び回っていた時期、山村マネージャーと花ちゃんおよびコスモスはアクアの春までのスケジュールについて打ち合わせていた。
「10月いっぱいは『ザ・天下』、12-2月は最後の『少年探偵団』、これで卒業。3月はまた昔話シリーズ3年目のトップ、4月からは多分映画」
「だったら11月は空いてるな」
と山村マネージャーは言った。
「何かしたいことあった?」
「2年半前に作った『六星座』の続き」
「あぁ」
「あれの続きを出してほしいという要望は、ずっと出てた」
「確かに」
2020年5月に出したミニアルバム『六星座』は本当は12星座にしたかったのが、アクアの時間が取れなくて半分までで途切れていたのである。
『ファイト・エアリーズ!』出演:品川ありさ (1999.04.12)
『揺れないトーラス』出演:春風アルト (1986.04.22)
『仲良くジェムナイ』出演:姫路スピカ (2000.06.03)
『内気なキャンサー』出演:桜木ワルツ (1998.07.19)
『頑張るリーアウ』出演:川内峰花 (1998.08.10)
『現実主義のヴァーゴー』出演:西宮ネオン (1999.08.25)
それで残りの6星座を作ろうという訳である、
『気配りリブラ』出演予定:広瀬みづほ (2006.09.29)
『我慢のスコーピオ』出演予定:大崎忍 (2003.11.15)
『こだわらないサジテリアス』出演予定:白鳥リズム (2004.12.03)
『慎重すぎるよキャプリコーン』出演予定:月城たみよ (2008.12.22)
『マイウェイなアクエリアス』出演予定:花畑バニラ (2009.02.04)
『優しさパイシス』出演予定:川泉パフェ (2008.02.19)
そこに花咲ロンドが来て言う。
「社長、アクアの日程なんですけどね」
「うん」
「11月が時代劇の制作が延びた時のために空けてあるでしょ」
「え、えーっと」
「その期間にエレメント・ガードに少し休暇をあげてもらえませんか?かなり疲労がたまってるんですよ。今の状態では年末年始の超多忙時期に耐えられませんよ」
「その期間にアルバムを作ろうという話をしていたところなんだけど」
「無理です。アクアは7人くらい居るみたいだから何とかなったとしても、バンドメンバーは過労死しかねません」
「うーん・・・・」
例によってまたデスクに座らされていて話を聞いていた米本愛心(よねもと・あこ)が言った。
「横から大変申し訳ありません。エレメント・ガードが死にそうということであればゼロティスを使いません?私たち基本暇だし」
「うーん。愛心は暇かも知れないけど、リアちゃんも友利恵ちゃんもドラマやってるよ」
「足りないメンツは金平糖で補いましょう。あの子たちColdFly5よりずっと上手いです」
「確かに」
「じゃ金平糖を軸にして足りない部分をColdFlyのメンバーで補うか」
「あはは」
「アコ、あんたリーダーやってよね」(*14)
「あははは」
(*14) 米本愛心は信濃町ガールズ発足時のメンバー(original 10)であるので当時から同期という意識の強い花咲ロンドなどからはとても気安い存在。
original 10
川内峰花、今井葉月、花咲ロンド、白鳥リズム、佐藤ゆか、南田容子、米本愛心(ColdFly5)、月嶋優羽(三つ葉)、仲原恵海(透明姉妹)、溝口ルカ(BunBun)
そういう訳で、昨年招集した“北陸組”もまた呼ぶことにした。
愛心は北陸組で“いちばん暇そう”な日高久美子に連絡を取った。
「11月から12月に掛けて1ヶ月くらいですね。分かりました。連絡とリます。あっそうだ。合唱軽音部の出身者で今仕事にあぶれてる子がいるんですよ。使ってもらえませんか?」
「担当楽器は?」
「サックスです。ですから私がアルトサックスであの子がテナーサックスとかでもいいし。あとクラリネットとトロンボーンも吹けます」
「サックスができるなら、その辺もできるだろうね。身長は?」
「165cmくらいです」
「背が高いね!だったらトロンボーンの音域も広そうね(*15)。何か使えそうだからその子も連れてきてよ。今無職?」
「派遣で食いつないでいるらしいですが、どうしても間が空くので、10月の奨学金返済ができるかどうか微妙らしいです」
「だったらうちからお給料払うから、少し楽器の練習させてて」
「分かりました。言っときます」
(*15) トロンボーンは腕が長いほど遠くまでスライド管を伸ばすことができるので、より広い音域を出せる。トロンボーン奏者にはスライド管に棒を取り付けて腕より長く伸ばせるようにしている人もある。
久美子は世梨奈にも連絡したが、邦生に連絡するのをきれいに忘れていた!
久美子は坂上透が自分の楽器を持ってると思い込んでいたのだが、実際には高校の時は学校の楽器で演奏していたことが判明。これは青葉が買ってあげた。それで彼は派遣の仕事を辞めて、楽器の練習に専念することになる。
「まだ演奏する譜面は無いんですか?」
「青葉さんが10月中旬までに書くはず。一般的なポップス曲とかで練習してて」
「分かりました」
ちなみに久美子は坂上透が男性だということを愛心に言うのを忘れていた!
