■春閼伽(7)
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希望は女声で『セーラースターソング』を歌ってみせて、みんなに感心されていた。
「それセーラー服を着て歌うともっと良かった」
「さすがにもう着る自信は無い」
「でも昔東京にセーラー服おじさんって居たね」
「名古屋にも居た」
「見掛けると幸せになるという都市伝説があった」
「ああいう人って人畜無害だよね」
「そうそう。夕方通学路に出没してスカートめくって女子中生にちんちん見せる連中とは全く別の種族」
「私たちは女装は昼間堂々とやれって初心者には言うんだよね」
「ほほお」
「初心者には恥ずかしがって夜中に女装外出する子もいる。でも女装は別に悪いことじゃないんだからこそこそやる必要は無い。夜間女装で外出すると、痴漢や男娼と誤認される怖れもあるし、自身が性被害に遭う危険もある」
「それやばいね」
「女の子は小さい頃から注意されているけど、男としてずっと生きて来た子は自分が性被害の対象になるかもというのを認識してないから危ないんだよね」
「小学校で男女によらず指導すべきだな」
「だから女装外出は昼間したほうがいい。それを見られても変な人がいると思われるだけで違法なことしてる訳じゃないから平気だから」
「ああ」
「ダメージファッションなんかと同類だよね」
「でも最初のうちは不自然な部分も多いだろうね」
「うん。それは慣れれば少しずつ改善されていく」
「できたら誰か女の子か先輩の男の娘に指導してもらったほうがいい」
一方、和栄はお盆の間はお弁当屋さんが忙しいので、お盆が終わって21-22日に帰省し、母親に新しい身体を見せた。そして一緒に山中温泉に行ってきた。
「そういや、あんた就職は春言ってた会社に入るんだっけ?」
「あそこだめになったけど、北陸観光ってバス会社に入ることになった」
「へー。バス会社?」
「うん。ガイドさんになる。実は春に予定していた会社より給料が良い。労働時間は長めだけど」
「ガイドは仕方無い」
「でもガイドって女の子だけじゃないの?」
「私は女にしか見えないから問題無いって」
「確かにあんたは女にしか見えない。声もだいぶ女の子らしくなったしね」
「うん。だから今ガイドする内容を必死に覚えてる」
「ふーん。まあ頑張りなさい」
希望より少し前、8月12-13日(土日)、岡安も実家に帰省した。
姉のみどりが言った。
「どうしたの?あんた凄く女っぽくなってる」
「そうかな」
「生理が来たとか」
「まさか」
「きっとお嫁さんに行ける」
と母。
「うん。きっと行ける」
と姉も言う。
「この子セーラー服着たこともあったし」
「記念写真もあったはず」
姉がセーラー服を貸してくれた、というよりむしろ譲ってくれたので着て記念写真を撮った。リボンの結び方も練習した。セーラー服用にブラウスも買ってもらっていた。
「そうだ、あんたちょっと私の浴衣着てみなさいよ」
と言って、姉の百合柄の浴衣を着せられてしまう。
「凄い。かわいー!」
何だか父まで見取れている。
「私別の浴衣着るからそれで一緒に盆踊り行こ」
と姉が言う。
「まあいいけど」
それで、その晩はひまわり柄の浴衣を着た姉と一緒に公民館の盆踊りに出かけた。母は普通の服で一緒に付いて行った。トイレも3人で一緒に女子トイレに入った。
「こっちに入るの〜?」
「この格好で男子トイレに入れるわけない」
「実は最近男子トイレに入れなくて困ってる」
「男子トイレにはいる必要は無いと思うけど」
「うーん・・・」
「大学卒業したらOLになりなさいよ」
「え〜!?」
「レディススーツ買ってあげようか」
「どうしよう?」
さすがに持っているとは言えない。
「そうだ。私の振袖貸してあげるから、卒業式でそれ着なさいよ」
「卒業式で振袖〜?」
その日は30分くらい『U.S.A.』『パプリカ』『小さな恋のうた』とかで踊っていたのだが、運営委員の人が姉のところに来て言った。
「この後サエちゃんが台の上で歌う予定だったんだけどさ、風邪引いちゃったんだって。みどちゃん、代わりに6〜7曲歌ってくれない?」
すると姉は言った。
「うちの妹が歌うよ」
妹って、もしかしてぼくのこと〜?
