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■夏の日の想い出・空を飛びたい(6)

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「ところで今日はもしかして『新曲あげるから取りに来て』と言われたんじゃないの?」
「うん」
「それってさ『今夜もしかして時間が取れたら曲を書くことができるかも知れないから、来て待っていると優先して書くかもよ』程度の意味だから」
「えーー!?」
 
「でも上島先生から曲をもらってるアーティストとしては、そんなこと言われたら取りに来なきゃいけない。眠ったら後回しにされるから徹夜覚悟。でも頑張って起きていても、その日はもらえないかも知れない。私も過去数回空振りになったことある」
「ひゃー」
 
「だから、こちらが先にダウンしないように、適当に休んでいた方がいいよ。私はこういう時は、頭の9割くらいを眠らせて待機してる」
 
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「そんなこと出来るって、禅宗の修行僧並みだね!」
 

それで私もできるだけ意識を飛ばして身体と精神を休ませながら待っていた。その内、23時頃に政子は眠ってしまう。須藤さんが起こそうとしていたが、いったん起きてもまたすぐ寝てしまう。困ったなあという顔をしていた須藤さん自身も1時頃には眠ってしまった。待っている他のアーティストにも、ダウンする人が相次いでいる。
 
上島先生がレコード会社の人と打ち合わせを終えたのが2時過ぎで、その時点で起きていたのは、私とその歌ともうひとりの歌手の3人だけであった。
 
それで上島先生は最初に篠田その歌に曲を書き始めた。その途中で雨宮先生が来訪する。雨宮先生は明らかに酔っていたが、いきなりその歌にキスしようとして、思いっきり蹴られていた! なんか今日は女の子が偉い先生を蹴る所ばかり見る!!
 
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上島先生はそれを笑いながら見ていたが、やがて曲を書き上げてくれて、その歌は3時すぎに「じゃね」と言い笑顔で帰って行った。
 
もうひとり待っていた人にそれから1時間ほどで曲を書き上げてその人も4時頃帰宅する。残り起きているのは私と雨宮先生だけである。上島先生は大量の人が応接室で寝ているので
 
「この人たち起こしちゃ悪いね。モーリー、ケイちゃん、こっちに来て」
と言って、私たちを居間の方に連れていき、そちらで本棚の上からヴァイオリンケースを取ると、中から楽器を出して、それで作曲を始めた。上島先生がヴァイオリンを弾くことは知ってはいたが実物を見たのはこの時が最初だった。
 
「相変わらず雷ちゃん、ヴァイオリンが下手ね」
などと雨宮先生が言う。
 
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「放っといてくれ」
と笑って言いながらもヴァイオリンで音の流れを探っているようで、少し弾いては五線紙に書き込み、少し弾いては書き込みというのを繰り返している。
 
私はその様子を見ながら、ふと本棚の上にもうひとつヴァイオリンケースがあるのに気付いた。
 
「あれ、ヴァイオリン、もうひとつあるんですか?」
と私が訊くと
 
「それは高岡の遺品なんだよ」
とおっしゃる。
 
「ああ、そうだったんですか」
と言って、私はじっとそのヴァイオリンケースを見つめていた。
 

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「ケイちゃんもヴァイオリン弾くの?」
と上島先生が訊くので
 
