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■夏の日の想い出・新入生の冬(4)
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目次 8
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受付を通り2階に上がった所に、レストランがあり、ビールのサンプルがあるのを見て Elise が「ああ、飲みたい」と言ったが、Londaに「お金無いんだろ」
と言われ「そうだった!」などと言っている。
ぞろぞろと(女湯の)脱衣場に入るが
「ケイ、こっちで大丈夫なんだっけ?」とSusanが少し心配そうに訊く。「少なくとも男湯には入れませんね。Dカップだから」と私は笑って言った。
「こないだスリファーズの発売イベントで、ケイさん、小学校に上がって以降、男湯に入ったことはありません、なんて言ってましたね」と唯香。
「あ、あれ聞いてたんだ? うん。入ってない」と私は笑って言った。
「幼稚園の頃は、どちらにでも入ってたけどね。連れてってくれた人次第で。母や祖母に連れて行かれると女湯、父とかに連れて行かれると男湯」
「何〜? 男湯に入ったことないだと? その話は、どこかに拉致監禁して拷問して追求してみたいな」とElise。
「春奈ちゃんは小学校の修学旅行では水着を着て女湯に入ったらしいですね。こないだイベントで一緒になった時、教えてもらいました」
と唯香。
「ああ。水着は偽装しやすいからね。あの子既にその頃からホルモンやってたから、もう男湯には入れなかったろうしね」
などと言いつつ、みんな服を脱ぐが、こちらに視線が集中しているのを感じる。堂々とブラを外して胸を露出すると Elise が触ってきた。
「うーむ。舐めてみたくなるほど立派な胸だ」
などと言う。
「Eliseさんの方が遥かに大きいじゃないですか。それFカップですか?」
「うん。F。でも ノリ(Londa) はGカップだからな」
「迫力ですね」
そんなことを言いながらパンティを脱ぐと、Elise がお股に触ろうとしたので逃げた。
「こら触らせろ」と Elise。
「嫌です。女の子同士でも、おっぱいは触りっこするけど、お股は触りっこしません」と私。
「それ、もう性転換手術済み?」とMinie。
「まだです。タマは無くて割れ目はありますが、他は少々誤魔化してます」
「どこを誤魔化してるのさ?」
「それは恋人にしか教えません」
「ああ、マリにだけ教えてるのか」
「いえ、マリは別に恋人ではないですけど」
「何を今更」
「嘘つくの良くない」
「でも、みんな胸が大きくていいなあ。私、まだBカップ行くかどうかだから」と唯香。
「高校生だもん。そんなものでしょ。高校生ならまだAカップが余る子もいるんじゃない?」
とCarol。
浴室の中に入り、色々な種類の浴槽を渡り歩きながらおしゃべりしていたが、Elise は温浴したのでアルコールの回りが強くなったようで、Londa から「あんたもう暖かい浴槽に入っちゃダメ」と言われて水風呂に浸かっていた。風邪引かなきゃいいけど、などと思う。
唯香が盛んに私のバストを眺めて
「いいなあ、すごいなあ」などと言ってくる。
「触ってもいいですか?」などと言って触ったりもする。
「でもこれシリコン入れて大きくした胸だから。唯香ちゃんは今から成長するから心配しなくていいよ」
と私は笑って言う。
「でもシリコンだけじゃないですよね。こんなに乳首大きいし、おっぱいの形も自然だし。ホルモンもかなり長くやっておられて、ある程度の乳房は発達してたんでしょ?」
「えーっと、そのあたりは企業秘密ということで」
なんでこの子、こういうことに詳しいんだ?と思う。その付近指摘されたこと無かったのに。この子、胸が小さいというので自分でも豊胸しようと思って、いろいろ調べたのかな?などとも思った。彼女は自分もかつてお世話になった○○プロの所属なので、あそこは無理に豊胸させたりはしないはずだ。あそこは顔の整形なども基本的には禁止している。
