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■娘たちの転換ライフ(3)

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《もしかしたら理香子ちゃんの下着を勝手に着ていたのかな》
 
《その可能性はあるね。でも理香子は男の子の下着を着たがるのよ。だからこちらでもブリーフ穿かせてる。でも学校に行く時はショーツを穿きなさいと言っている。本人もそれは我慢すると言った》
 
《こちらは親が女の子として育てていたのならと考えて、保育所にも女の子として行かせているし、4月からは小学校にも女の子として通わせるつもりでいた》
 
《私はそれでいいと思う。本人は自分は『しずか』だと言っているのね?》
《そうなのよ》
 
《実際、函館に来た時も和志ちゃん、女の子にしか見えなかった。その時は男の子の下着を着ていたけど。あ・・・もしかしたら、あの時に理香子に着せようとして私が買ってあげた女の子下着を和志が着て、和志用に買ってあげた男の子下着を理香子が取ったのかも》
 
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《あり得るね。だから下着には名前が書かれていなかったのか》
 
《でも和志の行方が分かって良かった。後は織羽が見つかれば。正直な話大人が自分たちの不始末でヤクザとかに追われるのは自業自得だけどさ、子供は巻き込まないで欲しいよ。亜記宏たちがいなくなった後、子供3人とも置いていってくれたらよかったのに、とこちらみんなで言ってたんだよ》
 
《3人も置いて行くのは負担掛けて悪いと思ったのかもね。それで1人は私の所に置き去りにしたのかも。亜記宏は私に酷いこと言ってたから、私の前には顔出せなくて子供だけ置いて》
 
《そうかもね》
 
桃川は思った。網走でしずかを保護した時、たぶん近くに亜記宏と実音子がいて和志=しずかが私に保護されるまで見ていたのではないかと。
 
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でもなんでしずかは私を『ママ』と呼ぶのだろう??
 

23時前に車は東京に到着する。予約していたホテルに入り、チェックインしてとにかく寝た。
 
21日朝、起きてから美智(春美)はしずかに訊いた。
 
「しずかさ、実は亜記宏と実音子さんの子供の和志でしょ?」
 
しずかはしばらく何も言わずにじっと美智を見つめていた。そして言った。
 
「わたしはももかわしずか。ママはももかわみち」
 
美智は微笑んでしずかを抱きしめた。
 
「うん。いいよ。あんたはしずか。私の娘だよ」
と言うと
「えへへ。ママ。仲良くしようね」
「うん」
 

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美智はこの日、初めてしずかにタックをしてあげた。今は保育所なので何とかなっているが、小学校に入ると、体育の着替えの時間などでどうしても下着姿をクラスメイトに曝すことになる。その時、ショーツにおちんちんのもりあがりがあるのはまずい。
 
「これやるとおしっこの飛ぶ方向が違うからトイレ気をつけて」
「やってみる」
 
と言ってしずかはトイレに入った。そして出てくると言った。
 
「これすごくいい!わたし、ほんとに女の子になったみたい」
「あんた女の子でしょ?」
「うん!」
 
としずかは嬉しそうに言った。
 
取り敢えずタックはこの東京に居る間だけとし、その後はまた少しずつお試しでやってみようということにした。
 
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「でもママ、わたし、しゅじゅつしたら女の子になれるの?」
「うん。女の子になる手術はあるけど、こんな小さな子は手術してもらえないんだよ。しずかが高校を卒業したら、手術できるかもね」
「ふーん。だったら、わたしはやくこうこうそつぎょうしたいな」
「その前に小学生にならなくちゃね」
「えへへ」
 

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「でもママのおまた、ほかの女の人とは、すこしちがうきがする」
「私もしずかみたいに元は男の子だったんだよ。でも女になりたかったから、ちんちんとタマタマは取っちゃった。でもまだ本当の女になる手術を受けてないんだよ」
「そのうち、ほんとうの女になるの?」
「うん。その内ね。しずかとどちらが先に女の子になるかな」
「ママがさきでいいよ。そのあとで、わたしが女の子になりたい」
「そうだね。そうしようか」
 
と美智は答えたものの、実際にはこの子はそのうち亜記宏に返さなければならないのではないか。亜記宏たちの元に行ったら男としての生活を強いられるのではと考え、可哀相な気がした。
 