(女性だと思い込んでいたので165cmと聞いて「背が高いね」と言った。愛心はこの子ではなく世梨奈にまとめ役を頼むべきだったと思う。しかし世梨奈は毎日仕事があり、久美子は週に3回の勤務なので時間の取れそうな久美子に頼んだ)
2022年9月28日(水).
姫路スピカのシングル『行きつ戻りつ/君去りし後』が発売された。
前者は10月から12月まで放送されるドラマの主題歌。スピカはこのドラマで主人公(春日ゆかり)の同僚の役をしている。
後者はアクア主演『竹取物語』の中で使用された曲である。
この他に『竹取物語』の中では坂出モナが歌った『再会』のカバーも収録されている。
10月1日(土).
昔話シリーズの12弾。今度は打って変わってユーモラスな『大きなかぶ』が赤いトマトの主演で放送された。
原作の登場人物は、おじいさん・おばあさん・孫娘・犬・猫・鼠の6人だが、おじいさん=ケイナ、おばあさん=マリナ、として残りの孫娘・犬・猫・ネズミを赤いトマトの4人が演じた。
主題歌は赤いトマトが歌って9月28日に発売されたが、姫路スピカと僅差の争いとなり、統計の数字では1000枚差でスピカが1位、赤いトマトが2位だった。ほぼ同数首位のようなものであるが、赤いトマトのファンか悔しがっていた。
「いや。私のは『竹取物語』効果があるから、実質1位は赤いトマトだよ」
とスピカがtwitterに投稿すると、赤いトマトのファンから拍手が起きていた。
でも赤いトマトのはカップリングの異なる2枚のCDの合計だから実質はスピカの圧勝ではという声も出ていたようである!
3位は原町カペラで、ここまでが5万枚以上である。
2022年10月5日(水).
立山煌の4枚目のシングル『こぞくら・ふくらぎ/槍ヶ岳やりほーだい』が発売された。
『こぞくら・ふくらぎ』平野鉄郎作詞・峰京子作曲
『槍ヶ岳やりほーだい』蜂矢仁美作詞・南海妃呂作曲
『エーデルワイス』オスカー・ハマースタイン2世作詞・リチャード・ロジャース作曲/大宮万葉訳詞
『変わらない距離 acoustic-duet版』with 薬王みなみ 水野歌絵作詞・鹿賀カノン作曲
『こぞくら・ふくらぎ』というのは鰤(ぶり)の讃歌である。鰤は出世魚だがその段階名は地域によって違う。よく知られているのが関西と関東のバージョン。
大阪 ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ
東京 ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
しかし北陸ではこのように出世する。
北陸 コゾクラ→フクラギ→ガント→ブリ
それでこの北陸バージョンの名称を使ったのだが、このタイトルは『フニクリ・フニクラ』(*16) を大いに意識している。間奏にこの曲のモチーフ(ミミッミミ・ミミッミミ)が使用されている。『フニクリ・フニクラ』同様にリズミカルで小気味よい歌になっている。
能登半島ではこれから『寒鰤』の季節であることから地元の漁協や観光協会などから大いに支援を受け、またそちらのローカルFMでも流してもらった。PVには氷見漁港の様子や、富山県のご当地歌手で鰤の讃歌『佐々波漁港』を歌った三輪一雄さんも登場している。
(*16) 『フニクリ・フニクラ』(Funiculi, Funicula) はヴェスヴィオ火山(*17) に作られた登山列車 (Funicolare Vesuviana (*18)) のCMソングである。1880年に発表された。しばしば、世界最古のCMソングとも言われる(*19). 作詞は Giuseppe "Peppino" Turco (1846-1903), 作曲は Luigi Denza (1846-1922).
↓wikipediaに掲載された写真
(*17) ヴェスヴィオ (Vesuvio) は、ナポリ近くの活火山。AD79年には大噴火を起こして、大量の火山灰を放出し火砕流も起こして、ポンペイ (Pompeii) を埋没させた。当時の町の人口の1〜2割にあたる約2000人が犠牲になっている。この事件は映画『ポンペイ最後の日』(同名映画が多数ある!)でも描かれている。
ちなみにポンペイ (Pompeii) はイタリアだが、ボンベイ(現ムンバイ)はインド。
(*18) Funicolareとはケーブルカーのこと。英語ではfunicular.
