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■桜色の日々・高校進学編(2)

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身体を洗い、浴槽に浸かって、大きく息をした。母が私を見つけて近づいてきた。
「あんた、やっぱりこちらに入るのね」
「うん」と言って私は微笑む。
 
「お父ちゃんには車に忘れ物した、といって向こうから離脱してきた」
「もしかして、修学旅行とかでも女湯に入った?」
「私が小学3年生の時に、天兄・風兄も一緒に家族5人でここに来たよね。兄ちゃんたちふたりは中学生で」
「そんな前かねぇ」
「あれが私が男湯に入った最後だよ」
「そう・・・・」
「小学校の修学旅行も中学の修学旅行も女湯に入ったよ。他にも何度か令子たちと一緒に女湯に入ってる」
 
「お友だちと一緒だと心強いかもね。でも、あんた胸大きくなったね」
「Bカップだよ」
「もう立派な女の子だね」
「えへへ。それでさ」
「うん」
「お母ちゃん、悪いけど、高校の女子制服代、出してくれない? 出世払いで返すから」
「うん。分かった」
 
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「ごめんね。よけいなお金使わせて」
「女の子にお金使うのは親の楽しみなんだよ。ところで、お前、いつおちんちん取ったんだっけ?」
「・・・えっと、まだ付いてるけど」
「あら、そうなの?」
 

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女湯の脱衣場から出てくる所を父に見られたくないので、先に上がった。身体を拭き、着替えのブラとショーツ、スリップを着て、その上にここに着て来たポロシャツとジーンズを穿いて、女湯の脱衣場を出た。
 
自販機でお茶を買って飲みながら、しばらく涼んでいたら、男湯の脱衣場から父が出てきた。私を見つける。
 
「晴音(はると、お前風呂入ったのか?」
「入ったよ。気持ち良かったよ」
「全然気付かなかった」
「あ、車の鍵、ありがとう」と言って鍵を父に返す。
 
「最近お前とあまり話せてなかったから、男同士ゆっくり話したかったのに」
「いつでも話そうよ」と私は笑って答える。
 
「まあ、でも高校入試も終わったけど、もうそのまま大学入試の臨戦態勢なんだろうな」と父。
「うん。N高校に合格したら1年目からもう補習、補習だよ」
「しっかり鍛えられろ。お前、早稲田に行きたいと言ってたな」
 
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「そうだねー。早稲田にちょっと憧れている先生がいるから」
「ああ。そういうのもいいだろうな。ただ、お前が在学中に俺は定年になってしまうから」
「大丈夫だよ。バイトもするし。奨学金も受けるし。でも少しだけ手伝って」
「うん。男の子はしっかりした所出た方がいいし、俺もまだ再就職して頑張る。女の子なら遠くにやらずに県内の短大か専門学校にでもやる所だけど、男はやはり四年制大学出てた方がいいからな」
 
うーん。。。こういうこと言われるとカムアウトしにくいなあ・・・・
 
「天尚(あまお)は京都の同志社、風史(かざみ)は大阪の関大、お前は東京の早稲田か。。。みごとにみんなバラバラの町に行くな」
「お互いあまり干渉されたくないんだよ」
「ああ、男の子はそんなものだろうな。でも独立心があっていいと思うぞ」
 
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「でも、ボク、国立に行くかも。もしかしたら。その方が学資も楽だし」
「ああ。それは助かるけど。東京で国立というと、東大か?」
「さすがにあそこに行く頭は無いよ。東京方面ってことで、一橋とか筑波とか横浜国大とか千葉とか」
「筑波って言ったら、昔の東京教育大学か」
「うん。更に古くは東京高等師範だよね」
「あそこ、うちより田舎じゃないか?」
「かも知れないという気はする」
 
「お茶の水女子大とかも考えたんだけどね、入れてくれなさそうだから」
「そりゃ、女子大は女しか行けんだろ?」
「ふふ」
 
さて。このあたりから「話」を持って行けるかな?と思ったのだが、その時、ロビーに置いてある大きなプラズマテレビで、ニューハーフタレントさんが出てきて話し始めた。父が顔をしかめる。
 
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「こいつは好かん」
「そうなの?」
「男から女に変わったとか。化け物じゃないか」
「そ、そう?」
 
えーん。こんなこと言われると、カムアウトできない!
 
「そういえば、お前いつも髪長くしてるな」
「うん。まあね」
「女みたいに長い髪は気持ち悪いぞ。切ったらどうだ?」
「そのうちね」
 
「中学ではその髪、注意されなかったか?」
「別に」
「高校はもっと厳しいぞ、きっと」
「そうかな。でもこれ女の子にも見えちゃう髪の長さだよね」
「うん。だから、入学前にきれいに切ったらどうだ?」
 
「ねえ、お父ちゃん、ボクがもし女の子になっちゃったりしたら、どうする?」
「そんな悪夢みたいなことは勘弁してくれ。しかしうちの会社にもいたよ。息子が女になっちまったって。いつの間にか、おっぱい大きくして、チンコも取ってしまってたらしい」
「へー」
「もう刺し殺してやろうかと思ったけど、取り敢えず勘当したと言ってた」
「へー!」
 
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取り敢えず今日はカムアウトできないな、と私は思った。刺し殺されるのは嫌だ!
 