さっき実際の年齢は私よりひとつ下だと言っていたが、童顔なので、これなら確かに16と言っても誰も疑わないだろう。14-15歳でも通るかも知れない。
Gカップバストの Londa も入ってしばらく、おっぱい論議をしていたら少し酔いが醒めたのか Elise が水風呂から戻って来て
「さすがに身体が冷えたぞ」
と言って浴槽に入り、暖まる。
「ところで、ケイ」とElise。
「はい」
「今夜セックスしないか?」
「なんでですか〜?」
「いや、言ってみただけ」とElise。
LondaとCarolが笑っている。
「いつものことだから気にしなくていいよ。コンサートの前に唯香ちゃんにも言ってたよ」とCarol。
「高校生とセックスしたら淫行で捕まりますよ」と私。
「変な条例だよな。結婚できる年齢なのに」とElise。
「一応私、18歳になったから淫行の対象からは外れたけど、女の人とセックスする趣味無いです」と唯香。
「ケイはバイのはずだから」
「えーっと・・・・」
「それでさ、今度唯香のアルバム作るんだけど、ケイも何曲か提供してあげない?」
「あ、いいですよ。2曲くらい?」
「うん。3曲でも4曲でもいいよ。唯香の曲は基本的にはデビュー以来、水上信次先生が書いているんだけどね、今あまり調子良くないみたいなんだよね。それでコラボと称して、こないだは私たちが書いたんだけどさ」
「ああ水上信次先生でしたね。上島先生のかつてのお仲間だ。上島先生のお家で一度お会いしたことありますよ」
「そうそう。元ワンティス。あのグループって才能の塊だよね。それで今度のアルバムの企画は実質、私が中心になって進めてるんだよ。水上先生にも2曲は書いてもらうけど、実際問題として多分2曲が限界。水上先生と上島先生の関係で、上島先生にも1〜2曲書いてもらうことになってる。それでも残り8曲くらい書かないといけないから、しんどいなと思ってた所でさ」
「分かりました。では3〜4曲書きます」
「うん。頼むね」
と言ってEliseがキスしようとしたので逃げた。
「逃げることないじゃん。こないだもキスしたし」
「別にキスしなくても曲は書きますから」
「Eliseさんってビアンなんですか?」と唯香。
「バイだよ、この子は」とLonda。
「男とも女ともセックスしてるもんね」
「男とのセックスは快楽、女とのセックスは癒やしだよ」とElise。
「ああ、何となく分かる」と私が言うと。
「お、さすがバイ同士、理解しあってる」とCarolから言われた。
12月11日。土曜日。
ローズクォーツの「ドサ周り」も残すのは明日の博多ライブのみとなった。前日は静岡県内の公民館などでライブを行ったが、その手の会場を使うのは昨日で終わり。明日は地元イベンターとの契約で、ふだんは学生サークルの演奏会などをしている小型のホールでライブをすることになっている。博多では25日のクリスマスにも今度はライブハウスで公演をする予定である。
ローズクォーツの他のメンバーは静岡からそのまま新幹線で博多に入り、今日は博多で休日を過ごしているはずだが、私は東京に用事があったので、他のメンバーとは別れて東京に戻った。
ひとつはこの日行われる「ロシアフェア」に政子とふたりで招待されていたからである。私たちは2年前2008年12月13日のロシアフェアで歌ったのだが、それがローズ+リリーの「公的な」ラスト・ステージとなっていた。
そしてもうひとつは、美智子(UTP社長)にも知られないように来てくれと言われ行くことになったのが、★★レコードの町添部長との秘密会談であった。私の携帯に直接メールで連絡があり《見たら消すこと》と書いてあったので即消した。
