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■夏の日の想い出・けいおん女子高生の夏(6)

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「なんか広〜い」
「ここ高いんじゃ?」
「プロの音源制作に使う場合は結構取るんだけど、今日はアマチュアだからけっこう安くしてもらったよ。コネ特別割引で」
「おお、コネというのが凄い!」
「取り敢えず3時間で頼んである」
「時間は充分あるね」
 
みんなで中に入って行く。
 
「きゃー!スタインウェイがある!」
と言って美野里が喜んでいる。
 
「それで弾く?」
「いや、それではアレンジが変わってしまうけど、ちょっと弾いてみよう」
 
美野里がスタインウェイのミュージックルームグランドピアノのふたを開き、ショパンの夜想曲(ノクターン,Op9-2)を弾き始める。
 
美しい調べが響き渡る。みんなが聞き惚れていた。たくさんの変化記号が付いているはずの32分音符の連続を難なく弾きこなす美野里の指の動きに、ボクも風花も首を振りながら見とれている。
 
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やがて曲は細かい音符の連続を経てE♭の和音で終了する。
 
みんな拍手をして歓声が上がる。
 
「ほんと、美野里うまいよ。ピアニストになれるよ」と聖子。
「えー? 私よりずっと上手い人たちが山ほどいるよ」と美野里。
 
「ね、ね、これも一緒に録音しちゃおう」と来美。
「いや、待って。録音するなら『子犬のワルツ』を」
などと本人は言うが
「いや、今の夜想曲の方がいい」と多くの子の意見。
 
「あ、ついでに冬様と政子先輩のデュエットも」
「えー!?」
「ヤフオクに出したりはしませんから」
 
「ちょっと待って。それでも許可取らないと」
と言ってボクは町添さんに電話をした。
 
「確実にそのメンバーだけが持ってて流失の可能性が無いならいいって」
とボクは町添さんとの話し合いの結果を報告する。
 
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「曲目は?」
「じゃ北原白秋と山田耕筰の『砂山』でも」
「音楽の教科書に入ってたかな・・・・」
「こういう曲なら、万一第三者の手に渡ってもヤフオクで売ろうとはしないでしょ」
「確かに」
 
「これってJASRACにいくらか払わないといけないの?」
「夜想曲は著作権切れてるから、Omens of Love と砂山の分」
「いくらくらい?」
「えっと・・・800円+消費税。840円か」
「へー、意外と安いのね」
「CD1枚あたり100円で8人分?」
「じゃなくて、1曲400円。消費税入れて420円。49枚まではこの料金だよ」
「じゃ49枚作る?」
「意味無ーい。8枚でいいよ」
 
「じゃさ、CDのメディア代と合わせて1人200円、冬に払わない? 冬、JASRACへの支払いの方、しててくれる?」と風花が言う。
「うん。そちらの手続きやって、後で許諾番号のシールを配るよ」
 
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そういう訳で、ボクたちは全員で演奏した『Omens of Love』、美野里のピアノ独奏で『夜想曲』、そして美野里のピアノ・風花のフルート・詩津紅のクラリネットの伴奏でボクと政子の歌唱による『砂山』を録音した。
 
『夜想曲』は1発録音。『砂山』は2回練習した後で録音。そして『Omens of Love』
は何故かミスが相次ぎ、5回目のテイクでうまく録音できた。
 
『砂山』はボクが政子の8度上を歌う、オクターブ違いのユニゾンで歌った。
 
「海は荒海、向こうは佐渡よ、すずめなけなけ、もう日は暮れた」
と歌う政子は気持ち良さそうだった。
 
「さすがふたりともうまいね〜」
「でも冬ちゃん、何オクターブ声域あるのよ?」
「冬子は今歌ったソプラノのひとつ上の声も持ってる」と詩津紅。
「あれはあまり使い物にならないよ〜」
「出してみて〜」
と言われるので、ボクはトップボイスで
「ダバダ〜、ダバダバダバダーダバダーダ、ダダダ・ダバダバダ〜」
という感じでダニエル・リカーリの『ふたりの天使』を歌ってみせる。
 
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「すごー」
「やはり実はタマ取ってるでしょ?」
「取ってないよぉ」
「取って、無いのね?」
「えっとね」
 
「でもさすがに機械的な声になるね」
「この声では歌詞が歌えないのよ」
「ああ」
 
「今のコーヒーのCMの曲だっけ?」
「違う違う。それはこっち」
と言ってボクは伊集加代子の『めざめ』を歌う。
「ダバダ〜、ダーダ、ダバダ〜ダバダ〜、ダーダーダー、ダ〜ダバダ〜」
 
