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「君、君、うますぎる! 娼婦になれるよ」
娼婦になれるというのは営業マンとして最高の褒め言葉である。娼婦というのはこの世界では最高の稼ぎ手であり、だいたい年収は2000〜3000万と言われている。しかし娼婦を買うのは1回10万から20万必要なので、そう簡単に買うことはできない。また、娼婦になるには専門の学部に通った上で厳しい国家試験にパスしなければならないので簡単にはなれない職業である。また男が娼婦になるためには、国家試験を受ける前に性別を女に変更する必要がある。僕は男をやめるつもりは無かった。
しかし相手に射精させるにはベッドの上では女性的に行動する必要がある。僕は社長のファロスを密着させた自分の両足の隙間に挿入させた。いわゆるスマタというテクである。これでまるで女性のマロスに挿入しているかのような感覚にさせる技術を僕は持っていた。社長は興奮して激しく腰を動かす。僕はそれに合わせて自分の腰も動かし、刺激がより強くなるようにした。
そしてベッドの上で10分ほどの攻防の末、社長は射精して逝った。
「逝きましたね」と僕。
「契約成立だね」と社長。
社長は笑顔で握手を求めた。僕も笑顔でしっかりと手を握り返した。
「今日は1度逝っていたのに、また逝かせるなんて君はほんとに凄い」
などと言われる。
早速、契約室を出て、契約書を作成した。2枚作成し電子署名してもらう。それをオンラインでうちの会社に転送し、うちの社長の電子署名をもらって返送される。
「お疲れ様」
と言って、僕はふたたび社長と握手した。
現代では契約は当事者同士のセックスで成立するものとされている。成立には金銭を支払う側の射精が必要である。そのため、営業マンはあらゆる性テクニックを習得しており、優秀な営業マンというのは、上手に相手に射精をさせることのできる人である。どんなに口での交渉がうまくても、射精させることができなければ営業マンとしては失格である。
契約の後、社長室でテレビを見ていたら、ちょうどタルバキヤとミルバニアの平和条約に関する交渉が生中継されていた。どちらの大統領もにこやかな顔をしている。
「これは条約成立するかね?」
「するといいですね。これまで何万人の生命が失われたか」
しばらく社長と雑談している内、向こうは話し合いが妥結して、いよいよ条約締結という雰囲気になったようである。ベッドが運び込まれてきて、双方の大統領が服を脱ぎ、裸になってベッドに寝転がった。そしてお互い反対側に頭を向け、いわゆるシックスナインの体勢になる。お互いに相手のファロスを口に咥えている。ファロスはとても大事な器官であり、それを相手に舐めさせるというのは、相手を信頼しているからできることである。万一噛みきられたら男性としての能力だけでなく政治的な能力も失うことになる。
シックスナインはうまく行っているようで、どちらも気持ち良さそうにしている。どちらもまだ40代なので精力は充分ある。そして、両者はほぼ同時に逝った。
「やったね」と社長が声を上げる。
「ええ、良かったです」と僕も言う。
国同士の交渉では、両方の代表がセックスをして、時間差3分以内で双方が射精できたら交渉成立とされる。今回は1〜2秒も差が無かったので、円満成立である。
テレビ画面の向こうで双方の大統領が握手をしている。用意していた平和条約の書類に双方がサインする。これでタルバキヤとミルバニアに平和が訪れた。
その日は遅くなったので会社に電話だけ入れて自宅に直帰する。
そして翌朝、契約書を手土産に会社に出社した。
「あ、聞きましたよ。契約取れたんですね。おめでとうございます」
と受付のミツコが言った。
「ありがとう。君が気持ち良くしてくれたからだよ」
「いえいえ、お仕事ですから」
とミツコはビジネススマイルである。
「では処置しましょう」
ミツコに伴われて僕は処置室に入り、スカートと前開きの無いショーツを脱いでベッドに横たわる。ミツコは冷蔵庫に入っている保管容器を出して来て、中から僕のファロスとサックを取り出した。
「では縫合します」
と言ってミツコは僕のファロスとサックを手早く股間に縫合して取り付けた。
