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■女子社員ロッカー物語(2)

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そして翌週また会社に出て、研修内容に関するレポートを提出することになる。俺は、山崎さんの下に配属すると言われていた。女性の先輩の下というのは何だかやりにくい気もするが、山崎さん、けっこう面倒見が良さそうな雰囲気だから、まあ何とかなるだろう。
 
スーツは母に頼み込んでお金を借り、大丸で3万円のスーツを作った。初給料出たら返すからと言っておいた。
 
さて研修明けの月曜日も朝8:15分くらいに出社して、まだ誰もいなかったので警備室で鍵を受け取って中に入り、更衣室で制服に着替え、やがてやってきた数名の女性と一緒にお茶を入れて、みんなの机に配った。
 
朝礼の後、山崎さんにレポートを提出し、いくつか質問を受けてそれに答える。
「じゃ、研修の結果確認で、ちょっと実際の機械でやってもらおう」
 
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と言われ、機械室にあった3種類の機械でメンテ作業を手順通りおこなう。
 
「うん、合格、合格。ちゃんと勉強してきたね」
 
最初はひとりでは不安な面もあるだろうからということで、午後から山崎さんと一緒にいくつかの会社を訪問することになった。
 

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午前中あらためてマニュアルやメーカー研修でもらった資料などを読みながら、電話応対や来客応対・お茶出しなどをする。それで11時頃、ちょっと作業の切れ目でトイレに行っておこうと思い、オフィスを出たら、ちょうど山崎さんと一緒になった。
 
「トイレ?」
「はい」
「じゃ一緒に行こう」
 
と言って、一緒にトイレの方へ廊下を歩いて行く。
 
「どう、何とかなりそう?」
「はい。頑張ります。一応機械工学科の出だし」
「あ、そんなこと言ってたね。頑張ってね」
 
などと言いながら、トイレの前まで来た。
 
「では」
と言って、男子トイレの方へ行こうとしたら、山崎さんに腕をつかまれる。
 
「待て。どこに行く?」
「え? ですからトイレに・・・」
「そっちは男子トイレだよ。あんた目が悪いの?」
 
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「でも私、男子だから」
「なにーーーー!?」
 
「私・・・女に見えます?」
「見える。というか、男ならなぜ女子制服を着てるのよ?」
「これ女子制服なんですか?」
 
「男子制服に見える?」
「あ・・・・そういえば、これボタンの付き方が変だと思った」
「女物の服は左前だもん」
「えー!?」
 
「ちょっと来て」
と言って山崎さんは俺の腕を引っ張って課長の所に連れて行った。
 
「ん?どうした?」と三田課長。
「課長、済みません。井河さんって、男らしいんですけど」
「は? 何の冗談?」
「今、男子トイレに入ろうとしてたから、なぜそちらに入る?と言ったら、男なのでということで」
「へ? 君、男なの?」
「そうですけど」
「待って」
 
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と言って、課長は机の中から、履歴書を引っ張り出した。麻取さんも寄ってきた。
 
「あ・・・性別が男に○してある。君、性同一性障害?」
「いえ。普通の男です」
「じゃ、なんで女子制服を着てる?」
「女子制服だということに全然気付きませんでした」
「むむ!」
 
「まあ、比呂志って名前は男でも女でもあるもんね」
と麻取さん。
 

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私たちは会議室に入った。
 
「職安の人から女子だと聞いたから面接した。悪いけど男子の社員は今年は足りている。内定していた女子が急に2人辞めて人手が足りなくなったので募集してたんだよ」
 
職安から女子と連絡された?? それって俺って、最初に職安で既に性別を誤解されてたってこと???
 
「えっと・・・・それでは採用取り消しですか?」
 
三田課長と麻取さんが顔を見合わせている。
 
「私、この人明るくていい感じだなと思いました」と麻取さん。
「あっちゃんはどう思ってた?」と山崎さんに尋ねる。
 
「仕事も積極的で、元気で凄くいい印象の子だと思ってたんですけどねえ。真面目な感じだし」
と山崎さん。
 
「君の声、女の子みたいだよね」と三田さん。
「そうですね。わりとハイトーンだから。学生時代バンドやってたんですけど、CD作ったら、それ聴いて女の子ボーカルかと思われて、レコード会社の人が見に来たことありました」
 
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「へー、バンドやってたんだ? パートは?」
と山崎さんに訊かれたので
「あ、リズムギターです」
と答える。
「ああ、縁の下の力持ちって感じだ」
「そうですね」
「私は高校時代、軽音部でドラムス打ってたんだよ」と山崎さん。
「おお、女子のドラムスは貴重だ」
 
