【悪夢の城】墓の街

前頁次頁目次

 
千秋は走っている内にもう一人の女性とはぐれてしまった。裸足で走っているので足の裏がものすごく痛い。思わず立ち止まって、近くの木にもたれかかり、ハアハアと激しい息をした。 
少し気持ちが落ち着いて来たところで耳を澄ます。何も聞こえない。誰も追ってきていないようだ。千秋は気を取り直すと、ゆっくりと歩き出した。 
しばらく歩いたところで突然視界が開けた。左手に小さな丘があって、何やら小さい構造物がたくさんある。そちらの方に歩いていくと、その構造物の中から出てきた年輩の女性が千秋に声を掛けた。「ひどいなりをしているね。ちょっと、こっちにおいで」
 
「誰かこの子にあげる服が無いかい?」その女性が言うと、あちこちの構造物から何やら衣類を持った色々な女性が現れ、千秋の前に積み上げた。少女から老女まで色々な人がいた。「好きなのを着なさい」少し痛んだ服もあったが千秋は汗もかいていたので、ありがたくもらうことにした。まわりは女性ばかりだ。千秋は着ていた服を脱ぎ、シャツにカーディガン、それにスカートを履いて、パンプスを履いた。靴があるのは嬉しい。 
「ここはどこなんですか?」「墓だよ」とその年輩の女性が言った。え?千秋は少しこわばった顔で丘の上の構造物を見ると、確かにそれはみな古い墓だった。かなりの年代物のようで、新しそうなものでも100年はたっていそうである。「あの、みなさんは?」「ここに住んでいるんだよ」
 
千秋は判断に迷った。墓に住んでいるというのは、勝手にそこを雨風をしのぐ場所として使っているということなのだろうか。それとも、この人たち...... 
しかし千秋の考えがまとまる前に年輩の女性が言った。「あんたは、そろそろここから移動したほうがいいね。そっちに行きなさい」「ありがとうございます」千秋は、言われたように丘の右側の方に歩き始めた。 
(2002.03.02 元は1990年頃に見た夢)
 
前頁次頁目次