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■夏の日の想い出・花の繋がり(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-06-28

 
2013年8月10日。
 
ローズ+リリーにとって初めて正式に出場することになったサマー・ロック・フェスティバルが開かれる。
 
私たちは早朝から会場に入った。今年ローズ+リリーはBステージのトップバッターである。午前中はその後、KARION, スカイロード、高井慎吾、富士宮ノエル、と続き午前中ラストがスリファーズ。午後はFireFly20から始まり、谷川海里、Days of Diamond, Rainbow Flute Bands, と続き、ラスト前がAYA、そしてトリが XANFUSである。
 
会場に入って間もなく、KARIONとスリファーズがほぼ前後して来たので、挨拶代わりにハグし合う。
 
「春奈ちゃん、彩夏ちゃん、千秋ちゃん、ごめーん。私たちスリファーズのステージ見ずに帰っちゃうから」
 
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「いえ、お忙しいですもん。卒論頑張ってくださいね」
 
「私たちは明日が無いから、今日のステージ終わったらもう卒論漬けだ」
とKARIONの小風。
 
「KARIONのアルバム作り直しはかなり進んだんですか?」
と春奈が訊く。
 
「メインの伴奏から歌唱まではほぼ収録終わった。今月後半にコーラスの人に入ってもらってそれを加えて、あとパーカッション類を重ねる。そのあとはミクシング・マスタリングだから音響技術者さんたちの仕事で、私と歌月が時々チェックしに行く程度で済むかな」
と和泉。
 
「でも凄いですね。なかなかアルバム作り直しなんて決断できない」
と彩夏。
 
「ケイがね〜、もっと早くあの音源聴かせてくれていたら、最初から大量予算投入してやってたろうけどね。あれ聴いた時点で、こちらは実際問題としてほとんどいったん仕上がってたからね」
と和泉は言うが
 
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「そりゃ、そう簡単にライバルに手の内は見せないよ」
と私は苦笑いしながら言う。
 
美空や政子がニヤニヤしていた。
 
「だけどその決断を認めてくれた社長さんも偉い」
と千秋などは言う。
 
「うん。和泉たち恵まれてると思うよ」
と私は笑顔で言った。
 
「資金的にも大変だったんじゃないですか?」
と春奈が心配そうに訊く。
 
「まあ、そうだね。会社からも3500万追加で出してくれたんだけど、結局、私と歌月も1500万ずつ出すことにした。元はと言えば私たちのワガママだから負担させてくれと言って。だから今回は原盤権も会社と、私と歌月が出資比率に応じて持つことにした」
 
「1500万出せる所が凄いです〜」と春奈。
「春奈ちゃんも作曲頑張りなよ。作曲印税は大きいよ」と和泉。
 
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「あ、ハッちゃん、作曲できるようになって印税たくさんもらったらおやつおごってね」と彩夏は言った。
 
「ところで春奈ちゃん、高校は水泳の授業とかあるの?」と小風が訊く。
「ありますよ」
「もう出た?」
「ええ出ました」
「着替えとか女の子たちと一緒?」
「ええ。もちろん。去年は別室で着替えてくれと言われて更衣室を指定されたんですけどね。今年はもう完全に女の子の身体なので」
「でも去年も、結局拉致されてって、女子更衣室で着替えてたね」と彩夏。
「なるほど」
 

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ステージが始まる。進行係の人の指示で私と政子はステージに登る。
 
「おはようございます! ローズ+リリーです!」
と挨拶すると、満員の観客から大きな歓声が返ってくる。本来のキャパは5000人のはずだが、明らかに定員をオーバーしている。寿司詰め状態になっているし、会場を仕切る木立の下にも多数の客がいるので、おそらく7000人か8000人か。
 
「今日は生憎の曇り空ですが、その分、体力は消耗しなくて済むかも知れません。ではこの曇り空を吹き飛ばすような、爽快な歌から行ってみましょう。『呪いの人形』」
 
と私が言うと「えーー!?」という声が客席から返ってくる。
 
近藤さんが笑って合図をして酒向さんのドラムスが鳴り出す。スターキッズの伴奏が始まる。
 
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政子は例の大騒動の後、花見さんの陰毛を封じ込んだ人形を作り、その人形にあれこれ呪いを掛けていたらしい。元々の歌ではその時に実際に政子が使った本物の呪文が入っていたのだが、それに気付いた青葉の忠告で、その部分を無意味な文字列に置き換えたものを、リリースしたアルバムには入れた。しかし・・・・
 
