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■女たちの羽衣伝説(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-01-03
 
2017年6月、択捉(えとろふ)島。某村の居酒屋。
 
40歳くらいのロシア人女性を口説く60前後?のアジア系の男の姿があった。男はかなり女の扱いになれている感じで、女もけっこう楽しそうに笑顔で応じていたものの、最後はうまく逃げられてしまった。
 
「残念だったね、ハガロマ」
と古株の常連が男に言った。
 
彼はХагоромоを名乗っている。日本語的に読めばハゴロモなのだが、ロシア語的に読むとアクセントの無いоは軽い「ア」に近い音になるためハガローマくらいの感じの発音になるのである。
 
「まあいいさ。またいい子を探すよ」
と言って居酒屋を出たものの、伸びをして独り言のように言う。
 
「男やるのも飽きたなあ。そろそろまた女になろうかな」
 
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それで彼は択捉島の最高峰ストカップ山(1634m)を登り始めた。
 
ベテランの登山家でも数日かかるのだが、彼はこれを驚異的な体力でわずか1日で登頂してしまう。見た目は60男なのだが、体力だけは20代並みのものを持っている。
 
やがて頂上に立ち、彼は両手をいっぱいに広げて西の風を受けた。
 
目を瞑って自分の身体の中を走るチャクラの回転に意識を集中する。そしてこれを下から順に逆回転に変えていく。やがてその回転が完全に女性型になると、今度はそこで生まれた「女性の気」を身体の隅々まで浸透させていく。
 
あと少しで完全に性転換が完了すると思ったとき、突然羽衣の足下に何かがぶつかった。
 
「わっ」
と小さな声を挙げ集中が乱れる。
 
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「あっーーーー!」
と羽衣は更に大きな声を挙げてしまった。
 
今一瞬気が乱れてしまったことで、性転換の最後のステップが完了しなかったのである。
 
じっと自分の股間を見つめる。
 
「えーん。これじゃ温泉とかに入れないじゃん。足にぶつかったのは何よ?」
と脳が性転換済みなので女言葉で文句を言う。
 
見ると小さなリスである。エゾリスだろうか?
 
「おまえ、私の晩御飯にはなりそうにないなあ」
と言って羽衣はそのリスを拾い上げると、背中を撫でてやった。
 

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「あれ〜、師匠がまた女になってる」
と海藤天津子は自分のマンションを訪問してきた羽衣を見て、驚いたような声をあげた。
 
「うん。ちょっと男は飽きた」
「師匠って元々は女ですよね?」
「なぜそう思う?」
「だって染色体がXXだもん。男の身体になっている時もXXですよ」
 
「ふーん。じゃ川上青葉の染色体は?」
「あのオカマ野郎はXYです」
 
「まだあんたあの子のこと『オカマ野郎』と言うんだ?」
「まあ色々あいつにも恩義があるから、排除はしませんけどオカマはオカマですよ。私が総理大臣になったら日本中のオカマを収容所送りにします。まああいつだけは勘弁してやってもいいや」
 
「相変わらず過激だけね〜。じゃあの子の姉ちゃんの村山千里の染色体は?」
 
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「千里さんはXXですよ。あの人、自分は元男だなんてよく主張してますけど私にはそれって嘘だと分かります。だってあの人、透視するとちゃんと子宮も卵巣もあるのが分かるし、2年前に間違いなく出産したから。出産できる以上天然女性ですよ」
 
「ふーん」
と羽衣は面白そうな顔をして天津子を見た。
 

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「ところでさ、天津子ちゃんちょっとお金恵んでくれない?」
「いいですよ。でも何なさるんですか?」
 
「ドイツまで行ってこようかと思ってさ」
「もしかしてミュンツァー師に会うんですか?」
 
「うん。コウちゃん(瞬嶽のこと:俗名長谷川光太郎)が死んで以来、なかなか遊べる人がいなくてさぁ」
 
天津子は顔をしかめた。師匠はしばしば瞬嶽の所に式神をやっては瞬嶽を殺させようとしていた。しかしいつも返り討ちに遭っていた。それは羽衣と瞬嶽の「危険な遊び」にも見えた。羽衣は戻って来た式神にやられて瀕死の重傷を負ったこともある。瞬嶽もうまいもので、わざと自分の所に来た弱い式神を超強化してから送り返したりしていたのである。
 
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「危険なお遊びをなさるのでしたらお金は出せません」
「ケチ」
 
羽衣はふだん貨幣経済とほとんど無縁の生活を送っているので、お金は日常生活を営むのに最低限必要な程度しか所持していない。大きな旅行などする場合は天津子や桃源、天機などの高弟から恵んでもらっている。
 
