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■夏の日の想い出・小5編(6)

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それで翌日「女の子下着を着けて」体操服を持ってくるよう言われ、奈緒が「私と冬の仲だからいいよね」と言って、ブルマを貸してくれたので、それを穿いて測定してみた。
 
「計測結果が、握力28kg/25kg, 背筋48kg, 反復横飛 40回, 垂直飛 31cm, 立位体前屈 プラス25cm。全然違う! まるで別人!」
 
と香坂先生は本当に驚くように言った。
 
「これ、普通の女子の数値ですかね?」
と奈緒。
 
「握力と、立位体前屈が大きい。それ以外はふつうの小学5年生女子の数値」
 
どうも先生も奈緒も「男子」の数値と比較するつもりは毛頭無いようだ。
 
「やはりピアノ弾くから握力あるんですよ。それと冬は少なくとも女の子の服を着ている時はすごく身体が柔らかいから。冬、180度開脚してごらんよ」
 
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「うん」
と言って、私は左右に足を開いてぺたんと腰を床に付けてみせる。
 
「そんなに身体がやわらかい人が立位体前屈マイナスなんてありえなーい!」
 
「でも180度開脚できるのは、女の子の服着てる時だけだよね?」
「そうだね。男の子の服を着てる時はぜんぜんダメ」
 
「ね、唐本さん、明日から女の子の服を着て、通学してこない?」
「えっと・・・・」
 
「賛成!」
と奈緒は言った。
 

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10月最後の日曜日の学習発表会が開かれ、うちのクラスは全員参加で『眠り姫』
を上演した。プティパとチャイコフスキーによるバレエ『眠り姫』(日本では『眠りの森の美女』と訳しているが、原題は Спящая красавица(直訳すると眠っている美人:英語の Sleeping Beautyも直訳)で「森」という単語は含まれていない)の物語に準じて進行する。但しバレエを踊ったりはせず、ふつうに歩いて出てきて台詞をしゃべる。
 
「全員参加って、お前、何の役するの? 去年は柱だったか何かでびっくりしたけど」
と父から言われた。
 
「去年は灯篭だね。今年は台詞があるよ。カラボスだよ」
「なんだっけ?」
「悪い魔女だよね。オーロラ姫に呪いを掛ける人」
と姉が言う。
 
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「何だ、女役か?」
「ああ、悪役だから女子が誰もやりたがらなかったから、男子の方で誰かやってと言われて」
 
などと言っておいた。
 
「そういえばあんた幼稚園の時も『白雪姫』の母親役やってたわね」
と母。
 

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劇は約30分にまとめてあるので、結構忙しい。4幕構成で幕間は1分である。
 
序幕(10分)は、オーロラ姫が生まれた時で、たくさんの人が祝福に訪れるがたいていの登場者は「おめでとう」とだけ言って下がっていく。やがて5人の魔女が現れて、まずは王が魔女たちに貴金属(プラチナ・金・銀・ホワイトゴールド・ピンクゴールド)の贈り物をする。すると魔女たちはお礼にと、ひとりずつ姫にプレゼントをする。
 
「姫には優しさを贈ります」
「姫には勇気を贈ります」
「姫には元気を贈ります」
「姫にはおおらかさを贈ります」
 
と言った所に私が扮する黒い衣装のカラボスが現れ、なぜ私をこのパーティーに招かなかったのかと怒る。王は謝って、急いで贈物を用意させるが、準備していなかったので、箱もみすぼらしく、中身もプラスチック製の安物であった。
 
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「王よ、これが長年この国を守ってきた私に対する仕打ちですか?」
とカラボスは言い、
「私もオーロラ姫にプレゼントをしよう。オーロラ姫は16歳の誕生日に糸車の針に指を指して死ぬであろう」
 
そしてみんなが呆然とする中カラボスが大笑いしながら退場するが、まだプレゼントをしていなかったリラの魔女(協佳)が
 
「カラボスの魔力は強くてあれを打ち消すことは私にもできません。代わりに姫は死ぬのではなく100年の眠りに就くと、修正します」
と言った。
 

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第1幕(7分)。16年後。オーロラ姫(由維)の誕生パーティが開かれていた。王は呪いが成就しないよう、国中の糸車を焼き捨てさせた。それで姫は糸車というものを見ずに育った、などという事情が語り手によって語られる。
 
