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■夏の日の想い出・花の女王(8)

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何だかいつもより拍手の勢いが凄い。観客はノリノリである。美空も良い感じのノリでベースを弾いている。酒向さんのドラムスとのコンビネーションもピッタリである。酒向さんは美空に合わせるつもりでいたようだが、実際には美空がちゃんと酒向さんに合わせている感じだった。私たちも気持ち良く歌うことができた。
 
歌が終わり、胡弓を弾いてくれた美耶を再度紹介して、美耶が下がるが、観客の興奮状態は高い。その状態に乗るようにして、私たちは『ファレノプシス・ドリーム』『Spell on You』『影たちの夜』『キュピパラ・ペポリカ』『夜間飛行』
『ヘイ・ガールズ!』『青いブガッティ』『疾走』と演奏していった。
 
そしてライブのクライマックス、『ピンザンティン』となるが、窓香がお玉を3本持って入ってくるので、私は「ん?」と思った。私とマリに1本ずつ渡してから、もう1本を美空に渡す。???
 
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とにかく演奏を始める。すると、美空はなんとお玉の先を使ってベースを弾き始めた。隣でギターを弾いている近藤さんが笑っている。5月の仙台ライブではサトがお玉でドラムスを打ったが、ベースをお玉で弾くなんてのは、美空が初めてだ。私はちょっと目を丸くしてその様子を見ながら、歌っていた。
 
舞台の端では例によってピエトロの社長がサラダを作り、今日は佳楽がそのサラダを食べて、美味しそうにしていた。
 
そしてライブは『王女の黄昏』を演奏して幕が降りる。そしてアンコールになる。『私にもいつか』を演奏するが、この曲はアコスティックのアレンジなので、ギター近藤・フルート七星・ピアノ月丘・ドラムス酒向という楽器の組合せに加えて、更紗が再登場してヴァイオリンを弾く。しかし美空も入ってくる。明奈・佳楽も続けて入って来て、後方のマイクスタンドの所に立った。3人でコーラスを入れてくれるのである。
 
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私は福岡公演と同じ説明をする。この曲が実は、ステージ復帰に向けてのマリの決意を表した曲であったこと。歌詞の中にある「ときめく時間」とは実はステージで歌う時間であること。そして今マリはステージに戻ってきたこと。
 
「マリ、今日はときめいた?」
「うん。ときめいた。観客のみなさんのおかげ」
 
暖かい拍手、「マリちゃーん」というコール。
 
「ケイもライブでは観客のみなさんの声援でときめくでしょ?」
「うん。何だかパワーをもらう気がするよね」
「ケイ、性転換手術を受けて1ヶ月もしないうちにライブをしたけど、その時もお客さんからパワーをもらって元気になったと言ってたね」
「あはは。まあ、そういうこともあるかもね」
 
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観客は反応に困っている雰囲気。しかし演奏がスタートすると、手拍子に変わる。
 
美空たちのコーラスは楽譜には起こしていなかったのだが、適当にハーモニーになるように入れてくれた。ハーモニーを入れるのは大得意の美空が主導し、民謡でセッション感覚を鍛えている佳楽・明奈もそれに合わせて、まるで何度も練習していたかのような、きれいなコーラスになった。
 
そして最後の曲は私とマリ、七星さんの3人だけが残り、私のピアノと七星さんのフルートで『あの夏の日』を演奏した。
 
それで波乱の横浜公演は幕を閉じた。
 

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公演後、★★レコード、UTP、△△社、○○プロ、∴∴ミュージックに、「明日の大阪公演にも、みそらちゃんは出るんですか?」という問い合わせが殺到して、一時、これらの電話が全然つながらなくなった。どこも「出る予定です」と回答したし、私も美空もtwitterで、美空が大阪公演に出ることを明言した。この件がtwitterのトレンドに登っていた。
 
美空が大阪公演に出ることが知れ渡ると、今度は大阪公演に追加チケットは無いんですか? という問い合わせも殺到した。これについて花枝と町添さんが急遽電話で話し合い、畠山さんの承認も取って、警備上の理由から、本来売る予定の無かった立見席(700枚)を発行することにして、翌日、つまり公演当日の朝7時に発売することを決めて、ホームページ、twitter、そして夜中ではあったが、ローズ+リリーとKARIONのファンクラブ会員へのメールで告知した。
 
