広告:國崎出雲の事情-10-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや
[携帯Top] [文字サイズ]

■夏の日の想い出・ベサメムーチョ(3)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

「きゃー! 色々パクっててすみません」
「いや、結構参考になるよ。自分の悪い癖に気づくし。マリはふたりのパフォーマンス見て笑い転げているけどね」
 
「おこぼれ商法ですけど、けっこう受けるんですよ。ローズ+リリーが売れていてくれる限り、こちらも商売になるかもって思ってます」
 
「うん。頑張って。特にこちらは来月からアルバム制作に入ってライブがほとんどできないから、その間、あちこち荒らし回るといいかも」
 
「わはは。本家のお墨付きもらったら安心して歌いまくろうかな」
「君たちふたりとも歌も上手いもんねー」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
 
「そちらは広島で公演してたの?」
「ええ。昨日広島市内で2箇所、今日も午前中に1ヶ所やって明日は岡山です」
「がんばるねー」
「ギャラが安いから数で稼ぐしかないんですよ」
「お疲れ様」
 
↓ ↑ Bottom Top

「ケイさんはこちらはお仕事ですか?」
「いや。プライベートな休み。このあと週末に大阪でロックフェスタに出て、7月からはスタジオに籠もりっきりになるから、その前にちょっと休みを取ったんだよ」
 
「マリさんも一緒ですか?」
「あの子は東京でおやつ食べてると言ってた」
「なるほどー」
 

↓ ↑ Bottom Top

「ところでさ、マリがふたりにもし会ったら訊きたいって言ってたんだけど」
「はい?」
 
「君たちって、そもそもそっちの傾向あったんだっけ?」
 
「あはは。それは企業秘密ということで」
とケイナちゃんが笑って言っている。
 
「でも私たち、プライベートでも常に女の子の格好して女言葉で話せと言われてるもんね」
「そうそう。そういう契約なんですよ。もう自分のこと『僕』とか『俺』とは言えなくなっちゃった。友人や家族と話していても『私』が出るんです。アウターだけでなく下着も女物しか着けちゃいけないし。大学にもずっと女の子の格好で出ていたから、性同一性障害と思われてるかも。こういう生活をもう6年間続けているかも、私服も男物が全然無くなっちゃって」
 
↓ ↑ Bottom Top

「ああ。そうなるだろうね」
 
「身体はいじってないんだよね?」
「さすがに商売のために男を捨てる気はありません」
「やはりノーマルなんだ?」
「でも実は体毛やヒゲは永久脱毛しちゃったんです」
「さすがに毎日処理が大変すぎるから」
「まあそのくらいは男に戻った時も支障が無いよね」
「髪も最初の頃はカツラだったけど今はもう自毛だし」
「お化粧は完璧に癖になってる」
 
「この仕事やめても男に戻る自信がないかも」
「ああ。もうハマっちゃってるでしょ?」
 
「一応ふたりとも彼女はいるんですけどね」
「最初の頃、女の子の格好で待ち合わせ場所に行くと、恥ずかしいから寄らないでとか言われましたよ」
とマリナちゃんが言う。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ああ、可哀想に」
「もう。私たちはこういうものなんだと納得してもらったというか」
「諦めてもらったというか」
「たいへんねー」
「結婚式は契約を守ればウェディングドレス同士で挙げる必要があります」
 
「うーん。まあそれもいいんじゃない?そうだ。女の子の声を出す練習とかはしないの?」
 
「実は・・・」
と言ってケイナは
「こういう声も出るには出ます」
とアルトボイスで言った。
「すごーい」
「でも女の声で歌ったら、ローザ+リリンとしての商品価値が無いから、私たちはあくまで男の声で歌うのが芸ということで」
とケイナ。
「ゲイの芸かな」
とマリナ。
 
私たちはお互い記念写真を撮り、通りがかりの女性に頼んで3人並んでいる所も撮ってもらってから、私はふたりに
 
↓ ↑ Bottom Top

「頑張ってねー。自分の身体を大事にして人生を誤らないようにね」
と言って別れた。
 

トイレの前で随分立ち話してしまったが、彼らが立ち去った後で正望が寄ってくる。それで私は取り敢えずトイレはパスして、そのまま駅前からタクシーに乗り、市内の高級ホテルに行った。ここには2年前(2013.10.1)に、政子・青葉と3人で泊まったなというのを私は思い出した。
 
あの時期、ちょっと行き詰まり掛けていた私はあの夜と前日博多での青葉のセッションで「創作の源泉」を再発見したのである。
 
さて正望はタクシーに乗る頃から、何だかそわそわしていたのだが、部屋に入ると私の方から進んで正望に抱きつき、深いキスをした。もう本人以上にあそこがもう我慢できない様子である。
 