誕生の祝いに訪れる人々。そして姫への求婚者の4人の王子が現れる。
 
それぞれの王子が姫にプレゼントをして、プロポーズの言葉を述べる。姫は誰のプロポーズを受け入れるのかは、パーティーの最後に発表すると言う。4人の王子が求婚した後、更に1人、立派なみなりの王子(男装の私)が登場する。
 
王たちが、あれは誰だったっけ?といぶかる中、王子(私)は姫(由維)に小さな箱を贈る。そして音楽が鳴り始め、舞踏会となる。姫は、求婚した5人の王子と次々と踊る。4人の王子と踊った後、私と踊るが、その時私は姫に
 
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「その箱を開けてごらんなさい」
と言う。姫が箱を開けると、中には糸車の針が入っていた。それを見たことのない姫は「これは何だろう?」と言いながら針に触り、誤ってその先で指を刺してしまう。
 
姫(由維)が倒れる。
 
私は王子の衣装を脱ぎ捨てる。するとその下に序幕で着ていた黒い魔女の衣装を着ている。みんなが驚く中、私は高笑いして去る。
 
しかしそこにリラの魔女が現れて
「姫は死にません。100年の眠りに就くのです。ですから皆さんも100年眠ってください」
と言ってその場に居る全員に魔法を掛けてしまう。
 

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後でみんなで話したこと。
 
「オーロラ姫が100年眠るからって、一緒に眠らされた人たちってすさまじく迷惑じゃない?」
「酷い道連れだよね」
「王や王妃はよいけど、求婚者の4人の王子なんてかわいそう。結局姫を獲得できないのに100年眠らせられちゃう」
 
「リラの魔女もカラボスも何だか同レベルという気もする」
 
「でも王子の衣装を脱いで魔女になった冬ちゃんってさ、要するに男の振りをするのをやめて、女としての本性を現したってことだよね」
「ああ、思った、思った」
 

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なお、舞踏会の音楽は最初CDを掛けようと言っていたのだが、誰かが
「CD使ったらジャスラックにお金払わないといけないのでは?」
と言い出し、
「じゃ、みんなで演奏しちゃおう」
 
ということになり、音楽室で演奏して録音したものを流した。
(実際にはこの場合は、CDでも演奏の録音でも届出も支払も不要)
 
「ダンスの音楽といったら、エレキギターとか?」
「それはさすがに無い。弦楽四重奏とかじゃない?」
「弦楽四重奏って?」
「ヴァイオリン2つとチェロとコントラバスだっけ?」
 
(本当は普通はヴァイオリン2・ヴィオラ・チェロ。ヴィオラという楽器は小学生の記憶には残りにくいようだ)
 
「あ、私、ヴァイオリン弾いていいよ」と由維。
「ヴァイオリン2つなら、誰かもうひとり弾かなくちゃ」
「冬、何でもやっちゃうけど、ヴァイオリンは弾けない?」
「弾いてもいいよ」
「よし。あと、チェロとコントラバス持ってる人?」
 
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「そんなの誰も持ってない気がする」
「ピアノとフルートにしたら?」
「ああ、フルートなら私吹ける」と協佳。
「ピアノは弾ける子何人もいるから誰か適当に捕まえればいいな」
 
ということで、結局私と由維がヴァイオリンを弾き、ピアノはたまたま音楽室でピアノの練習をしていた隣のクラスの若葉を捕まえて弾いてもらい、フルートは協佳が吹いて、四重奏をして録音した。
 
そういう訳で、これに立ち会った奈緒も、それからたまたま徴用された若葉も、この時、私がヴァイオリンを弾いたのは見ているのだが、若葉はそんなことを誰にも言わないし、奈緒はこの時に由維と一緒にヴァイオリンを弾いたのは私ではなく若葉で、私はピアノを弾いたと思い込んでいる風である。
(実際、たぶんそういう担当にした方が、より上手い演奏になったと思う)
 
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なお第一幕で流したのは『眠りの森の美女』から『ワルツ』であった。
 

第2幕(5分)。100年後。このシーンは途中まで、緞帳の前で行われる。
 
森を歩いてきたデジレ王子の前に、オーロラ姫(の幻)が現れる。
 
「なんて美女なんだ!」
と言って姫のそばに寄ろうとするものの、王子が手を握ろうとすると、スルリと抜けていき、捕まえることができない。やがて姫の姿が消えると、猟師が現れ、この森の奥に古い城があって、そこには美しい姫が眠っているという伝説があること。しかしそこに行こうとして帰ってきた者はいないことを告げる。
 
