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■女の子たちの交換修行(3)

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「でも歌子さんもけっこう怖いのに」
とP高校初の《男子マネージャー》稲辺浩輔が言う。
 
「歌子さんはまだ男子だった頃の癖が抜けてないんだと思うけど腕力に頼ったプレイが多い。技術面では湧見さんの方が上だと思う」
と今回副主将の背番号5を付けている徳寺翔子は言う。
 
「だけど、歌子(薫)さんと湧見(絵津子)さんが並んでいて、どちらかが元男だって聞いたらみんな湧見さんの方が元男だと思いますよね」
と2年生の猪瀬美苑が言う。
「と美苑が言ってたと言ってみようか?」
「やめてー!」
 
「いや、湧見さんって男らしくて魅力的ですよ」
「うん。同級生だったら、思わずラブレター書いちゃうかも」
などという声も上がっている。
 
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「でも高校生で性転換しちゃうって凄いなあ」
と稲辺君が言うと
「ヒロちゃんも性転換したら女子の試合に出られるよ」
と今回は6番の背番号を付けているシューターの横川朝水が言う。
 
「その手の誘惑はもう勘弁してくださいよ」
「女子制服着てもいいからね」
「だから、僕はその手の趣味は無いですから」
 
「でもこの対応でN高校を停められますかね?」
と1年生の伊香秋子が素朴な疑問を投げかけた。
 
「まあ、無理だと思うよ」
と徳寺は言った。
 

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実際、このマッチアップで何とか勝負になったのは、麻依子と暢子、絵津子と布留子という現エース対決・新エース対決の所だけであった。雪子は矢世依とのマッチアップにほぼ勝つし、薫は宏美をスピードで圧倒する。留実子と明里のリバウンド対決も留実子が7割くらい勝つ。
 
ということで、N高校はじわじわと点差を広げていく。
 
第1ピリオドを終えて16対28と大きな点差が付いている。
 
第2ピリオド、N高校は新鋭トリオを出して、不二子/ソフィア/絵津子/揚羽/リリカというラインナップにする。L女子高は登山宏美と鳥嶋明里を下げて、黒浜玲麻・風谷翠花の1年生コンビを出す。PG.矢世依/SF.布留子/SF.玲麻/PF.翠花/C.麻依子というオーダーである。
 
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このラインナップでは麻依子は純粋にセンター的なお仕事をする。守備は普通のゾーンに切り替えた。結局マッチアップ・ゾーンはほころびが出やすいし、マンツーマンでは個々の相手に対抗できないと見て、オーソドックスなゾーンに変更してみたのである。
 
そうすると第1ピリオドよりは随分と防御効果が出る。しかしN高校の新鋭トリオの破壊力は大きい。そう簡単には追いつけない。結局第2ピリオドを終えて34対52である。
 

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「これだけ点差が付けば後は主力を温存した方がいいですかね?」
と南野コーチが宇田監督に確認する。
 
「そうだね。じゃ、黒木(不二子)君・湧見(絵津子)君・水嶋(ソフィア)君はこの後、お休みということで」
と監督。
 
「え!?」
と言ったのは絵津子である。
 
「じゃ、控組の私たちで後はやろうか」
と暢子が言って、後半のゲームに出て行く。
 
結局第3ピリオドは、志緒/結里/薫/暢子/留実子というオーダーである。L女子高は消耗の激しい矢世依を休ませて2年生PGの馬飼凪子を出すが、他の4人は第2ピリオドと同じである。
 
第3ピリオド、N高校はシューターの結里がいるので、薫・暢子のコンビネーションによる近距離攻撃と、結里による遠距離攻撃の使い分けをする作戦で行く。実はこれはゾーンディフェンスに対する強烈な対抗策でもある。これを見たL女子高は布留子が結里の選任マーカーになって、他の4人でボックス型のゾーンを敷く方式に変更した。
 
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それでもN高校の勢いは止まらない。点差は更に開いていく。
 
結局第3ピリオドを終えて52対74である。
 

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「L女子高もいい勝負してるんだけど、どうしてもN高校を上回る点を取れないから点差は開いていく」
「負けている気がしないだろうけどね」
「まあバスケは点数が全てだから」
 