(*19) ナポリ湾の観光客のために作られた『サンタルチア』(1849) もCM曲とみなせば、こちらがもっと古い。
『槍ヶ岳やりほーだい』は、壮大な“日本全国名山ダジャレ征服作戦”の曲である。蜂矢仁美作詞。とても現地にはいけないので、蜂矢仁美は現地のビデオを見たり、登ったことがある人から話を聞いたりして歌詞を書いている。でもおかげで
「ほんとに現地まで行って歌詞を書いたみたいだ」
と山岳関係者からは好評だった。
PVには提供してもらった槍ヶ岳周辺の映像も含まれている。
『エーデルワイス』は映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中で使用された曲で作詞者オスカー・ハマースタイン2世(1895-1960)の遺作である。この歌は美しいメロディーで中学高校の教科書に収録されたりもしたし、合唱団でもよく歌われている。
山の歌ということで使用した。
今回は妊娠休養?で“暇そうな”??大宮万葉に訳詞を作ってもらった。
「私毎日12時間は仕事してるんですけど」
と万葉は文句を言っていたが。
著作権がまだ有効なので、逆訳も添付して、権利者の許諾を求めた。向こうは日本語の分かるスタッフにチェックさせたようで「美しい訳ですね」と先方が感心していた。
『変わらない距離』は薬王みなみの大ヒット曲であるが、当初から「この曲は男女のデュエットで聴きたい」という声があり、立山煌と薬王みなみの デュエット版が、あけぼのテレビで一度放送された(伴奏は金平糖)。
ぜひ音源化をという声があったのだが、ここでは夕波もえこのピアノ伴奏で歌ったアコスティックバージョンが公開された。背景には“入瀬コルネ”のヴァイオリンがフィーチャーされ、間奏とエンディングには月城たみよのフルートも入っている。
ヤング§§ミュージックである。
PVに映った、たみよのフルードが
「なんか、あのフルート凄くない?」
と話題になっていた、なお彼女はこのフルートは音源制作の時だけ使用し、放送局に持っていったりするのには花ちゃんが買ってあげた総銀フルートを使用している、
「なんかフルートの名人さんが、たみよちゃんの演奏に惚れ込んで貸与してくれたらしいよ」
「へー。さすがに信濃町ガールズ1年目のお給料では買えないよね」
またコルネが弾いているヴァイオリンはコルネが自宅にはヴァイオリンが無いと言っていたので、千里が買ってあげて“貸与”して日々練習させていたヴァイオリンである。クレモナ産で120万円くらい。ちゃんと Cremona Liuteria のマークも入っている。弓はフランスのミルクール製である。この弓の値段で国産の安いヴァイオリンが買える。日和は
「このヴァイオリン凄くいい音がします!」
と感動していた。まだこの楽器を使い出してから10日ほどだが、結構弾きこなしていた。
日和にあげたようなものだが、本当にあげると贈与税を取られるので“貸与”ということにしている、葉月に実質あげたピアノと同じ。
このシングルはファレノプシスと同じ日の発売になったが、ランキングではファレノプシス1位、立山煌2位だった。差は1万枚でファレノプシス側は
「この日に出せば楽勝で1位取れると思ったのに」
とけっこう冷や汗だったようである。
10月15日(土).
今年の昔話シリーズ第13弾『因幡の白兎』が、七浜宇菜の主演で放送された。主な配役は下記である。
だいこく様:七浜宇菜(20)
白うさぎ:常滑舞音(17)
八上姫:萬木寿美(19)
須佐之男神:ケンネル(47)
刺国若姫:内野音子(33)
若い頃のだいこく様:七浜星南(13)
根の国の人:三国舜(15)
兄たち:サウザンズ+解決ゾローズ
蛤貝姫・蚶貝姫:入瀬ホルン(14)・入瀬コルネ(16)
神産巣日神:鳥山プロデューサー
ワニ(声):大林亮平(35), 森原准太(33)
語り手:麻生ルミナ
人数は少ないものの,セットやCGにお金が掛かっており『青の洞門』の3倍の予算が付いている。白兎海岸でのロケも行っている。
ヒロイン?役の萬木寿美(まき・としみ)さんは昨年のミス・ユニオン日本代表でこの作品が女優デビューである。
「すごいびじーん!」
と舞音や宇菜が見取れていた。
大己貴命は“おお(あ)なむぢのみこと”と読む。だいこく様(大国主神:おおくにぬしのかみ)の若い頃の名前である。
また蛤貝姫・蚶貝姫は“うむぎひめ・ききがいひめ”と読み、大己貴命を助けてくれる薬の神様である。昔は薬を貝殻に入れていたから、薬−貝という連想があったのではと言われる。また蚶貝姫(きさがいひめ)は出雲の主神・佐太大神の母である。
刺国若姫は“さしくにわかひめ”と読む。大己貴命の母である。
神産巣日神は“かみむすびのかみ”と読む。対になる高御神産巣日神とともに日本の本当の最高神である。日本の神様は主として天神系(高天原系)と地祇系(出雲系)に別れるが、神産巣日神は地祇(出雲系)の最高神。その下に高天原の主宰神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)と根の国の王・須佐之男神(すさのおのかみ)がいる。
神武天皇は天孫の子孫であり、皇后の五十鈴媛は地祇の子孫であって、ここに日本の二大勢力が統合されたのである。
若い頃の大己貴を演じる七浜星南(ななはま・せな/中1)も、これがスクリーン初登場。彼(?)は七浜宇菜の弟である。妹ではない!
