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■少女たちの卒業(12)

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それで駅前のスーパーで買物してから帰ろうかなと思ったら、留萌駅から若い女性が出てくる。
 
「こんにちは」
「こんにちは」
 
と挨拶する。それは先日別れたばかりの青沼晋治の姉・静子(せいこ)であった。
 
「おごってあげるから少し話しない?」
「はい」
 
千里は晋治と別れたことであれこれ言われると嫌だなと思ったものの、一緒にモスバーガーに入った。
 

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静子は晋治との件に付いては、むしろ彼が二股していたことを千里に謝った。
 
「あの子、もてるし、優しい性格だからさ。優しい男って女からの誘いを断り切れないから、二股になりやすいのよ」
 
「ああ、それはそうかも」
と千里も納得する。彼が小学生の頃も彼のまわりにはいつも何人も女の子が群がっていて、千里はずいぶん嫉妬したものである。旭川では千里の目が無い分、きっともっと・・・
 
静子とは色々な話をした。静子は東京の△△△大学に合格したので4月からは東京暮らしである。千里も東京方面に行きたいと思っていると言うと、東京方面の大学に関する情報を色々教えてくれた。
 
「でも千里ちゃん、セーラー服似合ってる。それで通学するの?」
「もちろんです。私、女の子だもん」
「うん。頑張れ、頑張れ。最近は学校側もわりとそういうのには寛容みたいだよ」
「だったらいいのですが」
 
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「でもセーラー服はもう調達したのね」
「はい。父のお友達の娘さんが着てたのを譲って頂いたんです」
「千里ちゃんがセーラー服、まだだったら、私が着ていたのでもよければあげようかと思ってたんだけどね」
「すみませーん」
 
「でも洗い替えにもう1着持っておく?」
「頂けるのなら欲しいです」
「よしよし。あげるよ。千里ちゃん細いから、私のでは少し大きすぎるかも知れないけど、千里ちゃんも背が高いから何とかなるかも」
 
静子さんも背が高い。晋治は180cmくらいあるけど、静子さんも170cmはある。お父さんは190cmくらいあるから、遺伝なのだろう。静子さんは、中学時代はバレー部に居たと聞いている。
 
「それと、ついでにこれまで私が着ていた旭川N高校の制服もあげるね」
と静子は悪戯っぽい笑顔で言った。
 
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「N高校ですか?」
 
「千里ちゃん、東京方面の大学に行きたいんでしょ?だったら、留萌の高校からでは無理だよ。札幌か、せめて旭川の進学校に行かなきゃ。でも公立は域外からの枠が小さいから、かなり優秀でないと通らない。そのレベルまで上げるのが、留萌の中学では厳しい」
 
「上位大学目指してる子と、そういう話を最近しました」
 
「すると旭川の私立というのが狙い目。その場合、旭川の私立で進学校というのは、晋治が行っているT中学高校、それからE女子中学高校、そして共学のN高校の3つ。ところがT高校は男子高だから、心が女の子である千里ちゃんは行きたくない」
 
「行きたくないです。晋治さんから、うちの中学に来て野球部に入らないかと誘われましたけど、私絶対坊主頭とか嫌だからと断りました」
 
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「だよね。でもE女子高は戸籍上は女の子でない千里ちゃんを入れてくれない」
 
まあその問題はクリアしている(逆にT高校には入れなくなった)のだが、自分が女になったことを知られると晋治から復縁を迫られて面倒だと思ったので、何も言わなかった。
 
「そうなると、千里ちゃんが進学できるのは共学のN高校だけ」
「そうだったのか!」
と千里は驚いた。
 
「でも私、N高校に合格するほどの頭が無いし、うちの家には私立に行かせてもらえるお金もないんですけど」
 
「学力は中学の3年間で鍛えればいい。そして特待生を目指そう」
「あ、その話は出てました」
「上位で合格すれば特待生にしてもらえて。授業料は不要だったり、公立程度で済む。そもそも、N高校の上位に居ないと、東京の大学を目指すのは厳しい」
 
