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■夏の日の想い出・混乱と暴走(7)

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その日私のマンションに織絵(XANFUSの音羽)が来ていた。
 
彼女は業界の裏話などに妙に詳しい。
 
「今度の株主総会で松前さんは会長も退任して相談役の肩書きになるみたいね」
「まあ今の流れでは仕方ないね。町添さんも立場がどんどん厳しくなるなあ」
「今の流れなら、私はむしろTKRの方に行きたいよ」
 
「私たちにしろ、XANFUS, KARION, AYAといったあたりはTKRに行きたいと言っても★★レコードが手放さないだろうね」
 
「全体的に売上げ落としているアーティスト多いしね」
「MM系と創業者系で今営業部隊が二重化されていて、現場が混乱して結果的に倍の経費を掛けて結果はまともに出ていないというのが現状みたいだよ」
「困ったもんだね」
 
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「ところでさ、上島先生、ちょっとやばくない?」
「え!?」
「噂聞いてない? 最近色々資産を処分しているみたいだって。軽井沢に持っていた3億円の別荘も売却したらしいよ」
 
その話を聞いて私はハッとした。この春、自分がなかなか江戸娘に関われないからと言って、上島先生は江戸娘のオーナーを辞めて、オーナーの仕事は政子が引き継いだ。政子は最初のミーティングで選手全員を高級江戸前寿司に連れていき、毎月1回食事会しよう、などと提案して歓声があがっていた。
 
それはいいのだが、それと同時に上島先生は深川アリーナを作った時の建築費の分担金に相当する12億円の株式と債券の引き取りも求め、それは千里が買い取った。私は数千億と噂される上島先生の資産からすると12億円は大したことのないお金かと思っていた。しかし織絵の情報を信用すると、先生はもしかしたら経済的な危機にあって、それで深川アリーナの株式・債券も売却したかったのかも知れない。
 
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「でも上島先生の曲は一応売れているよね?」
「昔みたいに爆発的な売れ方をしたものは最近無いと思う。歌謡界の構図も上島・蔵田が競り合い、東郷誠一さんとか山本大左さんとかが手広くゴーストライターで稼ぐという時代は終わりつつある」
 
「うーん・・・・」
 
「冬、自覚無いみたいだけど、今歌謡界の中心にいるのは、むしろマリ&ケイだよ」
「そうかなあ・・・」
「どう考えても売上げに占める率ではトップでしょ?」
「そうだっけ?」
「月村山斗さんと同率くらいかも知れないけど、月村山斗さんは集団アイドルで稼いでいるから少し性格が違う」
「月村さんの方がずっと多くない?」
 
「この2人に続くのは、後藤正俊、田中晶星、香住零子、平原夢夏、醍醐春海、といった付近だと思う。でもマリ&ケイと、その次と思われる後藤正俊さんでおそらく売上に倍くらいの差がある」
 
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「そんなにある!?」
「ああ、やはり自覚が無いな」
 

6月上旬に青葉が『硝子の階段』という作品、七星さんが『青い浴衣の日々』という作品を書いてきてくれた。私は2人の作品を見て、悩んでしまった。それは自分の名前で発表するには微妙な違和感があったのである。
 
ところが6月中旬、千里がヨーロッパ遠征から帰った足でうちのマンションに来てくれて、アルバムの進捗はどう?と尋ねた。
 
それで私はふたりの作品を見せたのだが
 
「ケイになりきってないなあ」
と言って苦笑すると、青葉と七星さんにその場で電話して、こちらで改造してもよいかと尋ねた。ふたりとも快諾する。すると千里は「2日待って」と言って、その2つの作品の譜面とCubaseのプロジェクトデータを持ち帰った。
 
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そして本当に2日後、千里は新たな譜面を持ち込んできた。
 
「凄い・・・・これだと本当に私が作ったみたいだ」
「こういうのは要領があるんだよ。まあ長年ゴーストライターやってた人にしかできないかも知れないけどね」
などと千里は笑いながら言った。
 
そういう訳でこの時点で、これらの作品が揃った。
 
私自身の作品 同窓会、春の詩、刻まれた音
醍醐名義の作品 縁台と打ち水
醍醐作ケイ風作品 お嫁さんにしてね、冬の初めに
青葉作ケイ風作品 硝子の階段
七星作ケイ風作品 青い浴衣の日々
Eliseの作品 トースターとラジカセ
ゆまの作品 セーラー服の日々
 