ファロスに触ると独特の快感がある。サックの中に入っているボールを摘まむと微妙な苦痛がある。
「うん、快適。ありがとう」
とミツコに御礼を言って、僕は前開きのある男性用ブリーフを穿き、社内用のズボンの制服を穿いて、オフィスの中に入って行った。
男性は中学に入る前にファロスとサックを切断するが、切断した器官は保管容器に入れて、各家庭の冷蔵庫の中で保管され、月に1度は縫合してくっつけることになっている。
中高生の場合は、だいたい毎月最終金曜日の夕方に、近親者の女性の手で縫合が行われる。そしてその週末はファロスが付いた状態で過ごし、月曜日の朝、また近親者の女性の手で切断されるのである。
ただしファロスを付けたまま外に出ることはできないので、その週末はずっと家に籠もっていなければならない。昔は、男性だけ集めた「月の家」というのがあって、そこで過ごしていたらしいが、次第に集団で月籠もりする風習はすたれ現代では、だいたい家庭でファロスのある週末を過ごすことになっている。中高生の男の子はみんな、その期間、オナニーしまくりである。僕も当時は月末の金曜日夕方から月曜朝までの間に7〜8回はオナニーをしていた。何回できるか友だち同士でよく競争をしていて、高校の時同級生で30回やったという奴がいてすげー!とみんなで言ったものである。
学校を卒業して就職すると、ファロスの保管容器はだいたい会社に置くことが多い。そして朝出勤してくると縫合してくっつけ、夕方退勤する時に切断される。この縫合と切断は、受付の女性がすることになっていて、会社の受付になるためには1級切断師の資格が必要である。うちみたいな株式公開している企業の場合は各営業所の受付はみんな切断師初段以上の資格を持っている。
切断師も小学生の女の子でも取得できる3級は道具が医療用メスに限定されているが、1級以上は様々な道具を使う人がおり、ジャボン刀と呼ばれる鋭利な刀や、ホウチョウと呼ばれる本来調理器具として作られたものを使う人もいるが、ミツコが使う斧はレアである。これを使いこなす切断師はそう多くない。ちなみにミツコは切断師の五段を持っている。これは切断の全国大会で優勝しなければ取得できない段位である。
ただ毎朝縫合して毎夕切断するとなると、さすがに痛い。切断には麻酔を使ってはいけないことになっているので、毎回激痛に耐える必要がある。そこで完全に社内でだけ仕事をしている人の中には、縫合・切断をほとんどせず、ファロスの無いまま仕事をしている男性もいる。しかし月に最低1度は縫合して射精をしなければ男性資格は維持できないので、だいたい月末の給料日の朝に縫合して、射精しているところを会社の保健衛生士にビデオ撮影してもらい、夕方また切断するということをする人もいる。
現代では「男性」というのは資格である。
男に生まれたからといって男性とは認められない。男性であるためには勃起能力と射精能力があることが必要であり、またファロス切断の痛みに耐えることが求められる。あの痛みに耐えることが「男」として認められる条件であり、ファロスを切られて痛がるようでは、男の資格は無いとされる。
男性の資格を維持するには、毎月ちゃんと射精している所と切断の痛みに耐える所をビデオ撮影して提出することが必要である。それが嫌なら男を辞めるしかない。
男を辞める場合は、役場に「男性廃業届」を出すだけでよい。だいたい毎年全男性の3〜4%が男性を廃業していると言われている。男性を廃業すると女性として扱われるが、女性は会社では課長以上の地位に就くことができない、営業職になれない、不動産や株式・国債などの金融資産を所有することができない、市長・県知事・大統領に立候補することができない(議員や大臣にはなれる)、会社勤めした時の給料が男性の半額しかもらえない、など様々な不利益を被ることになる。
逆に女性に生まれたものの社会的な地位を得たい人は、ファロスを不要な男性から譲ってもらい、身体にくっつけて仕事をしている。契約には射精が必要だから、ちゃんと射精できるように練習しているようだし、切断の痛みにもしっかり耐えている。僕の同級生の女の子の中にも3人ほど、男性資格を取得してバリバリ仕事をしている人もいる。