「君、男役するから男子制服とか着てきたの?」
「男子制服でもちゃんと女性用楽屋を使ってね」
「すみません。ぼく男です」
「・・・・・・」
「お姉ちゃんと性別逆だったら良かったのに!」
「よく言われますけど、ぼく別に女の子にはなりたくないです」
「でもスカートくらい穿くよね」
「そう言ってよく穿かされますけどあまり穿きたくないです」
でもテレビ放送時には
「昔の宇菜ちゃんによく似てるね」
「妹さんらしいよ」
「さすが宇菜ちゃんの妹!男装が似合ってる」
などと言われたようである。
解決ゾローズとは、あけぼのテレビ・ΛΛテレビ・◇◇テレビ・FHテレビ・ムーラン、などがこの夏に創設した端役専門の俳優?集団である。ぞろぞろ出てくるからゾローズ。“解決”は端役問題を解決することと“怪傑ゾロ”から。
基本的にセリフの無い役を演じる。加入条件は絶対に守秘義務を守ることと、感染対策をしっかりすること、体調が悪い時は絶対に参加しないこと、出演前に簡易キットによる感染検査を受けてもらうことなどである。
§§ミュージックが“トラフィック”を創設したのと同様、エキストラが(守秘義務問題と感染対策問題で)危なくて使えなくなったことから創設された。だいたい大学生や家庭の主婦・自宅警備人などが多いが、自営業または会社勤めで副業として参加している人もある。
最近はコロナ慣れ・コロナ疲れできちんと感染対策をしてない人も多い。またエキストラに使った人が番組内容をネットに書き込んでしまうケースも多々発生していて、各テレビ局・映画制作会社では困っている。
創設するのにムーランに参加してもらったのは簡易キットを安価に提供してもらうためである。これが無いと経費的に成立しない。ついでにムーラン建設の作業員から多数の参加があったし、無職だった人がムーラン建設に参加したケースも多々あった。
ギャラは1日1万円だが、守秘義務と感染対策を守るという条件と引き換えに毎月5万円の最低保証をしている。
実を言うと『青の洞門』でΛΛテレビ社員とクレジットしていた村人役も彼らだった。今回初めてこの名前をクレジットした。また今回はこの集団のほぼ全員出演になった。女性メンバーも男装してだいこく様のお兄さんたちの役を演じている。
語り手「昔ある所に大己貴命(おおなむぢのみこと)という少年が居ました。大己貴には80人のお兄さんがいました。彼はよくお兄さんたちに使いっ走りをさせられていました」
大己貴(七浜星南)と多数のお兄さんたち(サウザンズ+解決ゾローズ)
「おーい、大己貴」
とお兄さん(樟南)。
「はーい、何ですか」
と大己貴。
「飯持ってこい」
「はーい」
と言って大己貴が一所懸命ごはんの入ったわっぱをお兄さんたちに配っている所。
挿入歌・常滑舞音『毎日毎日笑顔でサービス』
大己貴は腕力が無いので1度に3個くらいずつしか“わっぱ”を持てず、全員に配るのに結構時間が掛かりますが、誰も手伝ってくれません。
「もっと早くできんのか」
「ごめんなーい。ぼく力が弱くて」
「酒持ってこい」
「はーい」
と言って大己貴が一所懸命お酒(実際には水)の入った土器(*20) と杯をお兄さんたちに配っている所。
挿入歌・常滑舞音『毎日毎日笑顔でサービス』
(*20) 縄文式土器ふうの土器を粘土で作り、電気釜で焼いて作った。実際には土器ではなく陶器である。釉薬は掛けてあるので液漏れはしない、撮影用には割れてしまった時に備えて100個作った。放送後「あれほしい」と言う声があり、1個1000円・受注生産で募集したら10万個も売れた。この分の製造は陶磁器会社に依頼した。撮影に使用したものの中で最も形のよかったものから型を取り、それで生産した。
「あんた雑用ばかりやらされてるじゃん」
と母の刺国若姫(さしくにわかひめ/演:内野音子)に言われます。
「だってぼく、お兄さんたちみたいに力も無いし、釣りや狩りもできないし」
「あんたももう少し身体を鍛えなきゃねー」
そんなある日のこと、大己貴は兄たちに言われました。
「おい、大己貴、俺たち狩りに行くからお前ちょっと手伝え」
「はい」
大己貴は母から「もう少し身体を鍛えなきゃ」と言われたことを思いだしました。そうだよね。ぼく頑張らなきゃ、と思い兄たちに付いて行きます。
「この山にはでっかく赤い猪が居るんだ。俺たちが猪を駆り出すから、大己貴、お前は下で待ってて猪を仕留めろ」
「え〜?そんな。猪仕留めるとかできるかなあ」
「お前も11歳だろ。そろそろそのくらいできなくちゃ」
挿入歌・常滑舞音『猪狩り』(竹取物語で使用した『姫狩り』の替え歌)
それで大己貴は「頑張ろう」と思い、槍を持って下で待ち構えていました。するとそこに“転がって”きたのは真っ赤に焼けた巨大な岩(CG)でした」
(最初赤く塗った発泡スチロールの塊で撮影しようとしたが、まっすぐ転がってくれなくて諦めた)
「ぎゃー!」
と悲鳴をあげて、大己貴は岩の下敷きになってしまいました。
カメラは倒れてピクリともしない大己貴(七浜星南)を映す。
夕飯の時間、大己貴が居ないので代わりに2番目に下の高蔵男(桜田ミチヨ(*21))が配膳係をしています、大己貴の母が心配して訊きます。
「すみません。大己貴を見ませんでした?」
「ああ。なんか森の中で寝てたよ」
「え〜?」
母は森へ行き、松明を持って大己貴を探します。すると倒れて気を失っている大己貴を見付けます。ひどい怪我をしているようです。火傷もしているようです。
母は神産巣日神(かみむすびのかみ/演:鳥山プロデューサー)にお祈りしました。
「どうか大己貴を助けてください」
すると蛤貝姫・蚶貝姫(うむぎひめ・ききがいひめ/演:入瀬ホルン・入瀬コルネ)が雲に乗って飛んできます。(*22)
2人が大己貴に薬を塗り、蘇生術も施すと、大己貴は意識を取り戻しました。
「良かったぁ」
「お母さん・・・」
母は蛤貝姫・蚶貝姫および神様にたくさん感謝しました。そして大己貴に言いました。
「お前、こんなことしてたら兄さんたちに殺される、根の国に行き、須佐之男命(すさのおのみこと)に保護してもらいなさい」
(*21) 桜田ミチヨはサウザンズのチューニング係。サウザンズのメンバーなので特に個人名はクレジットしていない。男の娘であるが自分の性別に迷いは無いので男装も平気である。でも(サウザンズのコアなファン以外の)ほとんどの視聴者は女優さんが男装しているとしか思わなかったようである。
(*22) この撮影のために入瀬コルネ(吉川日和)はエキュレイユ2に乗せられて氷見飛行場から東京ヘリポートに運ばれた。彼女は頻繁に東京と富山を往復している。
7.29 →東京(車)妹の引越
7.31 富山←(車)
8.05 →東京 (Honda-Jet) 竹取物語
8.16 富山← (Honda-Jet)
8.26 →東京 (Do228) ライブ参加
8.28 富山← (Ecureuil2)
9.09 →東京 (Ecureuil2) 因幡の白兎
9.11 富山← (Ecureuil2)
撮影のついでに!?立山煌のシングルにヴァイオリンを入れた。そしてそのついでにカレンダー用の写真も撮られた!
