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■夏の日の想い出・空を飛びたい(7)

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やがてCrewsawの演奏が終わり、私たちが伴奏陣と一緒にまた出て行く。
 
後半は『遙かな夢』を歌った後で、実力派女性歌手の歌をたくさん歌った。
 
松原珠妃自身が「これは歌ってもらわなきゃ」と言った『黒潮』、保坂早穂の『ブルーラグーン』、芹菜リセ『黄色い鍵』、松浦紗雪『追想のロンド』、花村かほり『帰りたい』、Superfly『愛をこめて花束を』、MISIA『忘れない日々』。そして宇多田ヒカル『Automatic』。
 
このあたりは絶対に「並みのアイドル歌手」には歌えない、声域が広い曲ばかりである。松原珠妃は、このデュオの最大の魅力はケイの歌唱力なんだから、それを見せるのが絶対必須と言って、こういうラインナップを決めたのである。MISIAの『忘れない日々』で私はMISIA同様ホイッスルボイスで超高音も出している。
 
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アレンジはいつも珠妃の曲のアレンジをしてくれている芸大作曲科出身の若手女性アレンジャーさんが特急でしてくれたのだが、4オクターブ近い声域を持つ私と1オクターブ程度の声域のマリの声で「デュエット」に聞こえるように編曲するのに彼女はかなり悩んだらしい。
 
『Automatic』を歌い上げた所でMCをする。
 
「みなさん、ローズ+リリーの初ライブ、熱心に聴いてくださってありがとうございます。いよいよこのライブも最後の曲になってしまいました。これは年末くらいに発売するCDに入れる予定の曲ですが、実は今朝できあがったばかりの曲です。上島雷太先生作詞作曲の『甘い蜜』」
 
これを演奏することは私自身が今日のお昼、KARIONの公演前の休憩時間に思いつき、珠妃、上島先生、秋月さんに電話してOKを取り、大阪から新横浜に移動する新幹線の中でノートパソコンでアレンジ譜を書き上げて、こちらで印刷し、直前にバンドの人たちに配ったものである。須藤さんは今朝できた曲のアレンジ譜が目の前にあるのでびっくりしていたが、伴奏の人たちは初見能力の高い人たちばかりなので、問題無く演奏してくれた。
 
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いったん幕が下りるが、アンコールの拍手で呼び戻される。KARIONも私は和泉・畠山さんと話し合って、アンコール前に「お色直しをしない」方針を採っているが、ローズ+リリーでも政子と2人で須藤さんにお願いし、着替えずにアンコールの拍手があったら、お客さんを拍手で疲れさせないようにできるだけ早く出て行くという方針にさせてもらった。
 
汗だらけではあるが、観客の声援で疲れも吹き飛ぶ気分だ。
 
アンコールの御礼を言う。
「では私たちのインディーズ・デビュー曲『明るい水』」
 
この曲は元々はやや演歌っぽい曲で、音階もヨナ抜きであるのだが、須藤さんがとてもポップなアレンジをしたのが結果的には受けた感じもする曲である。今回のツアーでのアレンジも、その線に沿って、結構ロック的なアレンジにしてある。とても楽しい歌なので、政子も本当に楽しそうに歌っている。「明るい水」というのは、もちろんお酒のことで、みんな酔っ払ってしまえば喧嘩も無くなる、平和な世の中になる、という楽天的な歌だ。大きなプロダクションなら、女子高生にこんな歌を歌わせていいのか?と考えたろうが、その辺りのアバウトなのが弱小プロダクションの良さである。
 
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かなり盛り上がった所で、大きな拍手の中、私たちは伴奏の人たちと一緒に下がる。しかしアンコールの拍手で呼び戻される。私と政子の2人だけで出て行く。
 
「アンコールありがとうございます。それでは本当に最後の曲。松田聖子さんの『SWEET MEMORIES』」
 
私がグランドピアノの前に座る。そして私のピアノ伴奏でふたりで歌う。甘くせつないこの名曲を、しっとりと歌いあげて、私たちの演奏は終わった。
 
割れるような拍手の中、私たちはステージ前面に並んで丁寧にお辞儀をし、幕が降りた。
 

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そういう訳で私たちの既存のCDには入っていたものの外されてしまった曲が『渚にまつわるエトセトラ』『A.S.A.P.』『恋に落ちて』『恋のコンチェルト』
『甘い視線』である。松原珠妃の「あんたたちには合わん」のひとことでセットリストから外された。
 
その松原珠妃はこの横浜公演を見ていてくれて、後で私に電話してきて
「マリちゃんのスター性が凄い。あんたたちはすぐミリオン歌手になる」
と言った。
 

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翌日はKARIONは神戸公演。昨夜和泉たちは大阪に泊まっている。こちらは札幌公演なので、さすがに掛け持ちは無理である。私は早朝から羽田に行き、政子と須藤さんと合流。新千歳に飛んだ。7月のKARIONキャンペーン、10月のローズ+リリーのキャンペーン、今月1日のKARIONライブに続いて4度目の北海道行きである。KARIONもローズ+リリーもANAなのでマイルがどんどん貯まる。私は今年はブロンズメンバー確実だな、と思った。
 
