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■夏の日の想い出・新入生の冬(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-31

 
私は大学1年生の夏に、サマフェスが行われた日に偶然プールでスイート・ヴァニラズのEliseと遭遇したことから、誘われてスイート・ヴァニラズの全国ツアーに帯同して、ゲストして歌うことになった。
 
その最初の日、リハーサルが終わって楽屋で待機していた時に私がメンバーとおしゃべりしながらメモ帳に「ちょっとしたもの」を描いていたら、
「何描いてるの?」
と訊かれる。
 
「あ、えっと。似顔絵を・・・・」
「あ、これ私〜? 何か可愛く描いてある!」とCarol.
「あ、私のも可愛い〜」とSusan.
 
「私、人の顔を覚えるのに、似顔絵を描いておくんですよ。名刺とか頂いた時はその名刺の裏によく描いておくんですけど、みなさんとは名刺交換しなかったから、代わりにメモ帳に描いておこうと」と私は説明した。
 
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「へー。でも全員可愛く描いてあるなあ」とEliseもにこにこ顔で言う。
「ね、ね、これ今度のアルバムのジャケットに使えないかな」
「あ、それいいね!」
 
そういうことでその年の秋に発売されたスイート・ヴァニラズのアルバムには私とマリが歌った曲、私とマリが作った曲も1曲ずつ収録されたのだが、アルバムのジャケットにも、私が描いたスイート・ヴァニラズのメンバーの似顔絵が利用されたのであった。
 

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この時期、まだローズクォーツの他の3人が昼間の仕事を持っていてフル活動できない状態で、私はひとりで高校時代に関わりのあった全国各地のFM局などにお呼ばれして出かけて行きトークしたり、雑誌のインタビューに応じたりしていた。そんな中、9月にはローズ+リリーのアルバム(『After 2 years』)の録音をしたのだが、それが終わった後で宇都宮を訪れていた時、偶然スリファーズのライブに遭遇。それが縁で彼女たちに楽曲を提供することになる。
 
そしてその後は、スイート・ヴァニラズ、スリファーズ、AYA、SPSのレコーディングに顔出したり、コーラス参加したりなどしていたのだが、結果的に9月から10月に掛けて、かなり頻繁に政子を連れてスタジオに行き、多数のミュージシャンさんたちとの交流が生まれた。
 
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そんなある日、政子が唐突に言った。
 
「でもみんなギターとかドラムスとかサックスとか上手いよね」
「そりゃプロだもん」
「私も何か楽器覚えようかなあ」
 
「マーサ、フルートが吹けるんでしょ? 中学の時、吹奏楽部でフルート吹いてたって言ってたじゃん」
「私がさあ、冬の前で一度もフルートを吹いたことがないというので察してよ」
「うーん。。。」
 
「子供の頃何か習ったりしてなかったの?」
「ピアノとヴァイオリンのレッスンに行ってたよ」
「マーサがピアノ弾いてる所なんて見たことない」
「まあ、それで察して欲しいね。ピアノ自体、私が全然弾かないから従妹にあげちゃったしね」
「なるほど」
 
「じゃヴァイオリンは?」
「1年くらいで辞めちゃったのよね〜。割と好きだったんだけど。ピアノの先生は怖い先生だったけど、ヴァイオリンの先生は優しくてさ」
「ああ、子供の頃って、先生が優しいかどうかが結構、楽器の好みに影響するだろうね」
 
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「んじゃ、ヴァイオリン弾いてみる?。ヴァイオリンは持ってるの?」
「小学1年生の時にやめちゃったから、小さいヴァイオリンしか無いのよね」
 
と言って政子は押し入れの奥からヴァイオリンケースを出して来た。
「ああ。楽器自体は傷んでない感じ。でもちっちゃい」
「子供用のヴァイオリンは小さいからね」
 
「だいたいヴァイオリンって、腕の長さくらいって言うよね。私の今の腕の長さに比べてわりとサイズあるから、これ3分の2とか4分の3とかのサイズじゃないかな」
 
「3分の2というヴァイオリンは無いと思うな。これは4分の1だと思う」
「えー? そんなに小さい?? じゃ、ふつうのヴァイオリンってこの4倍サイズ?」
「これの4倍だとコントラバスになっちゃうね。ヴァイオリンの分数って別に実際の大きさの比じゃないんだよ」
「あ、そうなの?」
 
