広告:ボクの初体験 2 (集英社文庫―コミック版)
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■夏の日の想い出・混乱と暴走(6)

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5月6日(土・友引)には、その千里とも話したリダンリダンの鹿島信子と中村正隆の結婚式が行われた。「あまり大げさなことはすまい」と言って、都内のホテルでこちらは披露宴方式で行われる。招待客も「あまり多くても」と言って、“ほんの”200人程度である。
 
私はこれにももちろん政子と一緒に出席し、2人連名のご祝儀500万円の小切手が入った祝儀袋と、千里から預かった100万円の札束を2つずつ入れたご祝儀袋(葵照子名義と醍醐春海名義)を渡して来た。むろん私たちは彼女たちのデビューに大きく関わるなど特に交流が深いのでこの額だが、多くの出席者のご祝儀は一桁小さいと思う。なお、千里たちの分の引き出物は後日まとめて葵照子の住所に送り届けます、と受付の所にいたリダンリダンのマネージャー内海さんが言っていた。葵照子(琴尾蓮菜)も医師をしている関係上、なかなかこの手の集まりには出席できないし、千里はアメリカ遠征中である。
 
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こちらはやはり芸能関係の人が多く、信子と同じCBFのメンバーであるヒロシ(男装)、丸山アイ(女装)、アクア(高校の制服)、また出産して2ヶ月のフェイ(自粛して女装)も出席していた。
 
「フェイちゃん、今日は女装なんだ?」
「男装で出ようとして、モニカにだめ出しされた」
などと言っている。
「雅希ちゃんは来てた?まだ会ってないけど」
「うん。来てたよ」
「女装?男装?」
「あの子は人前では男装しないから。あの子、ほとんどクローゼットなんだよ」
「あ、そうだったんだっけ?」
「でも男装すると男にしか見えない」
「見てみたいなあ」
 
アクアはあやうく振袖を着せられそうになったのを、ボクは学生だからと言って高校の制服で出てきたらしい。
 
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「誰に着せられそうになったの?」
「お母ちゃんです。お母ちゃん、ボクを女の子にしたいのかなあ」
「それは若干、疑惑を感じることはある。でもアクアは振袖でも誰も変に思わないと思うよ」
「そうかなあ」
 
「会場にはひとりで来たの?」
「沢村さんが車で送ってくれました」
「あれ?鱒渕さんじゃなくて?」
と私が訊くと、アクアは顔を曇らせた。
 
「鱒渕さん、先日アパートで倒れていたのを病院に運び込まれたんですよ」
「ありゃ、何か病気?」
「極度の過労ということで。取り敢えず中旬くらいまで休ませると社長が言っておられました」
「アクアのマネージャーしてたら過労にもなるかも」
「ボク自身も忙しくて忙しくて。身体が3つ欲しいです」
「ああ、私も3つくらい欲しい」
 
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6月4日(日・友引)には高校時代の友人仁恵が結婚した。仁恵は★★チャンネルの社員であるが、結婚後も仕事は続けるということである。しかし結婚を機に《マリ監視チーム》からは外してもらったようである。
 
さすがに高校時代の友人は分散しているし、大学の友人は結びつきの小さい人が多いので、招待した友人の大半は職場関係者になった。高校時代の友人で私たち以外に出たのは相棒(?)の琴絵のほかは理桜と紀美香、それに佐野君くらいであった。佐野君はけっこう女子の友人の結婚式になんとなく招待されてしまう。
 
私は政子と一緒に出席して持参のマイナスワン音源をバックに『祝愛宴』を歌った。いきなり演奏された雅楽の世界は結構なインパクトがあったようである。
 
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続いて翌週、6月10日(土・友引)には、その佐野君と麻央の結婚式が行われた。ふたりは2011年春から交際を開始し、長い春をむさぼっていたが、6年の歳月を経て結婚式を挙げた。しかし実際にはもう3年くらい前から同棲しており、事実上の夫婦であった。双方の親から
 
「あんたたちいつ籍を入れるのよ?」
と言われていたのだが、やっと法的にも夫婦になった。
 
このふたりはいつもアツアツで、3年間同棲を続けてもその雰囲気は全く変わらないのだが・・・・
 
披露宴の会場ではかなりひそひそと囁く声がある。
 
「私、男の人同士の結婚式に出たの初めて」
「でも奥さんになる方も、ウェディングドレス着てると女に見えないこともないよね」
「やはり、奥さんは性転換手術してるの?」
「どうだろう? 無理に身体を直さなくてもいいんじゃない?」
 
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まあ、麻央はふつうに男に見える!
(むろん生まれながらの女性である)
 

私の姉の萌依は麻央のお兄さんの小山内和義と2012年に結婚しているので、これで結果的に佐野君も私の親戚ということになった。
 
つまり佐野君は私の姉の夫の妹の夫である。彼は私と誕生日が1日違いで近いこともあり、結構気が合い、高校時代からずっと私の携帯に電話番号が登録されていた数少ない男性のひとりである。もっとも佐野君自身、アドレス帳に男子の登録より女子の登録の方が多いと言っている。彼は女性から「安全な人」とみなされやすい傾向があるので、麻央との仲が恋愛として進展したのはレアなことであったという気もする。
 
私はふたりの親友でもあり、また親族でもあるので、スピーチもしたが、色々《秘密の暴露》をすると「それはやめろ〜!」という声が掛かっていた。
 
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「こちらもケイの秘密バラすぞ」
と佐野君は言っていた。
 
「どんな秘密?」
「ケイは実はアンドロイドで、いつも5体のケイが動いているとか」
「何それ〜?」
「ケイの活動量を考えると、5人くらい居るとしか思えないもん」
などと佐野君が言うと
 
