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■夏の日の想い出・花の繋がり(3)

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昨日の夕方、町添さんは私のマンションに来訪して、Eliseの妊娠の件を告げ、今日のフェスはローズ+リリーが、明日の復興支援ライブはKARIONがピンチヒッターに立てないかというのを打診した。しかし私はむしろ08年組共演という案を提示した。その場で和泉、光帆、AYAに電話して承認を得て、町添さんもGOサインを出した(AYAの事務所には町添さんから電話して緊急事態の対処ということで承認をもらった。私と和泉と光帆は各々自分で事務所や他のメンバーに連絡した)。
 
この手の話をする時にマリの機嫌を取るのは必須なので、事前に松花堂弁当で工作をした訳である。
 
夜間にこの3人と、特に参加してもらったLondaも加えた4人でチャットを使って演奏する曲目を決め、その後楽器パートを決めた。楽器の経験がほとんど無くてハーモニカも苦手というAYAは最初歌のみというのも考えたのだが、
 
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「私できるのはケロミンとオタマトーンくらい」
などとAYAが言ったので
「じゃオタマトーン弾いて」
ということになったのである。(ケロミンを選択するのも面白い気はしたが)
 
その後、町添さんに連絡し、深夜0時頃、夕方から待機してもらっていた仕事の速いアレンジャー数人に手分けしてアレンジ譜を作成してもらったが、(全員今日の自分たちのステージがあるので連絡した所ですぐに寝た)実際譜面を全部もらったのはお昼前であった。
 

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『情熱』の演奏が終わる。凄い拍手と歓声が来る。このステージに集まっている観客はロックファンが多い。おそらくは私たちについてアイドルに毛が生えた程度と思っていた人が多かったろう。そして思ってたよりはまともな演奏をすると思ってもらったのが、この歓声ではないかという気がした。
 
和泉が代表して挨拶する。
「拍手ありがとうございます。つたない演奏ですが、私たちもたくさん歌と楽器の練習をして、いつの日かスイート・ヴァニラズに追いつけるよう頑張りたいと思います」
 
暖かい拍手が来る。
 
「それでは次の曲『回想』」
 
軽快なビートに乗せて演奏する『情熱』は割と誤魔化しやすいのだが『回想』
は静かなロッカ・バラードの曲なので、演奏技術のアラが出やすい。そこでリードギターの音羽はこの歌ではギターの方に集中し、残りの4人で歌う。するとこれは結果的に、和泉・私・小風・美空と「4人のカリオン」の状態になった。私はKARIONで使っている声を出したい欲求を抑えながらローズ+リリーの声で歌唱参加したが、これまで何百回と一緒に歌ってきた関係なのでとても美しくハーモニーが響く。
 
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結果的にこの歌も破綻無く、むしろとても美しく演奏することができた。
 
歌い終わると何だか物凄い拍手が来た。さっき『情熱』を演奏した時の3倍くらい拍手されている感じがした。
 
私たちは調子に乗って、『スーパーデラックス・ストロベリー・ミルク・チョコレート・パフェ・スペシャル・ウルトラ・オプション・ナンバー7』
(この長い曲名を和泉はソラで言えた)、『迷い庭』、『海辺の秘密』、『悲しみの映画チケット』そしてスイート・ヴァニラズ最大のヒット曲である『祭り』まで歌うと、会場はもう熱狂に包まれていた。
 
和泉はその熱狂する観客に向かって言う。
「これで前座は終わりです。それでは真打ち登場!スイート・ヴァニラズ!!」
 
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ここまでの歌で熱狂していた観客の興奮がそのまま物凄い歓声になる。その歓声の中、スイート・ヴァニラズの5人がステージに上がってきた。
 
和泉がEliseにマイクを渡す。Eliseが和泉をハグする。何となく雰囲気で、音羽とMinie, 小風とLonda, 美空とSusan、そして私とCarolがハグして、演奏者交替する。私たちは観客に向かって手を振り、ステージを降りた。
 
Eliseが観客への御礼、そして私たちへの御礼を述べた。そしてスタンバイしたメンバーが演奏を始める。日没はもう間近である。会場に照明が灯る。昨年秋に出して久しぶりのミリオンセラーとなった曲『ラブレター』を歌う。スイート・ヴァニラズは曲によってリードボーカルを変えるが、この曲はEliseがリードボーカルになる曲である。本人には負担になるが、Eliseが1曲しか歌えないなら、この歌を歌わせてくれと言い、この曲に決まった。
 
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激しい曲ではないが、盛り上がっていく曲である。事前にかなり熱気を帯びていた観衆が、最高のノリとなり、興奮して走りだそうとして場内の警備スタッフに停められている人まであった。
 