「しかしN高校は層が厚いですね」
と稲辺君。
 
「今回マネージャーとしてベンチに座っている1年生ポイントガードの広尾愛実もかなり凄い素材だよ。来年のインターハイでは今回控えPGとしてベンチに座った越路永子と熾烈な2番手ポイントガード争いをすることになるだろうね」
と宮野は言う。
 
「うちもベンチ枠争いは熾烈だからなあ」
と今回はベンチ枠から漏れてしまったもののキャプテンの真後ろに陣取っている1年生の並木貴穂が言う。
 
「まあ貴穂ちゃんも今回ここに来てない佐藤部長を蹴落してレギュラーになるくらい頑張りなよ」
と宮野。
 
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「さすがに部長には勝てません!」
と貴穂は言った。
 

第4ピリオドでN高校はポイントガードを永子、センターを耶麻都にして、永子/結里/薫/暢子/耶麻都というオーダーで行く。
 
「N高校、手を緩めませんね」
と猪瀬さんが言う。
 
「盟友への義理を通しているのもあると思う」
と徳寺さんは言った。
 
L女子高は矢世依を戻すが、布留子はもう限界なので代わりに宏美を戻す。しかし麻依子は第1ピリオドからずっと出たままである。麻依子としてはこれがウィンターカップへの最後の挑戦なので、その気持ちに配慮して瑞穂監督も彼女に最後までやらせるのだろう。
 
結局試合は66対96で決着した。
 
試合終了後、お互いに握手したりハグしたりしあう。旭川地区でL女子高・N高校・M高校の3校は昨年の春からずっと毎日のように練習試合をしてお互いを切磋琢磨してきた。ほとんどチームメイトのようなものである。
 
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麻依子が暢子に
「最後まで手抜きせずに戦ってくれてありがとう」
と言ったが、暢子は
 
「絶対に気を抜けない相手だからこちらも必死で頑張った」
と答えた。
 
ふたりは再度ハグしあった。ふたりとも汗が凄かった。
 
「ウィンターカップ、優勝しろよ」
と麻依子が言う。
「うん。金メダル取ってくる」
と暢子も答えた。
 
こうして旭川N高校は12年ぶりのウィンターカップ出場を決めたのである。
 

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10時半から男子の準決勝2試合が同時に行われ、そのあと12時から女子の決勝となる。
 
本当は札幌P高校は最初からウィンターカップ出場が決まっているので道予選に出る必要も無かったのだが、やはり北海道ではそのレベルが卓越しているP高校のプレイを見たいという声が多くの高校からあがったことから、今回の「スーパーシード」方式で決勝戦をすることになったのである。
 
コートに札幌P高校と旭川N高校の選手が入る。
 
今回の両チームのメンバー表はこうなっていた。
 
4.宮野聖子(3 PF 180) 5.徳寺翔子(3 PG 162) 6.横川朝水(3 SG 164)
7.河口真守(3 PF 180) 8.猪瀬美苑(2 SF 172) 9.歌枕広佳(2 C 178)
10.岩本栗実(2 C 178) 11.伊香秋子(1 SG 168) 12.渡辺純子(1 SF 178) 13.江森月絵(1 PG 158) 14.北見幸香(3 SF 167) 15.中島茉莉子(2 PG 164) 16.赤坂正枝(2 PF 176) 17.工藤典歌(1 C 180) 18.小平京美(2 SF 168)
 
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(PG=3 SG=2 SF=4 PF=3 C=3, 3=6 2=5 1=4)
 
4.原口揚羽(2 C 176) 5.森田雪子(2 PG 158) 6.水嶋ソフィア(1 SG 174) 7.湧見絵津子(1 SF 164) 8.黒木不二子(1 PF 172) 9.常磐リリカ(2 C 175) 10.北本志緒(2 PF 168) 11.川中結里(2 SG 162) 12.杉山蘭(2 PF 172) 13.杉山海音(1 SF 173) 14.越路永子(2 PG 161) 15.中井耶麻都(1 C 179) 16.若生暢子(3 PF 177) 17.歌子薫(3 SF 176) 18.花和留実子(3 C 180)
 