「ちょっと待って」
「同じに聞こえる」
「えーっと・・・」
 
ということで、ボクはこの2つのスキャット曲を交互に4回くらい歌わされた。でもみんなそれでも「違いが分からん!」と言っていた。
 
「私たち、違いの分からない女だわ」
「うんうん」
 
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この日録音したものはそのままのデータでもらい、ボクの方でミックスダウン、マスタリングし、CD-Rに焼いてみんなに配ることにした。
 
「唐本ちゃん、なんならスタジオ空いてる時に勝手に機器やソフト使ってミックスダウンとかマスタリングしてもいいよ。僕にちょっと声掛けてくれたらお金取らないから」
などと山鹿さんは言ってくれる。
 
「はい、そうさせてもらうかもです」
とボクも笑顔で答えた。
 

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翌週からはもう夏休みの補習が始まる。ボクは一応、ワイシャツに学生ズボンというスタイルで学校には出て行っていた。そして補習が終わると1日交替で、自動車学校とスタジオに出かけた。
 
スタジオではまずは日曜日に録音した音源のミックスダウン、マスタリングをし、更には昨年の夏、ローズ+リリーを始める直前に政子とふたりで吹き込んでいた音源(第1自主制作アルバム)のリミックス、リマスターを行った。吹き込んだ直後に1度ミックスダウンなどはしていたのであるが、当時はまだ未熟だった部分もあり、きれいにやり直したのである。
 
日曜日に録音した軽音サークル「リズミック・ギャルズ」の音源はJASRACの許諾番号もすぐもらえたのでシールを自宅プリンタで印刷して焼いたCD-Rに貼り付け、学校でみんなに配った。
 
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「なんかこういうJASRACシールまで貼ってあったら、本格的なCDみたーい」
「みんなの1ヶ月間の努力の結晶だね」
 

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そして翌週の週末、ボクは政子とふたりでまたスタジオに行き、その日は小型のスタジオを借りて「サンプル」を作ってみることにした。
 
「それなあに?」
と政子はボクが持ち込んだ機械のことを訊く。
 
「これはUA-100Gって言って、声質を変えるエフェクターなんだよ。ヤフオクで落とした」
と言い、ボクはそれをマイク、パソコンと接続する。
 
「マーサ、ちょっと何か歌ってみて」
「OK」
 
と言って政子が『クラリネットをこわしちゃった』を歌い出す。ボクがこの機械のVT (Voice Transformer) モードでピッチやフォルマントを変更してみる。
 
「なんか凄い。いろんな声になるね!」
「面白いでしょ。マーサもちょっといろんな声の出し方してみてよ」
「うんうん」
 
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ボクらは「歌い方」と「フォルマント設定」の両方を調整して、けっこう雰囲気の違う声で、比較的自然な感じになる声を見つけた。
 
ボクの方はだいたい見当は付けていたのだが、政子の声と比較的調和しそうな雰囲気で、ボク自身の声とはかなりイメージの違う声を作ってみる。
 
「男の子の声から加工するのか!」
「ふふふ。この声を公開することは絶対無いからね」
「冬の男の子の声って、物凄く久しぶりに聞いた気がする」
 
それぞれの設定で、サンプル用に用意した譜面『100時間』の、政子のパート、ボクのパートをあらかじめ用意しておいた伴奏を聴きながら吹き込んだ。
 
「私がメインボーカルを取るとは思わなかった」
「だって、マリちゃんのリハビリテーションのためだもん。だからこの作品ではボクがハモり担当」
「よし、頑張ろう」
「頑張りすぎて、お勉強がお留守になっちゃいけないよ」
「そちらも頑張る!」
 
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翌日、ボクは町添さんにちょっと内密に相談があると連絡した。
 
「ファレノプシス・プロジェクトの件?」
 
ファレノプシス・プロジェクトというのは、ボクと町添さん、津田さん・畠山さんの4人で密かに進めている、ボクと政子の個人会社設立に向けての会議のことだ。
 
「それと別件です」
「なんか秘密の話が増えてくね!」
 
結局、町添さんの御自宅にお伺いする。とっても美人の奥さんに美味しい紅茶を入れていただいた。
 
「ケイちゃん、可愛い服着てる〜」と奥さん。
「こちらを訪問すると言ったら、これ着なさいと言われてマリに着せられました」
「いつもの制服も可愛いけど、私服でもほんとに可愛いわね」
「ありがとうございます」
 
