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■夏の日の想い出・新入生の冬(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-09-01
 
町添さんはヘッドホンをしたまま、お茶を1杯飲みながら言った。
 
「実は★★レコードの内部では、マリちゃんの復帰が遅れるなら、ケイちゃんはバンドなんかと一緒にやらせるより、ソロデビューさせるべきではないかという意見も根強くてね」
 
「すみません。私はソロで歌うつもりはありませんから」
「うん。僕もあくまでローズ+リリーの歌を聴きたいんだよね。ケイちゃんの歌は凄く上手いんだけど、ケイちゃんの歌だけなら、普通のイクラ丼、マリちゃんと一緒に歌うと鮭イクラ丼になって、美味しさに深みが出る」
 
「面白いたとえですね」
「それにケイちゃんをソロで売ってもかなりのセールスが上がるだろうけど、その結果、ローズ+リリーを復活させ辛くなってしまうと思うんだ」
 
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「私もそう思います。ですからローズクォーツというのは良い企画だと思います」
 
「ところで。。。ケイちゃん、いつ性転換手術するの?」
「大学卒業するまでにすればいいかな、と一時は思っていたのですが」
「うん」
「マリから、20歳になるまでに手術しなかったら、私が切り落としちゃうからね、などと言われてます」
「あはは」
 
「この夏くらいに受けようかなというのを漠然と考えています」
「なるほど。夏ね・・・・」
「すると10月の誕生日が来たら戸籍の性別を変更できるので。実は手術自体はもう予約済みで代金も払い込んでいるんです」
「ああ、そうなんだ」
「ただ日程を決めてないんです」
「ああ」
「私がその気になったら1ヶ月以内の日程は取れる、と言ってもらっています」
 
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「もういっそ、来月くらいに、やっちゃわない?」
と町添部長。
 
「たぶん・・・私の性別が曖昧なままより、ちゃんと女の子になってくれた方が売りやすいですよね」と私。
 
「まあ、CMとかのタイアップなんかは取って来やすいね。個人の問題だから、僕があれこれ言うことではないけどね」
 
「1月に手術しちゃうと、大学の後期試験を受けられなくなってしまうので」
「ああ!」
「どうしても学期と学期の間を狙って受けないといけないなと思っているんですよ」
「学生さんだもんね」
「ええ。たぶん手術して1ヶ月くらいは、ひたすら寝てるだろうと思うので」
「だろうね」
「でも来年中にはやりますよ」
 
町添部長は笑顔で頷いていた。
 
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「須藤君のマネージメントについてはどう? 正直な所」
「面白いと思いますよ。時々『えー!?』なんてのはありますけどね」
 
やはりこれが今日の本題だよな、と私は思った。
 
「民謡をやったりとか?」
「元々、私の祖母が地元では有名な民謡の名人だったんですよ」
「へー」
 
「母も三味線の名取りですし。ですから小さい頃から民謡は唄っていたんです」
「そうだったのか」
「ただ、理論的なことは全然知らなかったし、民謡の音程と西洋音楽の音程が違うことも指摘されるまで気付かなかったですけどね。私は自然にそれぞれの曲の音程で唄っていただけだから」
 
「★★レコード内部では、須藤君のやり方に対しては賛成できないという意見の方が多くてね。ただ、僕はマネージメントというのは信頼関係が一番だからケイちゃんとマリちゃんの信頼できるマネージャーが付いているのが一番だとは思うんだよね」
「ええ。その点が、私とマリが須藤を選んだ理由です」
 
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「ただ、管理面と制作面は必ずしも連動しなくてもいいという気はするよ」
「というと」
 
「ケイちゃんさ、ELFILIESにしても、ノエルにしても、事実上プロデュースしてるじゃん」
「そうですね。それに近いことをしました」
 
「だったらローズ+リリーは、ケイちゃんが自分でプロデュースするようにして行ってもいいんじゃない? 右も左も分からなかった高校生の時とは違うもん。ケイちゃんがAYAちゃんやSPSとかに提供した曲を見てると、ケイちゃんって聴き手を凄く意識した曲作り、そして売れるようなアレンジが出来ているしね。スリファーズはケイちゃんのアレンジ・プロデュースじゃなかったら、あの半分も行ってないと思う。ノエルにしても初動5万枚なんて初めて。多分初ゴールドディスク行くよ。ああいう感じで、ローズ+リリーのプロデュースをしていけばいいんだよ。ローズクォーツの方は須藤君に任せて」
 
