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■夏の日の想い出・新入生の冬(8)

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このあと、25日から27日までは、博多・札幌・仙台と移動してローズクォーツのライブをライブハウスで行った。「ドサ回り」でかなり公民館とか集会所とかで、じいちゃん・ばあちゃんたちを相手に演奏をしたが、やはりライブハウスでの演奏が、このバンドには似合ってるなというのを私は感じた。これはお客さんが乗ってくれることで、完成する音楽だ。
 
28日から30日までは、都内のスタジオに行き、花村唯香の音源製作に付き合った。今回のアルバムは、みんな忙しい時期でもあり、スタジオミュージシャンの人たちに伴奏はお願いしているのだが、制作全体の管理は★★レコードの北川さんが見るにしても、各楽曲ごとの細かい指示は、上島先生、EliseかLonda、そして私たちが各々の時間の取れる時にスタジオに寄って指示することにしていた。
 
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実際のアルバム制作は唯香が冬休みの間を利用して行うことにしていて(彼女は大学には進学せず、高校を出たら歌手専業になる予定)、25日から始まっていたのだが、その間 EliseかLondaが頻繁にスタジオに来ては指示を出していて、この3日間は、私たちが提供した曲に関して細かい指導などをした。上島先生や水上先生は年明けに来る予定ということだった。
 
スタジオでの作業が終わって帰るという時、私はちょうどトイレが唯香と一緒になった。そこでトイレの中で彼女のそばに寄り、小声で言った。
 
「もしさ・・・色々個人的なことで相談したいことあったら遠慮無く連絡してね」
「あ・・・やっぱりケイさんには分かっちゃいますよね、他誰にも気付かれなかったのに」
 
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唯香が男の子だとリードしたのは政子なのだが、そこまでは言わなかった。
 
「パス度完璧だよ」
「えへへ。何か相談したいこと、多分出てくると思います」
と言って、私と唯香は携帯の番号を交換した。
 
「メールすると事務所に同報されるので、連絡は通話でお願いできますか?」
「OK」
 

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31日は都内のライブハウスで行われた「年越しライブ」に出演した。多数のプロ・セミプロのロックバンドが出演した熱気あふれるライブだった。政子にも「見に来ない?」と言ったのだが「夜遅く行くのしんどーい。私寝てる」ということだったので、筑前煮を重箱3個分ほど作って置いてひとりで出て行った。
 
という私もここ連日働きずくめだったので疲れが溜まっていて、出番が来るまで女性用楽屋の隅で壁にもたれて仮眠していた。
 
携帯のアラームで目を覚ます。メイクを整えて集合場所に行く。しばしメンバーと話していたら、そこに宝珠さん・近藤さんを含む5人のグループがやってきたので、ああこれが《スターキッズ》かと思い、私は会釈した。すると、近藤さんとマキが「よぉ」と挨拶を交わしている。
 
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「あ、お知り合いでしたか?」
「ああ。高校の同級生」
「えー?そうだったんですか!?」
「その頃からふたりともバンドやってたけど、一度も一緒には演奏しなかったな」
などと言いながら、ふたりとも軽く殴り合ってる。何で殴るの〜?
 
「どうしたの?」と宝珠さんが私の表情を見て訊く。
「何で男の子って、こんな感じで殴り合うのかなあ。これがさっぱり理解できなくて」と私。「ああ。私もさっぱり理解できない」と宝珠さんも言う。
 
「え?ただの挨拶代わりだよ」と近藤さんは言う。
「私、こんな感じの男の子たちの付き合いに馴染めなかったのよね〜」と私。「ふふふ。それで女の子になっちゃったのね」と宝珠さん。
 
「女の子たちは挨拶代わりに何するの?」とマキ。
「うちの中学や高校ではハグして、しばしばそのままおっぱいの触り合いに」と宝珠さん。「ああ、私もよくやってました」と私が言うと
「女の子とハグしたり、おっぱいの触り合いしてたの!?」
と近藤さんとマキとタカが同時に訊く。
 
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「ええ」と私が笑顔で答えると、宝珠さんとサトが笑っていた。
 

年越しライブは夜9時から始まり、朝4時まで続いたのだが、ローズクォーツは午前1時から30分を担当した(スターキッズは2時半から30分だった)。
 
演奏終了後、他のメンバーはラストまで見てるということだったが、私は疲れているのでひとり先に帰らせてもらった。本当はスターキッズのステージを見たかったのだが、体力優先である。
 
深夜帰宅してシャワーを浴びてから、ベッドルームに行き、政子の隣に潜り込んだら「おかえりー。キスキス」と言うので唇にキスする。しかし政子はそのまままた眠ってしまったので、私は微笑んで政子の手を握ったまま眠りに落ちた。
 
