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■女の子たちの花祭り(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-04-27
 
この物語は「女の子たちの成人式」のすぐ後くらいのエピソードである。
 
千里は自分の荷物を全部桃香のアパートに持ち込み、元のアパートは解約して桃香と「同居」を始めた。
 
「えへへ。引越のついでに男物の服、全部捨てちゃった」
「そんなもの持ってたの?」
「夏頃まではタンスの大半は男物だったよ。バイト先では女の子扱いだからバイトに行く時は女物しか着てなかったけどね。でも、男物を全部ゴミに出した時に、ああこれで自分はもう男を辞めるんだ、って思った」
 
「男はとっくに辞めてたと思うが。千里、裸に剥いたって女の子にしか見えないんだもん。女湯にだって入れるよ」
「そう? 私、去勢しちゃおうかなぁ」
「してもいいが、済まん。私のために精子を採取してからにしてくれ」
「うん。そのあとだよ」
桃香は千里に自分が将来「ひとりで」子供を産む時のために使う精子を冷凍保存して提供してくれるよう頼んでいた。その代わり、千里が母親になりたい状況ができた場合は、桃香がいつでも卵子を提供するという約束である。
 
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千里はそれまでも週に数回桃香の家に泊まって半同居の状態になっていたのだが、完全な同居を始めてからいちばん千里を困惑させたのが、夜な夜な、桃香が夜這いを掛けてくる!ということだった。
 
千里と桃香は成人式の翌日に1度だけHをしたが(この件に関してはふたりだけの秘密にすることで合意)、あれは成人式の記念の一夜限りのものと千里としては認識していたのでその後そういうことはしていなかったのだが、桃香はしばしばキスを迫ったり、Hしようよと言ってきた。千里としては桃香といちゃいちゃすること自体は嫌ではないが、Hすると自分の男性器官を使うことになってしまい、自分がいまだに男であることが辛くなってしまうので、Hはしたくないと言って拒否していた。それでも桃香は夜中千里の布団に潜り込んできて、体のあちこちに触って誘惑してくる。
 
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千里は妥協することにした。
「キスはいつでもしていいよ。私も桃香にするかも」「うん」
「私のおっぱいは触ってもいい。私も桃香のに触る」「OK」
「おちんちんはやめて。私、自分でもできるだけ触らないようにしてるんだもん。触ると自分が男であることが悲しくなっちゃうの」
「うーん。じゃしばらく控える」「うん。私も桃香のおまたには触らないから」
「えー?千里いつでも私のには触っていいのに」
「触ると羨ましくて、すぐにも手術したい気分になるの。おっぱいには触るから」
「うん」
 
しかし男物の服を全部捨ててしまったのは千里の意識をかなり変化させたようであった。それまでしばしば千里は学校に行くとき、女物の服ではあっても、中性的な着こなしで出て行っていたが、桃香と同居をはじめてからは完全に女の子の服装という感じになった。トイレも学校では恥ずかしがって多目的トイレを使っていたが(男子の同級生たちからは千里が男子トイレにいたら、一瞬自分が間違って女子トイレに入ってしまったかと思うのでやめてくれと言われていたので秋頃から千里は男子トイレを使えなくなっていた)、休憩時間には桃香や朱音たちに連れられて一緒に女子トイレに入るようになり、そのうちひとりでも女子トイレを使うようになった。
 
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ある日講義が終わったあとバイトまで少し時間があったので、ちょうど最後の講義で一緒だった玲奈・美緒とマクドナルドに入った。3人ともタバコを吸わないので(美緒は一時期吸っていたが最近禁煙をはじめたらしい)禁煙フロアーに行く。このフロアーはいつも女性が多いのだが、この日はみな女性客ばかりだった。3人であれこれガールズトークで盛り上がっていた時、少し離れた席にいた女子高生グループの中のひとりがとつぜん着替えをはじめた。千里は一瞬ぎょっとする。
 
その高校生は着ていた制服を脱ぎ、下着姿になって、紙袋の中から取りだした、たぶん買ったばかりの可愛い服を身につける。一緒にいた子たちから歓声があがっていた。千里がそちらから視線を外したことに気づいて美緒が小さい声で言う。
「千里、バイト先ではふつうに女子更衣室で着替えてるんでしょ。女の子の着替えるところなんて見慣れてるんじゃないの?」
「それは別に何とも思わないけど、ここふつうの場所だし」
「でも周囲、みんな女性客ばかりだから、いいよねと思ったんじゃない?」
と美緒は小声で笑いながら言った。そして
「千里を見ても誰も女の子としか思わないしね」
と付け加えた。
 