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ローズ+リリーのファンクラブ会員は、金曜日までに郵便で届いた分まで既に入力が終わっていた(汐田さん様々である)ので、それとオンラインで登録してくれた人たちに一斉メールすることにしたが、短時間に数万人にメールするのはUTPのサーバーからは無理なので、★★レコードの口利きで、KARIONのファンクラブ会員分も一緒に、大手メルマガ配信サイトに特別に依頼して送信を代行してもらった。(夜中なのでメルマガ側もサーバーに余力があった)
 
そして翌朝、チケットはもちろん瞬殺で売り切れた。枚数が少ないので7時ジャストに電話がつながっても取れなかった人も多かったようであった。
 
むろん公演は警備員を増員した。
 

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アリーナツアーは、その大阪ユーホールで最終日となる。ここは基本的には横浜とほぽ同じ形で進行した。途中の番組中継が入らなかっただけである。大阪公演の後は政子と美空は2人で本当に粉物食べ歩きをやっていた。私はとても付き合い切れないのでふたりを放流したまま、他の人たちとささやかな普通の食事で打ち上げにした。
 
大阪ユーホールでのライブが終わった翌日。私たちは『花の女王』のPVを撮影した。本当は6月に音源制作をした時に一緒に撮りたかったのだが、『Flower Garden』の制作がたいへんだったのに加えて、私個人がKARIONのアルバムの方の再編曲作業で手が空かなかったこともあり制作を見送っていた。所が今回のツアーをやってて「PVが無いのは寂しい」という声が、特に今回チケットを取れなかった人たちから多く挙がった。そこで、急遽撮ることにしたのである。
 
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ライブの疲れは溜まっていたが、早朝からスタジオに出かけて行く。予め作られていた森林のセットの中で、アルプスっぽい衣装を着た私と政子が森を散歩するかのような雰囲気で『森の処女』を歌っている所を撮影する。バラバラに歩いていたふたりが最後に出会って手を取り合う演出である。
 
『青いブガッティ』は実際にブガッティ・ヴェイロンを借りて、運転席に私とマリが座っている様子を撮影した。これに流れる背景を合成して完成させる。ヴェイロンは最高速度407km/hという化け物のようなスーパーカーで日本国内にも恐らく5台くらいしか無いと言われているが、カーマニアの花枝の知人の知人が偶然にも所有していたので借りたのである。その車がうまい具合に青いペイントだったので、とても助かった。
 
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『花の女王』は、お花でいっぱいのセットを使って撮影した。花であふれた中で私とマリがフルート、ヴァイオリンを弾いている様を撮影した。私たちは花柄の衣装(福岡ライブで着たもの)を着て、花で作ったティアラを頭に付けた。そして上から花びらに擬したたくさんの千代紙を降らせて、扇風機で風を起こし、それが舞う中での撮影となった。
 
「なんか今回のPVって凄くお金が掛かってない?」と政子。
「気にしない、気にしない。マリが食べる御飯のお金はちゃんと取ってあるから」
「うん。私は御飯食べていられたら満足」
 
七星さんが吹き出していた。
 
「でも花枝さん、今回のPVは何だかリキが入ってますね」と政子。
「ああ、これ私の企画じゃないよ。色々手配はしたけど」と花枝。
「へ? じゃこれ★★レコードの企画ですか?」と政子。
「ううん。便宜は図ったけど、企画書の指示に従っただけ」と氷川さん。
「じゃ、これってケイの趣味なの〜?」
「違うよ。ちょっとHな偉い先生」と私は答える。
「あの人か!」
 
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ここまでの撮影を14時頃までに終えたので、私たちは伊豆半島に移動した。私が『王女の黄昏』を書いた、西伊豆・恋人岬まで行く。この日の日入は18:01だったので、その日没を背景に撮影を行った。私たちは本当にプリンセスのような衣装を着け、手に手を取り合って歩いたり、ふたりで対称になるような形でヴァイオリンを弾いたりした。
 