朝6時に起きて、一緒にお屠蘇を飲み、お雑煮を食べる。
 
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今日は午後から大阪で「新年ライブ」のイベントがあり、ローズクォーツもそれに出演するので、他の3人は朝からそちらに向かうのだが、私は午前中は横浜に行き、市内のイベントスペースに向かった。今日、元旦にスイート・ヴァニラズの新曲が発売になり、その記念イベントがあるので「ちょっと来い」と言われたのである。
 
お正月の発売イベントだから振袖でも着るのかと思ったら「ビキニの水着」という指定であった。
 
「意外性があっていいだろ?」
「寒いですよ〜」
「暖房が入ってるから平気」
「11月にお風呂で見た限りでは、ケイはピキニになれる身体だ」
 
などと言われた。Eliseからは政子も一緒にと言われたのだが、政子は
「私、人前では歌わない契約だも〜ん」
などと言って拒否されたので、私だけ行くことになった。
 
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イベントが始まり、スイート・ヴァニラズのメンバーがピンクのビキニ、私が赤いビキニで出てくると、会場から「えー!?」という声が上がった。まさか真冬の日本のお正月に、ビキニでの登場というのは、誰も予想しなかったろう。
 
そのまま今日発売のシングルの曲の内、マリ&ケイの作品『迷い庭』(メインボーカル:Londa)を演奏する。私はウィンドシンセ(AKAI EWI4000s)を吹いて演奏に参加した。政子とふたりで来るのならコーラス隊をしたかった所だが、ひとりではコーラスにならないので、じゃ何か楽器でも弾く?という話になった。
 

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打ち合わせの時には来ていた政子が「ケイは最近フルートを練習してますよ」
などというので「じゃ、それ吹いて」と言われたものの、「とてもお客さんに聞かせられるレベルではありません」と言い、代わりにウィンドシンセにしてもらったのである。EWI4000sは、高3の時にコーラス部の友人に乗せられて買って、かなり吹き込んでいたので、その後、受験勉強で忙しくなって放置していたものの、ここ1ヶ月くらいの練習で完全に勘を取り戻すことができていた。キーボード弾きの私にとっては、フルートよりぐっと扱いやすい楽器である。ロールピアノかピアニカに近い感覚で吹くことができる。
 
「ああ、そういえばケイはリリコン吹いてたね」と政子が言うが
「あれはリリコンじゃなくてイーウィー(EWI)」と私が訂正する。
「ああいう楽器をリリコンと言うんじゃないの?」
「あの手の楽器の総称はウィンド・シンセサイザーと言うんだよ。リリコンはその中のひとつの商品名」
「へー」
「もう製造中止になって久しいけどね。ほら、長岡で会ったカナディアン・ボーイズの人がリリコン吹いてた」
「ああ、違う楽器だったんだ!」
 
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「では、そういう所でこの写真を」と言って政子は自分の携帯の中に入っていた写真をEliseたちに見せた。
「おぉ!可愛い!女子高生してる!!」とEliseやSusanが喜んでいる。私はびっくりした。
 
「こんなところを写真に撮ってたんだ!」
「盗撮しといた」
「うむむ」
 
それは高校の夏服の女子制服を着て、EWIを演奏している私の写真であった。
 
ところで、同じウィンドシンセでも、宝珠さんはヤマハのWX5を使っている。サックスと感覚が似ているのよ、と彼女は言っていた。1度借りて吹かせてもらったこともあるが、やはりサックスなどとても吹けない私には、EWI4000sの方が吹きやすい感じであった。逆に宝珠さんは私のEWI4000sを吹いてみて「好きくない」
と言っていた。
 
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スイート・ヴァニラズの新曲に続けて11月に発売したアルバムに入っていた曲3曲(『Swiss Roll Passion』(Vo:Minie)『ミスカブルー』(Vo:Carol)『東京高原の夜』
(Vo:Susan))を演奏した所で「ここでケイちゃんをメインにした曲『ペチカ』」と言われる。これもアルバム収録曲である。
 
私はウィンドシンセから手を離し(この楽器は首から掛けて使用している)、この曲のメインボーカルを歌った。本来政子が歌うサブボーカルはアルト声域でハーモニーを取るのもうまいMinieが歌ってくれた。
 
この発売イベントに集まっているのはむろん、ほとんどがスイート・ヴァニラズのファンなのだが、そのファンたちにも、この歌は何となく受け入れてもらった感じでホッとした。
 
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そして新発売のシングルのタイトル曲『熱い林檎』(Vo:Elise)を歌う。私はまたウィンドシンセを吹いて、演奏を終えた。
 
この日の発売記念のサイン会では、《Sweet Vanilas with Rose + Lily》という特別版のサインをした。
 
そしてその日、あちこちのブログに私のビキニ姿の写真が掲載され、「ケイのおっぱいは、やはり大きかった」とか
「ケイは豊胸済みであることを確認」などというタイトルが付いていた。
 