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「そっかぁ」
「だから勉強頑張ろう」
「はい!」
 
「ということで、N高校の制服もあげるよ。今荷物が混乱してるけど、あとで探し出して持って行ってあげるね」
「すみませーん」
 
それて千里は、晋治の姉から、S中学の女子制服、旭川N高校の女子制服を頂けることになったのである。
 

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静子は23日(日)に、わざわざ千里の自宅に寄り、制服(S中の女子夏服冬服・旭川N高校の女子夏服・冬服・指定コート)を渡してくれた。
 
「なんかもらったの?」
とビールを飲みながらテレビで高校野球を見ていた父が訊く。
 
「友だちのお姉さんから、中学時代の制服をもらったんだよ」
「お姉さんなら女子制服じゃないのか?」
「2年後に玲羅が着ればいいんじゃない?」
「あっそうか」
 
しかし玲羅が言う。
「私にはまだ早いから、お兄ちゃんその制服着てみたら?」
「男が女の制服着てどうする?」
「私の代わりに試着よ」
 
「じゃちょっと着てみようかな」
と言って、千里は奥の部屋に入ると、先日から何度も着ている、神崎さんからもらったほうのセーラー服(と千里は思っているが、実は千里のサイズに合わせて作られた新品)を取り出し、ブラウスも着てから上下着用した。それで居間に出ていく。
 
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「あら、ほんとに女子中学生みたい」
と母が言う。
「兄貴、そのまま中学に通ったら?」
と玲羅。
 
父はチラッと女子制服姿の千里を見たが
 
「誰か千里のお友達でも来てたのかと思った。違和感無いけど、やはり髪が長いのが問題だ。その髪さっさと切れ」
と父はビールを飲みながら言った。
 
「入学式の日の午前中に切るよ」
と千里は答えた。
 
しかし母は千里がちゃんと女子制服を着た姿を父に見せ、父が機嫌が良い時だったのも幸いして、特に怒らなかったことに安堵した。先週の漁獲が良かったのもあるのだろう。父が機嫌良さそうなので、母は、セーラー服を着た千里と父が並んだ写真まで撮ったが、父は
 
「まるでもうひとり娘ができたみたいだ」
 
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と言っていた。この日は特に機嫌が良かったようである。
 

3月31日(月)は、父は早朝出港していったが、母の勤め先が電気系統の故障で臨時休業になった。それで玲羅が『リロ・アンド・スティッチ』の映画を見たいと言ったので、母の運転する車で旭川に出た。
 
映画を見た後、フードコートに行ったら、留実子と鞠古君、それに鞠古君のお姉さんの花江さんと遭遇した。花江さんは旭川の進学校、E女子高に通っているが
 
「面白いアプリがある」
と言って、みんなの写真を撮ると“髪型変更”をしてみせた。
 
鞠古君のロングヘアーは物凄い違和感があった。
留実子のロングヘアーは、一応女の子に見えた。
千里の坊主頭は凄い違和感である。
 
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「しかし性別なんて、見た目だけでは分からないよねー」
などという話もした。
 
「もしかしたら私が男かも知れないし」
と花江。
 
「知佐は実は女かも知れないし」
「花和君ももしかしたら女かも知れないし」
「千里ちゃんも男かも知れないし」
「玲羅ちゃんも男かも知れないし」
 
「まあでも最終的には自分の性別は自分で選べばいいんですよ」
と花江が最後に言ったのには、千里は大きく頷いて同意した。
 
留実子と鞠古君はどちらも何か考えているようだった。
 

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4月1日(火).
 
