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■夏の日の想い出・3年生の早春(4)

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そのレコーディングが終わった8日の夕方、私は九州に行く準備をしていた。作業が7日中に終わる予定が8日早朝までずれ込んでしまったので、私も政子もマンションに帰ってから、Hもせずにひたすら寝た。午後3時くらいにやっと目が覚め、旅行の準備を始めたのである。政子は起きてはいるもののベッドの上でゴロゴロしていた。
 
「じゃ、マーサは行かないのね?」
「私は行っても歌えないし、まだ眠いからマンションで寝てる」
「レコーディング中に冷凍ストック使い切ったから、御飯無いよ」
「カップ麺食べてる」
 
「でも私ひとりでは寂しいなあ。モッチー誘ったら付いてきてくれないかなあ」
「うん。正望君とデート兼ねて行ってくるのもいいんじゃない?」
「でも忙しいかなあ・・・・モッチーがダメならコト誘おうかな」
などと言いながら私が持って行く荷物の確認をしていたら、いきなり喉元に何か突き付けられた。
 
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「何か硬い金属製のものが喉に当たるんですけど」と私。
「気をつけて物を言った方がいいよ。遺言になるかも知れないから」と政子。
「よく思うけど、この手の刃物ってほんとに素早く出てくるね」
「それが遺言でいいのね?」
「でも面白いね。モッチーなら行ってらっしゃいでコトなら死刑なんだ」
「当然」
 
「まだおちんちんが付いてた頃はその根本によく刃物突き付けられてたね」
「おちんちん無くなっちゃったから、首に突き付けるしかないもん」
「おちんちんは切り落とされても良かったけど、首は切り落とされたくないなあ」
「去勢はむしろされたがってた気もするけど、急逝をしたく無かったら、あまりたちの悪い冗談は言わないことね」
「でも夜の独り寝は寂しいなあと思って」
 
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「仕方ない。行ってあげるよ」と政子は言って、自分の荷物の準備も始めた。
「でも九州に行く前に私を1度逝かせて」
「はいはい」
 

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私たちは30分後にシャワーを浴びてから一緒に車で出発した。
 
「九州まで何時間くらいかかるの?」
「ノンストップで15時間くらいかな。目的地の阿蘇まで」
「休憩しながら走るんだよね?」
「もちろん。土曜日の朝までに着けばいいし」
「じゃ、たくさん御休憩して行こ」
「うん。しばらく忙しかったし、マーサとふたりで少しのんびりしたかったんだ」
「最初からそう言えばいいのよ」
 
平日の夜なので首都高はそんなに混んでいなかった。23時すぎに東京ICを通って東名に乗る。いったん足柄SAで休憩した。
 

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「でも冬と一緒にドライブすると、各地の名物食べられるのがいいなあ」
「でも高速のSAも最近けっこうチェーン店が多いからね」
「地元の食を味わえる店を増やして欲しいよね。特に夜中は開いてる店少ないし」
「吉野家とロッテリアだらけになっちゃったら詰まらないよね」
「まあロッテリアも好きだけどね。今日は足柄まさカリーバーガーが食べられなかったの残念」
 
足柄で1時間ほど休憩し、ファミマで車内で食べるおやつを調達してから出発する。夜間はどうしてもトラックが多い。政子とふたりで夜間ドライブを始めた当初は私もけっこう大型トラックにはびびったものだが、最近はトラックに追随して走っていると自然に制限速度を守って走れるので、快適に感じていた。
 
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足柄から先は車線が減っていくのとともに、道路の雰囲気も少し寂しい感じになってくる。しかしその日は政子が調子よくて、かなりしゃべりまくってくれたので、こちらも適度の緊張感を保って運転することができた。
 
少し寂しい区間が終わり、美合PAで休憩した。できるだけ端の方に駐め、一緒にトイレに行く。
 
「女の子同士の恋人のいい点って、ひとつは一緒にトイレに行けることだよね」
「うんうん。彼氏とのデートだとトイレの前まで一緒に行っても、こちらが中で列とか出来てたりした時『ああ、待たせちゃう』って思うよね」
「ほんとほんと。私たちは列が出来てたら列に並んだまま、おしゃべりしてるもんね」
 
「でも私も女の子になってから3年半くらいかなあ。すっかり女子トイレになじんじゃった」
「最後に男子トイレに入ったのって、いつだっけ?」
「高3の2学期初め頃だから2年半くらい前かな。10月頃には男子トイレに入ろうとすると追い出されるようになってたし」
「当たり前。だいたい例の騒動で1ヶ月学校を休んだ後、復帰する時にもう冬は女子制服で復帰すれば良かったのよ」
 
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「今となればそんな気もするけどね」
 
一緒にトイレから戻り、カーテンを締めフロントグラスの目隠しもしっかりする。後部座席にマットを敷いて布団をかぶり、裸で抱き合って寝た。
 
「裸で抱き合うの好き」
「気持ちいいよね」
「冬のおっぱいの触り心地好き」
「マーサって結構おっぱいフェチだよね」
「うん。自分でもそう思う。でも眠いから今日はH無しね」
と政子は言って、私のバストに手を置いたままスヤスヤと眠ってしまった。私は微笑んでキスをして、一緒に睡眠の中に落ちていった。
 

