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■娘たちの転換ライフ(2)

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天津子が着替え終わってそのことを告げるとヤクザたちが振り返る。
 
「もしかして姐御、女子高生さん?」
「女子中学生だけど」
「え〜〜〜〜!?」
「取り敢えず男子中学生ではないと思うし」
 
「いや確かに女子でした。あっ」
「うふふ。私の裸見たもんね」
「すみません。その件は内密に」
 
「あ、そうそう。あんたたちちょっと荷物持ってくれない?」
「はい」
 
それで天津子は先日倒した熊の肉を保管していた場所に彼らを連れて行く。
 
「こないだ襲ってきたヒグマを倒したのよ。その肉をまだ食べ終えてなかったんだよね。もう山を下りるから、この肉はあんたたちにあげるよ」
 
「それはありがとうございます。頂きます。かなりの量ですね。しかしヒグマですか。昇陽さん、猟銃とかなさるので?」
 
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「ううん。素手で倒したけど」
「へ?」
 
「ヒグマくらい素手で倒せるでしょ。象なら自信ないけど」
 
ヤクザたちは顔を見合わせていた。
 
「いや、姐御と戦闘にならなくて良かったようですね」
「そうね。あんたたち、私の食料にならなくて良かったね」
 
と天津子は笑顔で言った。
 

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2010年2月10日(水)、チェリーツインは最初のアルバム『スクリーム』および3枚目のシングル『雪の光/命の光』をインディーズレーベルの横浜レコードからリリースした(流通は★★レコード)。
 
この『雪の光』は発売の少し前からFM局などが掛けてくれて、その美しいメロディーと物悲しい歌詞が話題を呼ぶ。更にカップリング曲の『命の光』に関しては、聴いているだけで涙が出てきたという声が多数あがる。
 
それでインディーズであり、宣伝らしき宣伝もしていないのに、この曲は発売以来、取り扱っている全国のTABIYAおよびHNSレコードでどんどん売れ、またgSongsなどのダウンロードストアでも物凄い数のダウンロードがあった。それで、その週の売上ランキングで1位になってしまった。これに刺激されて、アルバムや、前のシングル2枚も売れるという波及効果も出た。
 
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2月18日、雨宮三森が牧場に電話して来た。オーナーの奥さんが電話を取ったがちょうど牧場内に八雲がいたので電話を代わる。
 
「おはようございます、雨宮先生。お待たせしました。チェリーツイン付属大道具その2の桜木です」
 
「ああ。少女Yか。大道具その2というのはなかなか立場を分かっている」
「先生のご命名ですので」
「私、そんなこと言ったっけ?まあいいや。それでね。今度の日曜日にテレビの生番組にチェリーツインを出してもらうことになったから、全員で21日の朝までに東京に出てきて」
 
「あ、はい。ありがとうございます」
「出てきたついでに『雪の光』『命の光』ほか数曲のPVも撮影するから」
「わあ、凄い」
 
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「それでね。今回、苫小牧から大洗までのフェリーを使って欲しいのよ」
「なんでフェリーなんですか?」
「その船上で、新しい曲を4曲作ること」
「え〜〜!?」
 
それでスキーに行っていた大宅・秋月を急いで呼び戻す。八雲がバタバタとフェリーのチケットの手配をする。
 
「春美さん。しずかちゃんはどうします?」
と八雲が桃川に訊く。
 
「しずか、私たち東京まで行くけど、お留守番してる?それともママと一緒に来る?」
と桃川は本人に訊く。
「ママと一緒がいい」
 
「じゃ連れていく」
「だったらそれで手配します」
 
「未就学児は無料ってことは?」
と陽子が訊くが
 
「これだけ身体が大きいと、おとなと一緒のベッドに寝るのはお互い辛いよ。だから料金払ってベッド1つ確保した方がいい」
と八雲は言った。
 
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「ああ、確かに」
 

それで戻って来た大宅・秋月と一緒に19日の午後、車2台に分乗して苫小牧まで行く。これは約4時間の行程で22時頃に苫小牧に到着した。秋月と大宅が各々の車に付いて乗船する。他の6人は歩いて《さんふらわあ》に乗り込む。
 