(フレッシュスターのカレンダーと北陸組のカレンダー)
また「年末年始のご挨拶のCM」で振袖を着せられ「明けましておめでとうございます」版のビデオも撮られた!
それで大己貴(七浜星南)は真っ暗な洞窟を通って根の国に行きます。
(このシーンは『青の洞門』で使った洞窟のセットを再利用)
そして須佐之男神(すさのおのかみ/演:ケンネル)に会うと
「ぼくもっと身体を鍛えたいんです」
と言いました。
「おお、頑張るが良い」
と言って須佐之男神は彼に身体を鍛えるメニューを課したのです。
ここで七浜星南が走っている様子、泳いでいる様子、山登りしている様子、腹筋している様子(パートナー:三国舜)、腕立て伏せをしている様子、などが映った。
(常滑舞音が歌う『練習、練習、そしてまた練習』が流れる)
そして5年後。
たくましくなった大己貴(ここからは七浜宇菜)が木の枝にわたした棒で懸垂している場面が映る。
(宇菜様かっこいいー!と女性ファンの声)
「お前もだいぶ逞しくなったな」
と須佐之男命が言います。
「おかげさまで」
「これだけ強くなったらもう地上の国に戻っても兄たちに負けないだろう。これからはお前は“大国主命(おおくにぬしのみこと)”と名乗りなさい」
「はい!」
語り手「それで大己貴命(おおなむぢのみこと)あらため大国主命(おおくにぬしのみこと)は根の国から地上へ戻りました。大国主命は一般に“だいこく様”(*23) と呼ばれていますのでこれからは彼のことを“だいこく様”と呼ぶことにします」
(*23) 現代の“だいこく様”は日本の大国主命(おおくにぬしのみこと)と仏教の大黒天(だいこくてん/マハーカーラ)が、音読みすると同音なので混乱し混同され習合されたものである。大黒天というのはインドの三主神のひとりシヴァの別名なので、やはり偉い神様。奧さんは大黒天女(カーリー)。カーリーは凶暴でとっても怖い女神様であり、インドでは物凄く人気の高い神様である。
たぶんヨーロッパのブラック・マリア(ノートルダム)と同根。
根の国から戻っただいこく様が兄たちの所に戻ると言われました。
「お前生きてたのか」
「あるところで身体を鍛えていました」
「ああ、身体を鍛えるのはよいこと」
それで御飯の時間になるとまた給仕係をしますが、だいこく様はたくさん身体を鍛えているので、わっぱを1度に20個持てます。それであっという間に配膳が終わり「おお、進化してる。偉い偉い」と言われ、嬉しくなります。
(「宇菜様かっこいいー」と女性ファンの声)
挿入歌・常滑舞音『毎日毎日笑顔でサービス』
高蔵男など
「大己貴が戻って来てくれて助かる。居ない間はぼくがやらされていたから」
と言っています。
母は
「身体を鍛えてきても、やっぱりパシリなの〜」
と呆れ顔です。
だいこく様が兄たちのところに戻ってから数ヶ月経った時、兄たちは言いました。
「お前ちょっと付いてこい」
「何ですか〜?」
「因幡国(いなばのくに)に八上姫(やがみひめ)という物凄い美女がいるという。俺たちはその美女に妻問いに行く。お前は荷物持ちしろ」
「はいはい」
それでだいこく様は兄たちの荷物を荷車3台に載せ、馬に牽かせて後から付いていきました。曳いてると時々車から落ちる荷物もあるので、それをまた積んだりしながら歩いて行きました(*24).
