広告:めしべのない花―中国初の性転換者-莎莎の物語-林祁
[携帯Top] [文字サイズ]

■夏の日の想い出・ダブル(2)

[*前p 0目次 8時間索引 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8 
前頁 次頁 時間索引目次

↓ ↑ Bottom Top

2015年の夏、私と政子はスターキッズと一緒にスタジオに籠もりローズ+リリーのアルバム『The City』の制作を進めつつ、時々「表」に顔を出していた。
 
7月30日まで収録曲の『摩天楼』の制作を、ちょうどこちらに出てきた青葉も入れて行い、31日にはブラジルから来た「男の娘デュオ」ドーチェス・フロコスとの対談をした。
 
そのあと8月上旬は『ハンバーガー・ラブ』という曲の制作を進めた。
 
そして8月8日には三浦半島で今年もサマーロックフェスティバルに参加し、翌日9日には大阪で行われた山村星歌のライブにゲスト出演した。
 

↓ ↑ Bottom Top

当日は、私たちの専任ドライバー佐良しのぶさんが運転するエルグランドに乗って会場に向かった。衣装や楽器などをけっこう積み込んでいる。
 
「え?ケイさん、まだこの車一度も運転してないんですか?」
と佐良さんは驚いたように言った。
 
「試運転みたいなのを何度かした程度で、まだ公道を1km以上走った経験が無いです」
と私は言う。
 
「私のリーフは結構運転してるよね?」
と政子が言う。
 
「うん。そちらは結構都内の移動に使ってる」
と私。
 
「確かに都内程度の移動だと小さい車の方が便利かも知れませんね」
と佐良さん。
 
「そうなんですよ。大して荷物も無いし」
と私。
 
「千里も日常はミラ使って、遠出にはインプレッション使ってるね」
と政子。
「インプレッサね」
「あ、それそれ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「でも買い直すらしいよ。あの車も30万km近く走ってもう限界らしい」
と私は言う。
「へー」
 
「こないだの小浜までの往復が事実上最後のお務めだったらしい」
「なるほどー」
 
「あれ矢鳴が、そんな長距離運転は連絡して下さい!と言ってました」
と佐良さんが言う。
 
彼女たちが他の担当さんのことを言うのは異例だが、私たちと千里との関係を認識した上での発言だろう。
 
「最初新幹線で行くつもりだったのが、葬儀の時間が早くなったので苗場に寄って上島先生たちを拾ってくれと急に言われたので、連絡する時間的余裕が無かったからと言ってましたね」
と私は言う。
 
「ただこれ私の想像ですけど、6年間乗った車とのお別れだからずっと自分で運転したかったのかも知れませんけどね」
と私は付け加える。
 
↓ ↑ Bottom Top

「なるほど、そういう事情があったんですかね」
と佐良さんは言った上で
 
「しかしオーストラリアで合宿で毎日激しい練習をしている所で日本に戻ってきて、車を800kmひとりで運転して、そのあとお葬式の裏方を3時間やった上で更に500km運転するとか、物凄い体力ですね」
と付け加える。
 
「後から私もそれ思ったのですが、帰り道私が2時間ほど運転を代わっただけでも結構違ったのではないかと思いましたよ」
 
と私。
 
「そういう長時間の運転の時って、あと少しとなった時がいちばん危ないから、ケイさんが帰り道の賤ヶ岳から浜松まででしたっけ? そのあたりの区間を代わってくださったのは、凄くタイミング的に良かったと思いますよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「浜松のひとつ前の新城まででした。さすがにその2時間は熟睡していたようでした。私が最初声掛けても起きないから、実際浜松SAまでもう一区間私が運転しようかなと思ったくらいでしたから」
 