元々女性として生まれて「男性資格」を持っている人はプライベートでは女性として行動していることが多く、そういう人は、結婚相手として男性にも人気である。こういう人たちは男性とも女性とも結婚することができる。(ファロスをくっつけても一方でマロスは維持しているので、男性機能も女性機能も持っている。自分で自分を妊娠させることも可能で、自分と結婚してもいいことになっている)
男性を廃業してしまった人は基本的には女性扱いではあるが(スカートも男性用のタイトスカートではなく女性用のフレアスカートを穿くし、公的な場所に出る時はお化粧することが求められる)、女性との結婚は認められないし、男性と結婚するためには「女性身体証明書」が必要で、そのためには性交の際に男性のファロスを受け入れられるマロスが身体にあることが必要である。マロスを身体に作る手術はマロプラスティーと呼ばれ、マロスの素材にはファロスの皮や尿道などを使用する。いったんマロスにしてしまったら、再びそれをファロスに戻すことはできないし、女性身体証明書を発行する際の必要書類の中に睾丸廃棄証明書も必要なので、手術を受けて女性身体証明書を取得するのは勇気が必要である。結局マロスは作らないまま、ファロスも縫合切断したりはしないまま、中性的な生活を送っている人も多い。(ファロスは縫合すると外出時に切断が必要なので、縫合を諦めている)
男性が、ファロスを接合するのは、会社で仕事をする時以外にもある。その代表的な例が恋愛の場である。
僕も大学生の頃、付き合った彼女がいた。彼女とは3年くらい付き合ったものの詰まらない喧嘩をして別れてしまった。
しかし彼女との仲は双方の親も認める仲だったので、僕たちはよくホテルに行ってセックスをして楽しんだ。
恋人たちがセックスをしたい場合、一般に男性の家に女性が泊まるか、あるいは一緒にホテルに行く。うちは下に弟が3人もいて、とても自宅でセックスなど、落ち着いてできなかったので、よくホテルに行っていた。
この場合、まず金曜日の夕方に彼女がうちに来て、母から僕のファロスの保管容器を受け取る。そしてそれを彼女が持ったまま、一緒にホテルに行く。そしてホテルの室内で彼女の手によりファロスを縫合してもらい、週末たっぷりとセックスを楽しむ。そして日曜日の夕方に彼女の手でファロスを切断され、保管容器に入れて僕の実家に一緒に行き、彼女から母に手渡される。
基本的にファロスの保管容器は女性が持ち運ぶことになっているし、女性から女性に手渡しされることになっている。男性が自分で持ち歩くのは例外的な事態である。
親公認の仲になる以前は、僕たちはファロス無しでセックスしていた。これは女性同士のレスビアンセックスと同じようなやり方になる。それも楽しかったが、やはりファロスを使ったセックスは物凄く気持ち良かった。この子と結婚すると、こんなことを日々出来るんだと思うと、ワクワクしたものだが、彼女とは結局結婚に至ることができなかった。
彼女は切断師の二段を持っていて、切断の道具にはジャポン刀という物凄く切れ味のいい刀を使っていた。初心者が使う医療用メスだと、切断するのに上手な人でも4〜5秒掛かるが、ジャポン刀だとほとんど一瞬でスパッと切れてしまうので逆に痛みも少なかった。
「ハルキ、切られる時痛くない?」
「痛いけど我慢する。でもアキコの切り方はうまいよ。妹は下手だもん」
「ふふふ。だてに二段じゃないからね」
アキコは積極的な女性でファロスを使ってセックスする時も実際にはアキコの方がリードしてくれることが多く、僕は楽だった。彼女はよくフェラをしてくれた。僕は今営業マンとしてフェラがうまいと言われることがよくあるが、僕のフェラの仕方は、アキコが僕にしてくれたフェラのコピーである。
それは僕がその会社に入って8年目。30歳になった年であった。
僕の所に1通のハガキが来ていた。ハガキは真っ赤な色であった。
赤紙だ・・・・・
僕は真っ青になった。
母に連絡したら泣かれた。会社の休みを取り、実家に一時帰省すると、両親もまだ嫁に行っていない妹も、僕の「赤紙」で泣いたが、これもお役目だから頑張ってきなさいと言われた。
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■ファロスよさらば-Farewell to Phallus(2)