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■夏の日の想い出・ダブル(8)

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「でもインターハイに出られるほど水泳頑張っているとは思わなかった」
と私は言う。
 
「参加資格に自分としては疑問があったんですが、あっさりOKされて」
と青葉。
「性転換してから一定期間過ぎていればいいんでしょ?」
「ええ。基本的には去勢してから2年経っていれば全国大会OKらしいです。県大会までなら1年でいいという話で」
「なるほどー」
 
「県大会に出る段階では、高体連の事務局に行って、私の顔見ただけでOKされて登録証をその場で作ってくれたんですけどね」
「へー」
 
「でもインターハイに出ることになってから、あらためて病院で精密検査受けさせられました」
「わあ」
 
「どんな検査されるの?」
と政子が興味津々な様子である。
 
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「まず裸にされて、全体的な体付きをチェックされました。性別が怪しい人って、けっこう体付きや顔つきが男っぽいんですよ」
「過去にオリンピックとかで騒ぎになった人も、なんかそういう感じだったよね」
 
「染色体もチェックされました。これはXYで、仕方ないです」
「青葉なら染色体もXXになってそうなのに」
と政子が言うが
「こればかりはどうにもなりませんね」
と青葉。
 
「もちろん女性器の外見もチェックされましたし、クスコを中に入れて内部も観察されましたよ」
「きゃー」
 
「千里姉も過去に10回くらい中まで突っ込まれて検査されたと言ってました」
「あの子、結局、中学生くらいで性転換してるんだよね?」
と私は訊く。
 
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「どうもそういうことのようです。桃香姉も、千里姉が性転換したのは本当は2006年の夏かも知れないと言っていました」
「へー」
「千里姉が最初に性別検査されたのが高校1年、2006年の秋らしいですから。それで女性だという診察結果が出て、男子バスケ部から女子バスケ部に移動されちゃったらしいんですよ」
と青葉。
 
「冬と同じようなもんだね。もっとも冬は小学生の内に性転換したみたいだけど」
と政子がまたまた茶々を入れる。
 
「MRIで下半身をつぶさに検査されました。体内に睾丸が残っていないかの検査らしいんですよ」
と青葉は言う。
 
「なるほどー」
「睾丸を体内に温存して外見だけ女性の形にする性転換手術ってのもありますからね」
「うん。ごく稀にそういう手術を受ける人がいるね。もっとも体内の睾丸は機能不全になるはずだけど」
「ええ、それでもスポーツ選手の場合、睾丸が存在するだけで運動能力的に有利になりますから」
「だろうね」
 
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「千里も高校時代から何度もMRI検査受けてるの?」
と政子が言う。
 
「受けたらしいですよ。ただ・・・」
と青葉は言葉を濁す。
 
「ただ?」
 
「まるで和実みたいな話なんですけどね、千里姉も過去に1度MRIに卵巣や子宮の映像が映ったことあるらしいです」
 
「ほほぉ」
「普通のMRIでは写らなかったそうなんですけどね。リアルタイムMRIに写ったらしいんですよ、一瞬だけ。もし本当に子宮や卵巣があったら、本人ではなく女性の身代わりが受診している可能性があるから、再度その付近にフォーカスを移したものの、その後は二度と写らなかったというんですよ」
 
「機械のエラーとかの可能性は?」
「あり得ないです。日本で最高の大学病院の最新鋭検査機器ですから。間違いでそんなものが写る訳無いです。だから、千里姉には卵巣や子宮が本当にあるのかもと思います」
と青葉は言った。
 
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もしそうだとすると「採卵」は本当にできたのかも知れないと私は思った。
 
「でも普段は写らないんでしょ?」
「恐らくですね」
と言って青葉は言葉を切った。
 
「千里姉のパワーが凄まじいから、普段はそれを写らないようにコントロールしているんですよ。写った時は、うっかりしていたんでしょうね。特にリアルタイムMRIの映像をコントロールするのは難しい」
 
「そんなのコントロールできるの?」
「霊的なパワーって、実際には電磁気的な操作能力ですよ。MRIみたいな磁気と電気の塊みたいな機械は、能力の高い霊能力者ならある程度操作できると思います。私は自信無いけど」
 
「本来あるものを無いように見せることができるなら、逆に本来無いものをあるようにも見せられるよね?」
 
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「実はそうなんです。だから結局私は、千里姉の実態がよく分からないんですよ」
と青葉は悩むように言った。
 

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8月下旬。『ときめき病院物語』の撮影がクランクアップしたが、その翌日から『ねらわれた学園』の撮影がクランクインした。私たちはその主題歌の制作を頼まれたので(歌うのはアクアの先輩・品川ありさ)、初日の撮影を見に行った。
 
薬師丸ひろ子、原田知世など、色々な人が主演して過去に映画やドラマが制作された眉村卓の名作である。
 
アクアは「本来の主人公」である関耕児の役であった。青い学生服っぽい感じの男子制服を着ている。
 
「アクア、女の子の役じゃないの?」
と政子が声を掛けると
 
「僕一応男の子なので」
と彼は言っている。
 
ヒロイン・楠本和美(薬師丸ひろ子版では三田村由香の名前に変更されていた)は新人女優の元原マミちゃん。新人とは聞いたが、演技指導を受けている所を見ると、ひじょうに上手い。役柄は中学2年生ではあるものの、実際にはアクアより3つ上・17歳の女子高生である。
 