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「もともと標準サイズのヴァイオリンより小ぶりのヴァイオリンを子供用に作って、それを小さいから2分の1と呼んだんだ。ふつうのヴァイオリンは60cmくらいだけど、2分の1は52cmくらいだよ。その後、更にもっと小さいのを作ったのでそれを4分の1と呼んだ」
と言いながら、私は政子のヴァイオリンの長さをメジャーで測る。
 
「これ46cmあるね。やはり4分の1だと思う。4分の1は47cmくらいのハズ。結構メーカーによっても長さにばらつきがあるんだよ」
「そんなに適当なんだ!」
 
「8分の1は4分1より更に小さいサイズ、4分の3は標準サイズと2分の1の中間サイズ。そういう感じでアバウトに名前が付いて行ったから、そもそも比率なんて存在しないんだよね」
「なーんだ。てっきり16分の1って、ふつうのヴァイオリンの16分の1の長さと思っていたのに」
「標準サイズの16分の1なら、4cmくらいだね。生まれたての赤ちゃんにも小さすぎる。もうお人形さんサイズだね」
 
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「じゃ、取り敢えず1分の1のヴァイオリンを買って来よう」
と言って政子は立ち上がった。
「行ってらっしゃーい」
「冬も来てよ」
「私、この編曲を夕方までに完成させないといけないんだけど」
「帰ってからすればいいじゃん。私が行く所には冬も付いてくるんだよ」
「はいはい」
 

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政子は楽器店に入っていくといきなりこう言った。
「ヴァイオリン1個下さーい」
私は一瞬政子から5cmくらい距離を取った。
 
「はい。どんなのがいいですか?」
と店長さんらしき人が笑顔で訊く。
 
「私よく分からなくて。ストラディバリとか聞くけど、あります?」
「・・・・それは普通売りに出てませんし、最低10億円はしますが・・・・・」
私は思わず頭を抱え込んだ。
 
「あ、そうなんだ!」と冬子はあっけらかんとしている。
「ストラディヴァリウス・モデルといってストラデイヴァリウスの形をコピーしたものなら安いのは20万から、高いのは数百万くらいで買えますが」
「あ、じゃ、それ1個ください」
 
「ちょっと。マーサ、実際の楽器を見て、できたら試奏させてもらって買った方がいいよ」
「そうだねー」
 
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「あのぉ、最近始められた方でしょうか?」
「子供の頃弾いてたらしいんですよ。久しぶりに弾きたいということで」
 
「なるほど。うちの在庫品で良ければ、少し弾いてみられませんか? ストラディバリウス・モデルは今在庫がありませんが」
「わあ。いいんですか?」
 
「ちなみにご予算はどのくらいでしょう?」と私の方に訊く。
「そうですね。取り敢えず練習用ということで本体価格40〜50万かな」
と私は答える。店主は頷いた。どうも政子に質問するより私の方に質問する方が良さそうだと判断した雰囲気だった。
 
店主さんが3つほどヴァイオリンを持ってきた。とりあえず端から弾いてみる。10年以上のブランクがあっても、やはり小さい頃に弾いていたので身体が覚えているのだろう。ちゃんときれいな音を出す。ノコギリの音にはならない。
 
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「うーん。なんか持ちにくい」
「音がなんてっか、単純」
「あ、これ割と好きかなあ」
 
「じゃ、その系統のを少し他にもお持ちしますね」
 
しばらく弾いていたら、外でトントンとする音がする。
 
「これはこれは、宝珠さま。今日は何かお探しですか」
「いや、そこのふたりの知り合いなもので」
「あ、お知り合いですか」と楽器店主がホッとした顔をする。
 
「ふーん。ヴァイオリンを買うんだ。とりあえず全部弾いてみて自分の気に入ったものを探す方がいいよ。アドバイスはしてあげるから」
「七星(ななせ)さん、ヴァイオリンも弾くんですか?」
「うん。弾くよ。あくまで趣味だけどね。私の本業は管楽器だから」
 