「ええ、少し」
と答えたのだが、雨宮先生が
「ケイちゃんはヴァイオリンのプロ」
と言っちゃう。
 
「ほほぉ」
「だって、ケイちゃんは篠田その歌のヴァイオリニストだったんだよ」
「え?そうなの?」
 
「そうですね。初期の頃、伴奏させてもらってました」
「雷ちゃんの作曲家としての処女作『ポーラー』のPVで、ケイちゃんヴァイオリン弾いてたから」
「えー、凄い!」
 
私はその頃のことを雨宮先生には話していないのだが、自分で色々調べたのであろう。
 
「私そのPV見たわよ。当時はあどけない可愛い女子中学生だったけど、今は少し色気もある女子高生に育ったわね」
 
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「お恥ずかしいです」
 

「だけど、ケイちゃんの『遙かな夢』を見た時、やられたと思ったよ」
と上島先生は語る。
 
「だから私言ったでしょ。この子凄い才能持ってるからって」
「うん。あの日モーリーに言われてライブに行く予定をキャンセルして『その時』
を書いたからね」
 
「え?そうだったんですか? こないだ聞いたのでは浦中さんから頼まれた晩、たまたま時間が空いてたから書いてくださったと」
 
「私が言ってキャンセルさせたのよ」
と雨宮先生。
 
「わあ!」
 
「こないだも言ったように、僕は君のことはライバルだと思っているから、僕を追い越すような作品を書きなさい」
 
「はい。頑張ります!」
 
「ところでケイちゃんの楽曲のまとめ方って、ちょっと蔵田君っぽいよね。ケイちゃん、もしかしてドリームボーイズ好き?」
 
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ってか、蔵田さんの曲をまとめてるのが私だからね〜。
 
「あ、その件は済みません。守秘義務でお話しできません」
「ああ、蔵田君と少し関わりがあるのか」
 
と言って上島先生は納得したような顔をした。
 
「でも蔵田君と関わりがあるのなら、僕から楽曲をもらって叱られなかった?」
「叱られましたが、許してもらいました。上島先生がもし今後も書いてくださるなら、私の楽曲とカップリングで出していくのがいいとも言われました」
 
「だったら、僕もますます燃えるね。蔵田君とケイちゃんをまとめて粉砕できるような曲を頑張って書くよ」
 
と上島先生は楽しそうに語った。
 

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そして先生は2時間ほど掛けて『甘い蜜』という、ほんとに甘い感じのポップスを書き上げられた。
 
「宣言する。この曲はミリオン行くから」
と先生はおっしゃる。
 
「ありがとうございます。これで私もミリオン歌手になれます」
 
と私が答えるので、雨宮先生が楽しそうに見ている。
 
「ケイちゃんって遠慮とかしないし常にポジティブだから気持ちいいね」
「私もマリも遠慮とか謙遜とかを知りませんので」
 
「うん。スターはそれでいい」
と上島先生は楽しそうにおっしゃった。
 

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私が政子と須藤さんを起こして上島先生の御自宅を辞したのは朝6時であった。
 
「私、夕方まで寝てていいですか? まだ眠たい」
と政子が言うので
 
「それじゃ17時くらいまでには横浜の会場に入って」
と言う。
 
「ケイは私の家に来て一緒に寝ない?」
と政子から言われたが
 
「ごめーん。○○プロから頼まれた用事があるから行ってこなくちゃ」
と言う。
 
「先週もそれで出てたね」
「うん。色々としてくださってるから、こちらも頑張らなきゃ。あ、それで須藤さん、そちらが長引いたら、私、会場に入るの18時くらいになってしまうかも知れません」
 
「うん。開演は19時だから、18時半くらいまでに来てくれればいいよ」
と須藤さんはアクビしながら答えた。
 
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須藤さんはあまりリハーサルというのが好きではないようで、今回のツアーでも、当初はリハーサルの予定が全く入っていなかった。結果的には札幌や福岡などではリハーサルをしているのだが、それも伴奏の人に言われて渋々という感じであったが、私としては、そのおかげで助かった面も多かった。
 

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私は政子たちと別れると、タクシーに乗っていったん自宅に戻り、タクシーを待たせたまま、母に徹夜になったことを謝って、そのまま急いで着替え、ヴァイオリンを持つとタクシーに戻って八王子駅まで行ってもらい、横浜線に飛び乗り新横浜に出る。そして新幹線で大阪に入った。タクシーの中でも寝ていたが、新横浜ではわざと新大阪終点ののぞみに乗り、車中で熟睡した。新大阪駅で車掌さんに揺り起こされて下車した。
 
会場に行くと、和泉たちが待っていた。
 
「優秀、優秀。ちゃんと来たね。明日も大丈夫だよね?」
と小風から言われるが
 
「明日はローズ+リリーが札幌だから無理」
と答える。
「神戸の公演が終わってから駆け付けられない?」
「神戸から札幌まで、どうやっても6時間は掛かる。そもそも明日は札幌日帰りにするので午後の時間の公演だから、完璧に時間も重なっているんだよ」
 
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「やはり蘭子が2人いないから悪いんだ」
「ごめーん」
 

その日の公演は14:58に終わった。私は幕が下りるのと同時に和泉たち3人とハグするとKARION公演では一貫して付けているロングヘアのウィッグを外して楽屋口に走って行き、待機させておいたタクシーに飛び乗る。新大阪駅に急行し、新幹線に飛び乗る。15:17のに乗るつもりだったが1つ前の便15:07が少し遅れて入って来たため幸運にもそれに乗ることができた。
 