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6時頃起きだし、マクドナルドで朝御飯を食べてから出発した。豊田JCTから伊勢湾岸道に分岐する。
「このJCT、私好き−。きれいなんだもん」
「美しいよね。私も通る度に感動しちゃう」
 
やがて新名神に入り、土山SAで休憩する。
「さあ、朝御飯、朝御飯」と政子。
「えっと・・・・6時に食べたマクドナルドは・・・・・」
「男の子は細かいこと気にしない」
「私、男の子辞めてからもう2年近くたつけど」
「女の子はなおさら気にしない」
「コピー」
 
レストランに入って、政子は近江牛のすき焼き、私は朝定食を食べた。
「近江牛も美味しいなあ。飛騨牛とかも好きだけどね」
「私はそういうの良く分からないけど、各地の名産の食材使った料理は美味しい気がする。お肉も柔らかいしね」
「そうなのよ。ほら食べてみて」
と行って箸で取ってくれるので、そのまま口に入れる。
「うん、美味しい、美味しい」
 
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「でもこのSAもきれいでいいね。ここって上下線がひとつになってるのね」
「そうそう。上り線の駐車場と下り線の駐車場がSAの両側にあるのよね」
「一心同体か」
「そうそう」
「私たちも一心同体になる?」
「いいよ」
 
私たちは飲み物を買ってから車に戻り、カーテン・目隠しをしっかりしてから後部座席にまたマットとお布団を敷き、一緒に布団の中に潜り込んで愛し合った。お互いの中指で相手のGスポットを親指でクリちゃんを刺激しあう。反対側の手ではお互い相手の乳首をいじる。脳内が陶酔物質で満たされ夢の中にいるかのような昂揚感の中、私たちはお互いを刺激し続けた。そして、いつの間にか眠ってしまっていた。
 

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目を覚ましたら11時くらいで、政子は愛用のレターパッドを出して詩を書いていた。
「私さあ」
「うん」
「男の子と愛し合った後もけっこう良い詩が書けるけど、やっぱり冬と愛し合った後の方が、もっと良い詩が書ける気がする」
「うーんと・・・でもきれいな詩だね」
 
「えへへ。ちょっと自分でもこれ、わりと良い出来かなって思う」
政子は詩を書き上げた後、最後にタイトルの所に『恋・降る・里』と書いた。
 
「一心同体というタイトルにしようかと思ったけどダメ出しされそうだし」
「いや、きれいなタイトルだよ。言葉の流れもきれい。深読みしないとこれがHな歌というのには気付かないし」
 
政子がすぐに曲を付けてというので、五線譜を出してもらってそれにメロディーを書いていく。私が書いている間に政子はSAの建物に行って、天むすとたこ焼きを買ってきた。私が音符を書いているので、天むすも、たこ焼きも政子が食べやすいようにして私の口に入れてくれた。
 
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曲ができあがったのは12時頃だった。私が歌ってみせると「わあ、きれい」と喜んでいる。
「これ、ローズ+リリーのシングルで出したーい。これは他の人にはあげたくない」
「いいんじゃない?どうせ沢山曲は書くし。他のをあげればいいよ」
「いつ頃、ローズ+リリーのは出せる?」
「マーサがライブ活動に復帰すると言えば、町添さん、大キャンペーン張ってくれて、すぐにでもプレスしてくれるだろうけど」
「うーん。まだ温度的に80度くらいなのよね。沸騰したら復帰する」
 
「私もマーサはやはり復帰する気全く無いのかなと思ってた時期もあって、それならローズクォーツ1本で行こうかと思ってたこともあるんだけど、最近のマーサ見てて、やはりローズクォーツとローズ+リリーの並行稼働でいいんだなと思うようになってきた」
「忙しくなるだろうけど頑張ってね。両方全国ツアーやったらさ」
「うん」
 
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「ローズ+リリーは那覇でライブ、ローズクォーツは札幌でライブ、なんてのが同じ日に重なったりして」
「それはさすがに無理だよ。影分身でも出来なきゃ北海道と沖縄に同時には出現できないし」
「でも新千歳をお昼に出ると那覇に夕方着くでしょ?」
「うーん。確かに札幌でローズ+リリーの早朝ライブして、那覇で夕方からローズクォーツのコンサートというのは物理的には可能かも知れないけど」
「うん、ケイちゃんなら出来るよ。私は札幌で蟹でも食べてる」
 
「ほんとに、そんなスケジュール入れられそうな気がしてきた」
「高校時代に、札幌と福岡を1日で行ったことあったね」
「あった、あった。それで更に神戸泊だったもん。今考えても恐ろしい」
 