(PG=2 SG=2 SF=3 PF=4 C=4, 3=3 2=7 1=5)
 
インドネシアで行われているU18アジア選手権に千里と佐藤玲央美が出ているため、どちらもそれを抜いたオーダーになっている。
 
札幌P高校で最後の番号を付けている小平は2年生で昨年はウィンターカップのベンチ枠(15人)に入っていたものの、今年のインターハイでは1年生の有力選手(特に伊香・江森・並木の3人)加入もあってベンチ枠(12人)に入ることができなかった。しかしその悔しさをバネに練習に励み、復帰を果たしたのである。結果的に国体予選にも出ていた3年生の大空媛乃が弾き出されてしまった。P高校は完全実力主義なので、3年生であろうと最後の大会であろうと容赦ない。また1年生同士の争いでも、渡辺の成長でインターハイに出ていた並木は弾き出されてしまっている。
 
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そしてウィンターカップ本戦では佐藤玲央美が復帰するので、この15人の中で誰かひとりは確実に落ちることになる。ボーダー組にとっては、かなり必死にならなければならないゲームである。一方のN高校の場合は薫が道大会までしか出られないので、本戦では薫が抜けて千里が入る形になる予定だが、本戦に出るメンバーは11月下旬のメンバー登録の時点まで確定していない、と宇田先生は部員たちに言っている。
 

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その宇田先生は試合前にみんなに言った。
 
「あらためてみんなに言うけど、とにかく怪我しないこと、怪我させないこと。既にウィンターカップ出場は決まっているわけだから、絶対無理しないこと。ボーダーラインの子としては、ここは無理してでもこの強豪相手に自分のプレイをアピールしておきたいだろうけど、無理して怪我したら意味ないからね」
 
「昨年は私とサーヤが次々と離脱してしまって、本当に申し訳なかったです。みんな、絶対に気を抜いたプレイをしないこと。それから体調が悪い時は早めに申告すること」
と暢子が言う。
 
「自分で言うのも何だけど、気が抜けていると怪我しやすいんですよ。気合いが入っていれば少々のぶつかり合いでも平気なんだけどね」
と留実子。
 
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「今ここに居ないけど千里はインターハイで相手選手から意図的なボディアタックをくらったけど、気合い充分だったから、軽いかすり傷程度で済んでいるからね」
と薫が言う。
 
「あれは下手したら入院コースだったね」
と暢子も言う。
 
「インドネシアの方も頑張ってますかね?」
「17時試合開始と言っていたから、日本時刻では19時だな。この試合でP高校を倒してから、のんびりと優勝の美酒に酔いながらネット中継で向こうの試合の様子を見よう」
と暢子は言うが
 
「アルコールとか飲んだら退学だからね」
と南野コーチが釘を刺しておく。
 
N高校はお酒とタバコには厳しい。見付かればどんな優秀な生徒であろうと、一発退学である。
 
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「さあ、勝って女になろう」
と暢子が言うので
 
「先輩、男なんですか?」
と質問が出る。
 
「いや、ほら勝負所で『私を男にしてください』なんてセリフあるじゃん。私たちは女だから、女にならなきゃ」
 
「いや、既に今女だから」
「薫先輩は若干の疑惑がありますけど」
「薫も既に完全な女になっているんじゃないかという疑惑だよな」
「ちんちんはもう無いんだよね?」
「ちょっと、試合前に話すことじゃないじゃん」
「誤魔化そうとしている」
「付いてるなら否定すればいいんだから、誤魔化そうとしているということはやはりもう取ってるんだ?」
「だから、そんなことより試合に集中、集中」
 

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試合開始である。
 
スターターは、P高校が徳寺/伊香/渡辺/河口/歌枕と1年生を2人入れてきた。N高校も雪子/ソフィア/絵津子/暢子/揚羽と1年生を2人入れる布陣で始める。
 
2年生センター同士、歌枕と揚羽でティップオフを争い、歌枕が勝ってP高校の徳寺がドリブルで攻め上がってくる。N高校はゾーンで守る。すると伊香がいきなりスリーを撃つ。
 
これがきれいに決まってP高校が3点先取して試合は始まった。
 

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女の子たちの交換修行(3)

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