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■夏の日の想い出・小5編(4)

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ところで協佳は、私がバレエやったことあるんなら、うちの練習ちょっと見に来ない? などと言って、私を自分が通っているバレエ教室に連れて行った。ついでに奈緒と有咲も付いてきた。
 
「あなたたち入会希望者?」
「ただの見学でーす」
と言って見学させてもらう。
 
協佳たちは8月末に開く予定の発表会に向けての練習をしていた。
 
「すごーい! 協佳、金平糖の精を踊るんだ!」
と有咲が感激したように言う。
 
「金平糖の精は4人踊るんだよ。小学生の私が踊った後、中学生、高校生、大学生のお姉さんが踊る」
と協佳。
 
「それは下の子には負けられないと気合いが入るよね」
「そうそう!」
「でも6年生を差し置いて5年生の協佳が金平糖を踊るなんて凄いじゃん」
「いや、今年は6年生には男の子しかいないから」
 
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「ああ、さすがに男の子に金平糖を踊らせる訳にはいかん」
 
話が見えていない奈緒が訊く。
「金平糖って、何か重要な役?」
「主役!」
と協佳と有咲と私が言った。
 

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「へー、でも金平糖ってロシアにもあったんだね」
と奈緒。
 
「原題は『ドラジェの精の踊り』なんだけどね。ドラジェなんてお菓子、日本では知られてないから、誰かが金平糖に変えちゃった」
と協佳。
「まあ、金平糖はドラジェの一種と言えないこともない」
と有咲。
「英語圏では『シュガープラムの精の踊り』になってるね」
と私。
 
「ドラジェってどんなお菓子?」
「砂糖をコーティングしたお菓子だね」
「ふーん」
「今度作ってきてあげるよ」
と有咲が言うと
 
「おお、楽しみ!」
と奈緒。
 
奈緒はあまりお料理とかお菓子作りとかしないタイプだ。
 

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練習を見ていた奈緒が
「何かくるくるくるくる回るね」
と言う。
 
「回る踊りというと『白鳥の湖』の黒鳥が踊る32回のグラン・フェッテが有名だけど、金平糖のこの動き、円を描きながらくるくる回るのも難しい。かえって黒鳥の方が同じ場所で回っていればいい分、楽ともいえる。何しろこれはバレエ団のプリマが踊るからね、見せ場を作るのに技術的にも高いものが使用されてるよね」
と私は解説する。
 
「プリマ? ハム?」
などと奈緒が言うので
「プリマというのは、そのバレエ団のトップのバレリーナのこと」
と有咲が少し呆れたように解説する。奈緒は本当にバレエのことを全然知らないようである。
 
踊り終えた協佳がこちらに来て
「目が回った−」
と言う。
「まあ、目が回るよね」
 
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すると奈緒が
「冬ってさあ、他人の練習を見ていただけで、真似して演技できるとか言ってたよね。今協佳が踊ったやつ踊れる?」
などと訊く。
 
「さすがに今のは無理だよ。あんなにくるくる回れない」
と私は答えたが
 
「でもどのくらいできるか見てみたいな。ちょっとやってみてよ」
などと協佳も言うので、私はまず手首・足首や関節を伸ばす準備運動をする。
 
「へー。冬、180度開脚できるんだ?」
「うん。それは昔からやってるから」
「身体やわらかいねー」
「開脚して身体を曲げて地面に胸が付くんだ?」
「それが付かなきゃバレエできないよぉ」
 
などと会話を交わす。そして踊ってみる。
 
久しぶりに身体を動かしたが、綺麗に指先まで手が伸びるので「お、いい感じ」
と思いながら踊る。ピルエット(旋回)の部分は適当に回ったが2回しか回れなくて、ああやはり勘が鈍ってるという気がする。クライマックスの、大きな輪を描きながら回転を繰り返していく所は、正確な動線をキープできなくて、ゆがんだ円になってしまったし「目が回るー」と思いながら踊った。
 
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踊り終わると協佳も奈緒も有咲も無言である。
「ごめーん。失敗、失敗」
と私は言ったが
 