(*24) 大黒様というと“大きな袋を肩に掛け”ている様子がよく描かれているが80人分の荷物が肩に掛ける袋で収まるとは思えない。1人1kgとしても80kgである。それで荷車の登場となった。荷物の大きさも考えたら荷車1台に20-30個、3台くらい必要と思われる。この量の荷物を牽くのは人間には無理なので馬の登場となった。
時代考証無視だが、そもそも80人分の荷物を1人で持っていくこと自体が不可能である。
さて因幡の国に1匹の白兎(常滑舞音)が居ました。海岸の山の上に住んでいたのですが、ある時洪水があって流されてしまいました。兎は沖にある島(*25)に辿りつきますが、途方に暮れます。
挿入歌・常滑舞音が歌う『沖にウサギだ』
(『沖に娘だ』の替え歌。『沖に娘だ』では3人の男が助けに行くがウサギ版では誰も助けに来てくれない。海鳥が糞を落として行くだけ)
「どうやって浜まで帰ろう」
と悩みます。
(*25) 原文「淤岐嶋」。これを“隠岐”のことでは?という人もあるがさすがに遠すぎると思う。白兎海岸からは100km, 島根半島からでも60kmある。因幡の国から対馬海流の上流方向になり、そちらへ流されるとは思えない。
この伝説の残る白兎海岸には沖合100mのところに“淤岐島”という兎の形をした島があり、この伝説はそもそもこの島が兎に見えることから生まれたのではとも思える。
↓淤岐島 2007.11.22撮影
筆者が白兎海岸を訪れた時は気付かなかったのだが。浜と島の間に多数の岩礁が並んでおり、ここをうさぎが跳んで渡ったのではとも言われ「ワニの背岩」と呼ばれている。
なおもうひとつ、白兎海岸の沖合2.5kmの所にも大島あるいは「伏野大島」という島がある(伏野海岸からは1km)。下記の写真が多分この島ではないかと思う。鰐の一族を集めてその上を跳び越えたという話にはひょっとしたら、こちらが合うかも。白兎海岸からは東側になるので潮流に流されたら到達する可能性がある。
↓夕日を受けて金色に輝く沖合の島。伏野大島?2007.11.22撮影
その時、島の近くを一匹のワニ(CG)(*26) が通り掛かります。ウサギはワニに呼び掛けました。
「ねえ、ワニ君」
「なんだい、ウサギ君」
とワニ(声:森原准太)は応えます。
「君達ってよく見かけるけど、全部で何匹くらい居るの?」
「たくさん居るよ」
「ぼくたちより多いかなあ」
「きっと多いと思う」
「一度全員集めて数えてもいい?それでウサギとどちらが多いか確認したい」
「いいよー。じゃ全員集めるね」
「その時、数えやすいようにこの島から浜に向かって一列に並んでくれない?」
「OKOK」
それで多数のワニが集まって来ました。ワニたちはウサギが言ったように浜に向かって一列にならびました。
「じゃ君たちの上を跳びながら数えて行くね」
「おっけー」
それでウサギは
「1、2、3、4、・・・」
と言いながらワニの上を跳んでいきます。
ウサギがひたすらワニの上をとんでいく映像が映ります。
挿入歌・常滑舞音『ワニが1匹、ワニが2匹、ワニが3匹、・・・』(歌の最後ではウサギは眠ってしまう)
(このシーンは床に90cmおきにテープを貼っておき、舞音はその上を飛び跳ねている。あとでCGでその場所にワニがいるように加工している)
ウサギは途中で眠ってしまった!のですが、ワニに起こされ続きを跳びながら数え続けます。
(「ウサギとカメ」にしてもウサギって途中で寝るものなんだなと視聴者のツッコミ)
そしてウサギは最後のワニの上に
「1198」
と言って跳び乗りました。
ワニが訊きます。
「どうだい?君達の数とどちらが多かった?」
(声:大橋亮平)
するとウサギは言いました。
「数を数えるなんて嘘だよ〜ん。ほんとは島から浜に戻りたかっただけさ」
「何だとぉ!?」
「ふざけやがって」
「きさま、皮を剥いでやる」
「きゃーやめてー」
(適当に「君たちのほうが10匹多かった」とでも言っておけばいいものを、と視聴者のツッコミ)
語り手の麻生ルミナが『しばらくお待ちください』というフリップを持っている。
やがて場面は変わり、砂浜でピンクのウサギの着ぐるみを着た常滑舞音が泣いている(*27).
麻生ルミナの解説「そういう訳で嘘をついてたことがバレたウサギは怒ったワニたちに皮を剥がされてしまったのです。よいこのみんなは嘘をついてはいけませんよ」
(*26) この“ワニ”(原文:和邇)の解釈について古くから爬虫類のワニ説と魚類のサメ説がある。
サメ説:日本にワニが居る訳がない。きっと獰猛なサメのこと。
ワニ説:ワニと書いてあるんだし、元々おとぎ話なんだからワニでいいじゃん。
日本神話ではほかにも“ワニ”が出てくる所がある。事代主神(ことしろぬしのかみ:えびす様−だいこく様の息子)が岡田(京都府南部の木津川市。現・岡田鴨神社)に住んでいた頃、恋人の溝咋姫(みぞくいひめ)の所(大阪府茨木市。現:溝咋神社)に通うのにワニに変身して木津川・淀川をとおってかよっていたというものである(遠距離恋愛?)。このことから“ワニ”というのは舟のことではないかという人もあるが、舟では白兎のエピソードは説明できない。
なお、現代でも広島とかではサメのことをワニと言い、スーパーに堂々と“ワニ”と書いた魚肉が食品パックに入って売られている。ただ古事記は中央でまとめられた本なのでそこに方言を使うかは疑問。
なお日本では隠岐で2000万年前のワニの化石が発見されており、古い時代には日本にもワニが居たことは確かである。
またワニなら半分身体を水面より上に出しているし上が平面だから飛び跳ねやすいが、サメだと水没しているし、背中もまっすぐではないという意見もある。(ワニは爬虫類で肺呼吸・サメは魚でえら呼吸)
ところで大国主の時代というのはいつだろうか。この因幡の白兎はまだ大国主が若い頃のエピソード。やがて国を統一し、日本の支配者となるが、高天原から国を譲るよう強要されて結局は屈服し、高天原から迩迩芸命がやってくる。この迩迩芸命の降臨から「179万2470余年」経ってから神武天皇は東征し拠点を奈良に移す。
ということは因幡の白兎のエピソードは多分200万年以上前の時代の話である。そしたらワニが居てもそんなに問題無いかも!?
