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■女の子たちの外人対策(7)

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女子の準々決勝は函館F高校。ここも昨年のインターハイ予選決勝リーグで当たった所だ。やはり道大会はどんどん強豪と当たる。
 
ここはこれまでのN高校の試合を分析していたのだろう。千里と暢子の2人に専任マークが付いて残りをゾーンで守るトライアングル2の守備体制を敷いた。
 
しかしこちらもそうだが、向こうもゾーンディフェンスはまだテスト運用という雰囲気である。しかもトライアングルは人数が少ない分大変だ。結構マークの受け渡しがうまく行かない感じだ。それで久井奈さん自身がゾーンの隙間から飛び込んでシュートしたり、相手がいちばん警戒してないっぽい穂礼さんが侵入していくパターンなどを使って攻撃していく。最初の内はむしろ千里の方がPG役をしていた。
 
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すると相手のマーカーに少し迷いが生じた感じで、マークが中途半端になる。するとすかさず暢子にしても千里にしても積極的に攻撃に参加する。相手得点後留実子がスローインで千里にボールを渡し、千里がそのままドリブルで攻めていく。そしてスリーポイントラインの手前で立ち止まって、そこからいきなりスリーを奪う。相手としてはこちらが近づいて行った所でディフェンス体勢を作るつもりがその前に点を取られてしまった感じだった。
 
暢子にしてもパス回しで留実子あるいは千里にパスするかのように見せて、自分で飛び込んで得点する。一時的に甘くなっていたマーカーがまた2人に貼り付く。しかし千里にしても暢子にしても、マーカーを振り切るのはうまい。正確には暢子は振り切るし、千里はマーカーの目の前から消える。
 
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こちらのゾーンディフェンスも結構混乱して隙は突かれたのだが、向こうの混乱に乗じてこちらが得点した方が多く、82対67で勝利した。
 

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ここまでの結果。貴司たちのS高校男子は勝ち上がって明日の準決勝に駒を進めている。田代君たちの札幌B高校は午後の準々決勝で敗退した。橘花たちのM高校女子も準々決勝敗退であった。なお、久子や数子たちのS高校女子は昨日の1回戦で負けてしまっている。
 
準々決勝が終わった土曜日の夕方。旅館で夕食を取った後、少し休んでいたら千里の携帯に着信がある。見ると蓮菜である。
 
「おはよう、蓮菜」
と言って電話を取る。
 
「グーテン・モルゲン。あ、それでさ」
と《おはよう》についてはスルーする。さすが蓮菜である。
 
「Dawn River KittensのCD/DL売上の1月分というか、発売された12月26日から1月31日までの売上報告が来たんだけどね」
「ああ」
 
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千里や蓮菜たち13人の女子が参加して制作した Dawn River Kittens の音源は雨宮先生が口利きした効果で制作してわずか3日後の12月26日にはダウンロード可能になり、1月1日以降、全国のtabiya拠点店舗でCDも発売されている。
 
「どのくらい売れたと思う?」
「そうだなあ。20-30枚売れた?」
と千里は訊いた。
 
しかし蓮菜は
「桁が違うよ」
と言う。
「え?まさか100枚売れた?」
「ノー」
「えっと、逆だった? 5-6枚?」
 
冷静に考えると、女子高生が集まってワイワイやって作ったCDが10枚も売れる訳ない気もする。
 
「1356枚」
と蓮菜は答えた。
 
「は?」
「耳を疑うよね」
「うっそー!」
 
「どうもね。全国各地のコミュニティFMのナビゲーターさんが気に入って年末の番組で掛けてくれたらしいんだよね。それで年明けからかなり売れたみたい。その後、どうも口コミでも広がっているっぽい」
 
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「えーー!? でもそのナビゲーターさんたちはどうやってこんなのを知ったんだろう」
「それがね。横浜レコードと取引のある★★レコードの営業さんがサンプルを大量にコミュニティFMに送ったらしいのよ」
「なんで?」
「どうも偉い先生の口利きだったみたいでさ」
 
千里はふと雨宮さんが、千里たちを緊急に東京に呼んだ時「売れるようにしてあげる」と言っていたことを思い出した。そんなことを言って強引に音源の修正をさせたので、そういった手前、売れないと困ると思って口利きしてくれたのかも知れないという気がした。雨宮さんは言葉はいい加減だが、辻褄は合わせてくれる人だ。
 
「1356枚のCDとダウンロードの内訳を聞いてないんだけど、CDは1000円のうち45%を制作側がもらうし、ダウンロードストアは700円の7割を制作側がもらうから平均して470円。これを私たちと∞∞プロで山分けする約束だから、1枚売れる度に235円。雅文まで入れて14人で山分けして1人16.78円。1356枚で22,760円」
 