「結局千里が寝てたのは往復の飛行機の中と、苗場で少し待機していたのと冬が運転していた2時間だけみたいね。凄い体力だよね」
と政子。
 
「やはり日本代表になるほどのスポーツ選手の体力って凄まじいんでしょうね」
と佐良さんは言う。
 
「特にバスケットは野球などと違って40分間走り続けますからね。まあ選手交代はするけど」
と私。
 
「それでも千里、代表から落ちちゃったね」
と政子が言う。
 
「うん。本人は『落ちたー』と明るく言ってた。でも落ちても結局オリンピック予選が終わるまで代表チームに帯同して練習相手になるらしいよ」
と私。
 
↓ ↑ Bottom Top

「へー」
 
千里たちはまだ合宿でニュージーランドに居るのだが、その合宿の途中の8月4日に、今月13-16日に行われる「東日本大震災復興支援バスケットボール日本代表国際強化試合2015」に出場する日本代表12名が発表された。そしてそこに千里の名前は無かったのである。現在ニュージーランドでは20名の選手が合宿をしているのだが、落ちた8名も8月29日からのオリンピック予選が終わるまでずっと代表チームと行動を共にすると、千里からは聞いている。
 
「4年前のオリンピックの時も予選前日に落とされたものの、予選が終わるまでずっとチームと一緒だったらしいし」
と私は言う。
 
「スポーツの世界は厳しいですね」
と佐良さんはため息をつくように言った。
 
↓ ↑ Bottom Top


そんな話をしながら佐良さんは高速を降りて国道16号を南下していたのだが、十字路の交差点で赤信号で停まった後、青信号に変わったのに佐良さんは車を発進させなかった。後ろの車がクラクションを鳴らす。政子が「どうかしました?」と言い、佐良さんが「いや・・・」と何か言いかけた時、交差する道路を信号無視して凄まじい速度で左から右へ通過していった車があった。
 
反対側から青信号になったのを見て交差点内に進入してきていた先頭の車が急ブレーキ・急ハンドルで、ギリギリその車を避けたものの、中央分離帯の街路樹に激突してしまった。
 
他の車もいっせいに急ブレーキで停止する。
 
「失礼します」
と佐良さんは声を掛けて車から飛び降りる。私も政子に「車内に居て」と声を掛けて車を降り、街路樹にぶつかった車の所に駆け寄る。他にも数人降りてきたし、通行人も何人か駆け寄る。
 
↓ ↑ Bottom Top

「大丈夫ですか?」
と佐良さんが車内の人に声を掛ける。乗っていたのは50代の女性ひとりである。
 
「ええ。何とか」
「お怪我は?」
「大丈夫みたい」
 
運転席のドアが曲がってしまったようで降りられないと言うので、助手席側から降りればいいですよとアドバイスする。「あ、そうか」と言って女性は降りてきた。本人の外見を見る限りは怪我しているようにも見えない。
 
「あの車のナンバー写真撮りましたよ」
とひとりの男性が言う。この人は通行人だったようである。
 
「警察に通報しましょう」
 

↓ ↑ Bottom Top

本人も怪我はしていないようだということで、その写真を撮った男性と私たちだけが残り、他の人たちは各々の車に戻って、交差点はまた流れ始めた。警察は7-8分で到着し、事故の原因を作った信号無視の車は緊急手配されたようであった。やがてJAFも到着した。私たちは警官に簡単に事情だけ聞かれ、事故から20分ほどで解放された。
 
それで車に戻って再び会場を目指した。
 
政子が佐良さんに言う。
 
「あれ、青信号になったところで発進していたら、この車、完璧に横からぶつけられていましたね」
 
「ええ。あのスピードで激突されたら、行き先が病院か、下手したら天国になっていたところでした」
と佐良さん。
 
「なぜあそこですぐ発進しなかったんですか?」
と政子が質問すると
 
↓ ↑ Bottom Top

「目の端に左から猛スピードで走ってくる車を見たんです。あの車、停まらずに突っ込んでくるかもと一瞬思ったので、車がきちんと信号で停止するのを確認してから発進しようと思ったんですよ」
 
と佐良さんは説明する。
 
「あ、だるま運転と、かもしか運転ってやつですかね?」
と政子。
 
「だろう運転と、かもしれない運転」
と私は訂正する。
 
「ええ。そうです。あの車はきっと信号で停まってくれるだろう、という発想は危険なんです。あの車はもしかしたら信号で止まらないかも知れない、と考えることによって事故を避けることができるんですよ」
と佐良さん。
 