私は青葉に尋ねた。
 
「あれさ、青葉が無意味な文字列に置き換えてくれたおかげで、毒にも薬にもならない歌になったけど、逆にさ、祝福の呪文とかにはできない?」
 
「ああ!それは気付かなかった。できますよ。じゃ、これとこれを使って下さい」
 
と言って青葉は私に呪文を教えてくれた。そして、今日はその呪文で歌っているのである。
 
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この歌を聴いた人たちが、幸福になりますように。迷っている人・悩んでいる人は解決の糸口が見つかりますように。辛すぎて思考停止してしまっている人は行動しようという気持ちが起きますように。そして世の中が平穏無事でありますように。そんな願いを込めて、私たちはこの歌を歌った。
 

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「実は今歌ったのはスペシャル・バージョンです。CDの歌詞と少し違うので、あれ?と思った方もあったと思いますが、今日歌った歌詞は、ある霊能者の方に監修して頂いて、祝福の呪文を歌い込みました。そしてこれを聴いたみなさんが、幸福になりますように、と願いを込めて歌いました」
 
と言うと「へー」という感じの反応がある。
 
「それでは次はもっと明るい気持ちになれるような歌。『サーターアンダギー』」
 
観客から爆笑が来る。スターキッズも楽しそうにこの曲の伴奏を始める。
 
私たちは4年前に沖縄を訪問した時に作ったその歌を歌った。更に私たちは食べ物の歌『焼きまんじゅう』を歌う。
 
「さて、炭水化物をこれだけ食べたら、お野菜も欲しくなりますよね」
 
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と私が言うと、観客から『ピンザンティン』という反応が返ってくる。
 
「はい、行きましょう」
 
悠子がステージの影から出てきて私たちにお玉を渡してくれる。そして私たちはこの食の讃歌を歌った。
 
今日の観客はフェスを見に来た人たちなので、必ずしもローズ+リリーが目的の人ばかりではないはずだが、それでも客席でけっこうな数のお玉が振られて私たちは正直驚いた。
 
「お玉を振ってくれてありがとうございます! 私たちがライブする時は、向こう10年間は必ずこの歌を入れるからね!」
 
それを歓迎するような歓声が来る。
 
その後更に『疾走』を歌う。
 
「では元気な歌が続いたので次は静かな曲。『桜のときめき』」
 
スターキッズは楽器を持ち替える。鷹野さんがヴァイオリン、七星さんがフルート、近藤さんはアコスティックギター。月丘さんはキーボードをピアノの音に設定する。これに前奏では私のクラリネットも加える。
 
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16小節の前奏の後、私はクラリネットから口を離し、マリと一緒に歌い出す。
 
相手と日々楽しく会話を交わしているのに、好きだと言い出せない、微妙な心情を歌った歌だ。その微妙な心情をアコスティック楽器の優しい音色が奏でて行く。
 
間奏部分ではまた私のクラリネットを入れる。七星さんのフルートと重ねた木管二重奏の調べがデリケートな乙女心を歌う。
 
間奏が終わるとまた歌い出す。観衆も静かに聴いていてくれる。そして曲は終わり、拍手と歓声が来る。それが少し落ち着くのを待って私は話す。
 
「それではあっという間に最後の歌となってしまいました」
 
ここで「えー?」という歓声が来るので、それが落ち着くのを待ってから私は曲名を告げる。
 
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「『花園の君』」
 
拍手がある。
 
この曲のためだけに来てくれていた松村さんがステージに登ってくる。七星さんもフルートをヴァイオリンに持ち替える。鷹野さんと3人でヴァイオリンを弾く。近藤さんのアコスティックギター、月丘さんのキーボード、酒向さんのドラムスという構成で音が鳴り、それを背景に私たちは歌う。
 
アコスティック楽器の音で構成していても、とても華やかな歌だ。月丘さんのキーボードから様々な音が出てくる。マリも楽しそうに歌っている。時々こちらを見るのは、勝手に何か想像しながら歌っているのだろうか。
 
やがて約4分半の曲が終わる。私たちはお辞儀をする。拍手と歓声が響く。伴奏のメンバーがいったん退場する。私たちも再度お辞儀をする。アンコールの拍手が来る。
 
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私たちは見つめ合い、頷いて、私がキーボードの所に行く。拍手が一際鳴り響いてから収まる。マリはいつものように私の左側に立つ。キーボードを初期化してピアノの音にする。松村さん・鷹野さん・七星さんの3人が再びステージに戻る。松村さんと鷹野さんはヴァイオリン、七星さんは純金のフルートを持つ。
 