この日は曲順を少し入れ替えた。先頭を『その時』でラストを『ふたりの愛ランド』
にしてみて、『明るい水』は最初の方に置き、『甘い蜜』はアンコールにしてみた。このあたりは須藤さんや帯同してくれている秋月さんの意見で調整しているのだが、結構毎回コロコロと入れ替わった。また昨日の今日では無理だったが、翌週からは一部曲の入れ替えなどもしたので、この月のツアーで私たちが歌った曲は全部で30曲ほどに及ぶ。
 
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また昨日の横浜公演ではリハーサルをしなかったが、今日の札幌公演は伴奏陣から、一度客のいないところで確認しながら演奏しておきたいという要望が入りリハーサルを行った。秋月さんは帯同しているレコード会社の技術スタッフに頼んでリハーサルも全部録音させていた。
 
この日のお昼御飯はジンギスカンだった。政子は蟹が食べたいと言ったのだがKARION同様、蟹で万が一当たったりしたらということから、最初ハンバーガーなどという話だったのだが、蟹がダメならジンギスカンと政子が言い、ジンギスカンなら、そう当たることもあるまいというので、伴奏陣も入れて一緒に食べに行った。七星さんと私たちは並んで座ったのだが、七星さんが政子の食べっぷりを見て呆気にとられていた。私はいつか美空と政子を並べてこういう焼肉系のものを食べさせてみたい気分になってきた。
 
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お昼から帰って来た所でパソコンを開けてメールチェックしたら和泉からメールが入っている。何だろうと思ったら
「いい詩ができたから曲を付けて」
 
というメールだった。『優視線』という、敢えて「上から目線」で書いた三角関係の曲だ。あの子も可愛いかも知れないけど、私の方が絶対勝つんだもん、という強気の恋歌である。私は何だか、私と政子と和泉のことを言われている気がして苦笑いした。
 
でもいつも美しい詩を書いている和泉も、こんな詩が書けるのかと思って楽しくなり、ちょうど政子が
 
「ジンギスカン食べ足りなかった」
と言って、ヴァイオリニストの女子大生を誘って、ケーキを食べに行っていたのをいいことに、すぐ曲を付けて返送した。
 
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なお、私はこの時期、auのデータ通信専用カード W05K で通信していた。ノートパソコンもCubaseを「軽く」使えるパワーのものが欲しいと思って9月に買った富士通のCore2-Duo T8100(2.1GHz) のWindows-XP機(VistaからDG)でメモリーも4GB積んでいた。私のプロ作曲家としてのスタート時期を支えてくれた名機だった。
 
一方の和泉は一貫して愛用しているPanasonicのシリーズで、通信は《京ぽん》を使用していた。ウィルコムなので、都市部では大丈夫なのだが、キャンペーンやPV撮影などで、どうかした場所にいると圏外で通信できないこともあった。
 

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なお、この日はローズ+リリーの『その時』がBH音楽賞の新人賞を受賞し、その授賞式が東京で行われていた。私たちは札幌に居て出られないので、甲斐さんが代理で授賞式に行き、賞状と盾をもらってきていた。この年は、AYAも私たちと一緒に新人賞を受賞しているが、KARIONは選外だった。後で聞いたのでは、最下位で新人賞の枠に滑り込んだ子と僅差だったらしい。
 
その和泉たちだが、その日はステージ上のキーボードの上に私が大阪公演で置き去りにしておいたヴァイオリンと、カトレアの花瓶が乗せられていたらしい。御丁寧に花瓶には黒いリボンまで付けてあった。それで、その花瓶については何も説明しなかったので、観客の中から「キーボード奏者死亡?」などという噂が流れ、実際事務所やレコード会社にも問合せの電話が掛かってきたらしい。
 
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キーボード奏者が「柊洋子」であると認識しているファンも結構いて
「まさか、柊洋子さん、亡くなったんですか?」
という質問もかなりあったようだが、レコード会社はそもそも柊洋子という名前を知らなかったし、事務所で対応した人も
「伴奏者やスタッフが亡くなったという話は聞いていませんが」
と、戸惑うような反応だったらしい。
 
カトレアの花瓶は、もちろん小風の悪戯である。
 

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翌週の土曜日。11月15日。この日は午後が名古屋でKARION, 夕方から金沢でローズ+リリー。今回のツアーでいちばん大変な日である。
 
私は朝から新幹線で名古屋に移動し、リハーサルを経て、13時開演のKARIONのライブに出演した。私が元気にキーボードを弾いている姿を見て、公演後
「柊洋子さん、生きてた!」
という書き込みがネットにかなりあったらしい。
 