↓ ↑ Bottom Top

それでファスナーを下げ、それを取り出して舐めようとしたのだが
「待って。せめて洗ってから」
と言ってバスルームに飛び込んであの付近を洗ってきたようである。
 
「じゃベッドで待ってて。私も洗ってくるから」
「うん」
 
それで私はバスルームに入り、トイレを済ませた上で、あの付近をていねいに洗い、歯も磨いておいた。そして身体を拭いて出て行くと、正望はベッドには入らず、そわそわして歩き回っていた。
 
「お・ま・た・せ」
私は彼のあそこに挨拶した。
 

↓ ↑ Bottom Top

政子は結局水天宮近くのコンビニでいろいろおやつを買ってからエルグランドを運転して自宅に戻った。そして(さっき和食の店で天ぷら5人前を平らげたことは忘れて)晩御飯代わりにケーキなど食べながらテレビを見ていたのだが、その内何だかもやもやした気分になってくる。
 
「やはりセックスしないと気分が乗らないな」
 
などと独り言を言ってから時刻表を調べ、新大阪行きの最終新幹線を予約した。
 
それで恵比寿駅まで歩いて行き、山手線で品川駅に移動して21:23発の新大阪行き《のぞみ265号》に乗る。
 
そして新幹線の快適なグリーン席で眠ってしまった。
 

↓ ↑ Bottom Top

目が覚めると新大阪に着いた所である。政子は駅の出口でふと目を留めたタコ焼き屋さんでたこ焼きを3個買うと(3個買ったら更に1個おまけに付けてくれた)、タクシーに乗って貴昭のアパートの住所を告げた。
 
それで政子はちょうど0時頃にアパートに到着した。自分が持っている鍵でアパートのドアを開ける。
 
そして政子はそこにとんでもないものを見た。
 
貴昭が女性とふたりでキッチンのテーブルに座って楽しそうに話していたのである。
 
「あっ」
と貴昭が声を出す。
 
政子はバタンとドアを閉め、急ぎ足で階段を降りた。大通りまで走って出る。ちょうど通り掛かってきたタクシーを掴まえる。
 
「**ホテルまで」
と一流ホテルの名前を告げる。
 
↓ ↑ Bottom Top

「**ホテル大阪ですか?大阪**ホテルですか?」
 
何それ?と政子は思う。
 
「どっちでもいいよ」
 
それで連れて行かれたのは何か安っぽいビジネスホテルのよう。政子はなんでこんなところに連れて来られたのだろうとは思ったものの、中に入っていくとフロントで
 
「予約は無いけど、部屋空いてませんか?できるだけ豪華な部屋」
と尋ねた。
 

↓ ↑ Bottom Top

お部屋の清掃をするので10分か15分待ってくださいと言われ、ロビーの椅子に座った。
 
貴昭から電話が何本も着信している。メールまで送られてきている。
 
《彼女が終電を逃してしまったのでちょっとお茶を飲んでいただけ。その後、彼女はタクシーで返した》
 
と書かれている。しかし政子は
《別にいいよ。その子と結婚したら?》
と返信した。
 
そして
「冬の馬鹿ー!!!」
と大声で叫んだ。
 
するとフロントの人が
「お客様、もし泥酔なさっているのでしたら、お泊まりはご遠慮頂きたいのですが」
などと言う。
 
「大丈夫です。私は正常に作動しています」
と政子は答えた。
 

↓ ↑ Bottom Top

私は25日の夜東京に戻ったのだが、政子がひじょうに機嫌が悪いので困惑した。
 
「冬、冬は私を捨てないよね?」
などと言うので
「私は死ぬまでマーサと一緒だよ」
と言ってキスした。
 
「セックスしたい」
と言うので、シャワーを浴びてからベッドに行き、たっぷりとふたりだけの行為を満喫した。
 
「やっぱり私、冬が居ないとダメだよー」
「ごめんね。ずっと一緒に居るから」
「私をひとりにしないで」
「私が生きている間は約束するよ」
 
「私たちどちらが先に死ぬのかなあ」
「たぶん私だと思う。身体の大改造をしただけでも、かなり寿命を縮めているよ」
「冬が死んだら私も死ぬ」
「マーサは子供や孫の面倒を見てあげてよ」
「そうだなあ。それもいいか。冬、元気な赤ちゃん産んでね」
「うん。いいよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

その晩は朝までふたりの営みは続いた。
 

結局翌日26日は午前中はほとんど寝ていて、午後から明日のロックフェスタの準備をする。七星さんが午後一番に来て、2時間ほど簡単に打ち合わせたが、その間、政子は「食料か尽きた」などと言って、エルグランドで買い出しに行ってきたようである。私が正望と旅行に出かけた22日の段階では2週間分くらいの料理のストックが冷凍室にあったはずなのに、留守中にどれだけ食べたんだ??
 