ここで対称形にするため、私は★★レコードが所有している左利き用ヴァイオリンを使い、右手で弦を押さえ、左手で弓を引くという弾き方をした。
 
「ケイ、左右を逆にしてもちゃんと弾けるんだ!」
「中学の頃、知り合いの楽団の人が左利き用ヴァイオリンを使ってたんだよ。その時、借りてちょっと弾いてみたことがあった」
「冬って、ほんとに色々なエピソード持ってるね」
「あはは」
「冬の女の子ライフのエピソードもまだまだありそうだしなあ」
「うふふ」
 
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最後に『200年の夢』のPVを撮影した。移動時間節約のため、この西伊豆のホテルの広い和室を使い、このホテルが所有している江戸時代の狩野派の絵師が描いた屏風なども立て、私たちは江戸時代の大名家の娘のような衣装を着て、一緒に抹茶を飲んだり、また私が箏を弾き、マリは龍笛を吹く真似をしたりした。マリは中学時代に吹奏楽部でフルートを吹いていたので、横笛を吹く真似をしても本当に吹いているかのように、様になっている。
 
・・・・と思ったのだが、
 
「マリ、それ実際音出るんじゃない?」
「無理だと思うけどなあ」
「ちょっと息を出してごらんよ」
 
マリが恐る恐る息を出すと・・・・音は出た!
 
「あれ〜、3年前にフルート吹いてみた時は全然出なかったのに」
「その時はたまたま調子が悪かったのでは?」
「うむむ」
 
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それで結局マリはこの龍笛を本当に吹いて、PV撮影をした。このPVには私たちと同様に江戸時代の衣装を着た女性たちが10人ほど参加して、私たちの周囲を歩き回った。
 
撮影は21時前に終了した。
 
この1日の撮影に掛けた費用は、セットの制作費、ヴェイロンを借りるための保険代(*1)、衣装代、スタジオやホテルの借り賃、交通費、スタッフの宿泊費、最後の撮影のエキストラさんのギャラ、撮影技師への謝礼、それにプロットを書いてセットの監修までしてくれた、ちょっとHな偉い先生への謝礼まで入れて1500万円ほどになった。お金を出したのはサマーガールズ出版である。
 
(*1)車自体は所有者の好意でタダで貸してくれたのだが、保険は掛けてと言われた。なお、私たちは直筆の感謝状とサイン色紙を書くと共に、御礼に(会社の費用ではなく)私と政子の自腹で松阪牛の贈答セットと良質の紅茶を贈った。
 
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「1日でこんな金額を使うと、何だか自分がお金持ちになったかのような錯覚を覚えますね」
などと七星さんに言ったら
「冬ちゃん、充分大金持ちじゃん!」
と言われた。
 

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その日は結局西伊豆のホテルに泊まったのだが、翌朝マンションに戻った時、私は絶句した。
 
「何これ?」
と言ったまま私が戸惑っていると政子は
 
「昨日、『花の女王』の撮影に使ったお花をさ、この後どうするんですか?と聞いたら、捨てるというから、それ可哀想と言って、こちらに運び込んでもらった」
などと言う。
 
居間が花であふれていた。
 
「これさぁ、この後、誰が片付けるの?」
 
水にも付けていない切花は2日も経てば全部枯れてしまうだろう。
 
「ああ、それはきっと小人(こびと)さんがしてくれるよ」
「小人さん?」
 
「私がね、パソコンをハングさせて困ったり、お料理に挑戦して失敗して放置していてもね、眠って朝起きたら、ちゃんと治っていたり、台所も片付いてるのよね。あれは、きっと小人さんの仕業なの」
 
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「あはは、小人さんね〜」
 
私は頭を抱えた。
 
「でもお花さんの中に埋もれるの楽しいよ。ほら。冬も一緒に楽しもう」
「そうだね」
 
私は取り敢えず後片付けのことは考えないことにした。
 
政子と一緒に花の中に埋もれると確かにちょっと楽しい。
 
「何だかこうしてると、私たち本当に花の女王みたい」
 
と楽しそうに言う政子を見つめて私も幸せな気分になった。
 
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