3月15日は中学の卒業式であった。
 
公立高校の合格発表の前に中学の卒業式があるというのは「後は知らん」という意味では?などという説もあるけど、合格した子、合格できなかった子というのが曖昧なままの方が良いこともあるのだろう。
 
中学の入学式の日には、セーラー服を荷物の中に隠し持って、学生服で登校した私だったが、卒業式はしっかりセーラー服で出て行った。
 
なんだか結局男なのか女なのか曖昧なまま過ごしてしまった3年間だったなあと我ながら思い返す。
 
小学校の時の友人はそのままほぼ中学に上がってきたけど、高校への進学ではみんなバラバラだ。あるいは今日限りに二度と会えない子もいるかも知れないと思うと、少し感傷的な気分になった。
 
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実際広島の私立高校へ行く子も何人かいるので、そういう子たちとは手を取り合い、ちょっと涙を流したりして別れを惜しんだ。私は体育館での卒業式が終わった後、ホームルームに行く途中で、3年生の1学期だけ交際したTを見つけ手作りのクッキーを渡した。
 
「形に残らないものの方がいいだろうと思って」
「うん。ありがとう」
 
私たちは握手をして笑顔で別れた。彼は希望通り広島の私立男子高校への進学が決まっていた。
 
教室に行き、先生のお話を聞く。お話を聞きながら、また色々な思いが胸に込み上げてきた。
 
ひとりずつ卒業証書が渡される。「伊藤君」と呼ばれ、男子から名簿順に呼ばれていく。男子の方の最後まで行っても私の名前は呼ばれない。そのまま女子の方に行き「我妻さん」と令子が呼ばれる。私は微笑んだ。女子の最後の方「雪下さん」と好美が呼ばれ、その後、クラスで最後に「吉岡さん」と私の名前が呼ばれた。呼ばれた順序が卒業証書の連番の順序だから、私は結局この中学を女子として卒業することになる。「はい」と返事して受け取りに言った。「卒業証書。吉岡晴音(はるね)」と読み上げられて、私は証書を受け取った。
 
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「ただいまあ」と言って家に帰ると、母が「お疲れ様でした」と言って迎えてくれた。
 
「そうだそうだ。その卒業証書持ってるところ、記念写真」
「セーラー服のままでいいの?」
「あんた、この3年間の内7〜8割はセーラー服で通ったでしょ?」
「そんなに着てたかなあ・・・」
「だから、セーラー服の方があんたの本来の服だよ」
「えへへ」
 
卒業証書を広げた所を母がデジカメと携帯で写真に撮った。
 
「これ、私のお宝ファイルにしよう」と母。
「ふふ」
「次は高校の入学記念写真だね」
「女子制服で写ってもいい?」
「あんた、もちろんそのつもりなんでしょ?」
「うん」
 

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翌日。私は9時半に家を出て、N高校に行った。10時から合格発表である。発表が行われる玄関前に既に多数の受験生たちが来ている。カオリを見つけて寄って行く。
「お早う、早いね」
「うん。なんかドキドキしてさ」
 
やがて、環とみちるが来て、令子は発表の直前、9時59分になってからやっと来た。
 
高校の先生が数人出てきて、受験番号を書いた掲示板を立てた。自分の番号を探す。
「きゃー、理数科に通ってる!」
とみちるが嬉しそうな声をあげた。
「よかったね。おめでとう」
「ハルは?」
「通ってた」
「おめでとう」
「令子は?」
「うん。受験番号あったよ」
「理数科だよね?」
「うん」
 
「カオリは?」
「うん。番号あった」
「よかったね」
 
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私たちは難しそうな顔をしている環に声を掛けあぐねた。しかし令子が声を掛ける。
「環、どうだった?」
「うん・・・」
と環は暗い顔をする。
「だめだった?」
とみちるが心配そうに訊く。
 
「合格してた」と環。
「だったら、そんな顔をするなよ」と令子が言い、それから笑顔になった環をみんなでもみくちゃにした。
 

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私たちは各々受験票を提示して高校の先生から入学案内の書類をもらい、それから近くのスーパーに移動し、休憩所に行って自販機のコーラで祝杯を挙げた。
 
「情報交換。H高の5人も全員合格してたって」とみちる。
「良かった、良かった」
「週末は慌ただしくなったり、それぞれの家での話し合いとかあるかも知れないから、火曜の午後、10人で集まろうという提案が来てるけど」
「OKOK」
「じゃOKするねー」
 
「家庭内での話し合いって言っても、学費の安い公立をキャンセルして高い私立を選択ってのは、多分無いよね」
「無いと思う。勉強もK高の特進に行くよりN高やH高の補習の方が確実に鍛えられるし」
「N高の補習の凄さは有名だけど、H高もかなりのものだもんね」
「まあ、補習を受ける受けないは個人の自由だけどね」
「だてにどちらも毎年東大に何人も送り込んでないよね」
 
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「この後の日程はどうなるんだっけ?」
「19日月曜までに入学手続きでしょ。22日木曜に入学者説明会。ここで教科書や学校推薦の辞書とか必要なら買って、制服の採寸。4月に入って2日月曜に新入生の健康診断。一週間後の9日に入学式だね。制服は6日仕上がり」
と入学案内の封筒の中に入っていた紙を見ながら、みちるが言う。
 
中学の担任の先生にもみちるは電話を入れていた。
 
「結局、N高の理数に通ったのは、私たち3人と、男子では荻野君だけだって」
「わあ」
「木村君は普通科だったらしい」
「体調でも崩したのかな」
 
「でも定員40人の狭き門にうちの中学から4人も通ったってのが凄いけどね」
「やっぱり勉強会の効果があったね」
 
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私たちは夏休みから毎日受験に向けて勉強会をしてきていたのである。
 
「でも、これって進学実績表には、男2女2と載るのかな、それとも男1女3で載るのかな」と私が言うと
「男1女3に決まってる」
とみんなから言われた。
 
「どうもさ、ハルはまだ高校に学生服で通うか女子制服で通うか、迷ってるみたいなんだよね」と令子。
「もう迷うことがないように、おちんちん取っちゃえば?」と環。
「みんなで押さえつけといて、切っちゃおうか?」とみちる。
「ああ、それもいいね」とカオリ。
 

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