「師匠にはまだ死なれては困りますから」
「実は桃源からも断られた」
「弟子のメーリングリストに師匠に航空券代貸すなと流しておきます」
 
「もう!でも命のやりとりをするのが楽しいのよ」
「もっと穏やかな遊びをしてください」
「何か楽しいのある?」
「スマホでたくさんゲームできますよ」
「スマホかぁ。あれダメ」
「使ってみられました?」
 
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「天機から一度iPhone借りたんだけどさぁ。私が持った瞬間爆発するんだもん」
「ああ」
 
「静電体質の人間にはスマホは使えないよ」
「困ったものですね〜。師匠の静電容量は新幹線を東京から名古屋まで動かせるくらいあるだろうからなあ」
「そこまではさすがに自信無い」
 

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そろそろ貴司が帰ってくる時間かなと思い、もうすぐ2歳になる京平の会話の相手をしながら晩御飯を作っていた阿倍子は、玄関の開く音がするので
 
「たかちゃん、お帰り〜」
と言ったのだが、貴司と一緒に入って来た人物を見て不愉快な気分になる。
 
「千里さん、どういうつもり?」
と阿倍子は詰問するように千里に文句を言ったが、千里は
 
「浮気男を逮捕したから、ここまで連行してきた」
と言う。
「え〜〜?」
 
「女子大生とデートしようとしていた所を捕まえて、逃げないようにそのままここに連れてきた。じゃ阿倍子さんに引き渡すから、あとはよろしく〜」
 
と言って千里は帰ろうとする。貴司は情け無さそうな顔をしている。
 
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ところがそこに京平が
「あ、ちさとおばちゃん、こんにちはー」
と声を掛ける。
 
「京平、ちゃんといい子してるか?」
と千里も笑顔で京平に言う。
 
「いいこしてるよ。きょうはもらさずにトイレいけたよ」
「お、偉いなあ」
「だってあんまりもらしてたら、ちんちんとっちゃうぞとママがいうし」
「ああ、ちんちんなんて無くてもいいんだよ。京平のパパだってあんまり悪いことしてたら、私がパパのちんちん切っちゃうからねと言ってるから」
 
「千里、そういう話は教育に悪いからやめてよ」
と貴司が言う。
「貴司が浮気しなければいい」
「その件については私も千里さんに賛成だな」
とかなり怒っている風の阿倍子まで言う。
 
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「パパ、ちんちんきられちゃうの?」
「悪いことしなければ大丈夫だよ」
「わるいことって、おしっこもらしたり?」
「パパもおむつつけた方がいいかもね」
「じゃぼくのおむつパパにあげようかな」
「それもいいかもね」
 
などと言ってから、千里は
「あ、そうだ。さっき買ったチョコレート、よかったら京平食べる?」
と言って、千里はチョコレートのファミリーパックを取り出す。
 
「わーい、たべるたべる」
と言って京平は千里からチョコを受け取ってしまう。
 
阿倍子が不愉快そうな顔をしていたが、子供からおやつを取り上げる訳にもいかない。それで
 
「千里さんありがとう」
と御礼を言う。
 
「でも晩御飯前みたいだから、おやつは御飯の後ね」
と千里。
「うん、そうする」
と京平。
 
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「じぉね〜。京平はトイレがんばれよ」
「うん。がんばる」
「貴司は、ちんちんチョン切られないように浮気我慢しろよ」
「反省してる」
「阿倍子さん、お邪魔してごめんね。じゃ」
 
と言って千里は帰っていった。
 

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5月10日。桃香は子供を出産した。女の子で、5月に産まれたこともあり早月と名前を付けた。
 
桃香は早月の出産前に戸籍を分籍しておいたので、この子は桃香単独の戸籍に入籍される。早月の母親欄はむろん桃香だが父親欄は空白であった。実はこの子は千里が去勢前に冷凍保存していた精子を桃香の子宮に投入して人工授精で産まれた子供であり、父親は千里なのだが、そのことは桃香と千里、朋子と青葉、他には彪志やクロスロードの中核メンバーくらいしか知らないことである。
 
千里は、戸籍には記載されないものの、自分を父親とする子供が生まれたことに複雑な感情を持っていた。私、結局「男に生まれた」という事実からは逃げられないんだなとあらためて思った。
 
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桃香に助産婦さんがお乳が出るようにおっぱいマッサージをしていたが、千里はそれを見ていて
「そんなんじゃ出ない。ちょっとどいて」
と言い、千里が代わっておっぱいマッサージをしてあげた。
 