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「そうですね・・・・須藤自身、ローズ+リリーとローズクォーツの路線で少し混乱している気はするなという気はしていたので。ローズクォーツの方を須藤に任せて、ローズ+リリーに私の意見を強く出していくというのはひとつの道かも知れませんね」
 
「じゃ、年明け早々にローズ+リリーの新しいシングルを作ろうよ」
「でも発売が・・・」
「恋座流星群と同じ方式で」
「ああ、それなら行けますね」
「それ用の高品質の曲を準備しててよ。あのやり方ってプロモーションとかができないから、曲の品質だけで売る必要があるから」
「はい」
 
そうやってリリースしたのが『神様お願い/帰郷』(Spell On Youを含む)であった。
 

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町添さんとの秘密会談を終えてから、私は単独タクシーで東急東横線の駅に行き、そこから渋谷に出て、ロシアフェアの会場に向かった。会場前で政子と落ち合う。政子はルパシカの上下を着てきていた。
「おお、ロシア向けに気合い充分だね」
「冬の分も持って来たよ」
「私も着るのか!」
 
まだ少し時間があったのでマクドナルドに入り、コーヒーを注文する。トイレで政子に渡されたルパシカに着替えてくる。しばしここ数日のお互いの報告をしてから、雑談をしていた時、ふと政子が言った。
 
「トゥィ・ズナーユ、クトー・ペーチ・シヴォードニャ?(今日誰が歌うか知ってる?)」
「ごめん。私あまりロシア語得意でないから日本語で説明するね」
「ハラッショー(OK)」
「今回はそもそも私たちにまた歌わない?って打診が来たんだよ。ローズ+リリーがまたプロとして再契約したらしいと聞きつけて」
「アー」
「でも、現在ライブ活動は休止中ですということでお断りして。それで窓口になってた○○プロから、誰か割り当てるということになったらしい。具体的に誰になったかまでは聞いてない」
「フーン」
「○○プロ、あるいは協力関係にある△△社とかのプロダクションのどこかから出すんじゃないかな」
「ヤー・ナデェユーシ・ハラッショエ・ペヴィーツァ・プリハジート(いい歌手が来るといいね」
「ダー(Yes)」と私は笑顔で答えた。
 
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やがて開場30分前になったので会場に向かう。会場前で待っていたら、2年前に見知った大使館の人(ミハイル・ニコライヴィッチさん)が寄ってきて「こちらにいらしてください」と言われ、先に中に入った。
 
会場の中心にラーダ・グランタのセダンと、IMZウラルのサイドカー付きバイクがどーんと置いてある。物産展や食品市などはまだ準備の最中という所も多いが、美味しそうなピロシキが湯気を立てているのを見て政子が思わず
「ダイチェ・エータ(これ下さい)」と声を掛ける。
「スコーリカ(いくつ)?」
「チトゥィリ(4つ)」
などといってピロシキを4つ買うと、ひとつ私に渡してくれた。もちろん政子は3個食べるつもりである。
 
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「ありがとう」と私が政子に言うと、売場の人が
「あ、日本の方ですか? 私日本語もできますよ」と流暢な日本語で言う。「あ、そうだったんだ!」と政子。
 
「フェアの売場にはだいたい日本語できる人が並んでますから」
とミハイルさんも言っていた。
 
会場をひととおり案内されて見てまわった頃、開場となり一般客が入ってくるが、私たちは奥の部屋に案内された。
 
「やはり、2年前のローズ+リリーのステージが物凄く盛り上がりましたからね。1回目のステージで凄く受けたので、2回目のステージはもう会場に人が入りきれないくらいになりましたから」
とミハイルさん。
 