夕方、秋風コスモスと川崎ゆりこが来て、次のアクアのCDに関する打ち合わせをした。更に8時頃千里も来たのだが、結局、私と政子、千里、ゆりこ、ドライバーの佐良さんの5人で、ゆりこのポンガDXに乗って大阪に向かうことになる。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里の用事は、彼女の不倫相手(元夫)の細川さんの奥さんが出産しそうということで、その様子を見てきてくれと細川さんから頼まれたらしいのだが、大阪の細川さんのマンションに行ってみると、産気づいた奥さんが倒れて苦しんでいた。それを私と千里と佐良さんの3人で病院に運んだ。
 
奥さんは結局2日後の6月28日午後になって赤ちゃんを産んだ。41時間にも及ぶ大難産であったが、母子ともに無事で私たちはホッとしたのであった。
 

↓ ↑ Bottom Top

日付を3ヶ月ほど巻き戻す。
 
KARIONは全国ツアーを2月7日から3月22日までの土日にやっていたのだが、平日は空いているので、その時間を使ってシングル、更に年末くらいの発売を想定したアルバム作りを進めていた。
 
そのシングルは4月1日(水)に発売した。発売記者会見にはKARIONの4人、その両脇に三島さんと土居さん、その更に左右に作詞作曲者の福留彰・相沢孝郎・櫛紀香・黒木信司の4人が並ぶという状態で始められた。
 
そして最初に本日公開のPVを上映しながら4人が壇上で歌う(PVはカラオケバージョンを使用する:音声オフにして伴奏まで生でやると、歌と映像が合わなくなってしまう)。
 
最初は『たんぽぽの思い』(泉月)という可愛い曲である。タンポポが風に飛んで、そこからアニメーションになり、KARIONの4人の顔をしたタンポポが空を舞っていく。そのたんぽぽのように彼の元に行きたいと歌った乙女のような恋歌である。
 
↓ ↑ Bottom Top

次は『隠れ片想い』(福孝)というフォーク調の曲で、ここには作詞者の福留さん自身の顔を元にしたアニメキャラが登場して、思い人(顔が映っていない女性キャラ)への気持ちを淡々と綴った曲になっている。その思い人の《今彼》のキャラが作曲者の相沢孝郎(TAKAO)さんの顔になっている。
 
『シンデレラ・トレイン』(照海)は、ポップロックの曲。いい雰囲気でデートしていた2組のカップルが0時になると「終電が出る」と言って慌てて駅に駆け込んで別々の方面行きの電車に乗るというアニメになっている。カップルAの男とカップルBの女、カップルAの女とカップルBの男が同じ電車のすぐ近くに立っている様子が何か波乱を予感させるものになっている。ここに出てくる2組のカップルの顔は、A組が小風とSHIN、B組が和泉とTAKAOである。
 
↓ ↑ Bottom Top

最後に『農業詩人の歌』(櫛信)は畑を耕し、作物を育てる夫婦を描いたアニメで、夫婦の夫の方は作曲者の黒木信司(SHIN)さんの顔になっている。労働歌っぽいリズムで「ヨイショ・ヨイショ」というボイス・パーカッション風の声が入っている(歌っているのはVoice of Heartのアルト担当タラちゃん)。
 
なお、CDの収録順は、『たんぽぽの思い』『隠れ片想い』『農業詩人の歌』 『シンデレラ・トレイン』の順である。
 

↓ ↑ Bottom Top

今日の4人の衣装はタンポポをイメージしたクリーム色のドレスである。4人が歌い終わって席についたところで質問が出る。
 
「今回は全部アニメのPVなんですね」
「はい、いつもはライブ映像が多いのですが、今回は珍しく予算がついたので」
と和泉が答える。
 
「アルバムの方はいつ頃出すんですか?」
「まだハッキリしませんが、年明けくらいになるのではと考えています」
 
「今回のアニメの中にKARIONのみなさん、それに作詞作曲者の方が入っているようですね」
「はい。葵照子・醍醐春海は顔出しNGということで入らず、代わりに私とこかぜが出て、TAKAOさん、SHINさんにも出演してもらいましたが他は各々の楽曲作者が出演していますね」
と和泉は答える。
 
↓ ↑ Bottom Top

「『農業詩人の歌』は櫛紀香さん作詞・黒木信司さん作曲ですよね?櫛紀香さん出てましたっけ?」
「畑を耕している夫婦の夫が黒木さんで、妻が櫛さんです」
 
これに記者たちがざわめく。
 
「あのぉ、櫛さん女装ですか?」
「してません。顔を出しただけです」
と櫛紀香本人が答える。
 
「新機軸で女性に転換なさる訳ではないですね」
「すみません。僕、そういう趣味は無いので。黒木さんとどちらが妻役をやるかはジャンケンで決めました」
 
あちこちで小さな笑い声が起きていた。
 
「櫛紀香さん、大学を卒業なさったんでしたっけ?」
「はい。先月卒業しました。それで本当に農業詩人になりました。今雪解けした後の耕作の準備をしている所です」
 
↓ ↑ Bottom Top


↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8 
■夏の日の想い出・ベサメムーチョ(3)

広告:國崎出雲の事情-10-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや