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男の娘宣言(4)

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「へー。新型去勢機が開発されたんだって」
とその日、夕食の席で、ニュースを見ていた父が言った。
 
「新型?」
「睾丸を除去も破壊もしない去勢機」
「去勢にならないじゃん」
「ちゃんと世界性別規律委員会の認定を取ったらしいよ。これを使った場合、ちゃんと去勢証明書も発行される」
 
「どういう仕組み?」
「アロマターゼの分泌を促すんだよ」
「へー!」
 

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歴史的な経緯では、100年ほど前に初めて開発された自動去勢機は“無血去勢機”とよばれるタイプで、出血させることなく、また傷口も作らずに去勢することができた。外側から圧力を加え、睾丸を潰して機能喪失させるタイプである。
 
使い方としては、睾丸の入った陰嚢を去勢機の内部に入れ、睾丸がスルリと逃げないように睾丸の付け根の部分をしっかり締める。それでスイッチを入れると一瞬にして睾丸は潰されて男性を廃業できる仕組みである。
 
確かに切開して血が出ることはないものの、痛みとショックは凄まじく、95%の被術者が気絶するし、心臓麻痺などを起こして死亡する人も毎年100人くらい居たという乱暴なものであった。
 
それでも病院で手術して去勢してもらうには審査が厳しいので、去勢機を使う人は多かった。
 
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80年ほど前に第2世代の去勢機である“無痛去勢機”が誕生した。
 
使い方としては、無血去勢機と同様に睾丸の入った陰嚢を機械に填め込み、睾丸の付け根の所を固定してからスイッチを入れると、付け根の所を切断するというものである。最初に洗浄が行われ、消毒の上で部分麻酔注射が打たれ、注射の1分後に切断されるので、痛みも少ない。傷口は自動で縫合されるので、結果的にほとんど痛みは無い。ただ麻酔が切れた後、数日はどうしても痛みがある。
 
少なくともショック死したりすることはないので、あっという間に無血去勢機と世代交代した。ただ、この無痛去勢機の問題点はいったんスイッチを入れたら、電源を抜いても最後まで動き続けるので、途中で恐くなったり気が変わっても確実に去勢されてしまう。それで「やっぱり去勢やめる。助けて」と叫んでも、後悔しても、スイッチを入れてしまった以上後の祭りである。数分間の恐怖に耐える必要が出てくる場合もある。
 
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自動去勢機を使用するのは、主として2つの層がある。
 
ひとつは30-40代の層と、10-12歳くらいの層である。
 
前者は、結婚を諦めた男性が性欲の処理を減らせるように男性ホルモンを減らすために去勢する場合と、結婚している男性が子供も数人作り、もう生殖が不要になったということから去勢するケースである。政府はレイプ事件減少のため、子供が4人以上いるか、もう子供は作らないことにした男性の去勢を推奨している。40歳以上で睾丸の付いている男性は睾丸税を毎年払わなければならない。
 
10-12歳の層の場合は、男の娘宣言を考えている子たちである。今すぐ男の娘宣言するわけではないものの、18歳になる前に宣言したい場合、一般的には抗男性ホルモンの投与で男性化を防止するのだが、睾丸が付いたまま抗男性ホルモンを投与するのは、毒と解毒剤を一緒に飲んでいるようなもので、どうしても身体に負担がかかる。それでいっそ睾丸を取ってしまうという選択をする人もある。
 
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なお睾丸を除去した場合でも本人が男性として生きていきたい場合は、ちゃんと男性としての市民登録を維持することができる。しばしば精通がきてから精子の保存をした後、去勢する子もある。精子が保存されていれば結局男として生きることにして、将来女性と結婚して子供を作ることもできる。
 

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また去勢している場合、性別移行せずに男性のまま18歳を迎えて兵役に就いた場合も、睾丸が無い人は一般に筋力が無いので、徴兵検査ではC種合格になる場合が多い。C種合格者は原則として前線には回されず、後方支援の業務に就くことが多い。一般的には看護士や調理人・通信技師・運搬兵などになる人が多い。但しそれで結果的には戦死の確率も減る。それが目的で去勢する人もある。
 
なお(審査に通れば)“看護士”ではなく女性用制服を着て“看護婦”になってもよい。審査の大半は“見た目”と“雰囲気”である。これは女装が似合いそうなC種合格者にはむしろ勧奨されている。男性兵士の多くは野戦病院で女性の看護婦に看病してもらうと回復が早いという統計結果も出ている。看護婦になった場合、女子トイレや女性用シャワールームを使用することになり、下着なども女性用が支給される。2年以上従軍看護婦をして除隊した場合、(たとえペニスが存在しても)“仮女性”の資格が得られる。仮女性の市民登録証は普通の女性と同じ赤色である。これを持っていれば、通常女性しか入れない場所(プールなどの女子更衣室、女子大学、女子寮、婦人科医院、温泉の女湯など)や女性専用の列車なども利用することができるようになる。
 
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もっとも睾丸が付いている場合は仮女性になることは認められないので、その場合、睾丸を除去した証明書を提出することで、仮女性の市民登録証を発行してもらえる(自動去勢機が発行する証明書でもよい。後述)。実際には睾丸が付いたまま従軍看護婦になった人の多くが従軍中に去勢してしまう。この人たちは無料で医師の手により去勢手術を受けられる(希望すれば性転換手術も無料でしてもらえる)。
 

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徴兵検査の内容
 身長・体重・視力・聴力測定。握力・背筋力・走行・投擲テストなど。学力テスト・健康診断、性器検査、思想・宗教検査など。
 
徴兵検査の判定
A種合格 兵役に適する(兵役に就く)
B種合格 兵役に不適(でも兵役に就く!)
C種合格 兵役は無理(でも後方支援に回される)
D種合格 身体や精神に障害を持つ(軍需工場などに回される)
E種不合格 薬物中毒者、危険思想の持ち主など。 
F種不合格 事実上男性でない人(女性と同じ扱い)
G種 病気療養中などで判定不能(1年後に再検査)
 
A種合格は1割といわれ、大半はB種合格になる。A種はいきなり一等兵になるが、B種・C種は二等兵からスタートする(訓練中は三等兵)。なおC種は体力に考慮して軽い訓練を受ける。C種の人がB種の訓練を受けると3割は訓練中に死亡するだろうと言われる。
 
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E種不合格者や、宗教的信条などにより徴兵拒否宣言をした人は兵役に就く必要はないものの、大学に進学することは認められず、一般企業に就職した場合も22歳になるまでは給与が半額とされる。
 
陰茎または睾丸が無い人は通常C種合格になる。ただし法的に中性になっている場合はそもそも検査通知が来ない。
 
男の娘やそれに準じる人でも、まだ法的に男性か仮男性である場合は徴兵検査場に出向かなければならないが、通常は書類や診断書などを確認した上で、そのままF種不合格を告げられる。女性と同じ扱いなので大学にも進学できるし、給料が半減されることもない。
 
女性が任意で検査を受ける場合は、A種合格しない限り兵役には就けない(従軍看護婦を志願する場合を除く)。
 
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なお仮女性はその後、ヴァギナを獲得した場合、市民登録を女性に変更できる。もっとも仮女性と女性の法的な扱いの違いはほとんど無いし、登録証の表面上の記載は全く同じである。内蔵されているICチップ内に記録されている性別の項目が違うだけである。
 
膣の獲得法:−
(1)IPS細胞から膣を作り、それを埋め込む。
(2)他の女性(多くは事故死した女性)から提供された膣を移植する。
(3)ペニスを解体し、その皮膚を利用して膣を作る(古典的造膣法)
(4)S字結腸を切り取り、それを素材に膣を作る(古典的造膣法)
(5)合成繊維を使用して人工的に作られた膣を埋め込む。
 
(3)の方法は、ちょうどペニスの入るサイズの膣ができるので古くから行われていたが、あまり湿潤しないし、縮みやすいのが欠点である。(4)の方法は逆に湿潤しすぎるのと手術の侵襲が大きいのが問題である。(2)はドナー次第なのと拒絶反応が起きやすいのが欠点である。(1)は膣を育てるために時間がかかるのが欠点で、ここまでする人は多くはもっと本格的な性転換手術(後述)を受ける。そこまでしない人は(5)の方法を採る人が多い。また(5)の方法は概して(3)の方法より“男性側の快感”が大きいと言われる。
 
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もっとも、仮女性のまま造膣まではせずに、ずっと社会的に女性として暮らしている人は結構な数であるとも言われている。
 