しずかが本当の私の子供だったら良かったのに。
 
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でも私は生殖能力を放棄しちゃったからなあ。
 
美智は高校1年の冬休みのことを思い出していた。お母さん(真枝先生)が色々調べてくれて旭川に割と年齢のごまかしの利く病院があると聞き、そこで去勢手術したこと。医者から「もう子供は作れなくなります。いいですか?」と念を押され、自分は同意して手術を受けた。念のためと言われて精液を取ったけど、もう長期間経っているし、既に廃棄されたであろう。
 

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21日は7時頃、八雲が雨宮先生に電話するもつながらない。困って新島さんに連絡すると色々調べてくれたようで、この日の夜20時のテレビ番組に生出演することになっているから、リハーサルのため16時くらいにテレビ局に入って欲しいと言われた。それまでPVについて打ち合わせしたいので10時に青山のスタジオに来てくれということだった。
 
それで朝御飯を食べてから8人で出て行く。スタジオに入ったのは9時半頃である。ロビーで新島と落ち合う。
 
「ごめんなさいね。雨宮が私にも田船とかにも全然話してなかったみたいで。でもここのスタジオはチェリーツイン用に押さえてあったんですよ」
 
「よく調べてくださいましたね!」
「まあ使う所はだいたい決まっているから。でも雨宮はいったいどういう感じのPVを作るつもりだったのか」
と新島も悩んでいる。
 
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9:45くらいになってから毛利がやってくる。
 
「やあ、みんなもう来てるね。これPVの企画書」
と言って、新島と大宅に1部ずつ渡す。
 
「あんたが関わってたんだ!」
と新島が驚いている。
 
「とりあえず2部だけキンコーズでコピーしたんだよ。少しみんなで検討してから確定させた上で、全員に配布すればいいかなと思って」
と毛利は言っている。
 
「これ毛利君が書いたの?」
と新島が訊く。
 
「物凄いラフなプランを雨宮先生からもらった。それを昨日1日掛けて具体的な台本に仕上げた。実は今朝4時頃まで調整続けてたんだけど」
 
「お疲れ様!」
 
「一応撮影に必要な大道具・小道具などは手配している」
「さんきゅ、さんきゅ」
 
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10時になったので、係の人が案内に来たが、新島がいるのを見ると
 
「おはようございます、新島先生。鳳凰ですので」
とだけ言って鍵を新島に渡した。
 
「おお。いいスタジオを取ってある」
と言って新島がみんなを連れて6階まであがる。
 
「可愛い!」
と八雲と陽子が言った。気良姉妹も何だか笑顔である。
 
この部屋の壁に描かれている鳳凰の絵が物凄く可愛いのである。
 
「ここはこの絵が可愛いというので、女性アーティストには人気の部屋なんですよ」
と新島が説明する。
 
「ここ凄くいいスタジオみたい」
と言って大宅が設備を見ている。
 
「一般のアーティストが利用できるスタジオでは、最高級の部屋だから」
「へー!」
「7階以上は大物アーティストにしか貸さないんですよ」
「なるほどー」
 
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「仮眠室も付いているから、泊まり込んで一週間とか掛けて作品を完成させる人もいますよ」
 
「それはあまりやりたくないなあ」
 
「そういえば、その女の子は?」
と新島が訊く。
 
「すみません。私の子供なんですけど、付いてくるというもので東京まで連れてきたんですよ」
と桃川が言う。
 
「ああ、いいですよ。それこそ仮眠室でビデオとか見せててもいいだろうし」
 
ところが毛利がその子を見ていて言い出した。
 
「この子もビデオに出そうか?」
「え?」
 
「いや、なんかこの子って天使みたいな感じがしない?」
と毛利。
「ああ。凄く優しい顔してるよね」
と新島。
 
「すみません。事情があって、この子、あまり顔をさらしたくないのですが」
と桃川が言う。
 
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「あ、だったら、この子にもマスクでもつけてもらって、少女Zということにするのはどう?」
 
「ほほぉ!」
 
結局その場の話し合いで、しずかには天使のような背中に羽のついた衣装を着せ、顔は猫のお面で隠して映像の中に入れることになった。
 
「雪の降る中、光が射してきて、そこに天使が現れるんだよ」
と毛利は説明した。
 
「命を与える天使って感じだね」
と新島は言った。
 
ああ、しずかってそういう子かも、と桃川は思った。
 

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2月21日、千里たちは関東クラブ選手権の2日目に入る。この日は準決勝と決勝が行われる(他に5−8位の順位戦も行われる)。
 
