広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■女の子たちの女性時代(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-09-14
 
自由時間にしていた観光客が戻って来始めたのでということでこちらも美鳳さんに御礼をして帰ろうとしたら
 
「うちのバスに乗って行きなよ。この時間から鶴岡に行くにはこれが一番早いよ」
などと言われるので、料金を払った上で!観光バスに同乗して鶴岡に戻る。
 
隣に座ったおばちゃんから
「あんた最初から居たっけ?」
などと言われる。
 
「私、座敷童なんです」
「そうだったんだ! 何かいいことあるかな」
「次のロト6は** ** ** ** ** **で」
「おお!」
 
おばちゃんが慌ててメモする。
「最後の数字なんだったっけ?」
「さあ。今私どこかから降りて来た数字をそのまま言ったので自分でも覚えてません」
「よし、最後の数字は38種類全部買おう」
 
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このおぱちゃんは実際に1等が当たったようで、ブログに書いたのが話題になっていたのを千里は半月後に知ることになる。
 

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千里は鶴岡駅で旭川までの切符を買い、17:41の青森行き《いなほ7号》に飛び乗った。あたりはすっかり暗くなっている。
 
その夜景をボーっとして見ていたら、列車の通路を歩いて、美鳳さんが顔を知らない女性と2人でやってくるのでびっくりする。美鳳さんは今度はアロハシャツを着ている!?
 
「えっと何か?」
「いやー、ごめーん。私が勝手にプログラム書き換えたらさ、それじゃまずいと安寿さんが」
「あれ、微妙なんだよ。書き換える前に一言言ってくれれば良かったのに」
 
「私がさっき書き換えたスケジュールだと、千里は成人式を男の子の身体で、背広着て出ないといけないことになると」
「いやーーー!」
 
「それにあんた、花園さんと練習試合の約束したでしょ?」
「あ、はい」
「あの温泉であんたが花園さんと出会うのは想定外だったんだよね」
「へー」
「その練習試合の分も書き換えが必要だって安寿さんが」
「その試合も女子高生の時間でやりたいよね?」
「ええ、お願いします」
 
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「大神様に改訂の許可を打診したら、くすくす笑っておられたから、大神様はお見通しだったんだ」
「でも時が来るまで何もおっしゃらないから」
 
「神はそういうものだと思います」
と千里も言う。
 
「ま、それでちょっと再改訂」
「ちょっと貸してね」
 
と言って美鳳さんが千里の身体の中に手を入れて、また例の巻物を取り出す。そして安寿さんが作ったメモのようなものを見ながら、美鳳さんが書き直している。どうもチェックが大変なようでふたりでデータの照合をしている感じだ。その間にいくつもの停車駅を過ぎる。
 
「これでいいかな」
「OK」
「よし、再度セット」
 
と言って改訂した巻物を美鳳さんは再び千里の身体の中に入れた。
 
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「さっきのスケジュールだと9月11日から9月21日まで女子高生の身体だったんだけど、改訂したスケジュールだと9月16日で終わるから」
 
「大会の間だけ女子高生ならいいですよ。その後はまた男の子ですか?」
「ううん。9月17日からは大学1年生の時の身体」
「えっとそれ女の子なのかな?」
「もちろん」
 
「だったらいいです。私人身御供みたいだし」
「よしよし。殊勝である」
「この組み替え最終的に失敗したら、いっそのこと千里って人間が最初から居なかったことにしちゃおうか」
「いやです」
「まあうまく行くといいね」
 
「じゃね」
と言ってふたりは秋田駅で降りていった。
 

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秋田駅のホームで千里に手を振ってくれたふたりをこちらも手を振って見送る。そして千里はまたしばらくぼーっとしていた。
 
『でも私っていつ人身御供になっちゃったのかな?』
と千里は誰に向かってでもなく、何気なく質問を投げかける。
 
『私が神社に奉仕するようになった時なのかしら?』
 
『違うよ』
と答えてくれたのは《くうちゃん》だ。《くうちゃん》の発言は珍しい。
 
『巫女さんになるだけで人身御供になるんなら誰も巫女さんになりたがらないよ。千里が中学に入る時に死にかけた時からだよ』
 
『あの時!?』
 
『千里が本当に死にそうな顔で熱にうなされていたから、千里のお母ちゃんが羽黒山大神を祭っている神社で祈願したんだよ。この子をお助けください。代わりに何でも差し上げますって』
 
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『それは知らなかった。でも留萌にそんな神社があったっけ?』
『千里、ちょっと神社事典とかで羽黒山大神を調べてみなよ』
『うむむ・・・』
 
そういえば調べたことなかった!
 
『まあ、それで千里を助ける代わりに、千里自身をもらったのさ。これ美鳳さんにも内緒だぞ。まあ、お母ちゃんは1万円もお賽銭入れたけどね』
 
と《くうちゃん》が言う。
 
後ろの子たちのリーダーは《とうちゃん》だが、《くうちゃん》は唯一《とうちゃん》より強い。口の悪い《こうちゃん》などは『影のリーダー』と呼んでいる。《くうちゃん》は恐らく数千年生きている。美鳳さんは多分1500歳くらいだから、《くうちゃん》は美鳳さんの眷属ではあっても、美鳳さんも知らないことまで知っている。でも普段はとても寡黙だ。
 
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『そうか。お母ちゃんが私を献納したんだったら、それでいいよ。でも当時のうちの家計で1万円って凄まじい大金だよ』
『その1万円は宝くじの当たりで返してあげた』
 
『へー!でもあれ、やはり本当は死んでたの?』
 
『あの時、男の子の千里は死んだのさ。今年の2月に月山で剥がれ落ちたのはその抜け殻だよ。代わりに大神の力で女の子の千里が起動した。あの病院の看護婦に大神の眷属がいたから、その子を使った』
『凄い!』
 