フェリーは夜中の1:30に出港する。しずかは苫小牧に到着する時には既に寝ていたのだが、乗船する時だけ起こして客室に入る。そして女性専用客室で桃川と隣のベッドで寝た。
 
翌20日朝は牧場の生活習慣から全員朝5時半に起きる。しずかもぐっすりと寝て元気である。初めての長距離フェリーの旅をおもしろがっているようで、桃川を連れてフェリーのあちこちを探検して回っていた。
 
「大宅さん、秋月さん、曲は出来てます?」
「今悩んでる」
 
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雨宮先生からは船上で4曲書けと言われている。
 
「春美ちゃんも1曲くらい書いてよ」
「じゃ1曲考えておくね」
 

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大洗には20日の19:45に到着した。長旅で疲れたので、一休みしようというので、目に付いたファミレスに入ったら、何だか若い女子(?)の集団がいる。その中に醍醐春海が居るのを見て、桃川はびっくりして手を振る。彼女も笑顔で手を振り返してきた。
 
彼女たちは女子バスケットチームの選手達ということで、大洗の隣のひたちなか市で大会があっているので来ているということだった。今日の試合で全国大会に行けることが確定したというので「おめでとうこざいます」と言った。
 
結局近くの席に座って、お互いに交款する感じになる。桃川は選手たちの中に数人男子が混じっているのは何だろうと思ったのだが、その男子と思った人たちも実は女子選手であったと聞き、少し驚いた。ついでにこちらの八雲も男子と思われた。まあ八雲の場合は男の服を着ていて髪も短髪なので仕方ないという気もする。しかも堂々と男子トイレ使っているし!
 
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「立っておしっこするのって便利だよ。みんなもちんちん付けてみない?」
などと本人はよく言っている。
「ちんちんってあると面倒そうだからいいや」
などと陽子は言っていた。
 
「時々思うけど、八雲ちゃんと陽子ちゃんって恋愛関係は無いんだよね?」
「貞操の危機を感じたことはある」
「ごめんごめん。あれは酔ってただけ」
「うーむ・・・」
 
ふたりは未成年なので、オーナーなどの居る所では絶対に飲酒はさせないのだが、八雲はけっこう隠れて飲んでいるようである。タバコはそれが原因で高校を退学になったので、二度と吸わないと言っているが、お酒はどうも味をしめている感じだ。
 

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その日ファミレスでは、チェリーツインの活動のことや、醍醐たちのバスケチームの活動のことなどで、大いに話が盛り上がったのだが、その途中で近くを通りかかったお年寄りの女性がよろけてウェイトレスさんにぶつかり、持っていたコップの水がしずかと、それをとっさにかばってくれたバスケチームの長身の女性に掛かるという事件が起きる。
 
それで桃川は急いで車からしずかの着替えを取ってきて、トイレに行って着替えさせる。むろん女子トイレを使うのだが、桃川は自分もしずかも実は遺伝子的には男なんだよなあと思ったら、つい笑みが出てしまった。
 
トイレは中に個室が更に2つある形式だが、子供だしと思って個室には入らず洗面台の前で着替えさせた。万一他の客にしずかのおちんちんを見られても、子供なら咎められないだろう。
 
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それでトイレから出て席に戻ったのだが、そこに桃川たちに続いてトイレに行った醍醐春海が出てきて
 
「桃川さん、洗面台の所にこれあったんだけど」
と言って、しずかの着替えを持ってくる。
 
「きゃー。ごめんなさい。気づかなかった」
と桃川。
 
「ああ、ハルちゃんは忘れ物が多いから」
と秋月が言っている。
 
「ハルちゃんは傘が壊れるってことがないらしいね」
「そうそう。壊れる前にどこかに忘れてくる」
 

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そんなことを言っていた時、しずかの着替えを眺めていた醍醐がこんなことを言った。
 
