【悪夢の城】回廊(1)

前頁次頁目次

 
古城の中は照明が落としてあった。通路の中央にはビロードが敷き詰められている。千秋は連れと一緒に中を歩いて行った。中は親切に「順路→」といった矢印が書かれている。迷う心配は無さそうだ。 
やがて通路の奥に小さなドアがあった。順路のようなので、千秋は何の疑問も持たずにそこを開けた。 
椅子がある。舞台にオランウータンのような猿がいた。「座るのかな?」「うん」
 
千秋たちは腰掛けて舞台を見た。オランウータンのような猿はのっしのっしと舞台を歩き回っている。その内何か芸でもするのだろうか。部屋の中を見回すとけっこう観客がいるようである。『良かった、大勢人がいて』千秋はそう思った。 
その内、前の方にいた観客が何か舞台の猿に何か言ったようである。するとどうも猿が怒ったようである。その観客の方を向いて威嚇を始めた。観客は面白がって更に何か言っている。『あ〜あ、いいのかな』
 
千秋がそう思ったとき、突然猿の顔が膨らみ始めた。え?
 
猿の顔はまるで大きな風船のように膨れあがり、あっという間にその前列にいた観客を押しつぶしてしまった。その顔はまるで象の顔ようであった。悲鳴があがる。千秋も慌てて席を立ち、部屋の外に逃げ出した。 
部屋からは大勢人が流れ出して来る。少しずつ後ずさりしていると、とうとう猿の顔は部屋のドアまで壊して外にせり出してきた。千秋は何が何だか分からず、その場から逃げようと走った。 
「思い出した。あれは<その他ザル>という猿だよ」
 
そばを一緒に走っている連れが言った。
 
しかし走っている内に順路を見失ってしまったようだ。もういいだろうという所で走るのをやめて歩き始めたが、いくら歩いても、順路の表示が無い。 
困っていた時、何か暖かい空気が流れてきた。そちらへ行くとお風呂があった。そう言えば汗ばんでいる。「お風呂入ってくるといいよ」と連れが言う。千秋は「姫様」と書かれた方へ入った。 
タオルも置いてある。服を脱いで脱衣籠に入れ、浴場の中に入る。お湯をからだにかけて簡単に汗を流してから湯船へ。いい気持ちだ。温泉だろうか。ちょっと重たい感じのお湯。硫黄泉系という気もする。 
のんびりしていたら話し声が聞こえてきた。男の人の声。え?ここ混浴だったのかな。ま、いいか。 
「あいつらを焼き殺してる火でこの風呂を沸かしてんのさ」<br>「硯だよ。硯。やつら、俺たちを人間とは思ってねえぜ」
 
千秋は何か急に怖くなった。いそいであがり、タオルで体を拭いて服を着ようと思ったが、困った。 
自分の服を入れたハズの脱衣籠が無いのである。裸のままでは外に出ていけない。ふと、近くにきれいにたたんでアイロンを掛けた浴衣が置いてあるのに気づいた。やむを得ない。それを着て外に出る。 
連れはまだ出てきていない。早く出過ぎたかな。「殿方」と書かれた戸の前でしばらく待ったが出てこない。千秋は更に不安な気持ちになり、そのまま通路を掛けだした。 
(2000.10.09 元は1985年頃に見た夢)
 
前頁次頁目次