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「うっそー! そんなにもらえるんだ!?」
「驚きだよね〜。横浜レコードさんからはぜひぜひ次の制作もしてくれって言ってきてるよ」
「あははは」
 
「それで∞∞プロにも電話して谷津さんと話したんだけど、こちらがあくまで趣味の範囲で制作しているという事情は理解してくれていて、ゴールデンウィークか夏休みにでも時間が取れたら制作してと。制作の時にスタッフが必要なら派遣するし販促などもしてくれるらしい」
 
「すごーい」
 

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新人大会最終日。午前中準決勝の相手は昨日午後の試合で旭川M高校を破って勝ち上がってきた、室蘭のM学院である。ここはインターハイやウィンターカップに行った実績こそ無いものの、全道大会ではいつも上位に入っている強豪である。男女とも強いが、特に女子の方が強い。
 
ここもしっかりN高校のここまでの試合をチェックしていたようであった。基本はマンツーマンなのだが、千里と暢子にはいちばん強そうな人が付いた。
 
しかし暢子は少々の相手にマークされても、ものともしない。巧みなフェイントで相手を翻弄し、また自分の身体を盾に使って中に押し入って行き、シュートを撃つ。千里も相手の一瞬の意識の隙を突いて相手の目の前から消えてしまう。え?え?という感じで相手が千里の姿を探した時にはもう久井奈からのパスを受けて撃つ体勢である。久井奈は暢子・千里・留実子には、パスする時、受け手を見たりしないので、久井奈の視線からN高選手を探すことはできない。
 
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それで第1ピリオドで既に30対14とダブルスコアになる。少し点差に余裕があるので、第2ピリオドは千里と暢子を休ませ、透子と寿絵を先発させて強豪相手のゾーンを体験させる。第2ピリオド後半は、更に睦子と夏恋を出して、実戦経験を積ませる。また第3ピリオドは、千里と暢子は戻ったものの、今度は久井奈の代わりにメグミ、穂礼の代わりにみどり、留実子の代わりに麻樹を代わる代わる入れてゾーンに参加させる。
 
麻樹は現在のN高女子バスケ部の中で最も背が高い180cmで、こないだの秋田遠征にも連れて行きたかったのだが、成績がやばかったので、留年しないように!先週は勉強に専念させたのである。今回の帯広遠征でも空き時間はバスケの練習しなくてもいいから問題集を解いてなさいと言われている。
 
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第3ピリオドまで終わって68対50。第4ピリオドはまたベストメンバーで出ていく。大量リードを挽回しようと、向こうはいきなりゾーンプレスを掛けて来た。イチかバチかという戦法である。しかしN高校は冷静である。確実に通る形でパスをつなぎ攻めあがる。むしろゾーンプレスを掛けた後遺症で守備体形が整う前に、久井奈さんが速効でゴール下まで行って得点する。あるいは途中で千里にパスしてスリーを撃つ。
 
M学院もこの相手にはゾーンプレスは逆効果と考えて普通の守備体制に戻すがN高校側が着実に点を重ね、最後は102対66で勝利した。
 

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女子の試合の後で男子の準決勝2試合が行われる。千里がじっと試合を見ていたら
 
「千里ちゃんの視線が怖い」
と夏恋に言われる。
 
千里が思わず表情をほころばせるが、暢子が
「彼氏が出てるからね」
と言う。
 
「S高の7番付けてる人ですよね?」
と寿絵が確認する。
 
「あそこに出て行って対戦したい気分」
と千里はひとこと言った。
 
「まあ千里は女の子になっちゃったんだから仕方無い」
「それは分かってて性転換手術受けたんでしょ?」
 
「でも今度対戦してたらきっとまたキスかセックスしてふたりとも除名処分だったな」
と暢子。
 
「うん。そうかもって話してた」
と千里。
 
「誰と?」
「彼とに決まってるじゃん」
 
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「そうだ。彼にも性転換手術受けてもらったらまた対戦できるよ」
「うふふ」
 

「でもふと今思ったけど、他の学校の試合見ている時にしても、試合中の休憩時間でも、いつも千里ちゃん、この辺にいたよね」
と睦子。
 
「ああ。そうそう。千里は休憩時間になると後ろで見ている女子の所まで来て休んでいたんだよ」
と留実子が言う。
 
「いや。何か男の子たち私が居ると話がしづらいみたいだったし。本当はベンチを離れてはいけないんだけど」
「そりゃ、男の子たちの間に女の子がひとり居たら、下ネタも言えないし」
「女の子たちの間に男の子がひとり居ても変なこと言えないのと同じ」
 