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「でも学校には結局女子制服着て行ってないんだっけ?」と町添さん。
「ええ。女子制服は主として校外で着てます」
「面白いことするね〜」
 
奥さんが下がってからボクは話を切り出す。
 
「ちょっと聴いてみて欲しい歌がありまして」
「うん」
 
ボクは編集した歌を持参のノートパソコンで再生させる。
 
「これは?」
「ロリータ・スプラウトというユニットなんですよ」とボクは答える。
「お友だちのユニットか何か?」
 
「割と歌うまいでしょ?」
「うん。でもPerfumeっぽい加工だね」
「今ちょっと流行りですからね」
「今日はケイちゃん、営業なのかな?」
「そうですね。この子たちのCDを売れないかと思って」
「ふーん。いいけど、ボクの所に来る前に浦中さんあたりに持って行った方がいいかも」
と町添さんは少し当惑気味の返事をする。
 
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「実はですね。これを歌っている子たちなんですが、この子たちなんですよ」
と言って、ボクは携帯で写真を1枚呼び出して町添さんに見せる。
 
「へ?」
そこにはお揃いの女子制服を着てマイクを持っている、ボクと政子の写真がある。
 
「このふたりでこれ歌ったの!?」
町添さんは驚いたように、ボクの顔と写真とを何度も繰り返し見た。
 
「そうなんですよ」
「全然そんな風に聞こえない!」
「色々声質を加工しましたから。最後は加工したことを誤魔化すのにPerfume系の声にしたんです」
 
「でも声は4種類聞こえる」
「マリの声で2種類作り、私の声で2種類作りました」
 
「凄い! ケイちゃん、加工がうまいね! だけどさ、君たちが歌うなら何もこういう加工しなくても、普通に歌えばいいじゃん。それでローズ+リリーのCDとして出そうよ。ファンは歓喜するよ。お父さんの説得が必要なら、僕も頑張るし」
 
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「実はですね」
と言って、ボクは政子のテンションがなかなか上がらない状態であることを説明した。
 
「歌は歌いたいらしいんです。ステージでも歌いたいし、CDも出したい。でもまだローズ+リリーとして歌うことができない、と言うんですよね」
 
「ちょっと待って。それは重大問題だよ」
 
結局この時からマリがステージに復帰する2012年4月までの3年間、ボクと町添さんは、マリに自信を持たせるにはどうするか? というのに取り組み続けたとも言える。そしてその間に政子は物凄く歌唱力を上げた。
 
それはある意味、1月末にたったふたりだけで作った「新生ローズ+リリー」がゆっくりと成長し、花開くまでの時間であった。
 
「マリは昨年ローズ+リリーとして活動していた期間にも、自分のこんな歌でお金を取ってていいんだろうか?って凄く悩んでいたというんです。それがあの事件でいったん全部壊れてしまって、当時は自分は『ローズ+リリーのマリさんですか?』と訊かれても『はい』と言えないなんて言ってたんですよね。それをじゃ、マリの中でローズ+リリーが壊れてしまったんなら、1度完全に破壊した上で、またふたりだけで作り直そうよと言って、作り育て始めたんです。ですから、今あるのは須藤さんが作った昔のローズ+リリーではなく、私とマリがふたりだけで作った新しいローズ+リリーなんですよね」
 
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「じゃ今はふたりで単に歌っているだけ。そのうち路上ライブとかするようになって、自主制作CDとか作って、インディーズで流して、デモテープをあちこちに送って、メジャーデビューを目指すみたいな、そういう過程にあるのかな?」
 
「そうです、そうです。今ファンの人たちが見てくれているローズ+リリーは実はシチューポットパイの外側のパイ生地なんです。中身は一時は生地に合わせて沸騰して大きくなってたかも知れないけど、今はバブルがはじけて小さくなってしまった。でもまた少しずつ今度はバブルではなくホントの中身を増やして成長させていきたいんです」
 
「なるほど」
 
「内緒でステージで歌うのって無理だから、内緒でCD出せないかなあ、というので作ってみたのがこの音源なんですよね」
 
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「先日の軽音フェスティバルで歌ったのも、かなりブログに書かれてたね。歌うこと自体はいいんだ?」
「ええ。受験勉強の合間に毎日自宅のカラオケでたくさん歌ってますし」
「ほほお」
 
「ローズ+リリーとして、お金を取って歌うことが、自分にはまだ出来ないと言うんです」
「ああ」
 

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■夏の日の想い出・けいおん女子高生の夏(6)

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