宝珠さんが政子の試奏を聴いて言う。
「へー。10年ぶりに弾いたというわりには、うまく弾くじゃん」
「やはり小さい頃に弾いた経験って大きいですよね」
「そうそう。冬ちゃんも3歳頃からピアノ弾いてたって言ってたよね」
「ええ。習いには行ってなかったんですけどね」
 
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「私も3歳の時からピアノ習ってたけど、おたまじゃくし読めないよ」
と政子。
「まあ、個人によって様々だからね」と宝珠さんは笑ってる。
 

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政子はその日「これ割と気に入った」と言って、本体価格52万円の中国産のヴァイオリンを購入した。宝珠さんが「これは made in china といってもしっかりした工房で技術のある職人さんが手作りした製品だよ。これと同等の品がいったんイタリアに運ばれて made in Italy の刻印を押されて200万円くらいで売られていたりするよ」などと言っていた。
 
私たちは3人でマンションに戻り、お茶を入れて飲みながらヴァイオリンの話をしていた。私がお茶を入れている間にも政子は盛んに買ってきたヴァイオリンを弾いて、宝珠さんにいろいろアドバイスをもらっている。
 
「何歳頃弾いてたの?」
「小学1年生の頃なんですよ」
「へー」
「その頃、冬はキーボードばかり弾いてたみたいで、この写真」
と言って、政子は携帯に入れている写真を1枚宝珠さんに見せる。
 
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「わあ、可愛い女の子!ってこれ冬ちゃん?」
「ええ、まあ」
そこには長い髪に花のカチューシャを付け、エレクトーンを弾いている幼い頃の私の写真がある。
 
「こないだ冬のパソコンの中から私が発掘してコピーしといたんです」
「何歳くらいかなあ?」
「それ白状しないんですよね〜。だいぶ拷問したのに。銀塩写真を最近スキャンしなおしたみたいでタイムスタンプからは撮影日時が分からなくて」
「いいじゃん、別に」
 
「でも冬ちゃんって、この頃から女の子だったんだ」
「いや、それ別に女装してないんですけど」
 
「ほんとかなあ」
「服はエレクトーンの陰になって見えないもんね、この写真」
「私小さい頃、髪を長くしてたから、演奏の邪魔になるってんで、姉ちゃんからカチューシャ借りただけだよ」
「何か言い訳がましいなあ」
 
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「ヴァイオリンにはね、量産品と工房品があるけど、基本的には写るんですと一眼レフカメラくらいに別物と思った方がいい」
 
ボクたちは少しお腹が空いたねなどと言ってスパゲティをおやつ代わりに食べながら話を続けていた。私は話しながら編曲作業を進める。
 
「そんなに違うんですか?」
 
「量産品は中国製だろうと国産だろうと一緒。基本的には弾き方を覚えるためのものと割り切った方がいいよ。しばしば乾燥不十分な安い木材を使ったり、木目を無視して機械で削ってるから、まともな音は出ない。酷いのになるとアロンアルファで接着したのもあるからね」
 
「ヴァイオリンって本来何で接着するんですか?」
「ニカワだよ」
「あ、そうか」
「瞬間接着剤でくっつけてあったらメンテ不能だよ」
「なるほど」
 
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「もっとも量産品の中にも、良質の木材を使って人間業ではできない機械ならではの精密な削り方・超薄いニスの塗り方をしたようなものもある。そういうのは量産品でも別格だね。結構良い音が出る」
「はあ」
「出来のいいコンデジみたいなもの?」
 
「そうそう。優秀なコンデジはどうかした一眼より良い写真が撮れる」
「工房品は職人さんの腕次第だろうから、下手くそな人が手作りしたら、機械で作ったのより酷いでしょうね」
「ああ、それはしばしばある。特にストラディ・モデルなんて怪しい。素人を簡単に騙せるし」
と宝珠さんが言うと、政子がむせている。
 
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