なんと既に10曲揃っているのである。青葉と七星さんはあと1曲ずつ自分名義の作品を書いてくれることになっている。
 
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6月上旬、アクア主演の映画(12月公開予定)の制作が発表された。あわせてエキストラ募集という告知があったため、応募者が殺到した。エキストラとして募集されたのは
 
・アクアのクラスメイト男女10名くらいずつ(12-18歳) 
・警察官・警備員(20-40歳程度の体格の良い男性20-30名ずつ) 
・カジノの客(20-60歳程度男女) 
・美術館の観客(10-70歳程度男女) 
・オーケストラ団員(20-60歳程度の楽器経験者。性別不問) 
 
といったものである。
 
しかしそれよりも多くの人がこの映画の“主役グループ陣”に驚いたのである。
 
映画のタイトルは北条司原作の『キャッツ♥アイ』であるが、メインの登場人物がほぼ1人2役なのである。
 
来生愛・内海俊夫刑事 アクア【主役】 
来生瞳・平野猛刑事 フェイ(レインボウ・フルート・バンズ) 
来生泪・武内刑事 ヒロシ(ハイライト・セブンスターズ) 
ねずみ・浅谷光子刑事 丸山アイ 
木崎信彦刑事 本騨真樹 
課長 大林亮平 
 
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これ以外のキャストは後日発表ということであった。
 
アクアが瞳役ではなく愛役になった理由としては、アクアはさすがに瞳を演じるには若すぎるという製作側の判断があった。また、瞳=内海・愛=平野ではなく、瞳=平野、愛=内海という「ねじれ配役」になった理由は、瞳と内海の絡みのシーンがひじょうに多いので、これを1人の俳優で演じようとすると、ボディダブルを使って倍の時間の撮影が必要になる。そこで別の俳優を当てて1回の撮影で済ませようという判断があった。
 
結局瞳と内海のシーンでは、フェイとアクア、泪と平野のシーンではヒロシとフェイ、愛と武内のシーンはアクアとヒロシで撮影できるのである。ねずみと浅谷のシーンのみ、丸山アイの2役なのでボディダブルを使っての2回撮影になる。アイのボディダブルは、身長と体重が彼女に近い城崎綾香と岩本和也が務める。アクア、フェイ、ヒロシのボディダブルは、今井葉月、モニカ/マイク、アリス/ポール、と今井葉月以外はレインボウ・フルート・バンズのメンバーが務める。男女役双方のボディダブルを1人で演じるのは結局葉月だけである。ボディダブルを務める7人は皆、顔を出す役も当てられている。
 
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そのあたりまでが制作側のコメントで明らかになった。
 

「要するに全員自分の本来の性別で刑事側を演じて、逆の性別で盗賊側を演じるんだな」
とネットには書かれていた。
 
男性と考えられる、ヒロシは武内刑事・泪、フェイは平野刑事・瞳、アクアは内海刑事・愛で、女性と考えられる丸山アイが浅谷刑事・ねずみである。フェイはこの春に赤ちゃんを産んではいるが、実態は間違いなく男の子というのがネットの意見の大勢であった。
 
「本騨真樹は男女2役しないのか?」
「いや、木崎刑事は女装が趣味だから」
「そうか。だから結局本騨真樹も女装する訳か」
 
「大林亮平は女装しないの?」
「来生姉妹のお母さん役だったりして」
 
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「しかし・・・アクアの女の子レオタード姿は想像しただけでハァハァしてしまう」
「フェイのレオタードまではいいが、ヒロシのレオタードは大丈夫か?」
「ヒロシは女装すると女にしか見えないから」
「そういう写真は何度か出回ったけど、レオタードでも行ける訳?」
「うーん・・・その内出てくるだろうスティルの公開を待つしか」
 

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「そういえばアクアのマネージャーがダウンしたらしいな」
「ダウン?」
「鱒渕さんだっけ?」
「そうそう」
「過労で倒れて。しばらく入院が必要らしい」
「いや、あれだけ多忙なアクアのマネージングなんて、死ぬほど忙しいだろう」
「去年はアクア本人が倒れたくらいだもん。マネージャーが倒れても不思議ではない」
 
「じゃマネージャー交代するんだ?」
「やはり1人では無理だろうから3〜4人付けるのではという話」
「うん。そのくらい必要だと思うよ」
 

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6月中旬。アメリカで話題沸騰中の手品師レフ・クローガーが来日。まずは6月17日に札幌公演を行った。この日の公演は大部分が録画され、ダイジェストが放送されたが、アメリカでの公演の録画でも大いにこの手品師に注目していた政子は番組を録画して食い入るように見ていた。
 
