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■夏の日の想い出・ダブル(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-12-20  
19:00。日はもう落ちている(この日の日没は18:39, 日暮れは19:13である)。薄暗いステージにライトが当たり、客席も闇に包まれつつある。
 
ステージ横に立っている電光式の時計が19:00を示したのと同時にステージに立っているスターキッズや他の伴奏者が、酒向さんのドラムスを合図に音を出し始める。
 
しかしステージにはマリの姿もケイの姿も無い。
 
前奏は進むもふたりの姿は見当たらない。客席に小さなざわめきが起きる。
 
その時、2つのスポットライトがステージ左右の上空を照らす。そこにハングライダーを背負ったケイとマリの姿が浮かび上がり、客席にどよめきが起きる。ふたりはそのままステージに向けて降下していき、ジャストステージ中央のマイクの前に降り立った。
 
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そして私とマリはすぐに『摩天楼』を歌い始める。ハングライダーを付けていたので、ヘルメットもかぶったままである。
 
割れるような拍手と歓声が起きた。
 
そしてステージ後方に高層ビル群の姿が浮かび上がった。
 
実際には私たちはハングライダーで飛んできた訳ではなく、クレーンで吊ってもらって下に降りただけである。ハングライダーは身体に絡みつかないようにわざわざ細いプラスチックの棒で支えていた。周囲が暗くなってきたので出来た演出であった。
 
また摩天楼の映像は、後方に薄い幕を張って、更にその幕の後方から投影したものである。これも暗くなってきたことで出来たものだ。そしてクレーン本体はこの幕の裏に隠していたのである。
 
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このあたりの演出は、私たちの時間の割り当てが日没後になることが判明した時点で雨宮先生から発案され、氷川さんも了承して実行したものであるが、掛かった費用はなかなか凄かった!
 
この曲は私がニューヨークで曲だけ書いていたもので、帰国後マリが曲を聴いて歌詞を書いたものである。ギターを2本フィーチャーしており、近藤さんと宮本さんで弾いている。月丘さんのキーボードは昔の電気ピアノのような音を出しており、山森さんのキーボードはまだ電子化されていなかった時代の《電動式》のハモンドオルガンのような音を出している。
 

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曲が終わった所で挨拶する。
 
「こんばんは!ローズ+リリーです!」
 
大きな歓声が来る。「マリちゃーん」「ケイちゃーん」という声も聞こえる。
 
「あたりはすっかり暗くなってしまいましたが、良かったら私たちと一緒に夜のひとときをお過ごし下さい。次の曲は最新シングルから『コーンフレークの花』」
 
歓声の中、近藤・魚ペアがステージに出てくる。彼女たちはムームーのようなドレスを着ている。
 
そして観客もかなり期待していたようであるが、1番と2番の間の間奏で2人ともそのドレスを脱いでサンバっぽいビキニ姿になる。そのダンサー2人に対して歓声があがる。
 
「うさぎちゃーん」
「みちるちゃーん」
という声まで掛かっている。
 
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歓声に対して手を振りながらもふたりのダンスは続き、私たちの歌も続き、大きな手拍子で8万人の大観衆が大いに盛り上がった。
 
苗場では最初からサンバの衣装だったのだが「脱いでくれること期待したのに」という声が多かったこと、主催者に打診したら「裸になるのでなければ構わない」との回答があったので、ムームーからビキニへという演出にした。
 
なお和服から脱いでいくのは、実際に試してみたものの結構手間取るので、その間しばらく踊れず、流れが悪いということになり、簡単に脱げるムームーを使うことになった。
 
政子は「あ〜〜れ〜〜」をやってみたいなどと言っていたのだが!?
 