中には「下も付いているようには見えなかった。性転換手術済みか?」
などという書き込みも多く見られた。
 
しかしこういう噂の広がりは、スイート・ヴァニラズのアルバムのセールス自体も少し後押ししたようであった。
 
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2月。私はローズクォーツの「第二弾・ドサ回り」をしていた。2月は西日本を回り、3月に東日本を回る予定であった。(実際には3月は震災で吹き飛び代りに6月に避難所巡りをすることになった)
 
13日の日曜日は石川県のスキー場に来ていた。ゲレンデの中に作られた特設ステージで歌ったのだが「スキーで滑ってステージまで来て下さい」という指定に、まともにスキーができるのはサトだけだったので、マキもタカもステージの裏から歩いて登場となり(それでもマキは1回転んだ)、サトと私だけが上から滑って降りてきた。
 
サトは上級者なのでパラレルターンができるが、私は小学校の時にちょっとやっただけなので、ボーゲンで勘弁してもらったが、取り敢えず、私たち2人だけでも滑って降りてきたのは、結構好評であった。
 
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いつものように「川の流れのように」から始めて、自分たちの曲を2曲演奏した(『パーチャル・クリスマス』『あの街角で』)あと、リクエストを受付けると、1曲氷川きよしの『玄海船歌』を歌った他は、何だかお子様のリクエストが多くて『はなかっぱ』のテーマ曲『カラフル』(マイラバ)、『ハートキャッチプリキュア!』のテーマ曲(池田彩)、『こばと。』の劇中曲『あした来る日〜桜咲くころ』(花澤香菜)、『ピタゴラスイッチ』の『アルゴリズム体操』(いつもここから)などと続く。
 
『アルゴリズム体操』は覚えてそうなサトを呼んで、ふたりで体操しながら歌ったら、大好評であった。(今日はヘッドセットマイクを使っていたので体操しながら歌えた)
 
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最後は『Winter Contact』で締めた。
 

この日はここだけだったので、このイベントのスポンサーになっていた旅館に宿泊する。食事前にお風呂どうぞと言われたので大浴場に行き、湯船にのんびりと浸かっていたら、関西系っぽい?おばちゃん数人が寄ってきた。
 
「ね、ね、あなたさっき、獅子吼で歌ってなかった?」
「はい。歌いました」と私は笑顔で答える。
「あなた、凄く歌うまいのね。すっかり好きになっちゃった」
「ありがとうございます」
「なんて名前のグループだったっけ?」
「今日は《ローズクォーツ》という今年作ったユニットで来ましたが、もうひとつ《ローズ+リリー》というユニットの方は3年ほどやってます」
 
「あ、《ローズ+リリー》は聞いたことある。『ふたりの愛ランド』カバーしてたよね?」
「はい。あの曲は好評で。今でも個別ダウンロードが凄いんですよ」
 
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「ね、ね、近くに居た人が、あの子あんな風にしてるけど男の子なんだよ、って言ってたけど、本当?」
私は吹き出しそうになった。
「そうですね。生まれた時は男の子でしたけど、今はごらんの通りです」
と笑顔で言う。
 
「へー。凄い。色々手術してこういう身体になったんだ?」
「ええ。手術もしてますが、バストなどは女性ホルモンを長年飲んで大きくなった分もありますね」
「ああ!」
 
「声も手術してそういう声になったの?」
「喉関係は全然手術してませんよ。これは発声法なんです。『もののけ姫』
の米良美一さんの発声法などと同類ですよ」
「ああ!あれも私、てっきり女の人が歌ってるんだと思った」
「ね、もののけ姫のテーマ曲歌える?」
 
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「歌えますよ」と私は笑顔で言い、その曲を歌ってみせる。
 
「すごーい!」
といっておばちゃんたちが拍手してくれた。
 
このおばちゃんたちがサインを欲しいと言ったものの、お風呂の中なので後でロビーで落ち合って書いてあげますよ、ということにした。
 

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食事は部屋まで持って来てくれた。
 
「あ、これ美味しい」
などと言って食べていたら、今日のイベントのスポンサーでもあった、この旅館の主が来て挨拶する。
 
「そうそう。これはうちの親戚の酒蔵で作っているもので、みなさんに1本ずつどうぞ」
と言って「萬歳楽」と書かれたお酒を1本ずつ配る。
 
「あ、すみません。私は未成年なので」
と私は言ったが、
「それではお姉さんかどなたかにでも」
と言うので、頂いた。
 
「あ、これも一緒に」
と言って渡されたのは、その萬歳楽のシールである。描かれているキャラクターが可愛い!
 
「可愛いですね!私、バッグに貼っちゃおうかな」
と言って、私は旅行用バッグに貼り付けた。
 
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サトも面白がって楽譜入れに貼り付けていた。マキとタカは荷物の中にしまっていた。
 
「萬歳楽」という単語が、地震避けのおまじないとしても有名であることを私が知ったのは、この年の6月に青葉に会った時であった。
 
 
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夏の日の想い出・新入生の冬(8)

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