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■桜色の日々・高校進学編(3)

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帰宅して母に合格していたことを報告すると、母は会社に出ている父にすぐ連絡を取り、父の承諾を得て、母がすぐに私を車に同乗させて郵便局に行き、入学金を指定の用紙で振り込んでくれた。そして、その振込用紙の控えを持って、そのままN高校に行き、入学手続きをしてくれた。私は中学の女子制服を着て行った。
 
「22日、来週の木曜に入学者説明会があって、そのあと女子は別室で制服の採寸があるのですが、160人まとめてやるので時間が掛かるんです。それ以前にショッピングセンターの○○屋さんでも制服の採寸は可能ですが、どうなさいますか?」と学校の人が言った。
 
「あ、じゃこの子連れて出てきたついでに行ってきます」
と母が言い、私を連れて市郊外にあるショッピングセンターまで連れて行ってくれた。
 
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「あんた、女生徒として全然疑問を持たれてなかったね」
と母は車の中で運転しながら言った。
 
「まあ、今日はセーラー服で来たしね」
「だけど、あんた男子として合格してるの?女子として合格してるの?」
 
「どっちなんだろう・・・入学願書は男で出したけど、中学から行った内申書は女になってると思う」
「ああ」
 
「でも、男女どちらの制服を着てもいいと言われてたから」
「ああ、そうだったね」
「結局中学の時と似たような感じになるかも」
「あんた自身、自分の性別を迷ってるの?」
「迷いようが無い、って友だちは言うんだけどね。私、もう男には戻れないもん」
 
「戻れないというか・・・・あんた、男の子だった時期あったっけ?」
「あまり自信無い」
 
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「中学の制服の採寸は、お友だちと一緒に行ったんだったね」
 
「うん。その時は私、付いてくだけで、作るつもりなかったんだけど、みんなが採寸した後で『じゃ次はあなたね』と言われて、作らないと言ったんだけど、採寸だけでもしておけば、とか友だちに唆されて。でも結局作っちゃった」
 
「結局まだお父ちゃんには言ってないのね」
「ごめーん。こないだ温泉に行った時に思い切って話そうと思ったんだけど、テレビに出てきたニューハーフタレントさん見て『化け物だ』とか、それから知り合いに息子が性転換してしまった人がいて、もう刺し殺そうとしたとか、そんな話を聞いて、なんかカムアウトできなくなっちゃった」
 
「ああ。。。自分の息子がそうなってると知ったらショックだろうね」
「うん。大学に入ってから仕送りしてもらえない可能性はあるよなと思ってるから、できるだけ頑張ってバイトするよ。でも大学入学までにお父ちゃんと揉めちゃった時は、大学の入学金と前期授業料までは、お母ちゃん助けてくれない? その後は自分で何とか頑張るから」
「うん。私もへそくり貯めておくようにする。でもそれなら国立に行って」
 
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「うん。実は◇◇◇◇大学を狙ってる。かなり勉強しないと無理だから、まだ令子にしか言ってなかったんだけど」
「ふーん。頑張りなさい」
「うん」
「令子ちゃんは、どこ狙ってるの?」
「阪大だよ」
「おー。さすが頭のいい子は違うね!」
 

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ショッピングセンターの中に入っている洋服屋さんに行き、N高校の制服ということで採寸をしてもらった。採寸をしてくれたのは、中学の制服を作った時の人だった。最初に「合格おめでとうございます」と言われた。
 
「ありがとうございます」
「あなた、中学の制服を遅れて頼んだ人よね?」
「はい。その節はお手数お掛けしました」
「あれ、ギリギリ入学式に間に合って良かったよね」
「ええ、助かりました」
 
「今度は学校での採寸会より早く来たのね」
「懲りましたから」
「うん。でもN高は補習とか凄いみたいだけど、頑張ってね」
「ありがとうございます」
 
中学の制服はW61, B90で作っていたのだが、まだまだ身体が成長期でしょうから少し余裕があった方がいいですよと言われ、W64 B95 で作ることにした。
 
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「あなた身長は中学入学の時すごく高かったけど、それから変わってないわね」
「ええ。身長の伸びは止まったんだと思います」
「じゃ、着丈・スカート丈はそのままでいいかな・・・」
 
そんなやりとりをしていたら、母が何だか嬉しそうな顔をしている。
 
「お母ちゃん、どうしたの?」
「いや、娘の高校制服を作るのが、こんなに楽しいことだとは思わなかった」
と母。
 
「ああ、女の子はそういう楽しみがありますよね」
とお店の人も笑顔で言った。
 
制服は早めに注文を入れたので、月末にできるということだった。
 

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家に帰ってから、併願していたK高校の方は、ネットから、受験番号と渡されていた暗証番号を使って、辞退の手続きをした。夕方父が戻ってくると、改めて「おめでとう」と言われる。その日はお祝いにすき焼きをした。
 
私が材料を手際よく切って食卓に運んでくるので
「お前、料理上手いんだな」と父から言われる。
「だって、晩御飯の支度は、お母ちゃんと1日交替でしてるよ」と私。
「あ、そうだったんだっけ?」
「この子、料理のレパートリー多いし、お魚もさばけるし、揚げ物も上手いし、ハンバーグも餃子も上手に作るし、いつでもお嫁さんに行けますよ」と母。
 