このドラマではワニ説・サメ説のどちらにも決め手が無いので原文通りワニということにして制作した。
(*27) 皮をはがされたら普通死ぬと思うのだが、この点についてはあまり突っ込む人が居ない。まあ、おとぎ話ということで。
だいたいうさきがしゃべっているし!
ウサギが泣いていたらそこに、だいこく様のお兄さんたちがやってきます。荷物を全部だいこく様に持たせてしまったので身軽です。
「おい、ウサギどうしたんだ?」
と兄の1人(樟南)。
「ワニたちに捕まって皮をはがされてしまったんです。凄く痛いです」
「なんだ。だったら、海の水に浸かってだな、それから風に当たっていなさい。そしたら早く良くなるよ」(*28)
「ありがとうございます!」
それで兄たちは笑いながら行ってしまいました。一番最後に付いてる高蔵男だけがちょっと心配そうに振り返りました。
それでウサギが海の水に浸かり、それから風に当たっていますと塩水に浸かったのが乾くにつれヒリヒリと痛んできます(まさに傷口に塩)。白兎は
「痛いよー」
と言って倒れてしまいました。
(*28) 原文では山の上に登って風に当たっているように指示している。しかし山の上に居たらだいこく様と出会えないので山に登れという指示は省略した。
そこにたくさんの荷物を載せた荷車を馬に曳かせただいこく様(七浜宇菜)が通り掛かります。ウサギ(常滑舞音)が倒れて苦しんでいるようなので尋ねます。
「ウサギよ、どうした?」
「ワニに皮を剥がされて痛くて苦しんでいたら、大勢の男の人が通り掛かり、海の水で身体を洗い、風に当たっていろと言われたのです。でも物凄く痛くて」
常滑舞音が歌う『大こく様』(*29) 1番
大きな袋を肩に掛け、だいこく様が来かかると、ここに因幡の白兎、皮をむかれて、赤はだか。
だいこく様は言いました。
「それではよけい痛くなるだろう。まず川に行って、きれいな水で身体を洗ってきなさい」
「はい」
と応えて、ウサギは川に行き(*30)、川の水でもう一度身体を洗いました。
ウサギが川に行っている間に、だいこく様は蛤貝姫・蚶貝姫(うむぎひめ・ききがいひめ)を呼ぶとともに、“蒲の穂綿(がまのほわた)”を地面にたくさん撒きました。そしてウサギが戻って来ると蛤貝姫・蚶貝姫に頼んで全身にお薬を塗ってもらいます。これでウサギはだいぶ楽になったようでした。その上でウサギに、蒲の穂綿を撒いた所の上で転がるように言いました。それでウサギが転がると、蒲の穂綿がウサギの身体に付着し、傷を保護してくれます。そして蒲の穂綿のお陰でウサギはすっかり真っ白になりました(*31).