演奏終了とともに、凄まじい歓声と拍手。それが鳴り止まない。普通ならアンコールに応じるところだが、ドクターストップなので出来ない。5人はステージ前面に並び、再度お辞儀をした。そしてEliseが
 
「ごめんね〜。赤ちゃん産まれた後で、アンコールに応じるからね」
 
と言い、大きな拍手に包まれて5人はステージを降りた。08年組でそれを迎えて握手したりハグしたりする。
 
ステージ上ではスタッフが機材の入れ替えをしていたが、それを待っているスカイヤーズのYamYamが
 
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「こんなに熱狂されたら、俺たちやりにくいな」
などと笑いながら言っていた。YamYamもEliseに握手を求めていた。
 

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演奏の後で「AYAちゃんが持ってた楽器は何ですか?」という問い合わせが結構あったようである。オタマトーンDeluxeという楽器ですと解答すると、それがツイッターのトレンドにも上がり、オタマトーンのデモビデオの視聴回数が跳ね上がったようであった。
 
なお通常のオタマトーンでは「口パク奏法(オタマジャクシの口を開け閉めする)」
でワウワウを入れてもLINE OUTにはそのワウワウが出ないのだが(ワウワウはスピーカーの回転で起きる効果)、口パクを検出して電子的にワウワウ効果を加える試作品のオタマトーンをメーカーが提供してくれたので、今日はそれを使っており、ワウワウ効果がちゃんとPAに反映されていた。
 

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フェスが終わった後で、夜間ではあったが、横須賀市内のホテルで、町添さんも出席して、EliseとLondaによる記者会見が行われ。一部の局の夜の報道番組がそれを生中継した。
 
Eliseは相手の男性の名前や職業などは明かせないとした上で、その人とは結婚しないまま子供を出産するつもりであること。向こうは認知はしてくれるし、出産費用や養育費についても出してくれる意向であることを明かした。出産の予定日は来年の3月20日であるというのも言った。事務所社長の河合奈津子は、計画中であった年末のツアーを中止すること、来年の夏頃に改めてツアーをすること。Eliseはこの後、来年7月まで産休とするが、その間のスイート・ヴァニラズの活動については、後日検討して発表することを述べた。
 
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この件はスイート・ヴァニラズのホームページ、★★レコードのサイト、そして明日の復興支援ライブの特設ホームページ上でも告知したが、実際問題として支援ライブの払い戻し希望者はほとんど出なかった。そして 08年組の出演があるということで追加発売された3000枚のチケットは夜遅い時間帯であるにも関わらず1時間でソールドアウトした。
 

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Eliseたちが記者会見していた頃、08年組は★★レコードのスタジオ最上階、青龍の部屋に集まっていた。今日は時間が無くてぶっつけ本番になったのだが明日のために、少し練習しておこうという趣旨である。このメンツが集まれる機会はなかなか無いのだが、KARIONは本来今日を最後に休養に入る予定だったし、他の3組も2日ライブの間で、他の予定は入れてなかった。むろん数名のメンバーの要請により、美味しいお弁当たくさんと、おやつに大量の今川焼きが用意されていた。
 
「なぜ今川焼きなんだろう・・・」
「あんこが食べたいという意見があった模様」
「あ、私はそれ回転焼きと言うな」
「私は大判焼きだな」
「個別銘柄として博多の蜂楽饅頭も好きだ」
「私は大阪の御座候がいい」
「御座候は姫路」
「あ、そうだっけ?」
 
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「でもここ初めて入った」と和泉が言う。
「私も〜」とAYAが言うので
「ゆみちゃん、ここの常連かと思ってた」と音羽が言う。
 
「私、ソロだから、こんな広いスタジオ使う必要無いし」とAYA。
「なるほど!」
「私いつも6階の鳳凰だよ」
「あの部屋好き!」という意見が多数出る。
 
鳳凰の部屋は壁に描かれている鳳凰の絵がとっても可愛いのである。女性アーティストに好まれるので、最近女子トイレが改装されて文庫本かゲーム機でも持って入りたいような素敵な雰囲気になっている。実際富士宮ノエルが30分籠もっていて、倒れているのでは?とマネージャーさんが心配して見に来たらしい。(本人は単にボーっとしていたと言っていたという)
 
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しかしどうもこの最上階の青龍を使ったことのあるのはローズ+リリーとXANFUSだけのようであった。
 

なお、AYAのマネージャー・高崎さん、XANFUSのマネージャー白浜さん、KARIONの事務所の若い子・北嶋さん、UTPの窓香、それに★★レコード代表ということで氷川さんが来てくれていたので、遠慮無く色々雑用を頼んだ。白浜さんはMIDIの編集ができるのでアレンジ譜の明らかな間違いなどを修正してもらった。
 