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「私たちが初めて一緒に泊まった日だよね」
「思えばあの時、私たちの関係の方向性って定まったのかもね」
政子は頷いた。
 

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お昼なのでここで昼食食べてから出る?と訊いたが、朝御飯をここで食べたからお昼は他の所がいいと言うので、一緒にトイレに行ってきてから出発した。
 
新名神をそのまま走り、草津JCTで名神に合流するが、瀬田東JCTで京滋バイパスに抜ける。大山崎JCTで再び名神に合流した。
 
「このJCTって、なんか複雑だよね。いつ通ってもぐるぐる回る気がする」
「ほんと。標識に気をつけてないと変な方向に行っちゃいそうだし、合流も気をつけないと怖いよ」
「でもこれだけの道路の合流・分岐ができるようにするのって、どういう頭があったらできるんだろう」
「やはり天才だよね。こういうの設計できる人って」
 
やがて私たちは吹田JCTから中国道に分岐し、西宮名塩SAで休憩してお昼御飯にした。
 
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「けっこう詰まってたね」
「この付近はいつも混むんだよねー」
 
私たちはレストランに入り、串カツ膳をふたつと六甲おろしうどんを頼む。ウェイトレスさんが食事を運んできてくれて、串カツを1つずつ私と政子の前に置き、うどんは一瞬悩んだ感じがあったが、政子のほうの串カツの隣に置いた。
 
「私のほうが食べそうだって感じでこちらに置いたね」
「うん。そんな気がした」
私たちは笑いながら、そのうどんを私の方に置き、私の前にあった串カツを政子の方にやった。
 
「冬、あんまりお肉も食べないよね」
「食べないことないけど、たくさんは食べきれないから」
「じゃ、串カツ少し分けてあげる」
と言って、政子は串カツを手に取り、こちらの口の方に伸ばしてきたので私は半分だけ食べた。
「ありがとう。美味しい」
その串の残りは政子が食べる。結局3本の串カツの半分をもらった。
 
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「でも冬って、女の子になる前から少食だったよね」
「書道部のみんなで海水浴に行った時かな」
 
「冬がトンカツ半分しか食べてなかったから、食べないならもらうねっていって、もらっちゃったけど」
「花見さんの嫉妬するような視線を感じた」
「だって啓介はもう全部食べちゃってたもん」
「あの年は書道部も少しは人がいたんだよね」
 
「あの時、冬が女の子水着を着たりしないよなって少し期待したんだけどね。4月頃から冬の女の子っぽさを感じてたから」
「男の子水着を着たのはあれが思えば最後だね。2年の時は体育でも水泳の授業が無かったし」
 
「でも男の子水着を着ても上にTシャツ着て、上半身は晒してなかったもんね。足の毛は剃ってあったし。そもそもあの海水パンツ、おちんちんの線が出ないタイプだったね」
「上半身晒すのはなんか恥ずかしい気がしてさ。体育の授業じゃ仕方なかったけど。おちんちんの形が分かるの嫌い。足の毛は体育の時でも前日に剃ってたよ。人に見せるもんじゃないと思ってたし」
「体育の授業ではクラス違うし水着姿見てないな・・・・でも男の子でも剃る子はいるもんね。水泳の選手はみんな剃ってるし。でもこのTシャツの下に実はおっぱいが隠れてたりしないよなって思って」
 
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「中に手を突っ込まれたな」
「おっぱい無かったからがっかり」
「更に花見さんの嫉妬する視線を感じた」
 
「まあ、そういう訳で、あの夜になっていく訳だけどね」
「ちょっと恥ずかしかった」
「でも可愛かったよ、スカート姿」
「あれ、その内当時いた子の誰かが、ブログとかでバラしそうだなあ」
「冬の記念すべき、人前での最初の女装だよね。私が知ってる範囲では」
「うん。そうかな・・・」
 
「・・・やっぱりそれ以前にも経験があるな?以前の女装体験も告白しなさい」
「それ追求しないって言ったじゃん、以前」
「確か1年半くらい前だよね。もう時効だよ」
「えー!?」
 

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西宮名塩SAを15時ころ出発した。神戸JCTから山陽道に入って、ひたすら西に向かって走った。吉備SAでトイレと給油だけの休憩をし、更に走る。小谷SAでシャワーを浴びて少し休憩した。シャワーは私が先に行ってきて車内で仮眠している間に政子がシャワーに行ってきた。その後また少し走って宮島SAで晩御飯にした。
 
「ここ明るい内に来たら、宮島が見えたんだけどね」
「さすがにこの時間じゃ無理か」
「今度一緒にお参り行ってみようか」
「今度っていつ?」
「えっと・・・じゃ、今年中」
「よし。約束守らなかったら死刑だからね」
「ラジャ」
 
私たちはカキフライ定食を3人前取り、分け合って食べた。
「むむむ。カキフライなら冬も食べるのか」
「これ割と好き」
「よし、もう1人前頼んで来よう」
「わっ」
 
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夏の日の想い出・3年生の早春(4)

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