「痛たたたた!」
と桃香は悲鳴をあげたものの、それで桃香のおっぱいは最初から勢いよく出て早月は母親のおっぱいをたくさん飲むことができた。
 
「妹さんでしたっけ? マッサージお上手ですね」
と若い助産婦さんは驚いていた。
 
「一応経産婦なので」
「ああ、赤ちゃんがおられるのですか?」
「もうすぐ2歳になりますよ。私自身もまだおっぱい出るし」
「へー」
 
などと会話を交わしたのだが、桃香は当然あとから2人になった時に
突っ込んでくる。
 
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「千里、やはり一度子供を産んだのか?」
「内緒」
「それ誰の子供なの?」
「内緒」
「その子、私には見せてくれない?」
「その内ね」
「やはり千里って男の娘だったってのは嘘だよな?」
「私のちんちん何度も触ったじゃん」
「いや、あれはたぶんフェイクだ」
 
実際千里はまだけっこうおっぱいが出るので桃香にも言われて随分早月に授乳した。結果的に早月はほとんどミルクを飲まずに、桃香と千里の2人の母乳だけで育った。
 

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その春、テレビでは「話題の魔術師」レフ・クロガーの来日が報道されていた。アメリカで行ったマジックショーの動員が昨年1年間で30万人を突破。向こうのテレビでも何度も特別番組を組んでスタジオで華麗なマジックを披露していた。その彼が1ヶ月間にわたり、日本全国10ヶ所で公演をするのである。
 
彼のマジックは専門家の間でも「どうやっているのか全く想像が付かない」と言われ、実は手品ではなく魔法なのでは?という噂まで立っていた。実は人間ではなく宇宙人か、未来人か、ひょっとしたら悪魔なのではと言い出す人もあるほどであった。
 
「ちー姉、レフ・クロガーをどう思う?」
とその日青葉は千里に訊いた。
 
「どうって?」
「あれ本当に手品だと思う?」
「さあ、私は手品のことよく分からないから」
「じゃレフ・クロガーのオーラはどう見る?」
 
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千里は少し考えてから答えた。
 
「人間のオーラには見えない」
「だよね。私もそうだと思うんだよ」
と青葉は厳しい顔で言った。
 
「あの人の周辺でさ、随分行方不明者が出ているみたいなんだよね」
「何それ?」
「噂では、あの人の秘密を知ろうとして消されたのではと」
「消すって、1,2,3,消えました!って?」
「うん。この世から消えちゃう」
「怖い手品だなあ」
「だからそれが本当に手品なのか」
 
「青葉さ」
「うん?」
「以前にも何度か言ったけど、火中の栗を拾ってると、その内大怪我するよ」
と千里は厳しい顔で言った。
 
「うん。肝に銘じる」
と青葉も答えた。
 

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山川春玄は数日前に消息不明になった19歳の女性の霊的な探索を頼まれ、彼女の波動の残る所を探している内に、大きなイベントホールに辿り着いた。
 
何かのイベントが行われているようだ。何をしているんだろう?と思いながら、彼女の波動を追って裏手に回る。そして裏口から中に潜入できないかなと思った時、背の高い外人男性が若い21-22歳の日本人女性を伴って外に出てくるのを見る。反射的に山川はその後を追った。
 
ふたりは人気(ひとけ)の無い公園に来た。外人男性が女性を抱きしめる。ありゃ、単なるデートだったかと思い山川はその場を離れようとしたのだが、その瞬間、外人男性が山川の方を見た。
 
「Who?」
と男性が言った瞬間、そばに居た女性が
「きゃー!」
と悲鳴をあげた。
 
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それで山川は女性が催眠術か何かにかかっていたのが、自分の存在をきっかけにそれが破れてしまったことを認識する。
 
女性が逃げ出す。外人男性はその背中を一瞥したものの、どうも山川を先に何とかしなければと思ったようである。こちらに来る。山川は柔道の構えをして対峙した。
 

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「山川春玄さんが怪我したんですか?」
 
青葉は知人の霊能者・村元桜花からの電話でそれを聞き驚いた。
 
「彼は数日前に行方不明になった若い女性の行方を追っていた。実はさ、ここしばらく20歳前後の女性が突然行方不明になる事件が連続して起きているのよ。そしてその探索をしていた霊能者がもう彼で3人目」
 
「やられたんですか?」
「横浜の***さんは亡くなった」
「わぁ」
「京都の***さんは怪我はしていないんだけど、何か強いショックを受けたみたいで、心ここにあらずの状態なのよ。日常生活もひとりでできない状態」
「うーん・・・」
「そして春玄さんは意識不明の重体。医者の話では何とか命はとりとめそうだけど、後遺症とかが出るかもしれないと、春玄さんの妹さんから」
「何かとんでもないことが起きてますね」
 
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「だと思う。もし青葉も行方不明者の捜索とか頼まれたら、できたら断って。もし受ける場合も絶対にひとりでは行動しない方がいい。ボディガードか何か雇わないと無理だよ」
 
「分かりました。情報ありがとうございます」
 

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