準決勝の相手は茨城1位のサンロード・スタンダーズである。ここは昨年の関東クラブ選手戦で準優勝している所である。
 
浩子/千里/国香/麻依子/誠美というオーダーで始める。
 
向こうはこちらをある程度研究していたふしがあった。しかし千里や誠美の破壊力は少々研究したくらいで停められるものではない。結局一方的な展開となって、第1ピリオドを12-21で終える。
 
ここで相手は方針を変えてきた。
 
千里や誠美の攻撃は停めようとしても無駄と割り切り、取られても取り返すという方針で来たのである。リバウンドを全部誠美に取られてしまうので、確実性を狙い、できるだけ近くからシュートするようになる。
 
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それで結果的にここから先は点の取り合いとなって、どんどん電光掲示板の点数が増えて行く。しかし点の取り合いなら、千里も麻依子も大好きな戦い方である。そして千里の得点は3点なので、どうしてもこの差が出てくる。
 
最終的には86-102で勝利した。
 

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もうひとつの準決勝は群馬1位のプレアデス・スターズと、東京の江戸娘の対決で、接戦の末、江戸娘が3点差で勝利した。
 
男子の準決勝を経て、女子の決勝が行われる。
 
相手の江戸娘とは、シェルカップと関東選抜で対決しており、いづれもローキューツが勝ってはいるものの、それだけに向こうはこちらを充分研究しているだろう。有力大学、有力高校の出身者が多いし、実業団などにいたメンバーも数人いる。
 
江戸娘は秋葉さんが千里のマーカーになったが、彼女は千里を「完全封鎖」はしなくてもよいという戦略で来た。千里の動きを制限して完全フリーにさえしなければよいという考え方である。千里にピタリと秋葉さんが付いていれば、浩子もこちらにパスしにくい。必然的に麻依子や国香、来夢や薫を使ったプレイになりがちである。秋葉さんの狙いはそこにあった。
 
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そして江戸娘は全てのシュートをかなり近い所から撃った。これはリバウンド争いになれば誠美に全部取られてしまうので、確実に得点しようという戦略である。
 
これって日本代表が外国チームと対戦する時の戦い方に似てるじゃんと千里はプレイしていて思ったが、まさに江戸娘はそういう戦い方で、個人的な技能の高い選手のいるローキューツに対抗してきたのである。
 

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この結果試合はハイスコア気味で、しかもシーソーゲームとなった。前半を終えて43-45と2点差である。
 
「向こうの術中にハマってるなあ」
「しかし現時点ではこちらには対抗策が無いよ」
「取り敢えず競っているから、ひとつひとつの攻撃を確実に」
「結局向こうの戦い方をこちらにも強制されてしまうんだな」
「仕方ない。ここは耐えて頑張るしかない」
 
後半は浩子が消耗していることもあり、最初夢香をポイントガードに起用して夢香/千里/来夢/薫/誠美 というラインナップで出て行く。この試合では誠美はもう下げられない。誠美がいなければ、一気に試合は向こうに傾いてしまうだろう。
 
第3ピリオドもずっと接戦が続く。千里もかなり細かく走り回って一瞬フリーになる時はあるのだが、その瞬間に千里に到達するようなパスを出せる人がいないので、結果的にパスカットされてしまう。秋葉さんのスタミナは物凄かった。
 
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結局第3ピリオド終わって66-68と点差は2点のままである。
 

第4ピリオドになっても、秋葉さんのスタミナは衰えない。この人、スタミナだけなら、日本代表レベルだぞと思う。
 
そのまま試合はもつれ、終盤こちらが6点差にしたものの、向こうも確実に2点取って4点差に戻した所で、疲れの溜まっている薫から神田リリムが絶妙のスティールを決めそのまま得点に結びつけて2点差に迫る。そしてその次のこちらの攻撃で国香のシュートが外れ、そこからの逆襲速攻で上野万智子がブザービーターとなるスリーを放り込み、土壇場で逆転。
 
向こうが91-90で勝利をおさめた。
 
スティールされた薫、シュートを外した国香が
「ごめーん」
と謝っていたが、
「いや、それまでにもっと点差を付けられなかったから」
と千里は言った。
 
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「今回は完璧に向こうの作戦がち」
と麻依子も悔しそうに言った。
 
しかし試合後秋葉さんはベンチに戻ると、そのまま倒れ、チームメイトに介抱されていた。千里を封じるために全力を出し切ったのである。
 

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