3人がそれに答える前に、バレエ教室の先生が寄ってきて声を掛けた。
「あなた、どこのバレエ教室に通ってるの?」
 

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プールは、学校でプール開放されている日は毎日奈緒に誘われて行っていた。その内言われる。
 
「冬さあ、泳ぐ練習の前に歩く練習しようか?」
「ん?」
「要するに、ここまで冬の練習を見てきた感じでは、冬は筋力が無さ過ぎるんだよ。ジョギングとかしてもいいけど、あまりにも筋力が無いから、今の冬では、ジョギングすると腰を痛めると思う。だから、まず水中歩行して、少し足の筋肉を付けよう」
 
そういう訳で、この年の夏休み後半は、半分はバタ足練習や息継ぎ練習。半分は水中歩行をひたすらやっていた。
 
「冬ちゃん、走るのもあまり速くないよね?」
「うん。徒競走とかで、ビリ以外になったことない」
 
「よし、50m走のタイム計ってみよう」
 
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ということで、プールが終わった後、校庭で50m走のタイムをみんなでひとりずつ計ってみた。
 
協佳は7秒4で、みんなから「速ーい!」と言われていた。奈緒は10秒だった。
「はい、次は冬」
ということで走る。あまり全力疾走などしたこと無いので50mでもきつい。途中でバテてペースが落ちる。
 
「うーむ・・・・」
と言って、協佳と奈緒がストップウォッチとして使っている携帯の画面を見ている。
 
「何秒だった?」
「20秒。時速に直すと9km/h。どうかした子が歩いているのより遅い」
「ほんと、冬って筋力無いね!」
 
などと言われたのだが、その後で走った有咲が22秒で「冬より遅いなんて!」
と言われていた。
 

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「私考えてみたんだけどさぁ」
と奈緒は言った。
 
「冬って、だいたい体育の成績悪いよね」
「うん。小学1年の時以来、体育は一貫して成績が1」
 
「でもこないだバレエ教室で踊ったみたいに、ダンス系はいいよね。おひな祭りの時は、ミニモニひな祭りとか踊ってたし」
「そうだなあ。何か身体は動くんだけどね。長時間じゃなければ」
 
「そうそう、そこが問題! 要するに冬って運動神経は良いけど、運動能力と体力が低いんだ!」
 
「意味分かんなーい」
 

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そういう訳で、その年の夏、私はプールに行ったり、プールの無い日は奈緒の家や有咲の家でピアノを弾かせてもらったり、また協佳のレッスンがある日はバレエ教室をのぞいたり、また毎週津田さんの民謡教室に行き、時々大会にも出場して入賞したりしつつ、週に数回は橋の下に行って、そこの住人さんたちを観客にヴァイオリンを弾くという日々を過ごしていたのであった。
 
ある日、母が言った。
「あんたさ、珠算の塾サボってない?」
「ごめーん」
「休会にしとく?」
「うん。その方がいいかも」
「なんか忙しくしてるみたい」
「そうかな?」
 
「変なこととかはしてないよね?」
「変なことというと?」
 
「うーん・・・何だろ・・・あんた彼氏ができた訳じゃないよね?」
「ボクって彼氏できるんだっけ?」
「女の子とは友達にしかならないみたいだから、あんたに彼女ができる訳はない気がする」
「あはは、それはそうだよね」
 
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8月31日。協佳のバレエ教室の発表会があったので、奈緒・有咲・由維・夢乃と一緒に見に行った。本当は500円らしいのだが、私たちがよく見学に行っていたので、教室の先生が招待券をくれて、それでタダで会場に入ることができた。
 
バレエの発表会を見るのは久しぶりなので、楽しく見学していた。こういうの見るのは初めて〜という奈緒がいろいろ質問するので私は答えていたが、自分でも小学3年生までバレエを習っていたという由維が「冬ちゃん、詳しい〜」
と感心していた。
 
「冬は何度かバレエ発表会に出ているらしい」と有咲。
「いつも代役だけどね」と私。
「いや、その代役でさっと踊れる所が凄い」と有咲。
 
「今まで何を踊ったの?」
「最初は『トロイメライ』。これはそのバレエ教室のオリジナルの踊りだった。それから『眠りの森の美女』の『宝石の精の踊り』の《ダイヤモンドの精》、それから同じ『眠りの森の美女』の『青い鳥とフロリーナ姫のバリエーション』」
 