何となく話し合いは和やかな雰囲気で進行した。
 

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「ちょっと定数外だけど、私この子欲しいなあ」
と麻取さんが言う。
 
「私もいい後輩が出来たと思ってました」
と山崎さん。
 
「それにこの子、この声で電話応対させれば、それだけでも戦力になりますよ」
と麻取さん。
「普通に女性が電話取ったと思います」
 
「あ、それあります。今、女子の数がそもそも少し少ないし」
と山崎さんも言う。
 
「よし、分かった。君はこのまま採用」と三田さん。
「ありがとうございます!頑張ります」
と俺は言った。
 
「電話応対、その声でやって」
「はい。えっとお茶とかは?」
「それも女子の人数少ないから頼む」
「はい。えっと来客応対は?」
 
三田さんと麻取さんが顔を見合わせている。
「人数的には、井河さんにも入って欲しいよね?」
と麻取さんが山崎さんに訊く。
「ええ、欲しいです。女子の平社員、今4人しかいないけど、私もさっちゃんも外に出ていることが多いから、残るよっちゃんとカナちゃんだけでは手が足りないんです」
 
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「んじゃさ、君、今着ている制服を着て来客応対もしてくれない?」
 
結局、女子制服のままか! と思ったけど、折角採用してくれそうな会社を捨てられない。
 
「分かりました、やります」
と俺は答えた。
 
「スカートじゃないから、まだいいよね?」
「はい、そうですね」
 
と俺はもう悟ったような気分で返事した。
 
「井河君の髪なんですけど」
と山崎さんが発言する。
 
「ああ、女子にしては短いなと思ったけど、男子にしては長いよね」
「でも女子制服着てもらうには、これ以上短くできないね」
 
「君、髪はあまり長いの嫌い?」
「あ、いえ。大学生時代はバンドしてたこともあって、胸くらいの長さでした」
 
「ああ、じゃ肩に少し掛かるくらいまで伸ばしてよ。女子社員に見える程度に」
「分かりました」
 
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そういう訳で、俺は毎日一応男子用スーツで会社に出てくるものの、女子制服に着替えて、女子社員みたいな勤務をすることになった。
 
俺が男だったというのは、オフィス内の全同僚に驚かれた。それで男子社員から勤務時間後に飲みに誘われて、居酒屋とかにも行ったが、一方で数少ない女子社員たちからも、お茶に誘われて甘味処とかにも行った。俺は酒も甘いものも行けるなので、どちらともうまく付き合えた。
 
「私、両刀遣いで左党も甘党も行けますから」
と言ったら
「あ、両刀って、やはり男も女も行けるんだ?」
とカナちゃんが言う。
 
「ちがいまーす。私、ノーマルですよ」
「ノーマルって、ひろちゃんにとってノーマルというのは、男が好きなの?女が好きなの?」
「女の子が好きですよー」
「ああ、やはり女の子でいるのが好きなんだ」
「違いますぅ!」
 
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なお、男子社員と飲みに行く時はスーツを着たが、女子社員と飲みに行く時は会社の女子制服のままにしていた。
 
「私服の女の子の服持ってきてもいいよ」
「そんなの持ってません」
 
それから俺はトイレの件で麻取さんから言われた。
 
「うちの女子社員の制服着た子が男子トイレにいたら、他の会社から苦情が来るからさ。女子制服を着ている間は、女子トイレを使ってくれない?」
 
「えっと、私男なのにいいんでしょうか?」
「女子制服を着ている間は、女子に準じるということで」
「あはは、分かりました」
 
最初の内、山崎さんがいつも一緒に行ってくれた。小便器が無くて、個室だけが並んでいる女子トイレの中を見た時、俺は何かすごく不思議なものを見た気がしたが、開き直ることにした。
 
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取り敢えず個室の中に入って用を達する時は別に誰にも何も見られないから、まあ股間に、ふつうの女子には無いようなものが付いていても、誰かに何か言われるようなこともない。女子トイレって少し不思議な空間だなという気がした。女子はここで秘密を持てる。これが男子トイレの小便器の並びではお互いのものが見えてしまうし、全てを曝け出すことになるので、自分だけの時間と空間を持つことが出来ない。
 