私がピアノの音でブラームスのワルツを弾き始めるので、観客の方から一部「へ?」という反応がある。ローズ+リリーのファンばかりではない構成ならではの反応だ。
 
私のピアノはその後、両手で分散和音の連続を弾く。そしてやがてフェルマータ。
 
ここでヴァイオリンとフルートが優しい音色を奏で始める。
 
『あの夏の日』をふたりで歌う。
 
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似たようなタイトルの曲でも自分の思い出との関連づけが違う。上島先生が書いた『夏の日の想い出』はやはり2008年8月3日の宇都宮のデパートでの突然のステージの時のことを思い起こさせる。繋がっている曲は『パッヘルベルのカノン』。それに対して、こちらの私とマリが書いた『あの夏の日』はそれより1年前、2007年8月4日、政子たちに女装させられた伊豆のキャンプ場での想い出だ。そして何故か前奏で弾いた『ブラームスのワルツ』と繋がっている。
 
まあ結局は女装の想い出なんだけどね!
 
しかしどちらもローズ+リリーにとって重要な節目だ。でも曲調は随分違う。哀愁を帯びた『夏の日の想い出』に対して、この『あの夏の日』の方はワクワクするような感じの曲だし、私が弾くピアノからは華やかな音色が響く。政子の目は半分欲情している感じだ。でもさすがに夜まで我慢してもらわなければならない。
 
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そしてとっても明るいドミソ、ドッドドッド (C F+7 G7 C) で終わる。
 
私は立ち上がり、マリと一緒にステージ最前面まで行き、お辞儀する。一緒に演奏してくれた3人がその後ろに並ぶ。両手を挙げて歓声に応え、再度お辞儀する。そして手を振ってステージを降りた。
 

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下で控えていた和泉たちとハイタッチする。和泉・小風・美空がステージに駆け上る。続けてトラベリングベルズのメンバーも駆け上がる。私は彼らともハイタッチして行った。予め、スターキッズとトラベリングベルズとの話し合いでドラムスとキーボードの機材は共用することを決めてある。ギターやべースの線さえつなげばすぐ演奏できる。更にコーラス隊の3人の女の子も駆け上がる。
 
和泉が挨拶する。短いMCの後、『キャンドル・ライン』を演奏する。4声の曲なので、コーラス隊のひとりが前に出てきて、小風・美空・和泉と一緒に歌う。私たちはそのまま下で彼女たちの演奏を見ている。
 
「冬、冬はあそこに行かなくていいの?」と政子が耳元で囁くように訊く。
 
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「行かないよ」と私も政子の耳元で小さな声で答える。
 
「だって、冬もいづみちゃんたちの仲間なんでしょ?」
「仲間だよ。でもこれがあれば充分」
 
と言って私はいつも持ち歩いているダイアリーの中に綴じ込んであるKARIONの四分割サインを政子に見せた。
 
「ふーん。嫉妬していい?」
「いいよ。その分、今夜たっぷりサービスするから」
 
「私たちはそういう記念のサインとか持たなくてもいいの?」
「持たなくてもいいよ。だって、私とマーサは心で繋がってるからね」
「えへへ」
と言って政子は私に抱きついてキスした。
 
「コホン」と近くに居た加藤課長が咳をする。
 
次の出番なので控えているスカイロードのメンバーたちが目のやりどころに困っている雰囲気だった。
 
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KARIONはそのまま、『言い訳』『春風の告白』『星の海』『あなたが遺した物』
『サマービーチ』と最近の曲を中心に歌っていき、最後にミリオンヒット『雪うさぎたち』を歌った。
 
和泉たちは終わりのお辞儀をするが拍手は鳴り止まない。しかしトラベリングベルズはステージを降りてしまう。観客の一部から「えー?」という声。私も驚いた。明確なアンコールの拍手。最近よくアンコールで使う『星の海』を既に歌ってしまっているので今日のアンコールは多分『Crystal Tunes』だ。その演奏にはピアノとグロッケンは必須。でもサポートで入っているピアニストとグロッケン奏者も含めて全員降りてしまっている。
 
TAKAOさんが私たちの所に来て小声で言った。
「アンコールだからさ。蘭子ちゃん、水鈴(みれい)ちゃん、出てあげなよ」
 
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私と政子は顔を見合わせた。
「マーサ、『Crystal Tunes』のグロッケン弾ける?」
「弾ける」
「よし。レッツ・ゴー」
 
私たちはステージを駆け上がった。観客がざわめく。そして私たちがキーボードとグロッケンの前に立つと、更にざわめく。和泉がこちらを振り向いて笑顔で頷く。私も頷き返す。キーボードをリセットしてピアノの音色にする。
 
『Crystal Tunes』の前奏を私が弾き始めると「えー!?」という声とともに観客は静かになった。
 
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■夏の日の想い出・花の繋がり(1)

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