私は基本的にこのツアーではキーボードのみの演奏予定だったのだが、この名古屋公演でだけは、『水色のラブレター』で、今回のツアーで頼んでいるサポートの女性ヴァイオリニストさんと、ツイン・ヴァイオリンで伴奏した。
 
彼女は芸大の出身らしかったが、休憩時間に彼女から
「♪♪大学の学生さんですか?」
と訊かれた。アスカが♪♪大学に行っているし、○○ミュージックスクールで私にヴァイオリンを指導してくれた先生も♪♪大学の出身なので、私の演奏にその系統の音を感じたのかも知れない。
 
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私が普通の高校生ですよと答えると、ぜひヴァイオリン科に進学しましょうよと随分勧められた。
 
そしてこの日は進行が少し遅れ、15:20にセカンドアンコールの『Crystal Tunes』
が演奏終了した。演奏が終わると私は観客の声援に応えて手を振っている和泉たちをステージに置き去りにして舞台袖に下がり、ウィッグを外して望月さんに渡すと、待たせてあったタクシーに飛び乗る。
 
小牧基地に急行してもらう。女性のドライバーさんを指定していたので私は車内で服を脱ぎ、男装になった。予め発行してもらっていた通行証で基地内に入ると「これを着て下さい」と言われて耐Gスーツを着せられる。
 
「ところでF15には単座機と複座機があるけど、どちらがいい?」
と三佐の階級章を付けた中年の幹部自衛官に訊かれる。
 
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「えっと、どう違うのでしょうか?」
「複座だと2人乗りだから、パイロット付き。単座だと1人乗りだから君が操縦することになる」
 
「イーグルの操縦なんて無理です!」
「楽しいよ。超音速で旋回すると身体がバラバラになりそうな感覚だから」
「遠慮します。私、自動車の免許も持ってないから。複座でよろしくです」
 
それでF15JDの後部座席に乗り込んだが、
 
「君、急ぐの?」
と前の座席に乗っているパイロットに訊かれる。
「はい」
 
「じゃ、超音速で飛ぼうか?そしたら3分で到着する。亜音速だと10分掛かる」
 
亜音速の3倍の速度で飛んだ時に掛かるGを考えたら恐ろしい。
 
「済みません。亜音速でお願いします」
「超音速楽しいのに! 身体が潰れそうでさ」
「あはは」
 
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それで酸素マスクを付けるように言われ、飛行機は滑走路に入り離陸したが・・・・
 
それから10分間?のことは私はできたら忘れたい。あれは絶対超音速出ていたと思う。
 

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ともかくも気絶も免れて(これはやはり耐Gスーツのおかげ)小松基地に無事到着した。いや「生還」した気分だった。
 
「何か性転換手術でも受けてる気分でした」
「あはは。君、性転換して女の子になったら、きっと美人になるよ」
「やっちゃおうかなあ。これを経験したら何も怖くない気がします」
「ああ、そう言う人はよくいるね〜」
 
私は御礼を言って、耐Gスーツを脱ぎ、待たせてあったタクシーに飛び乗る。北陸自動車道を快調に走って、金沢西ICで降りて国道8号線に入ったが。。。。この運転手さん、8号線も北陸道も速度が変わらない!! いいのか?こんなに出して?
 
8号線を降りた後も、市内はうまい具合に空いていて(さすがに市街地は50km/hで走ったが)、スイスイと金沢駅まで到達した。金沢駅西口で降りた時に時計を見たら16:40だった。僅か1時間20分で名古屋から金沢まで来てしまった。F15イーグル凄い!!
 
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金沢駅の構内を走り抜けて音楽堂の楽屋口に飛び込む。金沢駅の東口は混むのでわざと混まない西口で降ろしてもらったのである。私が男装で来たのでまた咎められたがすぐに女の子の服に着替え、ロビーに出た。入場を待って並んでいるファンがいたので手を振っておいた。
 

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その日は公演が終わってから金沢市内のホテル(というか、公演会場そばのホテル)に泊まったのだが、この日、私と政子は再度ふたりの関係を見直し、当面ふたりは「友だち」でいること、「友だち」だから、一緒のベッドに寝ても平気だけど、もしセックスしたくなったら枕元に置いておくコンちゃんを開封すること(《御守りルール》)、また私と政子が書く曲のクレジットを「マリ作詞ケイ作曲」ではなく「マリ&ケイ作詞作曲」にすることなどを決めた。
 
この日の金沢のホテルの一夜というのは、私と政子にとって、ひじょうに大きな節目となる日でもあったのである。
 
夜中にふと目が覚めて、自販機のお茶を買いに外に出た。その時携帯にメールが来ていることに気付く。見たら小風だ。
 
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■夏の日の想い出・空を飛びたい(7)

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