「ああ、そんな気はしていた。時々コンセントにつないで充電してるし」
などと政子は言っていた。
 
しかしまあ音楽業界には、似たようなこと言われている人が数人いるなと私は思った。千里も信じられんし、アクアも最近2人くらい居ないと無理ではなどとよく言われている(こないだの信子たちの披露宴では「身体が3つ欲しい」と言っていた。実際『ときめき病院物語』では1人2役だから、結構な負荷があるようである。上島先生に至っては「ゴーストライターが100人くらい居るのでは」とまで言われている。
 
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愛沢国香は夫婦ともバスケットボール選手なので、新婚旅行はアメリカのNBA/WNBAを見に行こうと話し合っていた。それで結婚式は4/23に挙げたものの、ゴールデンウィークを避けて、5月10日(水)の飛行機でアメリカに渡った。往復の飛行機とコンドミニアムだけ押さえておき、あとは向こうで自由に動き回ろうという魂胆である。
 
ふたりとも本場のハイレベルな戦いに興奮する。ふたりは観光地などは全く見ずに、ひたすらNBA, WNBAの試合ばかり見ていた。
 
かなり見たね。明日はどこ見ようかなどと言って試合の検索をしていた時、ふと国香はNCAAに所属するロサンゼルスS大学の試合があることに気付く。
「ねえ、これ見に行ってみない?」
と国香は夫を誘い、宿泊していたサンフランシスコからロサンゼルスまで移動した(同じ州内なので近くと思いがちだが、飛行機で1:20掛かる距離である。直線距離で580km 東京から倉敷の先くらいまでの距離がある)。
 
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それで体育館に入っていって、オーダー表がありませんかと訊くと見せてもらえた。S大学で46番の背番号でMinami Susaという登録があることが分かる。
 
「おお、楽しみだ」
と言って客席に座った。そしてやがて試合が始まるが、国香は当惑した。
 
「どうしたの?」
「あれが須佐ミナミ?」
「背番号は46だね」
 
「うちに居た須佐ミナミとは全然別人だよ」
「同姓同名?」
「いや、須佐ミナミは確かにS大学に留学すると言っていた」
 
試合を見ていたが、こちらの須佐ミナミはスターターという訳ではなく、ベンチで座っている位置を見ると、わりとギリギリでベンチ枠に入ったような雰囲気であった。第2ピリオドになって出場機会があったものの、そのプレイは国香をがっかりさせるものだった。
 
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「ローキューツに居た須佐ミナミはもっとうまかったのに」
「彼女よりうまい選手がS大学に入ったのなら、当然その子の方がベンチに座っていただろうね」
と夫は言う。
 
最後まで見てから、選手がフロア外に出てきた所で国香はこちらの須佐ミナミに声を掛けた。
 
「こんにちは、須佐ミナミさん?」
「あ、はい」
 
向こうはこんな所で突然日本語を聞いて驚いている感じだ。
 
「えっと私が分かりませんよね?」
「ごめんなさい!分かりません」
「実は私のチームに3月まで須佐ミナミさんって選手がいたんですよ」
「わっ、私の同姓同名さんですか!?」
 
「やはり同姓同名の別人なのかなあ。彼女はロサンゼルスS大学に誘われたからといって3月でこちらのチームを退団して、渡米したんですよね」
 
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「え〜!?でもうちのチームには他に須佐ミナミはいませんよ。それに私、去年の春にこちらに来たから」
「去年の春に来たんですか!」
「それでやっと今回ベンチに入れてもらったんですよ」
「それは良かったですね!頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
 
国香はもし日本に戻ってきて、入るチームが見つからなかった場合はこちらに連絡してといって、自分の名刺を渡した。彼女は3月までローキューツに居た須佐ミナミには見劣りするものの、充分強い選手で、もし入ってくれたら結構な戦力になると思われた。
 

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『ときめき病院物語III』の撮影は、おとなの役者さんだけで進む部分は平日の昼間に撮影され、アクアたち中高生の俳優が絡む部分はだいたい2週間に1度土日に集中して撮影される。
 
ここでアクアが佐斗志を演じる時は、今井葉月が女の子の服を着て友利恵を演じ、アクアが友利恵を演じる時は、葉月が男の子の服を着て佐斗志を演じている。
 
何度も着換えさせるのは不効率なので、だいたい佐斗志のシーンをまとめて撮って、それから友利恵のシーンをまとめて撮ってというパターンになる。
 
「はい、佐斗志シーン終了。友利恵シーンに行きます」
とディレクターさんの声。
 
それでアクアは着換えのため、専用の楽屋に行く(葉月は衝立の裏で着換える)。アクアがドラマ内で使用されている高校の男子制服を着たまま自分の楽屋に入っていくと
 
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「あ、終わった?」
という声が掛かる。
 
「疲れたぁ。じゃ、次はお願い」
「OKOK。行ってくるね」
と言って、ドラマ内で使用されている中学の女子制服を着たアクアが楽屋から出て行った。
 
「はい。ダイエットコーラどうぞ」
 
とソファに座っていて、この後のシーンで使用されるサファリルックの服を着たアクアが言った。
 
「ありがとう。体型維持しないといけないから、カロリーコントロールも大変だし」
「全く全く。だから貧血になりやすい」
 
「ほんと身体が3つくらい無いとやってられないよね〜」
とふたりのアクアは言い合った。
 
「だけど私たちが3人いること、絶対内緒だよね」
「3人いること分かったら、仕事が3倍になりそうだもん」
「それは恐ろしい」
 
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