俊夫は困惑したが
「ほんと?よろしく〜」
と運営委員の人に連れられて台の所に来てしまった。俊夫は、えーい、やけくそだと思って、草履(ぞうり)を脱ぐと台の梯子を昇って上に立つ。そしてまずはベビーメタルの『イジメ、ダメ、ゼッタイ』を歌った。なんか受けてるので、そのままベビーメタルの曲を『女狐』『4の歌』『メタ太郎』など、たくさん歌った。30分くらい歌ってから、次の人と交替した。
お礼と言われて、缶チューハイをもらったが、姉にあげた。しかし姉は
「あんた高い声が出るんだね。ほんとに女の子が歌ってるように聞こえた」
と言っていた。
「あんな声が出るなら受付嬢とかもできる」
と母。
「うん。きっとできる。やはりレディスのスーツ買ってあげるよ」
と姉。
あはは。女物の服の比率が高くなってくる。(きっと卒業までには男物は無くなる)
金沢に帰った後、姉は俊夫を連れてイオンに行き、ほんとにレディススーツ、それにブラウスも3枚買ってくれた。スーツの色はライトグレーである(こないだセカンドストリートで買ったのはライトピンク)。お店の人は俊夫の身体をメジャーで測ってW71 H102ですねと言って「余裕見て13号にしておきましょう」と言っていたので、それを買ってもらった。
「今度一緒に温泉に行こうよ」
「それはさすがに無茶」
「でも多分あんたはもう男湯には入れない」
「だからって女湯にははいれないよー」
「いやあんたならきっと入れる」
女湯に連れ込まれたらどうしよう?
姉と別れてアパートに戻ってから俊夫は自分でウエストを測ってみた。
「太ってる!」
体重も66kgもあった。6月までは54-56kgくらいをキープしてたのに。
俊夫は6月まではメンズでは79のズボンを穿いていたが、スカートの場合はW69のスカートが穿けていた。これは男性と女性でウエストを測る位置が違うせいだと思っていた。しかし7月中旬の性変の時体型も変わりW63のスカートで適合するようになった。バストが大きくなったので、その分ウエストのお肉が減ったのかもと思った。だから体重は変わらなかった。
一週間後に村山さんに男に戻してもらった時は体型はあまり変わらず、引き続き63のスカートが穿けていた。「バストのお肉はどこ行ったんでしょうね」と訊いてみたが、身体全体に分散したと思うと言われた。また性変のために2-3kg相当のエネルギーを消費したはずと言っていた。実際体重は2kg程度減っていた。。
それで先日会社で女子制服を着せられた時も63と申告したが、Mの服がちゃんと着られていた。ただ少しきついかなと思ったので気合でお腹を引っ込めておいた。その程度は女子でも普通にすることだ。ただ少しやばい気はしていた。しかしあの時より更に太ってる!だいたいお腹の肉を指で摘まめる!
運動を辞めたからだと彼は思った。
7月上旬までは卓球部で毎日激しい運動をしていたから、カロリーを消費していた。しかしその後は運動をやめてしまったからカロリーが余ってるんだ。
俊夫は食事では御飯は1杯しか食べないことを決めた。そもそも茶碗を女の子が使うみたいな小さいのにした。お米自体、発芽玄米を混ぜて炊く。そして毎日ジョギングをすることにした。取り敢えず夕方5km程度走ることにする。またセシールでボディスーツを注文した。ガードルでは追い出されたお肉が上に移動するだけなので、全体を押さえるものでないといけないと思った。(お腹の肉が胸に移動したりして)
俊夫はジョギングするのに新しいランニングシューズを買おうと思った。体重が増えているのに走ると、それだけ足に負荷が掛かる。だからその衝撃を受け止めてくれるクッション性のいいシューズを買おうと思う。
スポーツオーソリティに行く。ランニングシューズを見ていたら店員さんが寄ってきた。
「ランニングシューズですか」
「ええ。体重減らすのに少し運動しようと思って。だからクッションのある靴をと思って」
それでミズノの16000円ほどの靴を買った。ピンクのを勧められたが「可愛すぎるのは痴漢に襲われる危険があるから」と言って水色にした。
店員さんが言う。
「ダイエットでしたら水泳などもいいですよ」
「ああ、それもいいですね」
水泳は水が身体を支えてくれるから、足腰への負担が小さいのがいいよなと思った。それで水着売場に行く。
俊夫が男子用水着を見ていたら
「その付近はメンズですよ。ウィメンズはこちらです」
と言われた。
でも俊夫はつい出来心で、女性用水着を買っちゃった!