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さて、無痛去勢機はかなり長く使用されていたのだが、20年ほど前に新世代の去勢機が登場した。それが瞬間去勢機である。
 
これは原理的には無痛去勢機と同様であるが、その動作速度が高速で一瞬で全て終わってしまうもの。去勢機が作動している間の恐怖に耐える必要が無い。スイッチを入れたら即去勢が実行されるので、後悔する暇も無い。また切断した睾丸のDNAを検査して、記名された去勢証明書が自動発行される(そもそも全ての市民は出生時にDNAが登録されている)。これは仮女性になれる資格を持っている人が市民登録証の性別を実際に仮女性に変更申請する場合の証明書としても使用できる(仮女性の資格を持っていない場合は中性に変更できる)。
 
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動作速度は最初30秒のものが開発され、当時は“高速去勢機”と呼ばれた。その速度がやがて10秒になり、5秒を切ったあたりから“瞬間去勢機”と呼ばれるようになった。現在の動作速度はだいたい1秒くらいのものが多い。
 

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さて、父が言っていた今回開発された新しい自動去勢機は、物理的には睾丸を破壊も除去もしない。この去勢機の作用は下記である。
 
(1)睾丸を体内に押し込み、降りてこないように固定する。
 
(2)アロマターゼの分泌を促すバイオチップを埋め込む。
 
実際には去勢機を身体に装着してスイッチを入れると、身体に痛みも感じないほどの小さな穴を開け、そこから触手が体内に侵入して睾丸をキャッチし、体内に引き上げて通常女性の卵巣がある位置に固定する。同時にバイオチップを睾丸表面に取り付ける。
 
このバイオチップは睾丸の組織と一体化してしまうので、後で除去することは不可能である(睾丸ごと除去するしかない!)。
 
こうすると、体内に固定された睾丸は温度が高いので機能が弱まる。それに加えてアロマターゼの働きにより、生産された男性ホルモンが積極的に女性ホルモンに転換される。そのため、この去勢機を使用した場合、睾丸が存在するにも関わらず男性化は起きず、むしろ女性化が起きて、体付きは女性的になり、バストも膨らんでいくことが、ボランティアによる治験で明らかになっている。
 
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つまりこの去勢機は男性形質を喪失するというより、女性形質を発現させる作用があるのである。従って“中性のまま”でいることはできず、女性として身体が発達していくことになるので、性別を女性に移行するつもりの人しか使えないが、そういう人にとっては旧来の去勢機よりも魅力的である。
 
なお睾丸自体の機能は、この“去勢機”を使用すると精子の生産も停止するが、だいたい3年程度経つと、この装置を取り外しても精子を作る機能は回復しなくなる。男性ホルモンの生産は続くが、アロマターゼの作用によりほぼ全て女性ホルモンに変換されてしまう。また女性ホルモンの作用で脂肪もついて体付きが女性的になった場合、今度はその身体がアロマターゼを生産するようになるので、女性化は更に進むことになる。どっちみち作用は非可逆的なので、この機械は“去勢機”として認定されたのである。
 
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「レミ、お前もこれで去勢する?」
などと父が訊く。
 
「えー?ボク別に女の子になるつもりはないけど」
「いや、そのつもりなんじゃないかと思ってた」
と父が言うと、姉のメルも
 
「あんた、性交換月間の間、凄く嬉しそうにしてたのに、終わってからは少し寂しそうにしてるし、しばしば女の子下着をつけてるし」
 
きゃー、バレてた、とレミは焦った。確かにレミは時々女の子下着を着けている。実は今でも着けている!
 

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「レミ、お前、家の中ではスカート穿いたら?誰も見てないんだし、スカート穿いてても叱られないぞ」
と父が言う。
 
「賛成、賛成。レミは女の子になれると思う」
と母まで言うので、レミは恥ずかしくて真っ赤になってしまった。
 
「ほらこういう所が女の子的」
とメルは指摘する。
 
「お兄ちゃんも女の子になったら、私たち三姉妹だね」
と妹のアスカも言う。
 
「性別というのは、自分の生まれた時の肉体的性にとらわれることは無いんだよ。自分の心の発達に合わせた性別で生きればいい。レミは女の子として生きた方がいいと思うよ」
と父は言った。
 
「少し考えてみる」
「性別移行するなら4年生が最適だからね。5年生になると男性化が始まっちゃうけど、4年生ならまだ中性に近いもん」
 
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