この日は暖かく、気温が(プラス)10℃くらいまで上がった。
 
千里は、この日まで合宿中のN小ソフト部に呼ばれ、最後の紅白戦“Bチーム”のピッチャーを務めた。つまりAチームの子たちと対決する。
 
1月の合宿では、千里の球に何とかバットを当てたのが尋代と俊美のみで、他の子はかすりもしなかったのだが、この日の登板で千里が1月の2度目同様“わりと本気”で投げると、その尋代がヒット、俊美は外野フライを打ち、また他の子たちの中で5人が何とかバットに当てることができて、かなりの進化が認められた。
 
「1月からかなり進化してる」
「はい。毎日たくさん練習しました」
 
「じゃ、今のは前哨戦。次が本番」
「え〜〜〜!?」
 
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それで千里は、とうとう“マジ本気”で投げた。千里のボールがスピードがあるし重いので、Bチームのキャッチャー美真では受けきれない。それで千里と同学年でこの日たまたまサポートに出てきていた麦美がマスクをかぶった。
 
すると今回はほとんどの子がバットに当てることもできない。ひたすら三振の山を築く。二巡するように特別に6回までやったが、尋代が2度目の打席で、何とかショートゴロを打っただけで、17三振という凄い内容になった(Bチームの子たちはそのショートゴロの処理をした以外は、守備ではほぼ立ってただけ)。
 
「合宿あと1週間続ける?」
「すみません。夏休みに頑張ります」
 
N小の勝利はまだ遠いようである。
 
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「千里、やはりS中のソフト部に入ってよ」
と麦美が言うが
「パス」
と千里は答えた。
 

N小ソフト部の練習が終わってから、千里が買物をしようとバスで駅に出たら駅前で、見たことがある気がするものの、誰か分からない女の子(?)と遭遇した。
 
髪はセミロングで、濃紺のセーターに黒いロングスカートを穿いている。身長は高い。こんな身長の高い子はそう多くないはずなのに、誰か分からない。ひょっとして、誰かの女装だったりして??と考える。
 
千里が自分を見て悩んでいるので“留実子”は
「千里、もしかしてぼくを認識できない?」
と言った。
 
「るみちゃん〜〜〜!?」
「やはり分からなかった?」
 
「その髪、どうしたの?そんな長い髪のるみちゃん初めて見た」
「これはウィッグだよ〜」
と言って、留実子は頭に着けていたウィッグを外してみせる。
 
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「うっそー!?」
 
留実子は頭を五分刈り!にしていた。
 
「いや、ぼくの髪はどう見ても短すぎて女子としては違反だと言われてさ。でも入学式までにはとても伸びないじゃん。それでウィッグを買ってもらった。でもウィッグ着けてるなら、下の地頭(じあたま)は髪の長さ気にしなくていいじゃん。だから短くしてみた」
 
千里は留実子のお母さんに同情したくなった。
 
ちなみに留実子はいつも床屋さんに行っている。千里はいつも美容院に行っている。
 

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「これ人毛じゃなくて化繊だから、汗掻いたら洗えるし」
「るみちゃんは洗えるのでないとダメだと思う」
「だから授業中はこのウィッグつけとくよ」
「部活の時とかは外すんだ!?」
「そうそう」
と言って、留実子は楽しそうであった。
 
でもこのウィッグというアイテムで、留実子は結構“心の落とし所”を見つけたんじゃないかな、と千里は思った。
 
留実子はセミロングのウィッグを再装着する。
 
「でも今日はスカートなんだね」
 
留実子のスカート姿もまた珍しい。
 
「あんたもひょっとしたら女かも知れないから、少しスカートに慣れなさいと言われたから、これで出て来た。思わず転びそうになった。スカートってほんと歩きにくい」
などと留実子は言っている。
 
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「ところでさ、千里」
「うん?」
「さっきから、ぼくトイレに行きたくて。でもひとりでは不安で」
 
留実子は今日はスカートを穿いているので、これでは男子トイレに入れない。ひとりで女子トイレに入っても問題無い気がするけど、本人としては、確かに恐いのかも。過去に何度も通報されてるからね〜。
 
「じゃ一緒に入ろう」
と笑顔で言って、千里は留実子の手を握ると、一緒に駅の女子トイレに入った。
 
 
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少女たちの卒業(12)

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