私はステージが残酷すぎて、抵抗感があるので、それは見ずに防音室に籠もってスコアの調整作業を進めていた。
 
政子はコネを駆使して入手困難であった6月24日の横浜のチケットを何とか確保。公演を実際に見に行って「凄かったぁ。感動した」などと言っていた。
 
「アメリカでもそうらしいけど、日本でも気を失う観客が相次いでいてさ」
「へー」
「札幌で10人、仙台で8人、今日の横浜でも20人、気を失って会場から搬出されたらしい」
「そんなのよくわざわざ見に行くなあ」
などと私は言っている。
 
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それで政子はまだ興奮冷めやらぬ感じで、先日のテレビで放送された公演の録画をまた見ていた。そして「あれ?」と言った。
 
「どうかしたの?」
「この胴体切断マジックでさ、箱の中に入った美女が、札幌公演と今日の横浜公演では違う人だなあと思って」
 
「へー。そういうのは見せ場だから、弟子の中で有力な人が交代で務めるんじゃないの?」
 
すると政子はなにやらネットで検索していたが、やがて言った。
 
「アメリカのSNSや掲示板で話題になっているらしい。このクロガーの胴体切断マジックに登場する美女は毎回違う人で、同じ人が2度登場したことは無いんだって」
 
私は少し考えた。
 
「それ何か怖い話のような気がするんですけどー」
「これ本当に切断しているから、同じ人は2度と登場できないんだったりして」
「うそー!?」
 
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レフ・クロガーの日本公演は6月17日札幌、18日仙台、24日横浜、25日京都、7月に入って1日静岡、2日名古屋と続いていたが、それとともに変な噂がネットに流れていることに私は気付いた。
 
この日本公演には日本の手品師やタレントさん(いづれもあまり有名ではない人)が多数協力しているらしいのだが、その中から複数の行方不明者が出ているというのである。その内、警察が動くのではとか、実はもうFBIが動いているらしいといった噂まで流れていたものの、ソースは見当たらず、どうも憶測の域を出ないもののようであった。
 

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7月4日のお昼頃。東京駅で謎の爆発音と発光現象があったことをニュースが報道していた。爆発音のあった場所と発光現象のあった場所は300mほど離れていて、両者は関係があるのかないのか、警察は調査中であるとしたが、爆弾か何かの爆発であれば怪我人なども出ているはずなのに、そういう被害は届けが出ていないとして、原因は謎であるということであった。
 
この発光現象がクロガーと関わりのあるものであることを後で青葉が教えてくれたものの、詳細については人に言える性質のものではないと青葉は言っていた。
 

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この日の夕方、アジアカップに臨むバスケット日本女子代表12名が発表されていたが、千里の名前がそこには無かった。同じシューターの花園亜津子がWNBAに参戦中でそちら優先ということで今回は代表選手として登録されていない。それゆえに、千里は絶対入れられるだろうと思っていたので私は驚き、彼女に電話してみた。すると千里は
 
「ここの所どうも調子を落としていて。期待してもらったのにごめんね」
と言っていた。
 
代表活動から外れることになったので、休職していたJソフトの方には明日7月5日から復職するという話であった。
 

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クロガーの公演はこの後、8日東京、9日大阪、15日広島、16日福岡と続く予定だったのだが、主宰者は7月6日、翌々日に迫った東京公演、およびそれ以降の公演を全て中止すると発表した。理由は、クロガーが病気のためと説明した。
 
しかしネットでは、クロガーが失踪したようだという噂が流れた。この騒動は噂が噂を呼び、憶測のような投稿が大量にあって訳が分からなくなっていたのだが、7月下旬、某週刊誌が、クロガーは大量殺人犯として、FBIが逮捕に向けて周辺調査をしている最中であったことをすっぱ抜いた。
 
あらためて取材されたFBIはこの件を認め、クロガーを日米犯罪人引渡し条約に基づき日本の警察に逮捕してもらうつもりだったが、その前に失踪したので、国際指名手配したことを発表した。
 
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また日本公演の最中にも10名ほどの公演協力者の女性が行方不明になっていて、その女性らの所持品がクロガーの部屋で見つかったことを日本の警察が認めた。女性たちの行方は、ようとして知れなかった。しかし1人だけクロガーに拉致されそうになり無事生還した女性がいたことが明らかになる。彼女は危ない所を、霊能者・山川春玄に助けられたということであったが、その山川本人は意識不明の重傷で、病院に入院していることも分かった。命には別状はないということで、警察は山川氏が意識を回復するのを待って事情聴取する方針であるとした。
 

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■夏の日の想い出・混乱と暴走(7)

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