常滑舞音が歌う『大こく様』(*29) 2-3番
だいこく様は、あわれがり、「きれいな水に身を洗い、蒲の穂綿にくるまれ」と、よくよく教えてやりました。
だいこく様の言う通り、きれいな水に身を洗い、蒲の穂綿にくるまれば、うさぎは元の白うさぎ。
(*29)『大こく様』は石原和三郎作詞・田村虎蔵作曲。石原和三郎(1865-1922)は学校の先生で、他にも「兎と亀」「花咲爺」「金太郎」などの歌詞を書いている。
(*30) Google Mapで見ると、白兎海岸の道の駅から東へ500mほどのところに小さい川が見える。どのような川だったかは筆者も記憶が無い。
実際には海に入るシーン・川に入るシーンおよびその後の蒲の穂綿を敷いた上て転がるシーンは、越谷の小鳩シティの池と川で撮影された。ここは地下の温水プールの排水(を浄化したもの)が流れているのでわりと暖かいし衛生的にもほとんど問題無い。更に舞音の着ぐるみは内部がドライスーツになっており舞音自身は水にさらされなくて済む。
(キャロル前田だったら普通の着ぐるみのままドブ川に放り込まれている)
(*31) 蒲の穂綿が出てくることからこの物語の舞台は秋であることが想像される。
舞音が着ている着ぐるみに、入瀬姉妹は“薬ツボ”から取りだした液体状の薬を刷毛(はけ)で塗ってる。実はこれが糊(のり)である!そして宇菜が地面に撒いたのは細かく裁断した麻布である。本物の蒲の穂綿だとアレルギーを起こす人がいるので麻の繊維を使用した。それでも舞音はこの繊維を吸い込まないように鼻栓・耳栓をして演技している。そして糊を塗った着ぐるみでこの上を転がると白い繊維が多数付着してほんとにピンクのウサギが白くなってしまう。
舞音も宇菜も入瀬姉妹もこのシーンの撮影が終わるとすぐ、うがいをし、シャワーを浴びている。また完全防備の清掃業者に掃除機で吸ってもらい片付けた。
またこの場面は白兎海岸のロケ映像とうまく組み合わせている。ウサギの着ぐるみを付けた舞音が海や川のそばまで行くところ、戻ってくる所も現地で撮影している。
つまり着ぐるみは3つある。
・白ウサギ
・ピンクのウサギ(ドライスーツ仕様)
・ピンクのウサギ(薬を塗ってもらい蒲の穂綿の上で転がる)
海に入る演技の後はドライヤーで乾かして川に入る演技をした。
だいこく様の指示した治療のお陰で、白兎は随分楽になりました。
「ありがとうございます。あなた様はどこに行かれるんですか?」
「兄たちが因幡の国の何とかという美女に妻問いに行くので、ぼくは荷物持ちなんだよ」
ウサギは予言するように言いました。
「お兄さんは、きっとその女性の心を得られないでしょう。その女性が好きになるのはきっとあなたです」
やがて80人の兄たちが八上姫のところに到着しました。そこには大勢の求婚者が来ており、長い列ができていました(CG)。
各々の求婚者は「結婚してくれたらOOをあげる」というのを述べているようです。でも八上姫(萬木寿美)は誰の求婚も受け付けませんでした。やがて兄たちの番になります。
兄たちは言いました。
「結婚してくれたら広大な館を建ててあげる」
「結婚してくれたら金銀玉を好きなだけあげる」
「結婚してくれたら何不自由なく贅沢をさせてあげる」
各々考えられる限りの贈り物を述べますが、姫は「うん」とは言いません。兄たちが求愛しているうちに、だいこく様が到着しました。
「遅ーい」
「ごめん。凄い荷物なんだもん」
兄達が求愛し、断られていきます。兄たちが全員はけて、だいこく様が八上姫の前に出ました。だいこく様は姫のあまりの美しさにポカーンと見取れてしまいました。
だいこく作が見取れているので、姫の方から訊きました。
「あなたは私に何をくれると言うのですか?」
「えっと、ぼくは何も持ってません。あなたにあげられるのはぼくの心だけです」
すると姫はドキッとしたような顔をしました。
「その言葉が聞きたかった」
挿入歌・常滑舞音『ぼくの心をあげる』
それで八上姫はだいこく様と結婚することになったのです。
2人の結婚の祝宴は7日7晩続きました。
めでたしめでたし。(*32)
兄たちはだいこく様に
「この野郎、うまいことやりやがって」
と言ってボコボコ殴りました。
「痛い痛いやめて」
(殴られて死んだりして)
(*32) このドラマは原作の物語の前半と後半を入れ換えている。本来はだいこく様が八上姫と結婚して兄たちに妬まれたので山の上から赤く燃えた岩を落とされ、瀕死の重傷を負う。それで根の国に行き、修行をすることになる。そして根の国から戻ると兄たちを屈服させ、国主となる。
前後を入れ換えた理由は下記である。
・白ウサギのエピソードをクライマックスに置きたかった。
・まだひ弱な頃のだいこく様が大量の荷物を運べるとは思えない。
・少々身体を鍛えてもパシリ性格が直るとは思えない。
鳥山プロデューサーは
「大国主命は80人のお兄さんを屈服させたのではなく、お兄さんたちと一緒に国を統一したんじゃないでしょうかね。それでお兄さんたちがみんな亡くなったり引退したりして、最終的に最も若い大国主が国主になった」
と想像を述べていた。
このドラマの主題歌は常滑舞音が歌って10月12日に発売された。
『毎日毎日笑顔でサービス』(名寄多恵作詞・岡原加奈作曲)『因幡の白兎』挿入曲・黒猫運輸CM曲
『猪狩り』(未来居住作詞・醍醐春海作曲)竹取物語で使用した『姫狩り』の替え歌
『練習、練習、そしてまた練習』(未来居住作詞・招き猫作曲)
『沖にウサギだ』(未来居住作詞・琴沢幸穂作曲)『沖に娘だ』の替え歌
『ワニが1匹、ワニが2匹、ワニが3匹、・・・』(未来居住作詞・招き猫作曲)
『大こく様』(石原和三郎作詞・田村虎蔵作曲)
『ぼくの心をあげる』(鴨乃清見作詞作曲)『因幡の白兎』主題歌
『きらめきフリース』(諏訪越後作詞・琴沢幸穂作曲)ノノ・パパイヤCM曲
8曲入りのシングル(?)である。(短い曲が多いので総演奏時間は15分程度)
DVDには『因幡の白兎』版と黒猫版の2種類のPVが収録されている。黒猫の舞音と一緒に配達している白猫は今回も招き猫バンドのルーシーで実際に4tトラックを運転している。
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【夏の日の想い出・アルバムの続き】(2)