「このタグに書いている名前ですけど、左書きと右書きがあるんですね」
 
「ん?」
 
横から覗き込んだ他のバスケ女子も「あ、ほんとだ」と言っている。
 
「この上着のタグには、右から『しずか』、シャツのタグには左から『しずか』と書いてある」
 
「あれ?ほんとだ」
と大宅も近寄って見て言う。
 
「ハルちゃんって、わりと適当だもんね」
と大宅。
 
などと言われるが、桃川はなぜ左右混在しているのだろうと疑問に思った。よく見てみると、今着替えたしずかの上着は、網走でしずかを保護した時に着ていた服で、シャツの方は新しく買ってあげた下着である。
 
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その時、別のバスケ女子がこんなことを言う。
 
「この上着のタグはうっかり左から読んだら『しずか』じゃなくて『かずし』になっちゃうね」
 
「『かずし』じゃ男名前だから、そういう間違いは起きないよ」
 
それでみんな笑っていたのだが、その言葉に春美は激しい衝撃を受けた。
 
かずし!?
 
それって、それって・・・・まさか、亜記宏と実音子さんの間の息子の和志ってことはない??
 
自分はあの3人の子供は見ていなかった。しかし亜記宏は私の写真を持っていただろう。だから、この子は私のことを知っていた。
 
え?でも和志なら、こないだおばあちゃんと美鈴さんが連れて牧場に来たじゃん。あれが和志なら、この子は一体誰?
 
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桃川は頭の中で様々な思考が入り乱れる中、呆然とその場の様子を眺めていた。
 

バスケガールたちと別れ、21時すぎにファミレスを出て車に戻る。
 
秋月の三菱チャレンジャーは、秋月と大宅が交代で運転して後部座席に気良姉妹を乗せる。山本オーナーのトヨタ・クラウン・マジェスタは八雲と桃川が交代で運転するが、八雲が運転する時は助手席が陽子で後部座席は桃川としずか、桃川が運転する時は、助手席が八雲で後部座席は陽子としずかである。これはレズっ気のある八雲が、何かの間違いでしずかに変なことをしないようにする用心である。実際八雲は可愛い女の子を見ると欲情を感じるなどとしばしば言っている。脳の出来がかなり男っぽい。
 
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ファミレスを出た後は先に八雲が運転してくれたので、桃川は後部座席で、しずかを寝かせ付けてから、そのしずかの写真を美鈴にメールしてみた。
 
《これ和志ちゃんじゃん!どこに居るの?》 
 
《親とはぐれた『女の子』を1月に保護していたんです。これやはり和志ちゃんなの?でも、こないだ牧場に美鈴さんたちが連れてきた子が和志君かと思ってた。だって男の子だったし『かっちゃん』と呼んでましたよね?》 
 
《美智ちゃん、もしかして、亜記宏の子供の顔知らなかったの?》 
 
《亜記宏の結婚以来、向こうとは実質的に切れていたので。写真も見ていなかった。お母さんの葬式の時も亜記宏だけ来て、子供たちと実音子さんは来てなかったし》 
 
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《こないだ牧場に連れて行ったのは理香子だよ。あの子小さい頃自分の名前の『りかこ』というのがうまく言えなくて『かこ』と言ってたから、それで愛称も『かっちゃん』になっちゃったのよ。それであの子、ああいう男の子みたいな格好するのが好きで、札幌で小学校行ってた時も男の子とばかり遊んでいたらしいよ》 
 
《こちらはあの子『しずか』と名乗ったんです。それで洋服に付いてるタグを見てもマジックで『しずか』と書いてあったし、だから男の子ではあっても、女の子名前を付けて女の子として育てているのだろうと思って。下着も女の子の下着を着けてたし。でも今日気づいたんですよ。私てっきりタグに書かれた名前を『しずか』と読むものと思っていたのだけど、私逆から読んでてあれは『かずし』と書いてあったんですね》 
 
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《ああ。逆読みか。しずかって本人がそう名乗ったの?》 
 
《そうなのよ。本人が『しずか』と名乗っているし、タグにも『しずか』と書いてあるから、親公認で女の子の格好させて女の子名前で呼んでいたのかとばかり》 
 
《亜記宏がこぼしてたよ。理香子と和志は男女逆だったら良かったのにって。和志は女の子みたいに優しい子で、友達も女の子ばかりだと言ってた。でも女の子の服を着せていたとまでは知らなかった》 
 
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