「ええ、あれは何か寿司詰めでしたね」
「昨年はアイドル歌手の****を呼んだのですが、全然盛り上がらなくて」
「あぁ」
「今年はやはり実力派の歌手をということでね、おふたりが活動再開したと聞いたので○○プロの方に打診したら、ライブ活動は休止中ということで、それで花村唯香さんという人に来てもらうことになりました。まだ人気はそんなに無いものの、実力は高いということで」
「ああ!」
 
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「ケイ、知ってるの?」
「えっと、こないだ彼女に曲を提供するから詩を書いてって頼んだんだけど」
「ああ。忘れてた!来週書くね」
「よろしく」
「うまい?」
 
「彼女うまいよ。魅惑のアルトボイスって感じで。声域自体は低いんだけど、すごく耳心地が良い声っていうかね。音程は正確だし、リズム感もいいし。デビューして1年くらいだと思うけど、まだ売れてないのが惜しい感じだね」
「へー」
 
などという話をしている内に当の花村唯香がマネージャーさんと一緒に到着した。
 
「あれ〜? ケイさん!」
「先日はどもー。こちらマリ」
「初めまして。花村唯香です」
「あ、初めまして。ローズ+リリーのマリです」
 
ということで握手を交わす。唯香と握手をした時、政子が一瞬不思議な表情をした。
 
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やがて1回目のステージとなる。曲は有名なロシア歌曲『黒い瞳』から始まり、『ともしぴ』『モスクワ郊外の夕べ』と定番の曲を歌っていく。なじみのある曲ばかりなので、会場の視線が次第に唯香に集中して行った。
 
ロシアの人気歌手・バルバラのヒット曲『レターラ・ダ・ペラ(飛んで歌って)』
を歌うと、会場内のロシア人さんたちの反応が良い。(『黒い鷲』で知られるフランスの歌手バルバラとは別人)
 
その後自分の持ち歌(スイート・ヴァニラズ作『ベレスタ』)をロシア語歌詞に翻訳したものを歌うと、それまでの流れでこの曲にもある程度の手拍子が来る。そして最後に『カリンカ』を歌うと「カーリン・カカリン・カカリン・カマヤ」
と一緒に歌い出す人も会場の中にたくさん出て盛り上がった(本当の区切りはカリンカ・カリンカ・カリンカ・マヤだが、だいたい↑のように聞こえる)
 
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大きな声援に笑顔で応えて唯香はステージを降りた。
 
政子も笑顔で大きな拍手をしている。
「この子、うまいね!」
「でしょ」
「よし。やる気がグッと出た」
「頑張ってね」
 

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控え室に行くと、政子は唯香に
「うまいね!すごいね!」と言ってべた褒めする。
 
「なんか一緒にステージやりたくなっちゃった」
などと政子は言い出す。
「あ、ぜひ一緒にやりましょうよ。2回目のステージで」と唯香。
 
「いや、しかしここは唯香ちゃんのステージだから遠慮して」
と私は慌てて言う。
 
「うーんと。歌は唯香ちゃんが歌えばいいんだから、私たちは伴奏しない?」と政子。
「ああ、それはいいですね」
と唯香のマネージャーさん。
 
「私、人前では歌わない契約だけど、楽器演奏するのは契約に触れないよね?」
と政子。
「契約も何も、マリが良いといえば、誰も止めないよ」
と私は笑顔で答えた。
 
「でも何で伴奏するの?」
「私はヴァイオリンしか弾けないから、ヴァイオリンかな。ケイはフルート?」
「私のフルートは中学生レベルだよ。ピアノにしようかな」
「じゃ、ヴァイオリン取って来ます」
と政子が言ったのだが、ミハイルさんが
 
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「もし良かったら大使館にあるヴァイオリンを持って来ましょうか?すぐ近くですから」と言う。
 
「あ、それでもいいかな」
というのでお願いした。ミハイルさんは大使館に電話して、向こうのスタッフさんにヴァイオリンを持って来てもらう。楽器は10分で到着した。
 
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