「こういうのベテランドライバーほど危ないんだよね」
と私は言う。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ですね。妙な慣れが、思わぬ事故につながるんです。他のドライバーの動きが《いつもの通りだろう》と想像するのは事故の元です。あのドライバーは突然思わぬことをするかも知れない。むしろ世の中のドライバーは全員頭がおかしい、くらいに思っていた方が安全に運転できますよ」
と佐良さん。
 
「だけど恋愛でも似たようなことあるかもね」
と政子。
 
「そうだね。彼は私のこと好きなのだろうと勝手に思い込むと違っていた時に失恋のショックが大きい。彼は別に私のこと気にしていないかも知れない、というのも頭の隅に置いておいたほうが、彼といざ話しをすることができた時に頑張れるかもね」
と私。
 
「よし。『だるま恋愛・かもしか恋愛』という詩を書こう」
と言って政子はボールペンと最近お気に入りのジャポニカ学習帳を出して詩を書き始めた。結局、だるま・かもしかのままなのか!?
 
↓ ↑ Bottom Top

「そうだ。男の娘の場合は『女の子だろう』と思われるのがハイレベルで、『男の子かも知れない』と思われてしまうのは、まだ修行が足りないよね」
 
「どういう修行なのさ?」
 

↓ ↑ Bottom Top

サマーロックフェスティバルはA〜Fの6つのステージで分散開催される。
 
A(植物公園野外劇場)8万人 人気ロックバンド中心 
B(歴史の町A広場)5千人 ソロ歌手・少人数歌唱ユニット中心 
C(歴史の町B広場)2千人 インディーズの実力派など 
D(高校グラウンド)3千人 アイドル中心 
E(高校体育館)千五百人 フォーク系などPAを使わないユニット 
F(市体育館)1万人 実力派バンド中心 
 
ローズ+リリーは2009年以降毎年出場を打診されていたもののマリの精神状態の問題でお断りしてきたのだが、2012年に突発出場した後、2013年以降は毎年正式出場している。KARIONは2009年以降毎年出ている。
 
2009年はまだ「横須賀歌謡フェスティバル」の名前だったが、KARIONのみ出場した。私とマリは手違いがあって「横須賀ロックフェスティバル」の方を見に行ったのだが、私は途中でそちらの会場を抜け出し、歌謡フェスティバルの演奏に参加した。2010年から両者は統合されて「サマーロックフェスティバル」の名前になったのだが、この年はマリは客席で見学、私はスカイヤーズの代理ボーカルを務めるとともに、KARIONの演奏にも参加している。
 
↓ ↑ Bottom Top

2011年はKARIONの演奏に参加しつつ、マリと2人でポーラスターに紛れて、ふたりでAYAの伴奏をした。
 
2012年は出る予定は無かったのだが、Bステージで出場するはずだった歌手が交通事故のため突然出場不能になった時、マリが「代わりに出ない?」と町添さんから言われたのに対し「いいですよ」と答えたので、急遽ローズ+リリーのライブが入れられた。
 
そして2013年は初めての正式出場となり、Bステージのトップバッターで歌ったが、その次がKARIONだった。私はこの年はローズ+リリーだけに出てKARIONのステージには参加しなかったのだが、KARIONのアンコール曲『Crystal Tunes』を私とマリで演奏した。
 
昨年2014年はKARIONはBステージ午前中の最後、ローズ+リリーは同じBステージのラストで初めて私はきちんと両方に出演した。
 
↓ ↑ Bottom Top

なお私は2009-2012年のKARIONの演奏では、どこかに隠れて演奏したり、あるいは顔を隠して伴奏者のふりをして歌ったりしている。昨年初めて、ちゃんと和泉たちと並んで4人でステージに立った。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁 次頁 時間索引目次

[*前p 0目次 8時間索引 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8 
夏の日の想い出・ダブル(2)

広告:Vlonfine-女装下着偽膣性転換パンツ股間女装CDカバーパンツ(改良版)