「お前、嫁に行きたいの?」と父。
「あ、けっこう行きたいかも」と私。
「そういう気持ち悪いのは勘弁してくれ」
と父が言うが、私と母は顔を見合わせて笑った。
 
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20日。火曜日。
 
中学の友人達で集まる。私はアースカラーのTシャツの上にお気に入りの桜色のカットソーを着て、下は黒いスリムジーンズを穿いて出かけた。
 
待ち合わせ時刻の少し前に着いたら、環と美奈代が先に来ていた。
「おはよー。ふたりとも改めて合格おめー」
「そちらも、おめー」
「でも残念だよね。環とミナ、仲が良いのに別の高校になっちゃって」
「まあ仕方無いね。私N高は無理だったし」と美奈代。
「私は阪大狙ってるから、どうしてもN高行きたかったし」と環。
 
「みんな行き先は確定したのかな?」
「**君がC高落ちちゃって」
「わあ」
「あの子の家、家計が苦しい上に下に弟さんが3人いるからって私立は受けてなかったのよね」
「どうするの?」
「工業の定時制二次募集を受けるって話。どっちみち高校に入ったらバイトしたかったらしいし」
「大変だね」
 
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「ところで、ハルはなぜズボン穿いてくるのさ?」
「え?別にズボンでもスカートでもいいと思うけど」
「ハルはスカート穿かなきゃね〜」と美奈代。
「そんなこと言ってる、環もミナもズボンじゃん」
「私たちはいいのよ。でもハルはスカートなの」
「なんで〜?」
 
「おお、ここにちょうどW59のスカートが」
と環がバッグの中から、妙に可愛いスカートを取り出す。
「わあ、可愛い! でも59じゃ、タマりんも私も穿けないね」
「おお、そこにちょうどW59の女の子が」
「それはそれは。ぜひ穿いてもらおう」
 
「分かったよ。穿いてくるから貸して」
「私には小さいのよ。あげるから」
「うん。じゃ、もらう」
 
私は笑って環からスカートを受け取り、トイレの中で穿き換えてきた。
 
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やがて、みんな集まってくる。
「なんか、ハルが凄く可愛い格好してる」と由紗。
「環のせいだよー」
「おー、まい、らう゛りー、ハル〜」と言ってカオリはまたまた私をハグする。
 
10人集まったところで、環が提案をした。
「メーリングリスト、作ろうかと思うんだけどね」
「どういうのだっけ?」
「そのメーリングリスト専用のアドレスにメールすれば、ここにいる全員に同じ内容のメールが届く」
「ああ」
「そのメールに返信した場合、全員に返信される」
 
「要するに、このメンツだけの井戸端会議って訳ね」
「そうそう」
「何を話すの?」
 
「ふつうのおしゃべり」
「今日はちゃんとハルは女子制服を着てきたかとか話すのね」
 
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「さすがにハルも高校生になったら、ちゃんと女の子の格好するんじゃない?」
「いやぁ、監視してないとまだ危ない気がする」
 
「私、携帯持ってない」
「パソコンでもいいよ。どっちでも自分の都合のいい方で参加すればいい」
「両方登録してもいい?」
「全然問題無し」
 
「登録するアドレスから halgirl@****.net 宛てに「subscribe」と書いたメールを送って。本文に自分は誰だって書いておいてね」
と言って、環は登録方法を書いた紙を全員に配る。
 
「りょうか〜〜い」
 
「halgirl って・・・・」
「やはりハルがちゃんと女の子しているかどうかの監視なんだ!」
「その報告は、みちる、よろ〜」
「アイ」
 
そしてこのメーリングリストは20年以上続いていくのである。
 
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22日の入学者説明会。
 
私は母と一緒に中学の女子制服を着て出て行った。まだ普通科のクラス編成が行われていないので、理数科も普通科も一緒に、ごちゃ混ぜ状態で体育館で先生たちの話を聞いた。
 
私は令子・カオリを見つけて傍に寄っていったが、令子のお母さん・カオリのお母さんは、うちの母とも顔なじみなのでお互いに
「合格してくれたのは嬉しいけど、これからが更に大変そうですね」
などと話していた。
 
私がセーラー服を着ていることについては、令子のお母さんもカオリのお母さんも見慣れているというか、むしろ男の子の格好をしている所をほとんど見られていないので、母も最初は少し恥ずかしそうにしていたが、
 
「でも本当にハルちゃんは、こういう格好が似合ってますよ」
などと令子の母から言われて、やや嬉しそうな顔をしていた。自分の子供が褒められるのは純粋に嬉しいものなのだろう。
 
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高校の先生のお話は、やはり大学進学に向けての話が半分くらいを占めており、大学のランキングとグループ(旧六・新八やMARCH・関関同立など)の説明、補習の体制や、普段の学習の仕方などについての説明などが行われた。
 
その日は教科書を購入したが、辞書は既に持っているものと同レベルだったので特に買わなかった。他、体操服と上履き・体育用シューズを買ってもらった。
 
「体操服は男女で違うのね」と母が呟くように言ったら
「ええ。デザインは同じですが、高校生にもなると男女で体型が違うので、それを考慮してあります。それと仕上げの色も似てますが女子の体操服は下着が見えにくい布地を使っています」と販売の担当者が説明してくれた。
 
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布地が違うせいか、女子の体操服の方が500円高い。
 
母は私をいったん売場から引き離してから
 
「あんた、女子の体操服でいいんだっけ?」と訊いた。
「そうだね。私、もし男子の制服着ていく時もブラは付けてると思うし。それに私、体型も女の子体型だし」と答える。
「そうだよね」
 
と言って母は女子用体操服のSを買ってくれた。
 

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