ゴーグル、水泳帽、耳栓、着替え用バスタオルも買った。
自宅に戻ってから水着を着けてみる。全身を包む水着は心地良い。
腰の付近だけの水着なら、お腹の贅肉がみっともないけど、ワンピース水着なら身体全体を包むから、贅肉を落とすならこちらのほうがいい気がした。しかもこの水着はサポートタイプである。ボディスーツと似た効果がある。だけど、ワンピース水着を着けると、お股の形がきれいに出るのは問題だ。
どうしよう?と思った時、電話が掛かってくる。村山さんだ!
「はい、岡安です」
「何か助けを求められた気がしたから電話してみた」
「実は少し運動しようと思って水着買いに行ったら女物のワンピース水着を渡されて、ついそれを買っちゃったんですが、身に付けるとお股の所に問題が生じて」
「ああ。問題が生じないようにしてあげるよ」
「でも女の子に戻りたいわけではないんですけど」
「水着を着るときだけの限定で」
「はい、それなら」
電話を終えると水着のお股のところがスッキリした形になっていた。ついでに胸も膨らんでいた。俊夫は深くは考えるのはやめて、水着の上にブラウスを着てフレアスカートを穿き。着替え、ゴーグル・水泳帽など、着替え用バスタオルを持ち、自転車で市民プールまで出掛けた。
自転車に乗った時、サドルが当たる部分に未知の感覚があったが、それも深くは考えないことにした。
券売機でチケットを買い入場する。男子更衣室にはいろうとしたら、係員が飛んできてキャッチされる。
「そちらは男性用更衣室です。進入はご遠慮下さい」
「すみません」
それで女子更衣室にはいっちゃった。女の人がたくさん居るけど、気にしないことにする。
ロッカーを開けて服を脱ぐ。水泳帽をかぶり、耳栓をしてゴーグルを着け、プールに進む。
俊夫は準備運動をしてから水の中に入り、軽く25m泳いだ。水泳をしたのは中学の体育でやって以来8年くらいぶりだが、泳ぎ方は身体が覚えていた。でも気持ちいいなと思った。俊夫は2時間くらい休みを取りながら泳いでいた。
そろそろあがるかと思い、プールから女子更衣室に移動する。少しドキドキ。でも平常心平常心。着替え用バスタオルを使い、水着を脱いで普通の下着を着けた。お股のところは見ないようにしたが、普通のショーツを着けてもお股には膨らみが無かった。それにショーツを穿いた時いつもは後ろ向きに収納する“障害物”が無いような気がしたが深くは考えないことにした。
ブラジャーを着け、ブラウスを着てスカートを穿き、更衣室を出た。そして自転車で帰宅した。帰宅して部屋に入ると“戻った”感覚があったので、手で触って確認すると男性器は存在した。水着はすぐ洗って干しておいた。
それから俊夫は毎日プールで2時間程度泳ぎ、夕方には5kmのジョギングをした。水着はいつも女子水着だし、女子更衣室を使った。水着のお股の所のフォルムはいつもスッキリして何も突起物は無かった。またお股のところが変化している間は、胸もBカップくらいあった。それでしまむらでB70のブラを3枚買ってきた。ついでに水着ももう一枚買って交互に使うことにした。実は洗濯した後、乾くまでの時間がけっこう微妙なのである。最初のうちはまだ完全に乾ききってないものを着て行ったりしていた。またスカートで自転車に乗るので自転車にはスカートガードを取り付けて裾が巻き込まれないようにした。
一方では御飯は1杯だけで我慢し、お腹が空いたらブラックコーヒーを飲んでいた。また調理に、食塩・ラード・バターを使わないようにした。塩分は醤油・味噌などに含まれる分で充分である。レシピでラードやバターが指定されている所はサラダ油で代用する。またカレーなどを食べる時は小さなスプーンを使用する。毎食野菜サラダを食べ、またサラダから食べ始める。お茶はたっぷり飲む。スナック菓子などは買わない。お酒やビールも飲まない。コーヒーや紅茶に砂糖は入れない。
またエレベータは使わず、必ず階段を使う。
また運動する時以外はずっとボディスーツを着けておいた。寝る時も着けていた。
それで9月の頭にはウエストが66cmまで減ったのである!体重も60kgまで減った。それでボディスーツを着けていれば再びW63のスカートが穿けるようになった。しかしボディスーツの副作用か?胸の膨らみが少し大きくなった気もしたが、気にしないことにした。(やはりお腹の肉が胸に移動したんだ!)
8月末から9月頭はおりものが多く、ナプキンを着けておいた。おりものには血も混じっていた。そういえば8月の頭頃もおりものが多くてナプキンを使った気がした。あの時も血が混じっていた。
生理だったりして?
まさかね。
ナプキンを着けている時期は水泳はやめておいた。運動はジョギングだけにした。
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春閼伽(7)