しかし興味を持った王子は、猟師が停めるのも聞かずお城へと進んでいく。しかしデジレ王子が進んでいくと、お城を閉ざしていた茨などが自然に開いていき、デジレ王子はすんなりと城に到達することができた。
 
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(ここで『眠りの森の美女』から『パノラマ』を演奏。そして幕が開く)
 
10年前のパーティーの時のまま多数の人が眠っていて、中央にベッドに寝ているオーロラ姫がいる。そして王子が近づいて行った時、ちょうど100年が経過して、みんなが目を覚ます。(キスをして目を覚ますのは改変版で本来は100年の経過により自然に目を覚ます)
 
そこでデジレ王子はオーロラ姫にプロポーズし、オーロラ姫が受諾して、ふたりの結婚が決まる。
 

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第3幕(5分)。結婚パーティー。
 
中央やや右寄り、並んだ椅子にオーロラ姫とデジレ王子が座っている。そこに多数の人々が訪れて祝福する。
 
ここで流れる曲はなぜか『くるみ割り人形』の『花のワルツ』。奈緒が勘違いして提案したのだが、華やかな曲だから、それでもいいかもと協佳が言って、4人で演奏したのであった。
 
録音していた音楽が流れる中、ダイヤモンド・サファイア・金・銀という4人の宝石の精が現れて、音楽に合わせて少し踊ってから「結婚おめでとう」と言って退場する。
 
黒い衣装のカラボス(私)と白い衣装のリラの魔女(協佳)が手をつないで入場してきて「末永く幸せに」と祝いの言葉を言う。私が姫たちの方にピストルのようなものを向けるので、姫たちが驚くが、クラッカーである。リラの魔女もふつうのクラッカーを鳴らす。ふたりは、そのまま姫たちのそばに留まる。
 
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長靴を履いた猫と白猫が一緒に来てお祝いを言い、10秒ほど踊って退場する。赤ずきんとオオカミが来て、お祝いを言い、ふたりで漫才のようなやりとりをしながら退場する。シンデレラとフォルテュネ王子が来て「私たちのように幸せになってください」と言って去る。青い鳥とフロリナ姫が来て、祝福してから、やや長めのダンスを踊る。
 
そしてそこに、これまでの出場者が全員現れ、ステージの上でみんなで踊り、賑やかに閉幕する。
 

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学芸会の翌週は高山で従兄の結婚式があり、そこで夏に東京で会ったアスカと再開。披露宴でアスカが高そうなヴァイオリン(後に私が愛用することになる《Rosmarin》)を弾いたのを見て、私はヴァイオリンへの情熱を新たにする。
 
この時私自身は披露宴で里美伯母から借りた三味線を弾いたので、三味線弾くならこれ持ってけと言われて、昔母が弾いていた三味線を乙女伯母から託されたので、それから数日は、母が買物に出ている時間などに三味線を弾いていたのだが、やがてヴァイオリンも頑張ろうと思い、高山に行った翌週の日曜日、私はヴァイオリンを持って、川岸へと出かけた。
 

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私はいつものように川岸の道路の下でヴァイオリンを弾いていた。
 
少し前まで数人の「橋の下の住人さんたち」が聴いていてくれたのだが、その日は公園で食料の配布があるからといって、みんなそちらに行ってしまった。私もそろそろ帰ろうかなと思いながら、何となくワンティスの『漂流ラブ想い』を弾いていて、これを弾き終わってからにしよっと思った。
 
ところがその曲を弾き終わった時
「『リズミトピア』」
という声が掛かる。私は誰か「住人さん」かなと思い、
「はいはーい」
と言って弾き始める。しかし、弾き始めてからその声がした方角を見てびっくりした。くたびれた服の「住人さん」ではなく良さそうなスーツを着ている若い男性だ。それは夏頃に公園で会って、私に作曲の指導をしてくれたTTさんであった。
 
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私がワンティスの『リズミトピア』を弾き終わると、TTさんは力強い拍手をしてくれた。
 
「今この近くを通りかかったら、橋の下にいるのがFKちゃんのように見えたから降りてきた」
 
「ここなら、騒音とかで苦情が来る心配無いから」
「確かにね。でも、君凄いね。これ今日発売された曲なのに!」
「いえ、数日前からFMとかで流れてましたから」
「それで弾けちゃう所が凄い」
 
「これ懐古調の曲ですよね。80年代くらいの雰囲気でしょうか。『ダンシング・オールナイト』とか『ダンシング・ヒーロー』とか『ランナウェイ』とか。やや退廃的な夜を感じさせる曲」
 
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■夏の日の想い出・小5編(6)

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