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事件の黒幕「京極」(原田版では本田恭章が演じた。薬師丸版では峰岸徹が未来人ではなく金星人と設定を変えた「星の王子様」の役名で演じた)はWooden Fourの大林亮平で、彼は積極的にこちらにやってきて、盛んに政子に声を掛けていたが、政子は適当にあしらっていた。その会話を聞いていた教師役の倉橋礼次郎(『ときめき病院物語』の医師役)が
 
「マジでマリちゃんと大林さんは恋愛関係は無いみたいですね」
などと言っていた。
 
「その恋愛関係を構築したいのですが」
と大林君。
「まあ構築される可能性はゼロだね」
と政子。
 
そんなことを言いながらもふたりは楽しそうに会話のジャブの応酬をしていた。取り敢えず「お友達」という線にはなっているようだ。
 
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『ときめき病院物語』でアクアのガールフレンド役を演じていた馬仲敦美ちゃんも生徒役で出ている。彼女はサブ・ヒロインという感じの位置づけのようだ。役名は西沢響子で、原作では主人公たちと対立する生徒役なのだが、今回のドラマでは最初は対立するものの、途中から協力者に変わる設定になっているらしい。
 
西湖はやはり女子中生の役ということで、セーラー服を着ていた。物語の初期では成績がクラスで一番下であったものの、英光塾に通うようになってから、急にクラスでもトップ争いをする成績になる役どころらしい。どうもこちらが本来の西沢響子の役どころの一部を受け継いでいるようにも感じた。
 
「最初男子中学生の役だったんですけど、監督がお前女顔だから女子生徒役とおっしゃって。でもおかげでセリフを頂けることになったんですよ」
などと言っている。
 
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「でも女の子役で、声はどうするの?」
と政子が訊くと
 
「えへへ、だいぶ練習しましたよ」
と女の子の声で彼は答えた。
 
「すごーい。女の子の声に聞こえる!」
 
「6月下旬に一度出演予定者が集まって打ち合わせをして。その時に女の子役でよければセリフを付けるけど、女の子の声が出せることが条件と言われたんです。それでボイトレに通ったんですよ。自費ですけど」
と彼は男の子の声で言う。やはり女の子の声を長時間持続するのは辛いのか。
 
「わあ。レッスン代高かったでしょ?」
「親に借金しました」
「まあ親ならいいね」
「事務所に借金するとあれこれ辛い」
「事務所決まったんだっけ?」
「§§プロさんが取り敢えず委託契約で事務取扱してくださることになりました。研究生に準じた扱いで。秋風(コスモス)社長が、誘って下さったんです」
「おお、良かったね」
 
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撮影(初日だけあって実際にはほとんど指導で終始している感じ)を見ていて私はふと思った。それでちょうどセーラー服姿の西湖がこちらに来た機会に尋ねた。
 
「高見沢みちる役は誰?」
 
この物語のアンチ・ヒロインの超能力を持つ生徒会長で、薬師丸版では長谷川真砂美、原田版では伊藤かずえ、もっと古いNHK版では阪本真澄が演じた、強烈なインテリ少女のキャラクターである。
 
「すみません。それは今年いっぱいは絶対に外に漏らしてはいけないと箝口令が敷かれているので」
と西湖。
 
「へ!?」
 
「でもドラマが始まったらすぐ分かるよね?」
「絶対に顔を映さないんです」
「ほほぉ!」
 
その西湖の言葉から想像されるのは、誰かとんでもない有名女優を使うのか、あるいは・・・・ここにいる出演者の誰かの1人2役だ、と私は思った。
 
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初日の撮影を見てから私は政子を誘ってリーフでドライブに出かけた。行った先は芝浦埠頭である。私たちは車を駐車場に駐めて歩いて海岸に寄る。そしてレインボーブリッジを見上げた。
 
「上は首都高、下はゆりかもめ・一般道・遊歩道」
「二層構造なのか」
「うん」
 
「歩いて渡れるんだっけ?」
「渡れるよ。片道30分くらいかな」
「よし、渡ろう」
 
と政子が言うので、私たちはエレベータで橋まで上がり、プロムナードを歩き始めた。
 
「ねぇ、高見沢みちる役ってさ」
と政子が言う。
 
「マーサもそう思う?」
と私は答える。
 
「何か怪しいよね」
「うん。アクアが男の子役だけにしてもらえる訳ないじゃん」
「やはりそうだよねー」
 
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「アクアはやはり本人が俳優志向というだけあって、俳優の素質あると思うよ。演技が掛け値無しに上手い。歌える俳優という路線でいいと思う」
 