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その後、近藤うさぎが黒いドレス、魚みちるが白いドレスを着て『黒と白の事情』を演奏する。
 
それから2人が下がって代わりにヴァイオリン奏者6人を並べて『花園の君』、『花の女王』と演奏。すっかり暗くなった公園に華麗な弦楽器の音が響いた。
 
その後今度は一転して、近藤さんと鷹野さんのツインギターだけをフィーチャーして『言葉は要らない』を演奏する。他の演奏者はお休みでいったんステージを離れる。
 
その後、今度は月丘さんのキーボードだけをフィーチャーして『スタートライン』を演奏する。この曲は本来はアコギ/ウッドベース/マリンバ/フルートという構成の曲なのだが、エレクトーン的なアレンジにしたものを使用している。
 
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静かな曲を2つ続けた後は一転して元気な曲である。
 
ステージ後方の投影幕に「踊る影たち」を映して『影たちの夜』を演奏する。それで盛り上がった所で私とマリがお玉を持って『ピンザンティン』を演奏する。例によってお玉を振ってくれている人たちが随分いるのがステージから見えた。
 
通常のライブならここで幕が下りて、アンコールと行くところであるがフェスなので、そういう手順を省略する。
 
そのまま『夏の日の想い出』をスターキッズの基本メンバー(近藤・七星・鷹野・酒向・月丘)5人で演奏した上で、最後は伴奏者が全員下がって私とマリの2人だけになり、私のピアノ演奏のみで、ふたりで『ずっとふたり』を演奏する。マリはいつものように、ピアノを弾いている私の左側に立って一緒に歌った。
 
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最後の音が消えてしまうのを待って大きな拍手と歓声が来る。
 
私は立ち上がり、マリとふたりで両手を斜め上にあげて、その歓声を受け止めた。
 

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その日、私と政子は横須賀市内のホテルに泊まり、翌日午前中に新幹線で大阪に移動した。
 
この日山村星歌がツアーで大阪公演をすることになっており、そのゲストとして呼ばれているのである。
 
公演は13:00からなのだが、私たちは12:00頃に到着した。楽屋に入っていくと星歌と同じ「2010年組」の富士宮ノエルが来ている。
 
「私、昨日神戸でライブがあったんですよ。それでこちらにちょっと顔を出してみたんです」
などと言っている。
 
「ふたりはデビュー年は一緒だけど、生まれは星歌ちゃんが1年上だったね?」
「ええ。(坂井)真紅ちゃんは私と同じ学年なんだけど、デビューが1年早いんですよね」
と星歌は言っている。
 
「3人いい感じのライバルだったからね」
「え〜?結婚しちゃうの?ずるい、と思いましたよ」
とノエルは言っている。
 
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「ずるいなのか」
「しかも、あんないい男を捕まえるなんて」
とノエル。
 
「(本騨)真樹君は楽屋に応援とか来てないの?」
と私は訊いたのだが
 
「楽屋に出入り禁止なんですって」
とノエルが言う。
 
「あらあら」
「それどころか、星歌ちゃんがライブやる都市自体にその日は来てはいけないという話で。その日どこにいるかを毎日証拠写真と一緒にツイートしろって話なんですよ」
 
「きびしー!」
「ってか大変そー」
 
「それ寂しくない?」
と政子が尋ねるが
 
「毎日電話しているから大丈夫です」
と星歌。
 
「ごちそうさま」
 

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星歌の前半のステージは白雪姫のイメージということで、お城の広間のような感じのセットが組んであった。星歌はこのセットで、白いお姫様ドレスを着て、ギター・ベース・ドラムスにキーボード2人という構成のミュージシャンをバックに歌っていた。コーラスとして彼女と同じ事務所の若い女性歌手3人が貴婦人っぽい衣装で歌っており、貴族っぽい衣装の男性ダンサー4人が星歌の左右で2人ずつ踊っていた。
 
前半が終わるといったん幕が下りる。私とマリはその幕の前に出て行って
 
「こんにちは。ローズ+リリーと申します。良かったら箸休めに私たちの歌を聞いて下さい」
と挨拶する。
 
スタッフの人がパイプ椅子を置いてくれたので、私はそこに座ってスカートの中で足を組み、膝に愛用のアコスティックギター(FG730S)を抱える。そしてそのギターの伴奏のみで私とマリは『私にもいつか』『言葉は要らない』の2曲を歌った。
 
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ローズ+リリーのライブで、私のピアノの伴奏のみで歌うというのは、毎回しているのだが、ギターの伴奏のみで歌うのは、あまりやったことが無い。実は東日本大震災の後の東北ゲリラライブではよくやった形式である。私はちょっと当時を懐かしく感じた。
 