なお、更衣室に関しては、このオフィスには「男子更衣室」は存在しないので、俺のロッカーはそのまま女子更衣室に置かれたままになった。一応、俺が中に入る時はノックしてと言われた。それで少し待たされてから入ることもあったが、俺が着替えている最中は、他の女子はおしゃべりをしていた。俺はそのおしゃべりに普通に付き合った。
 
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「ひろちゃん、下着は男物着けてるのね」
「男ですから」
「女物の下着は持ってないの?」
「持ってませーん」
「買いに行く勇気無いなら付き合ってあげようか?」
「別に買いたくないです−」
「ひろちゃん、女の子になりたい子とかじゃないの?」
「それは考えたことないです」
 
でも俺はけっこう彼女たちに「おもちゃ」にされた。
 
眉毛はもう少し細いほうが女らしいよとか言われて眉毛をカットされたし、マニキュア塗ってあげるとか言われて塗られちゃったし、髪飾りをもらったり、イヤリングまで付けられたりしたこともあった。
 

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そんな生活が1年ほど続いた時のことだった。
 
全国の支店の若手販売員のサミットがあるので誰か代表を出してくれと言う話があったらしく、社内のコンピュータが弾き出した候補者の中から課長が俺を選び、ちょっとそのサミットに行って来てくれということになった。
 
俺は社内勤務ではないので、背広で数日過ごせるだろうから、少し《男を取り戻せる》かなと思い、通勤時に着ている背広の良い方のを身につけ、飛行機と新幹線を乗り継いで、会場となっている福島県の温泉町へ出かけた。
 
会場に着くと何故か女性がいっぱいである。あれ?女子の参加者が多いのかな、などと考えながら、受付で名刺を出す。すると受付の女の子が俺の姿を見て、怪訝な顔をした。
 
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責任者らしい40代の女性が奥から出てきて俺を別室に連れて行った。そして言ったことばに俺は驚愕する。
 
「あのさ。このサミットは全国の女子販売員の集まりなんだけど」
「えーー!?」
「なぜ男性の社員が来てる?」
「そんな話は全然聞いていませんでした」
「コンピュータが女子社員だけをピックアップしてその中から選んでもらったはずなのになあ」
 
それで俺はふと思った。俺って最初女子と間違われて採用されたから、その時社員台帳に女子として登録されてしまったのでは??
 
自分が女子社員の会合とは知らずに来たことを言うと、その女性は困ったわねぇとしばらく悩んでいたが、やがて俺の顔を見て
 
「あなた男子社員なのに髪長いね。注意されたりしない?」
「えっと、ちょっと特例で認めてもらってます」
「ふーん。でもその髪で、顔つきも優しい感じだし、女でも通るかもね。ちょっと女装してみようか?」
と言い出す。
 
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「えー!?」
「でも命令で来ているんでしょう。ちゃんと仕事は果たさなきゃ」
「それはそうですけど・・・・」
 
ということで俺は後はされるがままにしていた。
 
彼女の部屋に連れて行かれ、全部服を脱がされて、足の毛を全部そられた。
 
「ちょうど新品の下着を買ってきてて良かった」
などと言って、女の下着を付けさせられる。
 
胸がないのでブラジャーの中にティッシュを詰め、ガードルを履かされ、ブラウスにスカートを履かされる。
 
「あなた眉は細いね」
「あ、なんか同僚の女子社員に遊ばれて細くされました」
「そういえば、あなたマニキュアもしてるし」
「昨日女子に塗られてしまって。私、リムーバー持ってないもので。ちょっとまずいかなとは思ったんですが」
 
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「ふーん、そんな感じで女子にいたずらされちゃうような子なんだ」
 
とその女性(若林麗子さん)は楽しそうな顔をする。
 
しかし普段女子制服は着ているものの、スカートなんて穿くのは初めてだ。なんかこれ頼りない感じだなあ。まるで下半身裸でいるみたいだ。
 
服を着終わるとお化粧だ。うちの会社は現場で機械をメンテナンスする仕事だから、女子社員もお化粧などしている子はいない。お化粧しているのは現場に出ない麻取さんだけである。それでこれも初体験になった。
 
「化粧品、私ので御免ね」
と言って若林さんは俺に化粧を施していく。
 
化粧水、乳液と付けられた上で、ファンデーションにアイライナー、アイブロウ、マスカラにアイシャドー、そしてチークを入れられ、最後に口紅を塗られる。
 
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鏡の中の自分の顔が変わっていく様はまるで魔法にでもかかっているかのようだった。そして若林さんは
 
「あら本当に可愛くなったじゃない」
と言う。俺も正直ちょっと驚いていた。
 

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