「北嶋さん、下の名前は何ですか?」
と北嶋とは初めて会った光帆が訊いた。
 
「花恋(かれん)です。花の恋と書きます」
「わぁ、可愛い!」
「ってか、芸名みたいな名前!」
「ってか、芸名だもんね」と美空。
「えー!?」
 
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「スーパースターのみなさんの前では恥ずかしいですけど、18歳の時に一度だけCD出したことあるんです。でも300枚くらいしか売れなくて次作ってもらえなかった」
「ああ。でも300枚買ってくれたファンがいたというのは財産だよ」
 
「ええ、そう思ってます。当時はシーパー・ミュージックと契約してたんですけど、契約切れた後、スーパーのレジ係とかしてたけど音楽への夢が忘れられなくて。たまたま勤め先に青島リンナさんがキャンペーンライブで来ていたのをちょうど休憩時間だったので見ていたら、マネージャーの三島さんに声を掛けて頂いて。三島さん、私が歌手していたのを覚えていてくださって。こういう世界にまた戻りたいなあ、なんて言ったら、マネージャーしてみる?と言われて、まだマネージャー5ヶ月目です。歌手名覚えてる人もいるだろうから、その名前で活動しなさいと言われました。本名は中尾法子といいます。名前の使用については元の事務所と交渉してくださって一応移籍に準じる扱いで。移籍金1円だったらしいですけど」
 
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「うむむ。1円か」
「私って1円なのかって、ちょっと複雑な心情でしたけどね」
「まぁ、帳簿上の備忘価額かな」
 
「KARION専任なの?」
「それがKARIONさんはすることが無くて」
「あはは」
「和泉たちだいたい3人で勝手に行動してるもんね」と私。
「うん。航空券とかホテルとかも自分たちで勝手に取るしね」と和泉。
 
「だいたい、Ozma DreamさんかAPAKさんに付いてますけど、先日は青島リンナさんのツアーに帯同しました」
「へー。頑張ってね」
「はい」
 
「花恋ちゃん、ピアノとギターも弾けるから」と和泉。
「おお、それは練習の手伝いもしてもらおう」
 
ということで、その日の練習の際は、ずっとリードギター弾きっぱなしで負荷の高い音羽が一時休憩する時に代わりに弾いてもらったが、結構上手くて、みんなから褒められていた。花恋も演奏するのが嬉しそうだった。
 
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「花恋ちゃん、音源制作の手伝いもできそう」
「でも今はマネージャーなので」
「大丈夫。ここに本来音響技術者だったはずが、ピアノやヴァイオリン弾いていろんな歌手の音源制作をしてた子もいる」
と和泉が私を指さして言う。
 
「へー!凄い!」
「まあ、それが歌手になろうと思ったきっかけかな」と私。
 
「あ、それと花恋ちゃんって男子高出身なんだよね」と小風。
「えーーー!?」
「元男の子なの?」
 
「いえ。それ営業する時の話のネタなんですけど。私の高校、私たちの次の学年から男子のみ募集するようになって。私たちが卒業すると同時に男子校になっちゃったんです」
「なるほど〜!」
 

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最初はお弁当(8人だが弁当は16個ある)を食べながら明日の曲目の演奏方法について検討した。明日はスイート・ヴァニラズが『情熱』を歌い、ジュニアが『ラブレター』を歌うことにしている。また明日は枠の時間が長い分、今日より曲数が多いので、『ラブレター』及び追加になる曲については、今日演奏した曲のアレンジ譜が出来た後で、引き続きアレンジャーさんたちがスコアを書いてくれていて、既にもう届いている。ジュニアの演奏曲数は11曲である。
 
全部で8回のMCを入れることを決め、ここにいる8人が1回ずつしゃべることにした。最後を和泉が締めることにする。
 
「人気度から言って最後にしゃべってEliseにマイク渡す役はローズ+リリーがいいと思うけど」
と和泉は言ったが
 
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「和泉ちゃんは08年組の代表だから」と音羽。
「そんなのいつ決まったの〜?」
「今」と全員の声。
 
みんな同い年ではあるものの、やはり和泉が精神的にいちばんしっかりしていることを1月以来の「08年組」の活動の中で全員が感じていた気がする。
 
それにローズ+リリーが最後ということになると、私がドラムスを打って最後部にいるからマリが最後の締めをすることになる。でもハプニングを起こす名人のマリが最後の締めなんて恐ろしい!と思った人も複数あったことを後から聞いた。
 
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■夏の日の想い出・花の繋がり(3)

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