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電車に乗っていた時、席は満席に近かったが、千里の隣と、少し離れた所に座った20代くらいの男性の横が空いていた。そこに17-18歳くらいの女性が乗ってきた。さっと空いている所を探すと、その男性のそばを通り過ぎて千里の所に来て「ここ空いてます?」と訊く。千里が「どうぞ」と言うと、そこに座った。自分はちゃんと女性に分類されてるんだな、と千里は思った。
 
ファッションビルなどを歩いていて、レディスファッションの店の前を通過する時、千里はしばしば「いらっしゃいませ」と声を掛けられるのに気づいていた。以前中性的な格好で歩いていた時にもたまに声を掛けられることはあったが服装をぐっと女性的にしてからは、声を掛けられるのが普通になってしまった。自分はこういう店の「お客さん」と見られているんだな、と千里は思った。
 
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ちょうど市会議員選挙があり、千里も桃香も20歳になってから最初の選挙権行使をしてきた。投票券を持ってふたりで一緒に投票に行ったが、桃香は問題無く投票用紙をもらえたものの、千里が投票券を出すと「あら、これ違いますよ」と言われた。投票券と照合された名簿上では男性になっているのに来ているのがどう見ても女性なので咎められたのだが、千里が「間違いなく本人です」と言い、そばにいた桃香も「この子、俗にいうニューハーフですから」と言ったので、「あ、失礼しました」と係の人がいって投票用紙をもらえた。
 
投票に行ったあと朱音・美緒と合流し、いっしょにファミレスで食事をした。みんなでランチを頼んだら「本日は女性のお客様にアイスクリームをサービスです」
といって食後のコーヒーとともにアイスクリームが4人ともに配られた。「わあ、美味しそう」などといって他の3人がアイスを食べてはじめたが、千里が何かじっとアイスを見つめている。「どうしたの?」と朱音が訊く。
「女性って得なんだね」
「ああ。。。。だって千里、女の子にしか見えないもん。もらえて当然」
と美緒が笑って言った。
 
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「実はね、こないだ映画見に行ったらさ。水曜日だったのよね」
千里はやっとアイスを食べ始めながら微笑んで言う。
「ああ、レディースデイ」
「うん。それで1000円で入れちゃった」
「私、映画は水曜日にしか見に行かない」
「私も」
「女の子になって良かったな、とか思っちゃって」
「まあ、得なことばかりじゃないけどね」
と桃香は言う。
 
「ところで、千里と桃香、同棲しはじめたんだって?」と美緒。
「ええ?同棲ということになってるの?ただの同居だよ」と千里。
桃香は何も言わずに笑っている。
 
「Hとかしないの?」
「しない、しない」
「キスくらいはするんでしょ?」
「キスくらい友達同士でもするじゃん、朱音ともしたことあるでしょ」
「あちこち触ったりしないの?」
「ええ?おっぱいは触りっこするけど、これみんなともするよね」
 
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「私、最近千里のおっぱいに触りながらでないと寝れなくなっちゃった」
とここで桃香が爆弾発言。
「おはようのキス、おやすみのキスもしてるし」
「ちょっと、ちょっと、桃香〜」
 
「ふむ。君たちがいかにスイートな生活をしているかは分かった」と朱音。「当委員会としては君たちの生活を同棲であると認定する」と言うと、美緒がパチパチと拍手をした。
 
桃香と千里は一緒に長野県にある、とある産婦人科を訪ねた。桃香の医学部の友人のツテで、ここで千里の精子を採取して冷凍保存してもらうことになっていた。今日が1回目で、このあと半月おきに計6回採取の予定である。
 
「あれ?もう採精して来られたのですか?」
と女性の医師は千里と桃香がふたりで診察室に入ってきたのを見て言った。
「いえ。こちらで新鮮な状態のを採らせてください」
 
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「でも女性だけで来られても」
「いえ、この子、一応男の子の器官が付いてるので」
女医さんは驚いた様子でこちらを見つめていたが
「ああ、分かりました。ごめんなさい」
と平然とした顔に戻って言う。
 
「去勢する予定があるので、その前に採取したいんです」
「なるほど。だから凍結なのね」
「はい。私はまだ学生で今すぐは妊娠できないので」
「了解です。では採精室で、これに出して来て」
といって医師は容器を桃香に渡した。
「えっと出すのは千里ね」といって桃香は千里に容器を渡し直す。
「あ、勘違いした。ごめん」と医師が照れ笑いしながら謝る。
 