でも、そうなのかも知れないと千里は思った。あの時、女性ホルモンを打ってもらったことで自分は病気から回復したんだ。
 
『だから千里は美鳳さんと出会う前から既に大神様の眷属だったんだよ。美鳳さんとの出会いも実は大神様の仕掛け』
 
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『瀬高さんもやはり眷属なの?』
『そうだよ。あの人も3歳頃に死にかけたのを助けられてる』
『私は生まれた時死んでたらしい。お医者さんが揺すったりビンタとかして、やっと産声あげたんだって』
『霊感の発達している人には、そういう人が多いよ』
『でも私、霊感大して無いよ』
 
『あのなあ』
《くうちゃん》が少し呆れたような声をあげ《きーちゃん》が笑っていた。
 

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22時に青森に着き、青函トンネルを越える夜行急行《はまなす》に乗り換えた。この急行はとても便利なので、その内青函トンネルを新幹線が走るようになってもこれは残して欲しいなと千里は思う。
 
6:07に札幌到着予定である。千里ははまなすの車内ですぐに眠ってしまった。ここしばらく男の身体に戻ってずっと大きなストレスを抱えていたのが、また女の身体になれるというので嬉しくなりこの10日間の精神的な疲れがどっと出てしまった感じであった。青森駅までは緊張が続いたものの乗り換えた途端その反動が来たのだろう。
 
朝苫小牧で停まったので目が覚める。時計を見ると5時だ。千里はまだ充分頭が働き始めていない感じであったが、取り敢えずトイレに行ってくる。それでおしっこをしていた時「ん?」と思う。
 
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あ・・・・。
 
ちょっと触ってみる。
 
やったぁ!!
 
また女の子に戻ってる。嬉しい〜〜〜!!!!
 
千里は心が躍る思いでペーパーでその付近を拭くと、手を洗ってトイレを出た。やはり私は女の子なんだもん。お股に変なのがついてるのは間違いだよねぇ。やっとこれで本来の自分に戻れた。
 
そう思うと、千里は新たな活力が湧きだしてくるかのような気さえした。そして出羽の方を向いて深くお辞儀をした。
 

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札幌でスーパーホワイトアロー1号に乗り継ぎ、旭川に8:13に着くと、そのままスタジオに入った。
 
「あれ、千里朝から来れたんだ?」
「うん。早く着いたからね」
「どこ行って来たんだっけ?」
「山形県。昨日は旭川空港から羽田経由で庄内空港に行って、昨日の夕方青函トンネル通って、はまなすで帰って来た」
 
「なんかハードなスケジュールだなあ。でも元気っぽい」
「うん、元気元気」
 
それで演奏していると
 
「千里、見違えた」
と言われる。
 
「病気が治ったから」
「何の病気だったの?」
「突発性男性器出現症」
「なにそれ〜?」
「朝、起きたらおちんちんが生えているという」
「治療法は?」
「はさみで、ちょきんと切っちゃう」
「痛そうだ」
「切る前に女の子とセックスしてみたいな」
「立ちションもしておかなくちゃ」
 
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「みんなそういう発想か」
「うん。それが普通の発想」
 
演奏の方は他の子も結局昨日いっぱい練習で終始したようで、この日から本格的に演奏の収録に入った。みんな2日間の練習でだいぶうまくなっていたし、千里も調子良くて、録音はスイスイと進んだ。
 

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翌8月16日の朝。
 
千里は目が覚めた時、お腹が変な感じがした。この感触は覚えがある。
 
取り敢えず換えのショーツを持ってトイレに行き、用心のために付けて寝ていたナプキンをまるめて汚物入れに捨てる。ペーパーでお股をよく拭き、少し漏れて汚れていたショーツも交換し、新しいショーツにナプキンをセットして、ふっと息を付いた。
 
昨日もちょっとお腹の調子おかしかったもんなあ。旅疲れかと思ったけど、やはりこれだったのかと考える。
 
これは千里が5月下旬に突然女の子の身体になってから経験する3度目の生理である。これまでは6月12日、7月10日に来ていたので、その周期なら次は8月7日に来るはずだったのが、8月4日に男の子に戻ってしまったので当然7日は来なかったのである。
 
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まあ、男の子の身体では生理は来ようがないよね? だいたいどこから出せばいいんだ?
 
生理はちょっとお腹痛いし、憂鬱なのだが、生理が来たことで再び女の子になれた喜びを噛みしめていた。自分の手帳のカレンダーに3回目の赤い○印を付ける。
 
さすがに3度目となると《普通》になっちゃったなあ。初めて来た時はどこか炎症か何かでも起きて出血したのだろうかと思った。しかし《いんちゃん》が『これは生理だよ』と教えてくれたのである。
 
でも・・・・
 
なんで私、生理があるんだろ?
 
性転換手術って膣を作るだけだよね?? 膣だけじゃ生理起きないよね?
 
後ろで《いんちゃん》や《てんちゃん》がクスクスと笑っている。どうも何か仕掛けがあるようだが、きっと訊いても口を割らないだろう。
 
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お風呂場でショーツを洗い、それで台所に出て来た所で美輪子叔母と遭遇する。
 
「おはよう」
「おはよう」
 
「シャワーでも浴びてたの?」
「ううん。パンティー洗ってただけ」
「なんか汚したんだっけ?」
「ちょっと生理の血が付いただけだよ」
「なーんだ」
 
叔母はたちの悪い冗談か、『女の子ごっこ』みたいな変な遊びだと思っているだろうなと思いながら千里は洗ったショーツを洗濯機の中に放り込んだ。叔母は千里が自分用のナプキンをトイレに置いているのも容認してくれている。
 

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