一方、会場では長身の望月さんが私が使っていたのと同じウィッグを付けて、私のヴァイオリンケースを持ち、和泉たち3人と一緒に別途タクシーに乗り込み15:10くらいに会場を離れた。それで公演が終わった後で楽屋口の方を見に行った人は「いづみ・みそら・こかぜの3人と洋子」がその時刻にタクシーで会場を出たように見えたはずである。
 
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私の方は車内でいったん男装しておいた。今回の11月のツアーの「移動中」は私は概ね男装していた。そして新幹線が17:24に新横浜に着くと横浜線ホームへと走る。そして17:29の横浜線に飛び乗る。菊名で東急に乗り継ぎ17:48に横浜のみなとみらい駅に到着。そこからまた走って楽屋に飛び込んだのは17:53であった。これを見た人がいても、男性スタッフが楽屋口に駆け込んだようにしか見えなかったであろう。
 
「冬ちゃん、なんで男の子の格好なの?」
と須藤さんから言われるが
「今着替えます」
と言って、大急ぎで汗を掻いている下着から全部着替えて、ついでにステージ衣装を着けた。私は政子を促して18:00の開場の際、ドアが開く直前、ホールのロビーで待っているファンの人たちに笑顔で手を振った。歓声が上がっていた。
 
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ローズ+リリーの公演では、発表している曲が、2枚のCDで10曲だが、その大半がカバー曲である。オリジナル曲は実際問題として『その時』と『遙かな夢』
しか無いのだが、『明るい水』『七色テントウ虫』『ふたりの愛ランド』もそれに準じる扱いにしようということで、(私と加藤課長と松原珠妃の間で)話はまとまっていた。
 
最初はノリの良い『ふたりの愛ランド』で幕開けする。
 
伴奏の人たちの楽しそうな音に乗って私たちはこの曲を熱唱した。石川優子とチャゲのデュエット曲であるが、私たちは石川優子のパートを私が、チャゲのパートをマリが歌っている。2000人クラスの会場で歌うのはマリは初体験であったが、のびのびと楽しそうに歌っているのを見て、私はやはりこの子はスターだというのを認識した。
 
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その後、まずは女性デュオの曲を歌う。
 
PUFFYの『アジアの純真』、ピンクレディの『UFO』、Kiroroの『長い間』、t.A.T.u.の『All the things She said』(英語版)、Winkの『愛が止まらない』。
 
『All the things She said』は先月のキャンペーンでもよく歌った曲で、間奏でキスしたら叱られたが、今回のツアーではキスはしていない。この時期はまだ私達もかなり自制的だった。
 
この後、リリーフラワーズの『七色テントウ虫』を歌った後、少し長めのMCをしてから、今度は女性グループの曲を歌う。
 
AKB48の『会いたかった』、モーニング娘。の『LOVEマシーン』、SPPEDの『White Love』、Princess Princessの『Diamonds』、と歌い、JITTERIN'JINNの『夏祭り』で盛り上げてから前半最後は上島先生の曲『その時』をしっかりと歌い上げた。
 
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ゲストコーナーには同じ△△社のロックバンド Crewsaw が登場して3曲演奏してくれた。彼らはこのツアー全部に付き合ってくれる。これも最初の原案では△△社のインディーズの女の子歌手を歌わせるということになっていたのが松原珠妃が「メインのアーティストと競合する子を出してどうする?」と言い、全く傾向の違う Crewsaw を指名したのである。その場で津田社長に電話して直談判で出場を決めてしまった。ちなみに、Crewsawのスケジュールは真っ白なので、即ツアー同行を同意してくれた。
 
ミニスカの女子高生デュオが歌っていた所に突然背広を着たおじさんたちが入って来て演奏を始めるので観客は戸惑っていたが、彼らが結構ノリの良い曲を演奏するので、会場はすぐ手拍子で満ちて、雰囲気は良かった。
 
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私たちはその演奏を聴きながら、服を下着から全部着替えてお茶を飲み休憩していたが、政子は私たちの伴奏でサックスやフルートを格好よく吹いてくれた七星さんに憧れてしまったようで
 
「何歳くらいからサックス吹いてるんですか?」
「そのフルート、総銀ですよね? どこのメーカーですか?」
などと質問したりして、楽しそうに話していた。
 
七星さんも政子のことが気に入ったようで、政子が中学時代吹奏楽部でフルートを吹いていたというと、あれこれフルートのことで話題が盛り上がっていた。
 

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■夏の日の想い出・空を飛びたい(6)

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