千里は恥ずかしそうにしながら容器を持って採精室に入る。桃香は医師から色々と質問をされた。ふたりは結婚するつもりなのかとか、どういう性生活をしているかとか、千里が去勢あるいは更に性転換した場合、ふたりの関係をどうしていくつもりなのか、などといったことも尋ねられたが桃香は正直なところを話した。医師はそれをパソコン上の電子カルテに打ち込んではいたが、世間的な基準では拒否されそうな精子凍結保存の動機について、医師は特に咎めなかった。桃香は受精・出産をこちらの病院でお願いできますかと尋ね、医師は「ええ、いらしてください。いつでも歓迎です」と初めてにこやかな顔で答えた。
 
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その時、採精室のドアが開く。
「終わった?」と桃香が尋ねたら「ごめん。うまく出来ない」と千里が言う。
「実は私もう2年以上オナニーってしたことなくて」
 
「手伝ってあげる」と桃香。
「えー」と言っている千里の背中を押して一緒に採精室に入る。
「だって私がもらう精子だから、私の愛で出してあげなきゃ。はいパンティ脱いで、横になって・・・あ、スカートは脱がない」
「うん」
 
桃香は千里のスカートの中に潜り込むと、千里のそれをいきなり口に咥えた。
「え!?」
「男の子にクンニされてると思うといいよ」桃香はいったん口を離して言った。
「分かった。妄想してみる」
 
ほんとに立たないな、これ、と桃香は思った。成人式の翌日にHした時もインサートできる堅さにするのに、かなり時間がかかったことを思い起こした。あの時は千里が初めてだからかなとも思ったのだが、やはりそもそも千里の男性機能はかなり弱いのだろう。桃香はそれが少し大きくなってきたところで今度は手でつかむと、そのまま押さえつけて小さな円を描くように回し始めた。
「あ・・・」
「千里は女の子。これはクリちゃん。だから女の子みたいにぐりぐりしてあげるよ」
「うん」
 
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桃香はかなり長時間それをやっていたが、結局千里のは最後まで硬くならないまま、逝ってしまった。出てきたものをしっかり容器に受け止める。けっこう濃い。よしよし。でもこれ男子としてのセックスはかなり無理っぽいなあと桃香は思った。むろんレズの桃香としてはそのほうが千里に対して萌えてしまうのであるが。「できたね」「ありがとう」
桃香は千里に熱いキスをした。千里は放心状態だ。桃香も腕がいたい。そっと千里のパンティを上げてあげる。スカートも整えてあげた。
しかしこれをあと5回繰り返すのか。あはは。
 
桃香は千里の小さなバストを撫でてあげた。本人の気持ちに反して男性的なことをさせてしまったので、女性的な部分を触ってあげることで、気持ちが落ち着くかなと思った。
 
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やがて千里が立てるようになると採精室を出て、ふたりで容器を医師に渡す。
「でもカップルで協力して出す人多いですよ。ふたりの子供だからふたりで作らなきゃという感じみたいです。だいたい仲睦まじい雰囲気のカップルね。あなたたちみたいに」
千里は照れている感じであった。
「そのためにここの採精室は防音仕様になってますから」
と女医さんは笑っていた。桃香たちが使った採精室の隣の採精室が使用中の表示になっていた。
 
桃香は千里の精子の活動性に懸念があったのでその件を言うと女医は、活動性の高い精子だけ選別して使いますから大丈夫ですと言った。顕微鏡でチェックしていたが「確かに平均的な男性の精液に比べると活動的な精子の率は低いですけど、このくらい活動的な精子があれば問題ありません」と笑顔で言った。
「人工授精の依頼に来る不妊で悩むカップルの場合、ほんとに活動性の悪い精子しかないケースも多いんですよ」と言っていた。
「どうしてもふつうに受精ができない場合、顕微鏡で見ながら強引に結合させる場合もあります。でも、あなたたちの場合はふつうの方法で行けますね。ところで生まれてくる赤ん坊の性別は選択しますか?」
「いえ、自然に任せます」
「分かりました」
女医はその件をカルテに打ち込む。
 
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「性別って選択できるの?」と千里が尋ねる。
「X精子とY精子は比重が違うから遠心分離器で分離できるんですよね」と桃香。
「ええ。男の子がいいとか女の子がいいとか希望するカップルもいるので。むろん100%うまくいくとは限らないので、あくまで男の子の確率を高める、女の子の確率を高める、方法だとおことわりはしているのですが」
「Xの方が重いんでしたっけ?」
「そうですそうです」
「私を作ったY精子とか、ふつうのY精子より重かったかも知れないなぁ」
などと千里は言っている。
「ちなみにうちでは出産前の胎児の性別判定はしませんし、性別が希望と違っていたことを理由とする中絶手術も拒否しています。まあ他の病院でやられたらどうしようもありませんけど」
と女医は言っていた。
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