「ひとつの役に役者さん2人当てるのはダブルキャストというじゃん。逆は何ていうんだっけ?」
と政子が質問するので、私は
 
「ダブルロールだよ」
と答える。
 
「あ、そーか」
「『さびしんぼう』の富田靖子の1人2役とか、ネタバレになるけど『メリーポピンズ』のディック・ヴァン・ダイクの1人2役が凄かった」
 
「どちらも見てない」
「DVDがマンションにあるから見てみるといいよ」
「そうしよう」
 

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私たちは結局40分掛けてお台場側に渡った後、向こうで1時間ほどファミレスで食事をし、また40分ほど掛けて歩いて芝浦に戻ってきた。
 
私は途中のベンチで曲のいくつかのモチーフを書いた。政子は自宅に戻ってから詩を書くと言っていた。
 
それで結局わたしたちは2つの曲を作ったのである。
 
ひとつは直接的にはアクアがどうもダブルロールをするみたいだという所から発想を得た『ダブル』という曲だが、先日のくっく・のんのの中止された「ダブル結婚式」の影響もある。そして政子にはさすがに言えなかったが、千里たちの恋愛模様のことも念頭にあった。
 
実際この作品のサビに使った複雑な和音進行のメロディーは先日、千里から千里と貴司さんの「浮気」の実情を聞いた時に着想したメロディーを使用している。
 
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あそこは、阿倍子さん−貴司さん−千里−桃香−桃香の彼女、と数珠つなぎのような恋愛関係だが、各々はそれぞれ2つの恋愛を同時にしている。いわゆるポリアモリーに近いが、実際には、阿倍子さんは貴司さんと千里の関係に同意していないし、千里は桃香と彼女の関係を黙殺しているだけで認めている訳では無い。桃香は千里と貴司さんの関係にかなり嫉妬している。
 
しかしつい先日までの、露子さん−松山君−政子−私−正望、という恋愛関係もポリアモリーに近いというのにも思い至った。この場合、露子さんが松山君の独占を仕掛けて彼の獲得に成功し、松山君と政子のつながりは切れてしまった。
 
それとこれも政子には言えなかったのだが、京平君はいったい誰の子供なのかという疑問もこの曲に影響している。千里は京平君を作った精子は貴司さんと千里が協力して出したものだと言っていた。
 
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京平君の母親にしても、産んだ阿倍子さんと、卵子提供者2人が母親なのかも知れない。
 
つまり京平君の母親も父親もダブルキャストになっているかのようである。
 
更にその採卵自体が「ダブルキャスト」だったと千里は言っていた。
 
実際に採卵台に寝たのは千里なので、卵子提供者は千里である可能性が濃厚だ。そもそも千里は最初からあの子のことを「私と貴司の不義の子」と言っていた。
 
しかし千里に本当に卵巣があるのかについては疑問が大きい。彼女とのこれまでの付き合いを考えるに、やはり千里は天然女性ではなく性転換者に思えるのである。
 

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さて、もうひとつ作った曲はドラマ『ねらわれた学園』のために書いたもので『海嘯(かいしょう)』という曲である。この単語は川の逆流を表す。
 
河口が三角形になっている大きな川では、大潮の時に、盛り上がった海の水がその三角形の河口がパラボナアンテナのような感じでエネルギーを集め、海水が川を遡っていくことがある。アマゾンではポロロッカと言い、河口から数百kmもの距離まで登ってくる。
 
「ねらわれた学園」は未来の人が現代に干渉して歴史を変えようとするのに現代人の主人公たちが抵抗する物語なので、時間の流れを川にたとえてその因果律に対して逆向きの動きを、海嘯にたとえたのである。
 
そしてこの背景には、千里自身が因果律に反する存在のようにも思えてしまうことがある。
 
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もっとも彼女は「時間を超越しても因果律は絶対に崩れないんだよ」と言っていた。しかしそれって、彼女が実際に時間を超越していることを示唆している気もする。
 

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青葉とは8月27日のKARION富山公演の時に再度会った。
 
「ケイさん、Flying Soberの最後のCDができたので、これまだプレス前のものですが」
と言って青葉がCD-Rを1枚私に渡してくれた。
 
「これで解散?」
「ええ。メンバーが高校を卒業してしまうから、これで最後です」
「空帆ちゃんは、大学に入っても活動続けるでしょ?」
「新たなバンドを作ると言っていました。Flying Soberという名前は高校時代の想い出として封印するということです」
 
「私と冬は高校卒業してもずっとローズ+リリーのままだね」
と政子が言う。
「まあ一時期危なかったけどね」
 
と私は言ってローズクォーツ時代のことを思い起こしていた。
 
「そうだね。冬がちゃんと性転換手術して女の子になってなかったら、危なかったよね」
などと政子は言っている。
 
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「冬さんがいつまでも性転換しなかったら、政子さんはどうしてたんですか?」
 
と青葉が訊くと、政子は答えた。
 
「その時は冬に眠り薬を飲ませて、病院に運び込んで、寝ている内に性転換しちゃう」
 
「無茶な」
「日本では厳しいけど、外国ならきっとやってくれる医者もいる」
「かも知れないね」
 
と言いつつも、政子がマジなのか冗談なのか私は判断に悩んだ。
 
 
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■夏の日の想い出・ダブル(8)

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