前日静岡での「ドサ周り」はイベント会社の社長の接待に付き合い深夜までになったので、そのまま静岡に泊まり、朝みんなで一緒に静岡駅まで行ってから美智子とマキ・タカ・サトは下り列車、私だけ上りに乗車した。私は東京行きの切符を美智子に買ってもらっていたのだが、それを新横浜で途中下車し、横浜線で少し移動する。小さな駅の中で町添部長が待っていてくれた。一緒にタクシーで移動し、料亭に入る。料亭はまだ営業時間前であったが、名前を言うと中に入れてくれた。部屋に入ると、まず付け出しとジャスミンティーが出る。
「お酒の方が良かった?」
「いえ。未成年ですから」
「ここで飲んでも誰もチクったりしないよ」
「でも遠慮しておきます」
「偉いね」
「須藤からその点は厳しく言われてますから」
「うんうん。しかし、今年は『ソングライター』マリ&ケイだったね」
「はい。何だかたくさん書かせて頂きました」
「マリちゃんとケイちゃんの曲というと、高校時代の『遙かな夢』『涙の影』
のイメージが強くて、てっきりフォークライターだと思っていたのだけど、今年君たちが書いた曲を見ると、スリファーズやAYAの曲はポップスだし、ノエルや真紅の曲はアイドル歌謡だし、SPSやスイート・ヴァニラズの曲はロックで、ELFILIESの曲はハウス。そしてローズクォーツのシングルに入れてる曲はフォーク、と実に様々なタイプの曲を書いている」
「世界観を決めちゃうのはマリの歌詞ですけど、マリが大学に入ってから、いろんな音楽を聴いたり、いろんな映画見たりして、世界が広がっている感じですね。それで曲も様々なタイプが生まれている感じです」
「マリちゃん、調子いいじゃん。ステージに立たないのはなぜ?」
「御両親が、まだ高校時代の『無断芸能活動』にわだかまりを持っておられるので、マリとしても両親との関係を悪くしてまで無理に活動しようとは思っていないことと、やはりマリ自身、ステージが怖いんだと思います」
「あぁ・・・・」
「マリは自分は歌が下手なのに、お金を取って人前で歌うなんて、犯罪行為ではなかろうか、みたいに思っている部分があって」
「夏に制作して、来年春くらいに発売予定のローズ+リリーのアルバム、音源を聴いてみたけど、マリちゃん、かなりうまくなってるじゃん」
「と思います。でも本人としてはなかなか自信が持てないようですね。でもレコーディングは納得いくまで録り直せるというのもあります。ライブは毎回一発勝負なので」
町添さんが頷く。料理が来たので会話が一時中断。
「頂きます。美味しい!」
「マリちゃんだと、こういう所より食べ放題の方がいいかも知れないけどね」
「確実にそうですね」と私は笑う。
「本人が自分で満足できるレベルの歌唱まで到達しないと難しいということかな」
「ただ、ノリで歌っちゃう場合もあるんですよね。これ聴いてください」
と言って、私はパソコンを取り出すとヘッドホンを接続して部長に渡し、ある音源を再生する。
「これは・・・・」
「この春に、長岡のライブハウスで、実は歌っちゃったんです」
「どういう経緯?」
「カナディアン・ボーイズというバンドのステージだったんですが、ボーカルの人がライブハウス内を走り回って、ビートルズの『I want to hold your hand』
を歌ってて、マリに手を伸ばして『I wanna hold your hand』と歌ったら、マリが『OK』とか言って手を握っちゃったんで、『Come on girls』とか言ってステージまで引っ張って行かれたもんで、そのまま歌っちゃったという訳で。ステージに上がってすぐICレコーダのスイッチ入れたんです。私の服のポケットの中で録音してるから音質は最悪ですけど」
「面白い。マリちゃんに歌わせる方法のひとつが分かった」
と町添さんは楽しそうに言う。
「でも生でこれだけ歌えたら、歌唱力充分だと思うけどね」
「音程がかなり正確になってますよね。これは春の時点のものですが、マリは今これよりもっとうまくなっています」
「うーん。彼女の生歌をステージで聴きたいな。何とかして」
「ええ。あまり無理強いはできませんけどね」
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