それでMCを交えて2曲歌って拍手をもらい、引き上げようとしたら、ステージの袖で★★レコードの北川さんが指で「1」という数字を出している。
 
「えー、2曲歌う予定だったのですが、もう1曲歌ってくれということなので、『ファイト!白雪姫』」
と私が言うと、何か受けたようで、ドッと笑いが来た。
 
私は笑顔でギターを抱え直すと、ストローク奏法で伴奏を始める。先の2曲は指で爪弾くようにポロロン、ポロロンという感じに弾いていたのだが、この曲はピック(念のため持っていた)で激しくジャン、ジャン、ジャン、ジャン、という感じの弾き方である。
 
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曲調がとっても元気いっぱいの曲なので、先の2曲では静かに聞いていた聴衆が、この曲では手拍子を打ちながら聞いてくれた。
 
白雪姫が剣を持って王子や小人たちと共に王宮に攻めて行き、母親を倒して自分が女王になるぞ、という勇ましい曲だ。それで私たちは
 
「ファイト!白雪」
という繰り返す歌詞を4回目には
 
「ファイト!星歌」
と歌った。
 
すると客席からも「ファイト!星歌!ファイト!星歌!」という声が返ってきてひじょうに大きく盛り上がった演奏となった。
 

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満場の拍手を受け、私たちはお辞儀をして舞台袖に引き上げる。そして幕が上がると、後半のステージは七人の小人の小屋という感じのセットになっている。私たちが歌ったりしゃべったりしていたほんの20分ほどの間にこれだけのセットのチェンジをするのは、本当に大変であろうと私は見ていて思った。
 
前半白いドレスだった星歌は赤・青・黄と使ったカラフルなドレスになっており、コーラスの3人と4人のダンサーは小人さん風の衣装である。なるほどちょうど「7人の小人」になるように構成したのかと私は思い至った。でも王子はどうするのだろう?と思ったものの、星歌の王子である真樹はお出入り禁止ということなので、残念ながら登場はかなわずというところか。
 
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「あれ?ダンサーさん、女の子になってる。性転換した?」
などと政子が言い出す。
 
同じ人数だったので私も気づかなかったのだが、確かに見ると星歌の左右で踊っているのが、前半は男性4人だったのが、今は女性4人になっている。
 
「体力を激しく消耗するので、コーラス・ダンス担当は前半と後半で別の人を当てているんですよ」
と近くに北川さんが説明してくれた。
 
「なるほどー!」
「星歌ちゃんも前半と後半で別の人だったりして」
「ふたり居たら楽ですけどね」
「まあさすがに星歌は交替できない」
「歌手は体力使いますね」
 
「ケイちゃんたちが歌っていた間、あの子ひたすら寝てましたよ」
「そうでないと身体が持ちませんよ」
 
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「最近は長時間のライブが多いですしね」
 

ライブは後半大いに盛り上がり、最後は観客から
 
「結婚おめでとう!」
「幸せになってね!」
 
などという声をあらためてもらって、星歌は涙を浮かべていた。しかし体力的に限界だったのだろう。幕が下りると、その場に崩れるように座り込み、スタッフに抱えられるようにして下がった。結局楽屋で30分くらい寝せてからホテルに引き上げたようだ。
 
ライブ終了後、私はホテルに入って楽譜の整理をしていたが、政子は新幹線で大阪までやってきた美空と待ち合わせてふたりで「こなもん食べ歩き」をしてきたようである。
 
「さすがにお腹いっぱい」
と言って18時頃、帰ってきた。
 
「じゃ今日の晩御飯はパスかな?」
と言ったら
「もちろん食べるよ」
と言っている。
 
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やはり政子の胃袋は宇宙並みの神秘だ。
 
19時頃、星歌から電話が掛かってくる。
「マリさんたち、良かったら一緒に食事しません?」
 
するとマリは
「行く行く」
と言っている。
 
ほんとに入るのか?と私は思ったものの、ふたりでホテルのプライベートキッチンに降りて行く。同席しているのはマネージャーの蕪田さん、★★レコードの北川さん、それに陣中見舞いに来てくれていた富士宮ノエルだけである。
 
「いや、コーラスの子たちと一緒に打ち上げする時もあるのですが、どうしても気疲れするので、今回はツアー最後の打ち上げを除いては内輪だけで打ち上げすることにしたんですよ」
とマネージャーの蕪田さんが説明した。
 
「まあ後輩と一緒だと、何かと気を遣わないといけないよね」
と私も言う。
 
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