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「の青い鳥?フロリーナ?」
と由維が訊いたが
「それ訊くのは愚問」
と有咲が言う。
「フロリーナ姫に決まってる」
「なるほどー。やはり、冬ってそういう子だったのか」
と感心したように由維が言う。夢乃が笑っている。
 

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この発表会は協佳も言っていたように『くるみ割り人形』の中の踊りから、バレエ教室の生徒が踊れるものをピックアップして演じている。もっとも前半の最後に踊った『花のワルツ』は教室の生徒全員参加の上、一部のOG/OBまで参加して、ステージが踊る人であふれている感じであった。
 
協佳はもちろんその『花のワルツ』にも出ていたが、メインはプログラムの最後に4つ続けて演じられる『金平糖の精の踊り』である。小学生の協佳は最後から4番目で、その後、中学生の子、高校生の子、大学生の子と続く。大学生のお姉さんは練習の時も見せてもらったが、物凄く美しい踊りだった。この人は講師の資格も持っているようで、しばしば普段のレッスンでも小さい子の指導をしていた。
 
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後半のプログラムが少し進んだ所で、その大学生のお姉さんが協佳のそばに寄ってきて言った。
「ね、ね、協佳ちゃん、チョコレート踊れるよね?」
「はい」
 
「さっき、**ちゃんが階段で足を踏み外して落ちちゃって」
「あら」
「本人は踊りたいと言っているんだけど、お母さんと先生で話しあって怪我が酷くなったらいけないから止めた方がいいと」
「うん、無理して悪化させて踊れなくなったりしたらいけないです」
「それで、代わりに**君と踊ってくれないかな、と。中学生とかだと身長のバランスが取れないから」
 
「いいですけど、それ私の出番の2つ前」
「やはり無理かな」
「ちょっと体力に自信無いです−」
と協佳が言うし、隣で有咲が
「あまり練習してないの踊って、足ひねったりしたら、本番出られなくなるし」
と、もっともなことを言うので
「それあるよねー。やはり**君には諦めてもらうか」
 
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という話になりかけたのだが、有咲が
「冬はチョコレート踊れるよね?」
と突然訊いた。
 
「あ、君、練習見学によく来て、脇で凄くいい動きしてたよね? どこか他の教室の子?こないだ金平糖踊ってたの見たけど、凄くうまかったし」
とお姉さん。
 
「ええ、この子うまいです。あれ見せられて私も、負けられんと思って一所懸命練習したし」
と協佳。
 
「チョコレート、2年くらい前に1度踊っただけだけど・・・」
と私が言ったら
「冬なら2年前に踊ってるなら、今踊れるはず」
と奈緒。
 
「よし、君ちょっと踊ってくれない?」
「やはりこうなるのか・・・・」
 

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衣装は、協佳の練習用のを借りることにした。着替えはもちろん・・・女の子用の楽屋で着替える! でも、協佳や有咲たちも、もう私の性別のことは全然気にしていない感じだ。ふつうに女の子として扱われている。教室関係者はそもそも性別に疑問など持ってない感じだし。
 
「多分入るだろうと思ったけど、やはり入るね」
「ほんとに細いなあ」
「協佳だってかなり細いのに」
「体重からして軽いからね。小3くらいの体重だよね」
 
「協佳のウェストいくつ?」
「51だよ」
「冬のウェストはもう少し細い感じだ」
「その雰囲気だと49くらいかな」
 
「だいたい体型が女の子体型だよね」と由維。
「やはり睾丸が無いのは確かなようだ」と奈緒。
「多分卵巣があるんだよ」と有咲。
「まさか」と私。
 
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「冬、今、卵胞期?黄体期?」と奈緒。
「え?卵胞期だけど」と私。
「やはり生理があるみたいだ」と有咲。
「ふむふむ」と協佳。
 
 
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■夏の日の想い出・小5編(4)

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