「やはり千里が男子の試合に出てたのがホントに間違ってたんだな」
と暢子は結論づけた。
 
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試合は貴司たちのS高校と、札幌Y高校が勝って決勝に進出した。Y高校は秋にウィンターカップ代表を千里たちN高校と争ったチームである。
 

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そして女子の決勝戦の相手は北海道の高校女子では最強のチーム、札幌のP高校であった。特にインターハイでは昨年まで17年連続出場を果たしていて、北海道女子の指定席とまで言われている。インターハイBEST4の経験もある。秋のウィンターカップ予選決勝でもN高校を下して代表の座を獲得したチームだ。あの時は結構な差を付けられた。
 
しかし向こうは主力であった3年生が抜けている。そしてこちらはあの時既に3年生が居なかったのでほとんど陣容が変わらないまま千里が加入している。
 
「戦力差は縮まっているかあるいは逆転してない?」
「勝てるかな」
「いや、3年生が抜けたといっても、その後の子たちも強いよ」
「うん。全くあなどれない相手」
 
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序盤から激しい戦いになる。昨年のインターハイ・ウィンターカップ予選を見ていても物凄く強いチームだと思っていたが、千里は現実にコートに入って対戦してみて、《全国区》の強さを感じた。他のチームとは格が違う! 3年生が抜けたって全く戦力は落ちていないし、むしろ上がっているのではとさえ思った。
 
そしてその強いチームが、やはり昨年秋に結構良い試合をした相手というので全開で掛かってくる。女王が全力で来ているので、最初の3分くらいは千里は目の前の火の粉を払うのに必死という感じで、頭が空白になっていた。
 
それでも千里は第1ピリオド前半3本のスリーを撃ち1本を成功させた。成功させたことで少しだけ心に余裕が生まれる。最初の内、なかなか通らなかった久井奈・暢子・千里の間のパスもちゃんと通るようになる。それで最初はいきなり10対0と突き放されたものの、挽回して第1ピリオド終了時には22対16まで詰め寄った。16点の内8点は千里(スリー2本とフリースロー2本)、6点が暢子、2点が久井奈である。
 
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「凄い相手ですね」
と初めてこのチームをベンチで見た敦子が言う。
 
「うん。客席で見てるのとは別物だと思った」
と千里が言った。
 
「あっちゃん少し出てみる?」
「私が出たら完璧に穴になっちゃいますよ!」
 
「千里が第1ピリオドで8点取ったので向こうは強烈にマークしてくるよ」
と久井奈さん。
 
「望む所です」
 

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第2ピリオド。千里には向こうの佐藤さんという人がマークに付く。1年生のようだが、物凄く巧い。182-3cmあるかと思う長身の選手でジャンプ力もあるので、普通に撃っても叩き落とされてしまう。普通の相手になら通じる、近寄るように見せて遠ざかるなどというフェイントも全く通用しない。それでも千里は相手の呼吸を読んで、タイミングを外して撃つ。しかし半分は叩き落とされる。少々タイミングがずれても強引にジャンプしてブロックするのである。
 
「ペネトレイトを入れて、相手にこちらには選択肢があることを見せる?」
と途中のタイムアウトの時に穂礼さんから言われるが
 
「いや、そんなのが通じる相手じゃないです。むしろシュートだけで勝てないと、全国では全く歯が立たない」
と千里は答える。
 
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「よし、今日は村山はとにかくボールをもらったら必ず撃て」
と宇田先生。
「はい、それで行きます」
 
久井奈さんからのパスが来る。P高校の佐藤さんとのマッチアップ。お互いに凄まじい気魄と気魄のぶつかり合いである。近くに暢子が走ってくる。そちらを一瞬見る。パスカットを狙って佐藤さんが踏み込んでくる。その動き始めた瞬間に千里は横を向いたまま身体をバネにしてスリーを撃つ。ボールが手から離れる瞬間だけ首を戻してゴールを見る。
 
佐藤さんが「やられた!」という顔をした。横を向いていたって千里のスリーはフォームさえ間違っていなければきれいに入る。
 
むろんこういうフェイントが何度も通用するとは千里も思っていない。しかしあの手この手を駆使して、そして何度かはまんまと佐藤さんの一瞬の隙をついて彼女の目の前から消えてスリーを撃ち、千里は第2ピリオドで12点をもぎ取った。第2ピリオドを終わって42対38と少しだけ詰め寄る。
 
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女の子たちの外人対策(7)

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